特発性大腿骨頭壊死症
大腿骨頭壊死とは、大腿骨の骨頭が何らかの原因によって血行障害を起こし、骨頭の骨組織が死んでしまう疾患です。明らかな原因がある大腿骨頭壊死と、明らかな原因がなく発生する特発性大腿骨頭壊死に分かれます。原因のある大腿骨頭壊死には、外傷(股関節脱臼大腿骨近位部骨折)後やペルテス病、潜函病(水中で作業する人が、急に地上に戻った際に骨頭が窒素ガス塞栓症を起こす疾患)、放射線照射などです。原因がなく発生する特発性大腿骨頭壊死の中には、ステロイド使用歴やアルコール大量摂取歴、喫煙歴などによって発生するものも含んでおります。骨頭壊死は30〜60歳の男性によく見られ、時に、両側例も散見いたします。

症状:股の痛みや運動障害、歩行障害です。壊死の範囲が小さい場合は症状を訴えないこともあります。しかし、大半は進行性に経過していきます。診断はレントゲン検査です。レントゲンで4つの病期に分類されます。第一期は異常を認めない時期です。第二期は骨頭の壊死が軽度で、帯状な骨硬化像を認めるも、骨頭が陥没していない時期です。第三期は骨頭の壊死の範囲が進行し、骨頭の圧潰像や陥没を認めるも、関節裂隙(関節のすき間)は保たれている時期です。第四期は臼蓋(骨頭の受け皿)まで壊れ関節裂隙が狭小化し、変形性股関節症になる時期です。一期はレントゲンで診断できませんので、早期診断にMRIやCT、骨シンチグラフィーなどが必要です。なお、鑑別疾患(見極め)に変形性股関節症大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折などがあります。

治療:保存的治療(手術しない方法)が原則です。壊死が非荷重部で範囲が小さい場合は、保存的治療を行います。日常生活動作の注意点(杖による免荷歩行や肥満解消)を指導します。疼痛緩和にアセトアミノフェン、炎症緩和に非ステロイド性抗炎症剤外皮用薬を処方します。効果がなければトラマドール塩酸塩デュロキセチンを検討します。リハビリテーションとして物理療法運動療法として股関節のストレッチング腰のストレッチング股関節の筋力強化腰の筋力強化などを指導します。

しかし、多くは進行性に経過するため手術的治療が必要となります。手術的治療は骨切り術と人工関節に分かれます。骨切り術は、骨頭に正常組織(骨頭がまだ壊死していない部位)が十分あれば、その正常骨組織で荷重させる手術です。術式は、大腿骨骨頭回転骨切り術大腿骨内反骨切り術などがあります。人工関節は、骨切り術の適応にならない広範囲の壊死がある症例に行われます。人工骨頭置換術(骨頭を人工物に入れ替える手術)と全人工股関節置換術(骨頭と受け皿である臼蓋をともに人工物に入れ替える手術)があります。

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