腰部脊柱管狭窄症

腰椎の解剖
腰椎は5個の椎骨よりなり、前方部分と後方部分とで構成されています。前方部分は、椎体、椎間板、横突起よりなります。後方部分椎弓根、椎弓、椎間関節、棘突起から構成されています。前方部分と後方部分で囲まれた管を脊柱管(脊髄が入っている管)と言います。脊柱管の中には、腰髄や馬尾神経、腰神経が存在し、腰神経は椎間孔(腰神経が出てゆく穴)よりでて左右5対の枝を出し、臀部から大腿〜下腿〜足先へ下降します。なお、詳しくは腰椎の構成体の項を参照されて下さい。

腰部脊柱管狭窄症とは、脊柱管が加齢的な変化(腰椎症性変化)、すなわち、椎体の変形や椎間板の変性、椎間関節の変形、靭帯の肥厚、骨化などによって脊椎管が狭窄(狭められ)て脊柱管内に存在する馬尾神経や腰神経が圧迫されて起こる疾患です。ちょうど、広いマンションで快適な生活を送っている方が、色々な家具や電気製品などの調度品が増えてくると、部屋(脊椎管)が狭くなり圧迫感や不快感を感じるのとよく似ております。腰部脊柱管狭窄症は中高齢者によく認められます。

症状:腰痛やお尻の痛み、足先に放散する痛み、シビレなどです。特徴的な症状として間欠性跛行を認めます(数10m〜数100m程度歩くと症状が増悪し休憩を必要とする状態)。間欠性跛行には神経性のものと、血管性のものがあります。神経性の腰部脊柱管狭窄症の跛行は、しゃがむと症状は改善されます。血管性の閉塞性動脈硬化症などの跛行は、立ち止まっただけで改善しますので、問診による鑑別(見極め)は容易です。

診断
:問診や診察所見、レントゲン所見(脊柱管が狭い状態)で容易です。しかし、他の疾患との鑑別(見極め)や手術適応の有無には、CTMRI脊髄造影神経根造影などの検査が必要です。

治療:保存的治療(手術しない方法)が原則です。まず日常生活動作(歩行時の姿勢や睡眠時の姿勢)などを指導します。症例によってはダーメンコルセット半硬性コルセットを着用させます。コルセットは少し前屈位(前かがみの状態)で作成します。前屈位にすることで神経の圧迫が改善するからです。疼痛緩和に物理療法、前屈位での腰椎牽引療法を行い、アセトアミノフェンや炎症緩和に非ステロイド性抗炎症剤外皮用薬ビタミンB12製剤などを処方します。効果がなければ神経障害性疼痛薬トラマドール塩酸塩デュロキセチンなどを検討します。難治例では神経ブロック療法としてトイガーポイントブロック腰部、仙骨部硬膜外ブロック神経根ブロックなどを検討します。症状が軽快されると腰部のストレッチング筋力強化訓練(特に腹筋の強化)を指導します。

これらの保存的治療で改善されない症例は手術的治療が検討されます。術式は、病態が馬尾神経由来か腰神経由来かにより異なります。術式は、病巣部除圧術骨形成的椎弓切除術除圧術椎体固定術などが検討されます。なお、高齢者の腰部脊柱管狭窄症は、将来、ロコモを発生することがありますので注意して下さい。

 たはら整形外科