非ステロイド性抗炎症剤

非ステロイド性抗炎症剤とは
非ステロイド性抗炎症剤はプロスタグランジンの合成酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)の働きを阻害し、発痛物質(痛みを誘発する物質)を抑制して抗炎症作用鎮痛作用解熱作用抗血栓作用をもたらします。
古くは、ヒポクラテスが抗炎症作用を有する「ヤナギの木の樹皮」を用いたのが始まりと言われています(ヤナギの樹皮にはサルチリ酸が含まれています)。非ステロイドr性抗炎症剤の開発はアスピリンに始まり、現在までに約70種類ほどあると言われています。主に使用されているは20種類程度です。


1)分類
非ステロイド性抗炎症剤は、血中濃度の半減期(薬の濃度が最初の半分になるまでに要する時間)により、短時間型(即効性があり急性の痛みに対して使用されます)と、長時間型(作用の持続時間が長いため主に慢性の痛みに対して使用されます)と、その間の中間型に分類されます。

その使い分けは年齢や既存症、併存症、症状の程度、期間、活動性を考慮して決定されます。効果の判定は症例によってまちまちですが、長くとも二週間程度で効果がなければ薬を変更します。症状が軽快すれば減量および中止します。


2)副作用
非ステロイド性抗炎症剤がプロスタグランジンの生合成を抑制するため、副作用として消化管粘膜障害や血小板機能障害、腎機能障害などが起こりやすくなります。特に胃腸障害が最も多く20%程度に認められます。胃腸障害は服薬後1ヶ月以内に発症することが多く、中高齢者の女性に多い傾向を認めます。したがって、胃腸障害を予防するために胃薬の併用が大切です。

最近、COX2選択的阻害剤の開発によって副作用の少ない非ステロイド性抗炎症剤があります。COXには、COX‐1とCOX‐2があります。COX‐1は全ての細胞に存在し生体の保護に働く善玉のCOXです。COX‐2は炎症部位にのみ出現して働く悪玉のCOXです。従来の非ステロイド性抗炎症剤は善玉のCOX‐1も抑制するため、胃腸障害や腎障害などの副作用が出現しやすい薬でした。COX2選択的阻害剤は悪玉のCOX‐2のみを抑制するため副作用が少なく効果も優れていると考えられています。

また、坐薬は直腸の粘膜で直ちに吸収されます。消化管への負担が少なく、肝臓で代謝を受けず静脈より全身へ作用するため速やかに血中濃度が上昇しますので解熱鎮痛作用に優れています。


最も気を付けなければならないのが腎障害です。特に、高齢者や半減期の長いタイプで起こりやすくなります。また、肝機能障害は使用後1〜2ヶ月頃に発生しやすいので要注意です。他に喘息発作が誘発されるアスピリン喘息もありますので注意して下さい。

長期に非ステロイド性抗炎症剤を使用される方は、定期的に血液検査(末梢血・凝固・肝機能・腎機能など)や尿検査、便潜血反応検査などで副反応をチェックして下さい。



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