外傷性股関節脱臼

股関節脱臼は転倒や転落、交通事故(ダッシュボードで膝をぶつけた時)など強い外力が股関節に生じた際に起こります。脱臼は後方脱臼前方脱臼中心性脱臼に分かれます。大半が後方脱臼です。受傷時50〜60%に骨頭骨折大腿骨近位部骨折骨盤骨折などを合併しています。

後方脱臼は、膝をくずして座った状態、いわゆる「女の子座り」(股が内転位、内旋位、屈曲位)の肢位になります。前方脱臼は、あぐらを組んだ状態(股が外転位、外旋位、屈曲位)の肢位になります。いずれも大腿部が短縮します(足が短く見える状態)。症状は股関節部の痛みと脹れ、運動障害です。股は全く動かせません。なお、後方脱臼の際、坐骨神経を傷めると坐骨神経麻痺を来たしますので要注意です。診断にはレントゲン検査が不可欠です。

治療:腰椎麻酔や全身麻酔にて早期に愛護的に徒手整復術を行います。直ちに整復しないと、後日、大腿骨頭壊死が高率に発生します。遅くとも6時間以内の整復が望ましいと思われます。整復後は安静の目的で下肢の牽引を数週間行います。リハビリテーションは早期からストレッチング筋力強化訓練を指導します。荷重歩行(体重をかけての歩行)は大腿骨頭壊死の発生を考慮し、MRIを参考にして整復後1〜3ヶ月目より開始します。

徒手整復が困難な症例や骨折を合併している症例では、手術的治療として骨接合術や骨片摘出術が行われます。なお、将来起こる可能性のある大腿骨頭壊死二次性変形性股関節症には注意を払って下さい。

 たはら整形外科