大腿骨近位部骨折 骨粗鬆症を有する高齢者が転倒され股関節痛や歩行障害を訴えた場合、まず大腿骨近位部骨折を考えます。なお、若年者の場合は転落やスポーツ外傷などの強い外力で発生します。大腿骨は近位部と骨幹部と遠位部に分かれます。さらに、大腿骨近位部は頚部と転子部と転子下に分かれます。骨折の部位により大腿骨頚部骨折、大腿骨転子部骨折、大腿骨転子下骨折と呼びます。なお大腿骨頸部骨折は股関節の内の骨折ですから内側骨折とも呼ばれ、大腿骨転子部骨折や転子下骨折は股関節の外の骨折ですから外側骨折とも言われます。 ●大腿骨頚部骨折(内側骨折) 大腿骨頸部骨折(内側骨折)は外側骨折に比べて骨癒合(骨のつき)がよくありません。内側骨折は関節内の骨折(関節の袋の中の骨折)ですから、骨折を起こすと骨頭を栄養している血管も同時に損傷され、骨頭への血流が途絶え骨頭壊死(骨頭が腐る状態)を起こすことががあります。また、骨癒合しても(骨がついても)後日、大腿骨頭壊死を発生することもありますので注意深い観察が必要です。 診断 レントゲン検査が不可欠です。レントゲンで4つのStageに分類されます。 @Stage1は不全骨折の症例です。 AStage2は転位(ずれ)のない完全骨折の症例です。 BStage3は軽度な転位を認める完全骨折の症例です。 CStage4は高度な転位を認める完全骨折の症例です。 これらのStageによって治療法が検討されます。 治療 1)保存的治療 安静臥床を長期間強いられるので保存的治療の対象は極めて限定されます。大半は手術的治療です。高齢者が長期にわたり安静を強いられると、さまざまな合併症を併発します。そのため早期離床を目的に手術的治療が優先されます。 2)手術的治療 手術は年齢や骨折のタイプ、併存症を考慮して検討されます。術式は骨接合術と人工骨頭置換術です。術後は早期に股のストレッチングや股の筋力強化訓練、歩行訓練、バランス訓練などの運動器リハビリテーションを行います。 ●大腿骨転子部骨折・大腿骨転子下骨折(外側骨折) 大腿骨転子部骨折や大転子転子下(外側骨折)は骨折部が関節の外であることより骨癒合は良好です。治療は手術的治療です。全身状態に問題がなければ全例手術します。各種の骨接合術が行われます。術後は内側骨折と同様な運動器リハビリテーションが行われます。
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