大腿骨近位部骨折

大腿骨は近位部、骨幹部、遠位部に分かれます。大腿骨近位部骨折(足の付け根の部位)は頚部骨折、転子部骨折、転子下骨折に分かれます。また、関節内の骨折は内側骨折と呼び、関節外の骨折は外側骨折と呼びます。

大腿骨近位部骨折は、若年者では強い外力による外傷(転落、スポーツ外傷など)で認められます。一方、高齢者は、大半が骨粗鬆症を有するため、軽微な外傷で起こります。高齢者が転倒され股関節痛を訴え歩行障害を認めた場合は、まず、大腿骨近位部骨折を考えます。

内側骨折(大腿骨頚部骨折)
内側骨折は、外側骨折に比べて骨癒合(骨のつき)がよくありません。内側骨折は、関節内の骨折(関節の袋の中の骨折)ですから、骨折によって骨頭を栄養する血管も同時に損傷されます。骨頭への血流が絶たれると、骨頭が壊死します(骨頭が腐ります)。したがって、内側骨折は転位(ずれ)が軽度であっても、偽関節(骨がつかない状態)になりやすくなります。また、骨がついても(骨癒合しても)後日、大腿骨頭壊死を発生することがあります。

診断:レントゲン検査が不可欠です。レントゲンで4つのStageに分類されます。Stage1は不全骨折です。Stage2は転位(ずれ)のない完全骨折です。Stage3は軽度な転位を認める完全骨折です。Stage4は高度な転位を認める完全骨折です。これらの分類によって治療が異なります。

治療:保存的治療(手術しない方法)と手術的治療に分かれます。大半は手術的治療です。高齢者を長期間わたり安静にさせると、さまざまな合併症を併発します。そのため早期離床を目的に手術的治療が優先されます。保存的治療は限られた症例のみです。すなわち、Stage1とStage2の症例で、全身状態が良好で、重篤な既存症がなく、1〜2ヶ月間のベッド上の安静が可能な症例に限ります。

手術的治療は、年齢や骨折のタイプ、併存症を考慮して検討されます。術式は、骨接合術人工骨頭置換術があります。術後は、早期に運動器リハビリテーションを開始します。ストレッチング筋力強化訓練、歩行訓練、バランス訓練を行います。

外側骨折(大腿骨転子部骨折、大腿骨転子下骨折
外側骨折は、骨折部が関節外であることより骨癒合は良好です。治療は、手術に必要な体力があれば、全例に各種の骨接合術を検討します。術後は内側骨折と同様なリハビリを行います。

 たはら整形外科