骨粗鬆症

・骨粗鬆症とは骨の強度が弱くなり、骨が折れ易くなった状態を言います。

・これは破骨細胞(骨を溶かす細胞)が増え、骨芽細胞(骨を作る細胞)が減った時に起こります
。

・健康な骨は、70%がカルシウムなどのミネラルで残りの30%がコラーゲン繊維で出来ています。

・コラーゲン繊維は骨の中を網目のように縦横に走り、カルシウムがその間を埋めています。

・骨粗鬆症はカルシウムとコラーゲン繊維が傷んだ状態です。


・骨の強度はカルシウムとコラーゲン繊維の量で評価します。

・骨の強度を鉄筋コンクリートに例えると、鉄筋はコラーゲン繊維でコンクリートはカルシウムです。

・骨の強度が低下すると転倒や尻もちなどで容易に骨折します。

・代表的なものに
大腿骨近位部骨折や脊椎圧迫骨折、上腕骨近位端骨折、橈骨遠位端骨折、肋骨骨折、坐骨・恥骨骨折、仙骨・尾骨骨折などがあります。

・大腿骨近位部(股関節周辺)を骨折すると20%の方が「寝たきり」になると言われています。

・骨粗鬆症は女性に多く、男性の4倍です。

・50歳代の女性は4人に1人、70歳代は2人に1人、80歳以上の方は大半が骨粗鬆症です。

・わが国では現在1590万人(2022年の統計)の骨粗鬆症患者が存在すると言われています
。


分類
1)原発性骨粗鬆症
・原発性骨粗鬆症とは、明らかな原因がなく起こるもので、遺伝的素因や加齢、生活習慣が関与して発生するものを言います。
4つに分類されます。

●閉経後骨粗鬆症

●老人性骨粗鬆症

●特発性骨粗鬆症

●男性骨粗鬆症

2)続発性骨粗鬆症
・続発性骨粗鬆症とは他の病気が原因で骨粗鬆症になるものです。

・男性の骨粗鬆症や閉経前の女性に見られることがありますので要注意です。

・血液検査で白血球数増加や高カルシウム血症、低カルシウム血症、高アルカリホスファターゼ血症などを認める方は要注意です。

原因
●内分泌障害
原発性副甲状腺機能亢進症やビタミンD欠乏性副甲状腺機能亢進症、甲状腺機能亢進症、クッシング症候群、性腺機能不全などです。

●薬物障害
グルココルチコイド(ステロイド)や性ホルモン、ワーファリン、メトトレキサート、ヘパリンなどです。

●栄養障害
胃の手術や神経性食用不振症、吸収不良性症候群、ビタミンA/D過剰、ビタミンC欠乏などです。

●運動障害
麻痺患者や長期臥床、廃用症候群などです。

●先天性
骨形成不全症やマルファン症候群などです。

●その他
癌の骨転移や糖尿病、関節リウマチ、アルコール依存症、慢性腎臓病、肺疾患などです。


骨粗鬆症になりやすい人
●女性
妊娠中や授乳期には大量のカルシウムを必要とします。また閉経後は女性ホルモンの分泌が低下し骨量は急激に減少します。したがって閉経後より女性は骨粗鬆症になる可能性が高くなります。

●カルシュウム摂取不足の方
カルシウムは一日に800mg必要と言われています。日本人の1日のカルシウム摂取量は男性は550mg、女性は528mgです。日本人の大半はカルシウム摂取不足と思って下さい。

●たばこやアルコールの好きな方
タバコやアルコールは腸管でのカルシウムの吸収を妨げます。タバコを吸う人は骨折発生率が1.3〜1,8倍、アルコールを2単位以上飲む人は1,2〜1,7倍高くなります。なお、アルコール2単位とはビール(350ml3本)、日本酒(2合)、ワイン(4杯)、焼酎(ロック3杯)、ウイスキー(2杯)が目安となります。

●痩せている方
肥っている人は脂肪の中に女性ホルモンがあるため、骨粗鬆症になりにくいと言われています。また、肥えている方は骨に加重がかかり骨が鍛えられ、骨形成(骨を作る能力)が促されます。痩せている方は要注意です。

●運動不足の方
運動をしないと骨に負荷がかからず骨が鍛えられず、骨代謝が低下します。その結果、骨形成(骨を作る能力)が低下し、骨が脆くなると言われています。

●初経が遅い方、閉経が早い方、卵巣の手術をした方
女性ホルモンの変動が著しいため、骨粗鬆症になりやすい傾向にあります。

●家族に骨粗鬆症いる方
家族に骨粗鬆症のある方は、骨折の発生率は2倍高くなります。

●グルココルチコイド(ステロイド)を使用している方
グルココルチコイドを長期間および大量に使用された方は、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症が発生し、骨折のリスクは4倍になります。1日に5mg以上使用している方は、骨粗鬆症がなくても、予防のために治療開始されて下さい。一般的にビスフォスフォネート製剤や活性型ビタミンD3製剤などが処方されます。


症状
・脊椎圧迫骨折は70歳代で25%に見られ、80歳代では40%に認められます。また、大腿骨近位部骨折を起こすと20%が「寝たきり」になると言われています。高齢者にとって骨粗鬆症は生命予後に大きく影響します。

・骨粗鬆症自体の特有な症状はありません。すなわち、骨が脆いだけでは何の症状もありません。しかし、骨粗鬆症が進行すると脊柱が変形し背部痛や腰痛、歩行障害などを訴えます。
最も困る出来事は骨折です。

・代表的な骨折として、
脊椎圧迫骨折、大腿骨近位部骨折、上腕骨近位端骨折、橈骨遠位端骨折、肋骨骨折などがあります。 中には、いつの間にか骨折や疲労骨折を起こすこともあります。

・高齢者ではこれらの骨折をきっかけに日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)が急激に低下し
ロコモティブシンドロームを生じ、将来、介護が必要となりますので要注意です。

・稀に骨折の破片によって脊髄が圧迫され
脊髄麻痺を発生することもあります。


検査
1)レントゲンの評価
・正常(レントゲンで縦と横の骨梁線が密)
・�T度(レントゲンで縦の骨梁線が目立つ)
・�U度(レントゲンで縦の骨梁線が不明瞭)


2)椎体骨折の程度
・軽度(椎体高が20〜25%低下する)
・中程度(椎体高が25〜40%低下する)
・重度(椎体高が40%以上低下する)

3)骨密度による評価
・骨密度は骨の中のミネラル(カルシウム、リン)を測定します。日本骨粗鬆症学会や日本骨代謝学会ではDXA法による腰椎と大腿骨近位部の同時測定が推奨されています。

・高齢者の最も折れやすい部位は脊椎です。折れて最も困る部位は、歩行が出来なくなる大腿骨近位部(股関節周辺)です。

・したがって腰椎と大腿骨近位部のDXA法による同時測定が推奨される訳です。なお、正確に骨密度値を判定するには、以下の点の注意が必要です。

腰椎のDXA測定時の注意点
・腰椎部の測定部位は、基本第1〜4腰椎椎体です。ただし、下記の存在の有無により測定部位が限定されることがあります。
�@加齢による変形の程度
�A過去の脊椎圧迫骨折の存在
�B腹部大動脈の石灰化の有無
などの存在により値が大きく変動するため、これらを考慮した上でより正確に判定されます。

大腿骨近位部のDXA測定時の注意点
・大腿部の測定部位は大腿骨頚部と全大腿骨近位部の2か所で測定します。その低い測定値で判定します。ただし、下記の存在の有無により測定誤差でおきますので要注意です。
�@股関節の内旋不足や不良肢位
�A骨頭や頚部の変形
�B過去の頚部骨折、股関節疾患の有無を考慮して判断せねばなりません。

・したがって、DXAの前に必ず腰椎と股関節のレントゲン検査が必要です。

・
上記の存在の有無をチェックし
適切な部位で測定判定することが大切です。


 診断
・骨粗鬆症の診断は、問診やレントゲン検査、骨密度、骨代謝マーカーなどで総合的に判断されます。

1)問診
・骨粗鬆症の家族歴や骨折の既往歴などのチェックが大切です。

2)レントゲン検査
・レントゲンでは脆弱性骨折の有無のチェックを行います。
・脆弱性骨折とは明らかな原因がなく、些細な動作や外傷(ケガ)などで簡単に骨折を起こす状態を言います。

・脊椎や大腿骨骨頭、大腿骨近位部、骨盤(恥骨・坐骨、仙骨)などでよく見られます。

3)骨密度
・腰椎と大腿骨近位部のDXA法で判定します。腰椎部は20〜44歳の平均値を100%とます。大腿骨近位部では20〜29歳の平均値を100%とます。
�@70%以下は骨粗鬆症
�A70〜80%は骨量減少(予備軍)
�B80%以上は正常


4)骨代謝マーカー
・骨吸収マーカーと骨形成マーカーがあります。これらの結果で骨代謝バランスを判定します。

・骨吸収マーカーは破骨細胞の状態をチェックします。検査法にTRACP−5bや血清NTX、血清CTX、尿中DPDなどがあります。

・骨形成マーカーは骨芽細胞の状態をチェックします。検査法にPINPやBAPなどがあります。

・骨代謝マーカーは骨折リスクや治療薬の選択、治療効果の判定に参考にされます。

・なお、骨代謝マーカーが異常高値の場合は続発性骨粗鬆症など疾患を疑います。


治療の適応
�@骨密度値が70%以下の症例です。

�A脊椎圧迫骨折や大腿骨近位部骨折などの脆弱性骨折(些細なことで簡単に骨折する状態)を認める症例は骨密度の値に関係なく治療を開始します。

�B橈骨遠位端骨折や上腕骨近位端骨折、肋骨骨折などの脆弱性骨折のある症例は80%以下で治療を開始します。

�C続発性骨粗鬆症の症例や骨代謝マーカーの高値の症例は骨密度値70%以上でも治療するケースもあります。


 治療
食事療法について 
1)カルシウム
・カルシウムは骨の主成分であるリン酸カルシウムをつくるのに必要です。

・カルシウムが不足すると副甲状腺ホルモンの分泌が促され、骨からカルシウムが動員され補われます。すなわちカルシウムの不足は骨吸収(骨をもろくする現象)を促進します。したがって、カルシウムを投与することで副甲状腺ホルモン(骨を溶かすホルモン)の分泌が抑えられ骨吸収も抑えられます。


・日本人の1日のカルシウム摂取量は全年齢平均で男性550mg、女性528mgと報告されています。日本人は他国よりカルシウムの摂取が低いようです。これは食品や水などを含めた環境因子によるものと思われます。カルシウムは1日に800mg必要と言われています。

・カルシウムを多く含む食品は乳製品(ヨーグルトや牛乳、チーズ、スキムミルクなど)、干し海老、ワカサギ、シシャモ、豆腐、納豆、小松菜、チンゲン菜などです。


・ただし、カルシウムの摂取だけでは骨はできません。カルシウムはビタミンDと一緒に摂取すると吸収率が高まります。

・また、カルシウムが不足すると筋肉けいれんや神経過敏や出血しやすくなったり、不整脈などの心臓病のリスクが高まります。


2)ビタミンD
・カルシウムを取るだけでは骨はできません。骨を作るにはビタミンDが必要です。

・ビタミンDは食物摂取や紫外線を浴びた皮膚で作られ、肝臓や腎臓で代謝されて活性型ビタミンD3となります。活性型ビタミンD3は小腸からカルシウムの吸収を高め、腎臓でカルシウムの再吸収を促し、骨の石灰化や骨芽細胞の成熟に関わっています。


・したがって、活性型ビタミンD3が不足すると、体内カルシウムは不足し骨粗鬆症を発生させます。

・また、活性型ビタミンD3は転倒防止効果や筋力低下の抑制効果があると言う報告もあります。

・ビタミンDの1日の摂取量は成人8.5μg必要(2020年、厚労省の食事摂取基準より)と言われています。ビタミンDは魚類(サケ、うなぎ、サンマ、ヒラメ、イサキ、タチウオ、カレイ、メカジキなど)や卵類などの動物性食品に多く含まれています。


・なお、ビタミンDはD2〜D7の6種類あります。骨に効果があるのはビタミンD3です。

・皮膚にはデヒドロコレステロ−ル(7-DHC)、すなわちプロビタミンD3が多量にあり、紫外線によってビタミンD3に転換され、肝臓で25(OH)Dに代謝され、血液中を循環します。

・そのため、血液中の25(OH)D濃度の測定はビタミンDの過不足の指標になります。



薬物療法について
・骨の新陳代謝は約3〜5ヶ月のクールで骨吸収(約20日で骨を溶かし)と骨形成(約90日で骨を作る)を繰り返しています。1年間で全身の骨の約30%が生まれ変わります。3〜4年間で100%の骨が生まれ変わると言われています。

・まず、破骨細胞(骨を破壊する細胞)が古くなった骨のカルシウムとコラーゲンを酸や酵素で溶かします。次に骨芽細胞が新しいコラーゲンを作り、血液中から運ばれてきたカルシウムが付着して新しい骨を作ります。

・このバランスが崩れると骨粗鬆症が発生し、軽微な外傷で骨折を起し易くなります。
骨折予防に薬物療法が必要となります。薬物療法は以下のように分類されます。

1)骨吸収抑制剤
(骨が溶けるのを抑える薬)
2)骨形成促進剤
(骨の形成を促す薬)
3)骨形成促進剤+骨吸収抑制剤
(骨の形成を促し吸収を抑制する薬)
4)骨代謝調整剤
(骨吸収と骨形成を調整する薬)に分かれます。



1)骨吸収抑制剤 
●ビスホスホネート薬
・ビスホスホネート薬は主流の薬剤です。高齢者の骨粗鬆症の第1選択薬です。破骨細胞を自滅させ骨吸収を抑えて骨折の発生を減少させます。

種類
・アレンドロン酸(フォサマック、ボナロン)
・リセドロン酸(アクトネル、ベネット)
・ミノドロン酸(ボノテオ、リカルボン)
・イバンドロン酸(ボンビバ)
・ゾレドロン酸(リクラスト)
・エチドロン酸(ダイドロネル)

などの種類あり、内服薬や静脈注射、点滴注射、経口ゼリーなどがあります。


用法

・内服薬は1日に1回、1週間に1回、1ヶ月に1回の製剤があります。
・静脈注射は1ヶ月に1回です。
・点滴注射は1ヶ月に1回と1年に1回があります。
・これらの薬は、患者さんの既存症や全身状態、環境因子を考慮して選択されます。


効果判定
・レントゲン検査(骨折の有無)やDXAによる骨密度値、骨代謝マーカー値によって、患者さんにより良い薬剤に変更されます。適切な薬剤を選択ことにより、より確実な骨折予防を期待します。
・なお、6ヶ月〜1年以上におよび服薬を中止すると、骨密度値の低下や骨折の発生率が高くなると報告されています。

禁忌と副反応
・禁忌は低カルシウム血症や食道狭窄を認める症例です。
・副反応として低カルシウム血症や顎骨壊死、非定型大腿骨骨折があります。


1)顎骨壊死
・顎骨壊死は抜歯後の細菌感染によって起こる顎骨骨髄炎です。

・以前からビスホスホネート製剤との因果関係が問題になっていました。しかし、顎骨壊死検討委員会(2023年)で検討された結果、ビスホスホネート製剤使用者と非使用者間において顎骨壊死の発生率に有意な差がないことが証明されました。

・むしろ、ビスホスホネート製剤の休薬によって脊椎圧迫骨折の発生率が高くなることより、休薬によるデメリットの方が高いと判断されました。したがって、骨折を起こす危険性の高い骨粗鬆症の患者さんには、ビスホスホネート製剤の休薬の必要性はありません。

・予防として最も大切なことは口腔内の細菌感染を防止することです。常に口腔内を清潔に保つことです。食後の歯みがき、歯石の除去、虫歯の治療や義歯の手入れを定期的に歯科受診され行って下さい。


・なお、その他の因子として、放射線治療や免疫抑制薬の使用歴のある症例やステロイド剤の使用歴のある症例、糖尿病、自己免疫疾患などを認める症例には慎重な注意が必要です。

2)非定型大腿骨骨折
・明らかな原因は不明ですが、ビスホスホネート製剤による骨代謝異常や大腿骨の解剖的特徴(すなわち、大腿骨が外方や前方に湾曲している形態や力学的なものが誘因)と考えられています。

・したがって、
ビスホスホネート製剤投与中に股関節周辺の痛みや大腿部痛を訴えた際は、レントゲン検査やCT、MRIなどの検査を行って下さい。

・なお、悪性腫瘍による高カルシウム血症や多発性骨髄腫による骨病変、転移性骨腫瘍などに使用される高容量のビスホスホネート製剤(ゾレドロンサン点滴剤)では発現率は高くなります。

●抗ランクル抗体製剤
・デノスマブ60�r(商品名プラリア)です。使用方法は半年に1回の皮下注射です。

・破骨細胞の働きを抑制する作用があります。破骨細胞を活性化するランクル受容体を特異的に阻害し、破骨細胞の働きを抑制して骨吸収を押さえます。

・副作用として低カルシウム血症と
非定型大腿骨骨折があります。 非定型型大腿骨骨折の治療は装具や骨接合術が検討されます。

・なお、転移性骨腫瘍の治療薬としてデノスマブが高容量使用されます。デノスマブ120�r(商品名ランマーク120mg)を1ヶ月に1回皮下注射します。高容量デノスマブの長期間投与は非定型大腿骨骨折の発生率が高くなります。

●SERM製剤
・ラロキシフェン塩酸塩(商品名:エビスタ)やパゼドキシフェン塩酸塩(ビビアント)があります。主に閉経後(女性ホルモン欠乏性)骨粗鬆症の患者さんが対象になります。

・SERM製剤は選択的エストロゲン受容体モジュレーターと言われ、骨に対してのみエストロゲン様の作用を有し骨吸収を抑制させます。乳房や子宮への作用がないため乳癌や子宮癌の発生はありません。

・エビスタは米国食品医薬品局(FDA)によると、乳癌発症の予防効果が証明され乳癌発症の予防薬として承認されています。


・深部静脈血栓塞栓症や肺塞栓症、網膜静脈血栓症等の静脈血栓塞栓症、長期不動状態にある患者、抗リン脂質抗体症候群の患者、妊婦又は妊娠している可能性のある女性及び授乳婦などです。

●カルシトニン製剤
・エルカトニン(商品名エルシトニン)は甲状腺C細胞から分泌されるホルモンで破骨細胞に直接作用して骨吸収を抑制します。また、痛覚抑制神経系のセロトニン神経系に作用し鎮痛作用を有し、腰痛や背部痛の改善も認めます。脊椎圧迫骨折の疼痛緩和に使用されるケースもあります。

●女性ホルモン製剤
・エストリオール(商品名エストリール、ホーリン)やエストラジオール(エストラーナテープ、ジュリナ)、結合型エストロゲン(ウェールナラ)などがあります。

・閉経後にエストロゲンが欠乏すると骨粗鬆症が発生しますので、これらの女性ホルモン製剤は骨吸収抑制剤として使用されます。



2)骨形成促進剤 
●副甲状腺ホルモン製剤
骨の形成を促す製剤で、以下の3種類があります。
・テリパラチド(フォルテオ)

1日に1回の皮下注射を2年間行います。
・テリパラチド酢酸塩(テリボン、テリボンオートインジェクター)
テリボンは1週間に1回の皮下注射で2年間行います。
テリボンオートインジェクターは自己注射で1週間に2回の皮下注射で2年間行います。
・アバロパラチド(オスタバロ)
1日に1回の皮下注射で1年6ヶ月間です。

効能・効果
・副甲状腺ホルモンは血液中のカルシウムの調整を行う重要なホルモンです。血液中のカルシウムが低下すると副甲状腺ホルモンが分泌され骨を溶かして、カルシウムの血中濃度をあげます。したがって、副甲状腺機能亢進症では高容量のホルモンが持続的に分泌され、骨は脆くなり骨粗鬆症を発生させます。

・しかし逆に、副甲状腺ホルモンを少量を間欠的に投与すると、骨芽細胞が活性化され骨量は増えます。この作用を利用して骨量を増加させます。


適応
骨折の危険性の高い骨粗鬆症の症例が対象となります。
�@重度の骨粗鬆症(DXA法で骨密度が60%以下)の症例
�A既存骨折が2個以上ある症例
�Bステロイド性骨粗鬆症の症例
�B家族歴に大腿骨近位部骨折の既往がある症例

禁忌
・高カルシウム血症や骨ベーチェット病、原因不明のアルカリホスファターゼ高値、小児、骨の影響が考えられる放射線治療を受けた症例、
原発性悪性骨腫瘍や転移性骨腫瘍、副甲状腺機能亢進症、妊婦又は妊娠している可能性のある症例です。

副反応
・高カルシウム血症がありますので、ビタミンDの併用は注意して下さい。


3)骨形成促進剤+骨吸収抑制剤 
●抗スクレロスチン抗体製剤
・ロモソズマブ(商品名イベニティ)は骨形成促進作用と骨吸収抑制作用という2つの作用を有します。スクレロスチンは骨細胞から分泌され骨芽細胞による骨形成を抑制して破骨細胞による骨吸収を促進する糖タンパク質です。抗スクレロスチン抗体製剤は、このスクレロスチンに結合してその働きを阻害し、骨形成を促進し骨吸収を抑制します。月に1回の皮下注射で1年間の使用です。

骨折の危険性の高い骨粗鬆症が対象となります。
�@骨密度値が70%以下で1個以上の脆弱性骨折のある症例
�A腰椎骨密度が60%以下の症例
�B既存椎体骨折が2個以上の症例
�C既存椎体骨折の半定量評価法結果が重度の症例です。

禁忌
・低カルシウム血症
・虚血性心疾患や脳血管障害のリスクが高い症例
・重度の腎機能障害(eGFRが30未満)の症例
・小児や妊婦、授乳婦の症例



4)骨代謝調整剤 
●活性型ビタミンD3製剤
・活性型ビタミンD3製剤はエルデカルシトール(商品名エディロール)やアルファカルシトール(ワンアルファー、アルファロール)、カルシトリオール(ロカルトロール)などがあります。

・ビタミンDは食品や紫外線を浴びた皮膚で作られ、肝臓や腎臓で代謝され活性型ビタミンD3となり、小腸からカルシウムの吸収や腎臓でカルシウムの再吸収を促します。活性型ビタミンD3は骨の石灰化や骨芽細胞の成熟に関与します。

慎重投与
・高カルシウム血症があります。
・腎臓病やがん患者、原発性副甲状腺機能亢進症、重度肝臓病、尿路結石などのある方は、高カルシウム血症になりやすいので注意してください。


●カルシウム製剤
・カルシウム製剤にはL-アスパラギン酸カルシウム(アスパラ‐CAやリン酸水素カルシウム)などがあります。

・血液のカルシウムが不足すると副甲状腺ホルモンが分泌され、骨からカルシウムが流出して骨吸収が起こり骨密度は減少します。逆に、カルシウムを投与すると副甲状腺ホルモン分泌が減少して骨吸収が抑制されます。

・なお、高カルシウム血症や腎結石、重度腎臓病、便秘に注意してください。



運動療法
・骨粗鬆症の予防に運動療法は大切です。

・最低1日30分以上のウオーキングや全身の
ストレッチングと筋力強化訓練をされて下さい。骨粗鬆症で腰背部痛をある方は骨粗鬆症の体操を行って下さい。特に高齢者は、下半身の筋力低下やバランス能力低下によって転倒しやすくないります。

・転倒防止に
腰部の筋力強化訓練、股関節の筋力強化訓練、膝関節の筋力強化訓練、歩行訓練、バランス訓練を行って下さい。将来、ロコモティブシンドロームにならないために運動療法は大切です。


 骨折の治療
・骨粗鬆症の患者さんは些細動作や転倒などで骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折、大腿骨近位部骨折、橈骨遠位端骨折、上腕骨遠位端骨折、肋骨骨折、仙骨・尾骨骨折、坐骨・恥骨骨折などが高頻度に発生します。


 予防
●10歳〜20歳にかけて骨量を増やしておく事が大切です。
・20歳までにいかに沢山の骨を身につけたかで、骨粗鬆症への運命が決定づけられます。
・若い時期によく運動して、偏食はせず、偏ったダイエットは行わないことが重要です。


●骨粗鬆症の検診が大切です。
・女性は50歳頃から閉経が始まり女性ホルモンの分泌が低下します。
・45歳より
骨量は急激に減少します。したがって、50歳前後に専門医を受診され骨粗鬆症の検査(骨密度測定と骨代謝マーカー測定)を受けて下ください。
・特に、家系に骨粗鬆症を認める方や婦人科疾患をお持ちの方、過去に胃腸などの手術をされた方、ホルモンの分泌異常のある方、何度もダイエットを行った方、偏食の方は早期の検査が必要です。


●食事に注意して下さい。
・カルシウムの摂取に心がけましょう。
・体内のカルシウムは1日に600mg程度が便やおしっこ、汗などで体外へ排出されます。
・1日のカルシウムの摂取量は800mgを目標とされて下さい。
・また、カルシウムの吸収力を増すために、ビタミンDの摂取も忘れずに検討されて下さい。


●運動に心がけて下さい。
・骨量の増加に運動療法も大切です。
・各種のストレッチングや筋力強化訓練、有酸素運動などを行うことをお勧めします。
・特に高齢者では有酸素運動が骨密度の増加に効果があります。
・運動により骨が伸びたり、縮んだりする事で骨が刺激されると、骨芽細胞(骨を作る細胞)が活性化され、骨の代謝が活発になり骨の形成を促してくれます。

●転倒に注意して下さい。
・転倒予防訓練や家屋の環境整備(敷居や電気コード、階段、カーペットなどの整備)にも注意を払って下さい。
・頻回に転倒される方は、大腿骨近位部骨折の予防にヒッププロテクターの装着も必要です。



 たはら整形外科