橈骨遠位端骨折

橈骨遠位端骨折は、年齢を問わず高頻度に見られる骨折の1つです。手をついて転倒した際に発生しますが、受傷時の手首の肢位(位置)によって骨折のタイプが異なります。すなわち、手関節が背屈位(手首を反って地面についた状態)か、掌屈位(手首を曲げて地面についた状態)か、回内位(手の平を地面についた状態)か、回外位(手の甲が地面についた状態)かによって色々な骨折が発生します。一般的に、橈骨遠位端骨折は、コーレス骨折スミス骨折バートン骨折などに分類されます。大半は背屈位、回内位で発生するコーレス骨折です。

症状:手首の痛みや腫れ、変形(コーレス骨折では手首がフォークの様に変形します)や運動障害を認めます。稀に、橈骨遠位端骨折に舟状骨骨折を合併することもあるので注意して観察して下さい。また、骨片(骨折の破片)によって神経が圧迫されて橈骨神経麻痺や正中神経麻痺を発生することもありますので要注意です。診断はレントゲン検査にて確定されます。

治療:保存的治療(手術しない方法)が原則です。転位がない症例(ずれのない症例)は、3〜4週間のギプス包帯(ギプスは前腕から指の根元まで巻きます)で経過観察します。転位を認める症例は、徒手整復術を試みます。受傷早期の症例は無麻酔でも整復可能ですが、陳旧例(骨折して何日か経過した症例)や転位が著明な症例、筋肉の緊張が異常に強い症例は、整復が困難で、麻酔(腕神経叢ブロックや静脈麻酔など)を用いて徒手整復術を行います。整復後はギプス包帯(再転位しないためにギプスは上腕から指の根元まで巻きます)を行います。固定期間は3〜5週間程度です。

時に、簡単に整復されても、ギプスの中で再転位を来たす不安定な症例もあります。このような症例では再転位を防止するために、経皮的骨接合術(皮膚の上からピンのような器具で骨折部を固定する手術)を行います。また、粉砕骨折例(バラバラに骨折し、関節面がずれた症例)は、内固定術(皮膚を切開して、骨折部を展開しプレートなどで繋ぎ合わせる手術)を検討します。なお、子供の橈骨遠位端骨折については、こどもの整形外科の項を参照されて下さい。

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