骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折

脊椎圧迫骨折と骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折
脊椎圧迫骨折は、年齢を問わず発症します。若年者では転落やスポーツ外傷などの大きな外力、衝撃で脊椎圧迫骨折を発生します。一方、骨粗鬆症を認める高齢者では軽微な外傷(尻餅をついたり、布団を持ち上げたり、軽量物をかかえたり、時にくしゃみなど)で簡単に骨折します。これを骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折と呼びます。外来で最もよく遭遇する骨折の一つです。

骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折は、骨粗鬆症が基盤となって脊椎圧迫骨折を起こす疾患です。骨粗鬆症は女性に多く、男性の4倍です。50歳以上で4人に1人が、70歳以上で2人に1人が、80歳以上は大半が骨粗鬆症を認めます。全脊椎に起こりますが、特に、第11胸椎、第12胸椎、第1腰椎の胸腰椎移行部に多発します。第11、12胸椎は肋骨が小さく、第1腰椎は肋骨がないため、胸郭(肋骨と胸骨)による脊椎への安定性や支持性にかけ、軽微な外傷で容易に圧迫骨折を発生します。しかも、大半は一度骨折すると、脊柱の姿勢(身長が短くなり、猫背になる)が変わるため、他の脊椎に負荷がかかり、骨粗鬆症の脆い骨は連続して骨折します。いわゆる、「いつの間にか骨折」と言うものです。

症状:背部痛や腰痛ですが、時にシビレや足の筋力低下、歩行障害、肋間神経痛を認めます。多発性脊椎圧迫骨折(一つ以上の骨折)があると、骨折の形態によって後弯変形を来たします。そのため内臓が圧迫され、胃腸障害(食物の通過障害や逆流性食道炎など)や心肺機能障害(不整脈や呼吸器症状)などの合併症を来すこともあります。稀に、破裂型の脊椎椎体骨折では、脊髄を圧迫して遅発性脊髄麻痺(骨折の破片がゆっくりと時間をかけて脊髄を圧迫し、下肢麻痺を起こす状態)になることもあります。

診断レントゲン検査になります。圧迫骨折は、形態的に楔状椎や陥凹椎(魚椎)、扁平椎の3つタイプに分かれます。特に、問題なのは楔状骨タイプです。椎体が台形や三角形になると後弯変形を起こします。なお、レントゲン検査で骨折の判断が困難な症例や麻痺が疑われる症例はMRIで精査されて下さい。

治療:保存的治療(手術をしない治療)が原則です。安静を指示し、疼痛緩和と骨折の圧壊予防のためにダーメンコルセット(骨折部位により腰仙椎装具や胸腰仙椎装具、頚胸腰仙椎装具に分かれます)、若高齢者であれば硬性コルセットを勧めます。また、円背を予防するためにリュックサック型脊椎装具、ジェット式コルセット(前屈を制限するタイプのコルセット)なども勧めます。薬物療法として、疼痛緩和にアセトアミノフェン、炎症緩和に非ステロイド性抗炎症剤を処方します。効果のない症例はトラマドール塩酸塩デュロキセチンを検討します。さらに、神経ブロック療法としてトリガーポイントブロック椎間関節ブロック神経根ブロック仙骨部、腰部硬膜外ブロックなどを行うこともあります。骨癒合(骨折がつく)が得られれば骨粗鬆症の体操を指導します。将来、ロコモにならないために運動器リハビリテーションを行います。

手術的治療は、急性期の手術と慢性期の手術に分かれます。急性期の手術は、疼痛緩和や早期離床、脊柱変形の矯正、偽関節の予防、神経麻痺を有する症例に行われます。術式は、椎体形成術(潰れた脊椎椎体の中にバルーンを入れて膨らまし、元の形に復元し、骨セメントを注入します)や腰椎後側方固定術、後方進入椎体間固定術、経椎間孔進入椎体間固定術、側方経路腰椎椎体間固定術、椎体置換術などが行われます。

慢性期の手術は、脊椎変形(後弯変形や側弯変形など)のために、胃腸障害や心肺機能障害、呼吸器障害などの合併症を認める症例や遅発性脊髄麻痺の症例、偽関節で頑固な疼痛を有する症例に行われます。術式は、個々の症例により異なりますが急性期の手術と同様な術式が行われます。

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