骨腫瘍
骨や関節に発生する腫瘍が骨腫瘍です。
原発性骨腫瘍と転移性骨腫瘍(続発性骨腫瘍)と骨腫瘍類似疾患に分類されます。

原発性骨腫瘍
 原発性骨腫瘍は最初から腫瘍が骨や関節にできたものです。どの細胞由来(骨細胞、軟骨細胞、線維細胞、脂肪細胞、神経細胞、血管系、リンパ系)かで分類されます。良性腫瘍と悪性腫瘍があります。
●良性骨腫瘍
骨軟骨腫内軟骨腫が最も多く認められます。その他代表的な良性骨腫瘍として骨巨細胞腫類骨骨腫軟骨芽細胞腫、血管腫などがあります。時に、骨軟骨腫打撲や転倒で同部を骨折することがあります。診断は、まずレントゲン検査を行います。良性骨腫瘍のレントゲンの特徴は、骨腫瘍と正常骨の境界が明瞭で周辺に硬化像を認めます。骨腫瘍が疑わしい症例や悪性を疑う症例はMRIやCTをオーダーし確定診断します。治療は自覚症状がなく、悪性の可能性がなければ経過観察します。

しかし、痛みを認める症例や病的骨折(腫瘍が大きくなって骨を破壊し骨折を起こす)の可能性のある症例では、腫瘍摘出術を行います。手術時期や術式については、腫瘍の特性を熟考し、年齢や仕事、趣味、生活様式、スポーツ活動などを十分に考慮した上で決定します。
●悪性骨腫瘍
骨肉腫が最も多く、次に軟骨肉腫やEwing肉腫、脊索腫などを認めます。診断は、まずレントゲン検査を行います。悪性骨腫瘍のレントゲンの特徴は、骨腫瘍と正常組織の境界が不鮮明の場合、骨の連続性が途絶している場合、虫が食ったような陰影がある場合、骨膜反応(腫瘍が大きくなると骨を破って外に出ます。その際、骨を覆っている骨膜が刺激され、逆毛状、たまねぎの皮状、陽光状、ビロード状などを呈する状態)などの所見がある場合です。さらに詳細な情報収集には、CTやMRI、骨シンチグラフィーやPETなどを行います。確定診断は、病理組織検査(針生検、切開生検、切除生検)です。主な症状は痛みと運動障害です。痛みは体動時のみならず安静時、夜間痛も認められます。

治療は骨腫瘍の種類や発生部位、大きさ、周囲への浸潤度、悪性度、転移の有無、合併症などを熟考し、化学療法や放射線療法、手術的治療が検討されます。四肢に発生した悪性骨腫瘍は広範切除術(単に腫瘍だけを摘出するのではなく、再発防止のため一部の正常組織も付けて摘出する方法)を行います。切除後は欠損部を骨移植術や人工関節術などで補い、出来るだけ四肢機能の温存に心がけます。

転移性骨腫瘍(続発性骨腫瘍)
臓器別のがん発生数は、男性では1位 前立腺がん、2位 大腸がん、3位 胃がん、4位 肺がん、5位 肝臓がんの順です。女性では1位 乳がん、2位 大腸がん、3位 肺がん、4位 胃がん、5位 子宮がんの順です。男女の合計総数では1位 大腸がん、2位 肺がん、3位 胃がん、4位 乳がん、5位 前立腺がんの順です。臓器別の骨転移の頻度は、1位 乳がん、2位 前立腺がん、3位 肺がん、4位 甲状腺がん、5位 腎がんです。

転移性骨腫瘍は、これらの部位からがん細胞が骨や関節に転移したものです。全年齢にわたりますが、好発年齢は40〜70歳です。骨腫瘍の中で最も頻度が高く、全骨腫瘍の30%程度に認められます。転位する部位が最も多いのは脊椎で、その他では、骨盤や大腿骨、上腕骨、肋骨などです。転移は大半が多発性です。主な症状は痛みです。体動時のみならず安静時にも認められます。 時に、病的骨折(腫瘍が大きくなり、骨を破壊して骨折を起こす状態)を認めます。脊椎に転移すると脊髄を圧迫して脊髄損傷を来たすこともあります。

診断は、まずレントゲン検査を行います。レントゲンでは4つのタイプに分類されます。溶骨型(骨が融解するタイプで、腎がんや甲状腺がん、肺がんなどです)、造骨型(骨が硬化し固くなるタイプで、前立腺がんや乳がん、胃がんなどです)、骨梁間型(骨髄腔にがんが浸潤するタイプで、肺小細胞がん、膵がんなどです)、混合型(乳がん、肺がんなどです)に分かれます。なお、80%が溶骨型です。診断を確定するにはCTやMRI、骨シンチグラフィー、PETを用います。特に、骨シンチグラフィーは全身の骨転移を早期に把握できるため非常に有益な検査です。最終診断は病理組織検査(針生検、切開生検、切除生検)です。

治療はパフォーマンスステータス(PS:全身状態や日常生活の制限の程度)に応じて、化学療法や放射線療法、ホルモン療法などを検討します。 疼痛の管理はWHO三段階除痛ラダーを参照してください。軽度の痛みに対しては非オピオイド鎮痛薬(NSAIDsアセトアミノフェン)で対応。軽度から中等度の痛みに対しては弱オピオイド(コデインやトラマドール)を追加。中等度から高度の痛みに対しては強オピオイド(モルヒネ・フェンタニル・オキシコドン・タペンタドール)に切り替えます。また、各種の神経ブロック療法も検討されます。

手術的治療は、病的骨折を起こした症例で骨接合術や骨移植人工関節が検討されます。脊髄が圧迫されて四肢麻痺を来たした症例で神経徐圧術や各種の固定術が行われます。

 骨腫瘍類似疾患
骨の腫瘍類似疾患とは、真に腫瘍と判断できないが、限りなく骨腫瘍に似たものです。代表的なものに線維性骨異形成症単純性骨嚢腫非骨化性線維腫動脈瘤様骨嚢腫などがあります。診断や治療に関しては原発性骨腫瘍とほぼ同様に扱われます。


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