肥満とは | |
肥満とは体における脂肪組織の割合(体脂肪)が正常より高くなった状態を言います。肥満者のうち、糖尿病や高血圧、脂質異常、高尿酸血症、動脈硬化などのメタボリックシンドロームを生じ減量が必要とされるものを病的肥満と言います。 |
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原因 | |
食べ過ぎや運動不足が原因で肥満となる単純性肥満と、病気(内分泌性肥満、視床下部性肥満、遺伝性肥満など)が原因で肥満となる症候性肥満に分かれます。大半(95%以上)は食べ過ぎや運動不足などによって起こる単純性肥満と考えられています。最近では肥満遺伝子の存在も明らかになりました。 |
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分類 | |
上半身型肥満と下半身型肥満とに分類されます。上半身型肥満とは腹が出ているタイプで脂肪が内臓(主に腸間膜)にたまるもので、別名、内臓脂肪型肥満とも言われます。下半身型肥満は皮下に脂肪がたまるタイプで、特にお尻や大腿(太もも)、下腿(ふくろはぎ)に皮下脂肪がたまるため皮下脂肪型肥満とも言われています。皮下脂肪型肥満は内蔵脂肪型肥満に比べあまり健康上問題とはなりません。 |
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診断 | |
体重に占める脂肪分の割合を体脂肪率と言います。肥満かどうかの判定には体脂肪率を測定します。体脂肪率の測定方法には皮脂厚法や水中体重法やDXA法、インピーダンス法など色々な方法がありますがそれぞれ一長一短があります。 一般的には簡便に肥満を評価する方法としてBMI(body mass index、体格指数)がよく用いられます。BMI値は体重(Kg)÷身長(m)÷身長(m)で計算されます。その結果、BMI値22がメタボリックシンドロームの発生が最も少ないようです。日本肥満学会ではBMI18.5〜25までを正常とし、BMI値25%以上を肥満と判定しています。BMI値25以上では明らかに高血圧や糖尿病、高脂血症、脳卒中、心疾患が急増いたしますので要注意です。 なお、生活習慣病を引き起こし易い内蔵脂肪型肥満の正確な診断には腹部CTスキャンが最適な検査法と考えられています(臍の高さでCTスキャンを行い腹腔内の内臓脂肪の面積が100cu以上あるものを内臓脂肪型肥満と言います)。 |
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合併症 | |
肥満を放置しますと、やがて糖尿病や高血圧、高脂血症、心臓病、痛風、脂肪肝、胆石症、脳卒中、腎炎、呼吸器疾患や腰椎疾患及び変形性膝関節症などを起こします。また肥満者は癌の発生率が高いとも言われておりますので要注意です。男性では大腸癌や胆のう癌、前立腺癌などで、女性では乳癌や子宮癌、卵巣癌などの発生率が高いようです。 |
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治療 | |
治療は食事療法と運動療法を基本に1ヶ月に1〜2kgの減量を目標にして下さい。 1)食事療法 適切なエネルギー摂取は標準体重あたり25kcalと言われております。したがって、本人の標準体重を知ることが先決です。一般的に標準体重は身長m×身長m×22で計算されます。 例えば、体重が75kgで身長が1.65mの方では、標準体重は1.65×1.65×22=60kgが標準体重と言う事になります。よって、体重を75kgから標準体重の60kgに減量するためには、1日あたりの摂取カロリーを60kg×25kg=1500kcalにする必要があります。いずれにしろ、強い意思が必要となります。 2)運動療法 食事制限のみで減量を行うと筋肉や骨量も減少します。必ずストレッチングや筋力強化訓練、有酸素運動などの運動療法を併用する事が大切です。 ストレッチングは勢いをつけずに、呼吸を楽にし、痛みのない程度に、ゆっくりと筋肉を伸ばし、心地よい緊張感を維持する程度に行います。痩せたい部位のストレッチを20秒間行い、5回をワンセットとし、一日に数セット行います。 筋力強化訓練は最大の筋力で目的の筋肉を5秒間収縮させ、数秒間休憩いたします。筋力強化は10回をワンセットとし、一日に数セット行います。 有酸素運動は肥満の解消として非常に大切です。有酸素運動としてはウーキングが大切です。1kcal消費するのに30歩の歩行が必要です。1日に300kcalの運動が望ましいと言われていますので、1日9000歩の歩行が必要です。またジョキングやダンベル体操、エアロビクス、水泳、エアロバイク、トレッドミルもお勧めです。一般的に脂肪が燃焼し始めるには最低20分間の運動が必要です。 なお運動強度は一般的にカルボーネンの式が用いられます。20歳代では140脈拍/分、30歳代では135脈拍/分、40歳代では130脈拍/分、50歳代では125脈拍/分、60歳代では120脈拍/分を目標値とします。 ●カルボーネンの式とは 安静時心拍数+(最高心拍数−安静時心拍数)×係数で計算されます。 例えば、50歳の方で安静時脈拍が70拍で運動強度を60%に設定したい時の適切な心拍数は以下のような計算となります。(なお推定最高心拍数は220−年齢で求めます)。70拍+(220−50歳ー70拍)×0.6=130拍というなります。 3)薬物療法 食欲を抑制させる薬としてマジンドール(サノレックス)があります。マジンドールは脳の視床下部にある食欲中枢を抑制し満腹中枢を興奮させて食欲を抑制いたします。BMI値35以上の高度肥満症が対象となり1日1回1錠を昼食前に3ヶ月間服用させます。マジンドールと運動療法を併用して3ヶ月間で3〜13kg(平均6〜7kg)の減量が可能であった言うデーターがあります。 最近、オルリスタットが2023年2月に承認されました。リパーゼの働きを抑え込んみそのまま脂質を便の中に排出させます。1日3回服用です。さらにセマグルチドが2023年3月に承認されました。もともとは2型糖尿病の治療薬GLP-1受容体作動薬です。BMI値27以上の高度肥満症が対象です。しかし服薬中止後は食事療法や運動療法などに注意をはらわないと、大半はリバウンドされます。 4)外科的手術 重度の肥満者で重篤な合併症を有する症例には外科的手術が行われる場合があります。適応は保存的治療を6ヶ月行って効果がなく、BMIが35以上で糖尿病や高血圧症、脂質異常症、または睡眠時無呼吸症候群のうち1つ以上を合併していることが条件です。術式は腹腔鏡下スリーブ状胃切除術、腹腔鏡下調節性胃バンディング術、腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス術、腹腔鏡下スリーブバイパス術などが行われます。
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