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肩の構造 | |
肩関節は肩甲骨の関節窩と上腕骨の骨頭で構成されています。関節窩の面積は骨頭の3分の1しかありません。そのため、肩関節は解剖学的に不安定性が生じやすい関節です。 また、人体で最大の可動域(関節の動く範囲)を有しているため、他の関節に比べ容易に不安定に陥りやすい関節となります。したがって、肩関節は、骨や関節以外の軟部組織である(関節包や関節唇、腱板、靭帯など)で安定性と支持性を得ています。 変形性肩関節症 変形性肩関節症は、上腕骨頭と肩甲骨の関節窩よりなる肩甲上腕関節の軟骨が摩耗する疾患です。一次性(明らかな原因がないタイプ)と二次性(明らかな原因を有するタイプ)に分かれます。 ■一次性変形性肩関節症 一次性変形性肩関節症は、他の一次性変形性関節症(変形性膝関節症、変形性股関節症、変形性足関節症、変形性腰椎症など)に比べ発生頻度はあまり高くありません。それには解剖学的な特徴にあるようです。人間は二足歩行です。荷重関節に比べ非荷重関節である肩関節は関節面にかかる負担が少ないからです。 また、肩甲骨の関節面は上腕骨頭の関節面の3分の1しかないため、軟骨どうしの接触が少なくなります。したがって軟骨の摩耗は少なくなる反面、関節は不安定になります。 その不安定性を補うために肩関節は大きな関節唇(関節の周りの縁を取り囲むように張付いている線維軟骨で、ゴムのような硬度でリング状に骨頭を覆って関節の安定性を高めています)を有しております。さらにその周りに腱板や関節包、筋肉、靭帯、腱などが肩関節の安定性を補っています。 それゆえ肩関節は他に類を見ない人体で最大の可動域(関節の動き)を有し、外力やストレスが加わりにくい構造になっています。このような特徴により肩関節の軟骨は他の関節より変形の発生が少ないと考えられています。 症状・診断 症状は肩関節痛や運動障害、関節水腫(関節内に水が溜まる状態)などです。レントゲン検査で骨頭や関節窩の変形(正常な肩関節)を認めます。中には骨頭と肩峰が接触し腱板断裂を生ずる症例もあります。詳細な情報収集にはCTやMRIが必要となります。 治療 1)保存的治療 物理療法やアセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症剤、外皮用薬などで疼痛を緩和します。慢性化した頑固な疼痛にはトラマドール塩酸塩やデュロキセチンを検討します。疼痛が著明な症例にはステロイド関節内注射やヒアルロン酸注射を施行します。また肩甲上神経ブロックやトリガーポイントブロックなどの神経ブロック療も考慮します。 これらで疼痛を緩和しながら肩のストレッチングやコドマン体操、筋力強化訓練などの運動療法を指示します。しかし肩関節の拘縮(固まって動きにくい状態)が強い症例では理学療法士による運動器リハビリテーションを開始します。 2)手術的治療 重度の肩関節機能障害を認める症例に行われます。術式は滑膜切除術や関節形成術や人工肩関節置換術(腱板の機能不全を認める症例ではリバース型人工肩関節置換術)が行われます。 ■二次性変形性肩関節症 二次性変形性肩関節症とは、過去に上腕骨近位端骨折や上腕骨頭壊死、感染症などの基礎疾患があり、これらが基盤となって二次的に変形が生ずるするタイプです。治療は一次性変形性肩関節症と同様です。
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