変形性肘関節症

変形性肘関節症とは、関節軟骨の老化や磨耗によって起こる軟骨と骨の進行性の変性疾患です。人間は二足歩行ですから、股関節、膝関節、足関節、脊椎などの荷重関節(体重がかかる関節)は、肩関節、肘関節、手関節などの非荷重関節(体重がかからない関節)に比べて、関節軟骨に大きな負担が強いられます。そのため、荷重関節は非荷重関節に比べ、変形性関節症を発生しやすくなります。

しかし、非荷重関節である肘関節は肩関節と手関節の真中にあり、これらの関節と連動して複雑な動作が強いられるため変形性関節症を起こしやすい関節となります。肘を酷使される方や振動工具を使用する方、肘に負担のかかるスポーツ活動(野球肘など)、肘の外傷(肘関節脱臼上腕骨顆上骨折上腕骨外顆骨折橈骨頚部骨折肘頭骨折など)を誘因として発生します。また、原因が全く特定できない症例も数多く存在します。

症状:肘の痛みや運動障害(肘の曲げ、伸ばしが困難な状態)です。診断はレントゲン検査にて変形や関節裂隙の狭小化(軟骨が摩耗して、関節の隙間がなくなった状態)、骨棘(骨のとげ)を認めれば確定されます。中には、変形によって尺骨神経が圧迫され肘部管症候群を併発する症例もありますので要注意です。

治療:保存的治療(手術しない方法)が原則です。痛みに対して物理療法を行い、関節拘縮(関節が固まって動きにくい状態)や筋力低下に対して運動療法として肘のストレッチング肩のストレッチング肘の筋力強化肩の筋力強化を指導します。薬物療法として疼痛緩和にアセトアミノフェンや炎症緩和に非ステロイド系抗炎症剤外皮用薬を処方します。難治例(なかなか痛みが改善されない症例)は、トラマドール塩酸塩デュロキセチンステロイド関節内注射を試みます。

変形や不安定性を認め、長期間にわたり日常生活動作(食事をする、髪をとく、顔を洗う、お尻を拭くなど)に不自由を来たすような症例は手術的療法の対象となります。術式は肘関節形成術や人工肘関節置換術などが検討されます。なお、手術的治療法を拒まれる症例は肘関節装具などで経過観察します。

 たはら整形外科