肘部管症候群 (遅発性尺骨神経麻痺)

尺骨神経について
 ・頚髄から出た頚神経は腕神経叢を経て、尺骨神経や正中神経、橈骨神経に分かれ、それぞれ手指に向かって下降していきます。

・尺骨神経は腕(二の腕)の内側を下降し、肘の内側部で肘部管(尺骨神経溝と線維腱膜から形成された管)を通過します。

・さらに前腕内側を下降し、手首でギヨン管(豆状骨と有鉤骨鉤、靭帯で囲まれた管)と呼ばれるトンネルを通り、第4指と第5指に下降します。

・尺骨神経の知覚枝は第4指の小指側の半分と第5指の感覚を支配しています。

・尺骨神経の運動枝は手首と第4指・第5指の屈曲(曲げる運動)や骨間筋などの手の小筋肉の大半の運動を司ります。



肘部管症候群
・肘周辺で尺骨神経が障害されるタイプです。

・特発性肘部管症候群(明らかな原因のないタイプ)と二次性肘部管症候群(原因のあるタイプ)に分かれます。

●特発性肘部管症候群
・何らかの原因で肘部管の内圧が上がり、尺骨神経が圧迫、牽引され神経麻痺を生じるタイプです。

・大半は明らかな原因のない症例です。

・肘を酷する職業の方やスポーツ活動(
野球肘など)が誘因と考えられる症例もあります。

●二次性肘部管症候群
・明らかに原因のあるタイプです。

・原因として変形性肘関節症や肘部に発生したガングリオンや軟部腫瘍があります。

・過去に外傷(
肘関節脱臼、上腕骨顆上骨折、上腕骨外顆骨折、橈骨頚部骨折、肘頭骨折、外反肘変形)などがあり、徐々に尺骨神経麻痺が発生する「遅発性尺骨神経麻痺」のタイプがあります。

症状
・第4指、第5指の感覚異常(触った感覚がない、感覚が鈍い、ピリピリする)や痛みなどを訴えます。

・進行すれば、指の筋力低下(摘まむ力が落ちたり、細かな作業が困難となる)などを訴えます。

・手指の筋肉は萎縮(やせ)を認めます。

・さらに第4指と第5指が変形して指の伸展が困難になります。

・次第に鷲手(別名、かぎ爪変形)を呈し

診断
・
Tinel(チネル)の徴候(肘部管内で圧迫された尺骨神経を軽く叩くと、第4指と第5指へ痛みやしびれが放散)を認めます。

・尺骨神経領域の知覚障害や筋力低下(第4指や第5指の屈曲力や母指の内転力、手指の内転・外転力の低下)を認めます。

・フローマンサインが陽性となります(母指と第2指で紙を摘まんで紙を引っ張ると、母指の内転力が低下しているため母指の第1関節が曲がってしまいます)
。

・一次性ではレントゲン検査は特徴的な所見はありません。二次性は骨関節変形を認めます。

・鑑別疾患に
頚椎症性神経根症があります。

・神経伝導速度検査や
筋電図、MRIなど検査で鑑別します。

治療
1)保存的治療
・薬物療法として疼痛緩和に
アセトアミノフェンや炎症緩和に非ステロイド性抗炎症剤、神経代謝改善剤にビタミンB12製剤、感覚神経障害に神経障害性疼痛薬などを処方します。

・難治例には肘部管内に
肘部管内注射を試みます。

2)手術的治療

・経過とともに症状が進行する症例は手術が必要となります。

・術式は肘部管開放術(肘部管内で神経を圧迫している靭帯や筋膜、腱膜を切離する方法)や
尺骨神経前方移行術、内上顆切除術などが検討されます。

・ガングリオンや軟部腫瘍であれば摘出術を検討します。



 たはら整形外科