投球動作について 小児期に一連の投球動作によって起こる肘の障害を言います。小児は骨や軟骨、靭帯、筋肉などが未発達なため体と連動した一連のスムーズな投球動作が行えず、手投げの状態となりやすく肘に負担がかかります。投球動作はワインドアップ期やコッキング期、加速期、リリース期、フォロースルー期の5つの動作からなります。 1)ワインドアップ期 投球動作に入るまでの動作で下半身主導ですから肘の障害は起こりません。 2)コッキング期 肩が最大に外転・外旋する時期までの動作で、肘の内側部の筋・腱が引き伸ばされ内側部に負担がかかります。 3)加速期 ボールを投げ始めてからボールを手放すまでの動作で、肘が外反位となり肘の内側部の筋肉や腱は引き伸ばされ内側部に負担がかかります。一方、外側部は圧迫力や回旋力が加わり軟骨や骨に負担がかかります。 4)リリース期 ボールが手から離れ、腕の動きが急に減速される時期までの動作です。 5)フォロースルー期 ボールを投げ終えて投球動作が終わるまでの動作です。リリース期からフォロースルー期は肘の後部の筋肉や腱が伸ばされた状態から、一転して筋肉が縮むため肘の後部に負担がかかります。 リトルリーグ肘 投球動作により内側、外側、後方の障害に分かれます。 1)内側部の障害 肘の内側部は投球動作により牽引力や張力および収縮力が繰り返されるため、筋肉や腱に負担がかかり上腕骨内側上顆炎や内側側副靭帯損傷が発生しやすくなります、また軟骨や骨に負担がかかると骨端核異常や骨端線離開が発生します。時に尺骨神経を圧迫して肘部管症候群を発生させます。 2)外側部の障害 肘の外側部は内側とは逆に圧迫力や回旋力が繰り返し加わるため橈骨頭と上腕骨小頭が衝突し、上腕骨小頭の軟骨が障害されて肘離断性骨軟骨炎や関節内遊離体(関節ネズミ)を発生させます。 3)後方部の障害 肘の後部はリリース期からフォロースルー期にかけて肘が最大限に伸ばされ上腕三頭筋腱炎や肘頭骨端核異常、骨端線離開、肘頭骨折などを発生させます。 治療 1)保存的療法が原則です。 内側、外側、後方の障害を問わず、まず投球動作を中止していただきます。肘のストレッチングや肩のストレッチング、肘の筋力強化、肩の筋力強化などの運動療法を指示します。これらの治療でほぼ症状は完治(内側部の障害)します。しかし一部の症例では手術的治療が必要となることもあります。 2)手術的治療 内側部では内側側副靭帯損傷、外側部では離断性骨軟骨炎(遊離体)、後方部では骨棘形成(骨のとげ)や遊離体の存在などが手術の対象となります。放置されると後日、成人になって変形性肘関節症を発生しますので要注意です。 最も大切なことは障害を予防することです。ウォーミングアップにストレッチングをクールダウンにはライスの処置とストレッチングを行い、投球フォームをチェックすることです。なお、投球動作による他の障害に野球肩やリトルリーグ肩、肩関節不安定症、腱板損傷などがありますのでご参照されて下さい。
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