肩関節不安定症
肩関節の構造
肩関節は肩甲骨の関節窩と上腕骨の骨頭で構成されています。関節窩の面積は骨頭の3分の1しかありません。そのため、肩関節は解剖学的に不安定性が生じやすい関節です。また、人体で最大の可動域(関節の動く範囲)を有しているため、他の関節に比べ容易に不安定に陥りやすい関節となります。したがって、肩関節は、骨や関節以外の軟部組織(関節包や関節唇、腱板、靭帯など)で強靭な安定性と支持性を得ています。

肩関節不安定症とは、肩の関節包や関節唇、腱板、靭帯などが緩んだり損傷した状態で、軽微な動作(寝返りや服の着脱動作)や投球動作などで肩の不安定感や恐怖感を訴える疾患です。一方、肩関節脱臼は、関節包や靭帯、腱板が断裂したために肩の位置を正常位(求心位)に保つことが出来なくなった疾患です。肩関節不安定症は前方型と後方型に分かれます。大半が前方型です。前方型は、前方の軟部組織に緩みや損傷があり、骨頭が前方に移動し肩の不安感や恐怖感を訴えるタイプです。スポーツでは投球動作の加速期で訴えられます。一方、後方型は、後方の軟部組織に緩みや損傷があり、リリース期 からフォロースルー期にかけて肩の不安感や恐怖感を訴えるタイプです。

診断:Apprehension test陽性です(背臥位で肩を90度外転、肘を90度屈曲、肩を90度外旋させると不安定感を訴えます)。また、Relocation test陽性です(背臥位で肩を90度外転、肘を90度屈曲させ、肩に外旋ストレスを加えると不安定感を訴えます。さらに、補助的診断として超音波検査やCT、MRIで骨や軟骨、関節唇、関節包、腱板などの詳細な状態を観察します。

治療:保存的治療が原則です。まず日常生活動作の注意点を指導します。投球動作によって起こる場合は、投球フォームの検討を行います。運動療法として肩関節に限らず、個々のフォームに適したバランスの取れた全身のストレッチング(肩関節腰部股関節など)と筋力強化(肩関節腰部股関節)を指導します。手術的治療は肩関節鏡視下手術を行い、骨や軟骨、関節包、関節唇、腱板などの損傷を修復します。

 たはら整形外科