投球動作による肩の障害  (いわゆる野球肩)



野球肩
とは野球などの投球動作で起こる肩の障害を言います。野球以外のスポーツではバレーボールやハンドボール、バスケットボール、バトミントン、槍投げ、テニスなどで多発します。投球動作はワインドアップ期、コッキング期、加速期、リリース期、フォロースルー期の5つの動作で構成されています。
1)ワインドアップ期は投球動作に入るまでの動作です。
この動作は下半身が主導ですから肩の障害は起きません。


2)コッキング期は肩が最大限に外転、外旋する時期までの動作です。
肩関節は外転、外旋運動が強制されるため肩の前方が引き伸ばされて三角筋前部や上腕二頭筋長頭腱は牽引され、棘上筋は収縮します。そのため
三角筋炎や棘上筋腱炎上腕二頭筋長頭腱炎インピンジメント症候群腱板損傷が発生しやすくなります。

3)加速期はボールを投げ始めてからボールを手放すまでの動作です。
4)
リリース期は、ボールが手から離れ腕の動きが急に減速される時期までの動作です。
加速期からリリース期
は最もスピーディーな動作が行われる時期です。肩関節は外転、内旋運動が強いられるため三角筋中部と後部は引き伸ばされ、棘上筋や棘下筋、小円筋などの腱板は収縮から一転して伸展し、肩峰下滑液包や鳥口肩峰靭帯により圧迫され腱板損傷肩峰下インピンジメント症候群三角筋炎肩関節不安定症などが発生しやすくなります。

5)
フォロースルー期はボールを投げ終えて投球動作が終わるまでの動作です。
上腕三頭筋の収縮により腕は前方へ振り出され腱板や肩の後面は引き伸ばされて、
上腕三頭筋腱炎や肩関節の後方の関節包や関節唇を損傷しやすくなります。以上のように肩は投球動作によって色々な障害が発生します。

治療は投球動作を一旦中止していただきます。物理療法や運動療法(肩のストレッチング筋力強化訓練)を検討します。疼痛緩和にアセトアミノフェン、炎症緩和に非ステロイド性抗炎症剤外皮用薬などを必要に応じて処方します。難治例にはステロイドの注射を検討します。予防には肩の筋力強化に加え、体幹の筋力強化(腰の筋力強化訓練股関節の筋力強化訓練)も指導します

これらの保存的治療(手術しない方法)で改善が得られない症例は、障害部位に応じて様々な手術的治療を検討します。なお、小児における投球動作による肩の障害については
リトルリーグ肩を、肘の障害についてはリトルリーグ肘(野球肘)を参照されて下さい。


 たはら整形外科