肩関節脱臼

肩関節の特徴
肩関節は脱臼を起こしやすい関節です。これは、肩関節の特有な構造にあります。関節を構成する肩甲骨の関節窩と上腕骨頭の関係です。関節窩は上腕骨頭の面積の3分の1しかありませんので、他の関節に比べ関節の適合性が悪く、容易に脱臼しやすい関節です。肩関節脱臼は、若年者ではスポーツ活動中に、高齢者では転倒によって、また、片麻痺の患者さんでは軽微な外力で起こります。

肩関節脱臼前方脱臼後方脱臼に分かれます。大半(95%)が前方脱臼です。症状は痛みと腫れ、変形、運動障害です。健側の手で脱臼した腕を支え、肩を全く動かそうとしません。診断はレントゲン検査で容易に判断できます。しかし、時に、骨頭骨折や関節窩骨折、腱板損傷、腋窩神経麻痺を合併することがあります。これらの詳細な情報収集に超音波検査やCT、MRIが必要です。

治療:保存的治療が原則です。早期に徒手整復術を行います。腕神経叢ブロックや頚神経ブロック、静脈麻酔、全身麻酔を行って愛護的に整復します。私は関節腔内に1%リドカイン15ml+リンデロン1Aを投与し、Stimson法(ベットにうつ伏せになり、患側の腕を下垂させ3〜5kg程度の重しを持たせ、重力による牽引力で自然に整復させる方法)を行っています。他にHyppocrates法やKocher法、Leidelmeyer法などがあります。整復後は肩関節内旋位で3週間程度固定します。なお、再脱臼する頻度が高いので、固定後は肩のストレッチング筋力強化訓練を行います(特に、内旋と内転を鍛えます)。手術的治療は、骨頭骨折や関節窩骨折、関節唇損傷、腱板損傷、腋窩神経麻痺の合併した症例は、骨接合術や腱板修復術、神経縫合術などを検討します。

 たはら整形外科