上腕骨顆上骨折

上腕骨顆上骨折は、小児の肘の外傷(ケガ)の中でよく見られる骨折の一つです。子供が転倒や転落で肘を痛がり来院されると、上腕骨顆上骨折と上腕骨外顆骨折肘内障を考えます。大半が転んだ際に肘を伸ばして手をついて受傷されます。

症状:肘の痛みや腫れ、変形、異常可動性(肘がグラグラする状態)を認めます。不幸にして、骨片(骨の破片)や転位(ずれ)のため、橈骨神経や正中神経、尺骨神経を圧迫すると、その神経が支配している領域の知覚障害(感覚が鈍い、ピリピリする、ジンジンする)と運動障害(手首や指が伸びない、曲がらない、指が開かないなど)を訴えます。また、血管が圧迫されると循環障害を起こし、手指への激痛やチアノーゼ(血行障害のため指が紫色になる状態)や運動障害が起こります。神経、血管損傷には注意して下さい。診断はレントゲン検査で確定されます。

治療:保存的治療(手術しない方法)が原則です。転位(ずれ)のない症例ギプス包帯装具療法で経過観察します。転位が軽度な症例は、徒手整復術を行いギプス包帯をします。しかし、転位が中程度の症例は、麻酔を用いて徒手整復します。整復後に再転位するようであれば、経皮的骨接合術(切開せずに皮膚の上からピンのような器具で骨折部を固定する手術)を行います。

なお、整復不能な症例や神経麻痺や循環障害を認める症例は、直視下手術(切開して手術する方法)を行います。神経や血管の圧迫を取り除き、内固定術(プレートやスクリュー、ピンで固定する手術)を行います。出来るだけ早期に正確に整復せねば神経麻痺や血行障害による筋肉壊死、内反肘を認めますので要注意です。正確に解剖学的に整復しないと、将来、変形性肘関節症を招きます。

 たはら整形外科