肩関節周囲炎  (凍結肩)


 
肩の構造

肩関節は肩甲骨の関節窩と上腕骨の骨頭で構成されています。関節窩の面積は骨頭の3分の1しかありません。そのため、肩関節は解剖学的に不安定性が生じやすい関節です。また、人体で最大の可動域(関節の動く範囲)を有しているため、他の関節に比べ容易に不安定に陥りやすい関節となります。したがって、肩関節は、骨や関節以外の軟部組織である関節包関節唇腱板、靭帯などで安定性と支持性を得ています。


 
五十肩(肩関節周囲炎)の由来

戦国時代から江戸時代にさかのぼります。当時は疫病や天災、餓死、戦死などで平均寿命は短命で、「人生五十年」と言われていた時代です。それゆえ五十歳代で肩が痛むと、長生きの証だと言われ「長寿病」とつぶやかれていたそうです。



肩関節周囲炎(凍結肩)について

肩関節は骨と軟骨と軟部組織(滑液包や腱板、腱、筋肉など)で構成されています。肩関節周囲炎とは、骨と軟骨に異常はなく、関節包など軟部組織が炎症を生じ肩の疼痛や運動障害を起こす疾患です。明らかな原因は不明です。軟部組織の老化現象が基盤となり、軽微な外傷(ケガ)などの環境因子や血行障害が絡み合い癒着性関節包炎や肩峰下滑液包炎、腱板炎、腱鞘炎を伴い生ずると考えられています。


症状
症状は痛み、運動障害です(重症では関節がガチガチに固まることより
「凍結肩」と呼ばれます)。初期は結帯動作(帯を結ぶ動作)や外旋(肩を外に捻る動作)、前方挙上(万歳する動作)の運動障害を認め、次第に増悪されます。進行すると夜間痛(寝返りの時)で目を覚めると訴えられます。

診断
レントゲン検査で異常所見がないことが確認できれば容易です。なお軟部組織の異常(肩峰下滑液包炎や腱板損傷)はエコーで確認します。鑑別(見極める)疾患には石灰沈着性腱板炎(石灰性腱炎)腱板損傷インピンジメント症候群変形性肩関節症などがあります。なお詳細な情報収集にMRIが必要となります。

治療
1)保存的治療(手術しない方法)が原則です。
疼痛緩和のために、リハビリとして
物理療法を行い、薬物療法としてアセトアミノフェン非ステロイド性抗炎症剤外皮用薬などを短期間処方します。慢性化した頑固な疼痛にはトラマドール塩酸塩デュロキセチンを検討します。夜間痛を訴える症例ではステロイド関節内注射ヒアルロン酸注射を行います。また神経ブロック療法として肩甲上神経ブロックトリガーポイントブロックなどを考慮します。これらの処置で疼痛を緩和しながら運動療法として肩のストレッチングコドマン体操筋力強化訓練などを指示します。

手術的治療
これらで改善されない症例は、超音波下で神経ブロック麻酔をして徒手整復(サイレントマニピュレーション)や鏡視下肩関節授動術(肩関節内の癒着した組織を剥離や切除する術式)が検討されます。

五十肩はいつの間にか治るだろうと考えられておられるようですが、放置した結果、治るまでに長期間を要し、日常生活動作や趣味、スポーツに悪影響を及ぼした症例や後遺症(肩が固まって機能障害を残したまま回復しない状態)も経験します。早期の診断と治療が大切です。


 たはら整形外科