外傷性頚部症候群(むち打ち症)

外傷性頚部症候群とは、交通事故やスポーツ障害などで首が不意に衝撃をうけ、頚部が前屈、後屈動作(前倒し、後ろ反り)や回旋動作(左右のねじれ)、側屈(左右に倒れる)を強いられて起こる疾患です。一瞬の事故の衝撃で予後(治る経過)が決定されます。すなわち、衝撃により頚部の構成体がどの程度障害されたかにより、予後が運命ずけられます。また、患者さんの事故前の頚椎症性変化の存在が予後に大きく影響します。

症状:頚部痛や首の運動障害、頭痛、肩こり、吐き気、めまい、耳鳴り、シビレ感、冷汗、筋力低下など多彩な症状を訴えます。大半は軽症で局所症状にとどまりますが、 時に、自律神経失調症様の症状で苦しまれる症例も経験します(これは、頚部に存在する交感神経椎骨動脈の異常な緊張によるものと考えられています)。

症状が長引くタイプは、不意の事故のため反射的に筋性防御反応が取れなかった方や、もともと頚椎症性変化のある方、頸椎の姿勢が悪い方、頚部の筋力が弱い方、マイナス思考で心配性の方によく見られます。また、稀に頚髄損傷外傷性頚椎椎間板ヘルニアに遭遇することもあります。

治療:急性期は頚部の安静を指示します。疼痛や運動障害の強い症例には頚椎カラー固定を着用していただきます。疼痛緩和にアセトアミノフェン、炎症緩和に非ステロイド系抗炎症剤外皮用薬を処方します。慢性期になると物理療法頸椎牽引療法などを行い、頚部のストレッチング筋力強化訓練を指導します。改善されなければ、神経ブロック療法としてトリガーポイントブロック星状神経節ブロック肩甲上神経ブロックなどを検討します。また、症状が長期におよぶ症例では、心因的要素の関与も考えられ、短期間の抗不安剤の処方やカウンセリングが必要となることもあります。

 たはら整形外科