膝の側副靭帯損傷



 膝の側副靭帯
 
膝の側副靭帯は膝関節の側方の動揺性(横の不安定性)を制御する作用を有しています。内側側副靭帯と外側側副靭帯があります。外来でよく遭遇する疾患の一つですが、単なる捻挫として見逃されることが多々ある疾患です。スポーツ活動中や交通事故などで高頻度に発生します。



内側側副靭帯損傷について
 
 
内側側副靭帯損傷は、膝の靭帯損傷の中で最も頻度の高い疾患です。膝関節に外反力が強制されて発生します。

症状
受傷時に断裂音(ボキッ)を認め、痛みや腫れ、運動制限、歩行障害を訴えます。陳旧例(時間の経過した症例)では膝の不安定感(ガクガクする、グラグラする)と訴えます。


診断
膝に
外反ストレスを加えると不安定性を認めます。関節穿刺で血腫(関節内に血がたまる状態)を認めます。 時に剥離骨折を認めます。レントゲン検査で外反ストレスレントゲン撮影(膝伸展位と膝30度屈曲位での外反ストレス)での関節の動揺性(ぐらつき)を検査して、靭帯損傷の程度を判断します。損傷の程度によって3つに分類されます。

@軽度:健側と比較して動揺性はなく圧痛のみです。
A中程度:伸展位での動揺性はなく、30度屈曲位で動揺性を認めます。
B重度:伸展位と30度屈曲位ともに動揺性を認めます。
なお十字靭帯損傷や半月板損傷を合併することがありますので、詳細な情報は
MRIが必要です。

治療
1)保存的治療
受傷直後は
ライスの処置を中心とした物理療法行います。疼痛に対して外皮用薬アセトアミノフェン非ステロイド性抗炎症剤などを短期間処方し、装具療法(膝可動域制限付き装具膝関節用サポーター)、ギプス固定などをすすめます。その後、運動療法(膝のストレッチング股のストレッチング膝の筋力強化訓練股の筋力強化訓練を指導します。

2)手術的治療
重度の症例は大半が
十字靭帯損傷半月板損傷を合併しており、靭帯修復術や靭帯再建術などの手術が必要となります。


 
外側側副靭帯損傷について

外側側副靭帯損傷は、膝関節に内反力が強制されて発生します。単独損傷は少なく、大半は十字靭帯損傷半月板損傷を合併しています。

症状
膝の外側部に痛みを訴えますが、他の症状は内側側副靭帯損傷と同様です。
内反ストレスを加えると不安定性を認めます。

診断
レントゲン検査(内反ストレスレントゲン撮影)やMRIで確定診断されます。

治療
内側側副靭帯損傷とほぼ同様です。保存的治療は装具療法やギプス固定です。重症例や十字靭帯損傷や半月板損傷を合併した症例は手術的に治療されます。


 たはら整形外科