半月板損傷



半月板について
 
半月板
は大腿骨と脛骨(けいこつ)の間に存在し、クッション作用(大腿骨からの荷重を分散し衝撃を吸収する作用)と膝関節の支持性や安定性、円滑な運動を担っています。半月板は線維軟骨です。一方、関節軟骨は柔らかい硝子軟骨で出来ています。線維軟骨(半月板)は硝子軟骨(関節軟骨)より分厚く、固く、強靭な支持性を有しています。半月板は三日月型と円板型に分かれます。大半は三日月型で内側半月板はC型で、外側半月板はO型をしています。小児では円板型をよく見かけます。

半月板の成分は水分とコラーゲン(外縁は強度のある1型コラーゲンで、内縁は2型コラーゲン)と粘弾性のあるプロテオグリカンからなります。半月板の栄養は、関節の袋の滑膜から分泌される関節液から得られています。また、半月板の血行は膝蓋動脈から分岐した膝蓋下動脈から受けています。しかし、血行を有するのは関節包の辺縁部(外側3分の1)で、内側3分の2は血行を認めません。したがって、手術の際、辺縁部の損傷は縫合修復術が可能ですが、中央から内縁の損傷は血流がないので縫合できません。切除術になります。


 
半月板損傷

半月板損傷
は、若者ではスポーツ傷害(繰り返される動作で起こるスポーツ障害とケガで起こるスポーツ外傷)や捻挫、転倒、転落などで起こります。高齢者では年齢的な変化(老化現象)を基盤に些細なことで容易に損傷されます。小児では先天的に円板状の形態をしている円板状半月板損傷をよく見かけます。


症状
症状は膝の痛み、腫れ、運動障害、歩行障害です。時に「ブチッ」と言う音とともに激しく痛むこともあります。また、
ロッキング現象・嵌屯症状(損傷した半月板が大腿骨と脛骨の間に挟まれて膝の曲げ伸ばしが出来なくなりロックされた状態)や膝折れ現象(歩行やランニング中に不意に膝が抜ける現象)を訴えます。急性期の症例では関節内血腫(関節の中が出血している状態)を認めることもあります。なお、スポーツ活動中の半月板損傷の大半は靭帯損傷を合併しております。

診断
診察所見でマックマレーテストやアプレーテスト、過伸展テストにより症状の再現性(膝の痛みや引っかかり現象)を認めます。レントゲン検査では特徴的な所見はありません。診断には
MRIが必要です。半月板損傷縦断裂横断裂水平断裂変性断裂などがありますが、変形性膝関節症では高頻度に半月板の逸脱(半月板が外に移動している状態)を経験します。時に関節造影が必要なこともありますが、確定診断は関節鏡検査です。

治療
1)保存的治療
範囲の小さい辺縁部断裂の症例が対象です(血行がある部位なので自然治癒する可能性があります)。
ギプス包帯可動域制限付き膝装具膝サポーター室外用インソール室内用足底板で経過観察します。また股のストレッチング膝のストレッチング股の筋力強化訓練膝の筋力強化訓練などの運動療法を指導します。変形性膝関節症を併存する症例ではヒアルロン酸注射を使用することもあります。

2)手術的治療
半月板縫合術と半月板切除術です。辺縁部の損傷は半月板に血行があるので関節鏡視下半月板縫合術を行います。辺縁以外は血行がないので半月板切除術を行います。切除範囲は最小限にとどめます。なお
内側半月板後根断裂半月板逸脱の症例では変形性膝関節症の進行を加速させるため、鏡視下半月板修復術や高位脛骨骨切り術の併用が検討されます。



 小児の円板状半月板損傷
 
小児の半月板損傷例は円板状半月が大半です。先天的な形態異常である円板状半月(MRI)は両側に発生します。多くは
外側の円板状半月です。円板状半月は正常の半月板より厚く大きいため、常に大腿骨と脛骨に接触し衝撃を受け壊れやすい環境にあります。したがって軽微な外傷で容易に損傷します。症状は引っかかり現象と雑音(コリコリと引っかかる音)や運動障害を訴えます。治療は運動療法を指導します。改善されない症例は関節鏡視下円板状半月切除術を検討します。


 たはら整形外科