足根管症候群

足根管症候群とは、足根管が何らかの原因で内圧が高くなり、足根管内に存在する後脛骨神経が圧迫されて痛みやシビレが起こる疾患です。足根管とは、内くるぶしの下方にあり、足関節の内果と踵骨と距骨と屈筋支帯で出来ているトンネルのような管です。全く原因が特定できない症例も数多く経験しますが、明らかに原因を有するものとして、足関節捻挫果部骨折踵骨骨折変形性足関節症ガングリオン静脈瘤などによる圧迫で生ずることもあります。

症状:足底部の痛みとシビレです。これらの症状は圧迫をうけた神経領域(後脛骨神経から分岐した内側踵骨枝、内側足底神経、外側足底神経)へ放散する痛みや異常知覚(ピリピリする、ジンジンする感覚)を訴えます。また、しばしば、運動時痛や夜間痛を訴えます。診察で足根管部の圧痛やチネル徴候が陽性です(後脛骨神経を叩くと支配領域に放散痛を認めます)。また、圧迫された神経支配領域の知覚障害も認めます。

診断:レントゲン検査は特徴的な所見はありません。診断の一つとして、局所麻酔を打つと自覚症状が改善されます。鑑別疾患に腰椎椎間板ヘルニア腰部脊柱管狭窄症があります。神経伝導速度検査で伝導速度の遅延を認めれば鑑別は可能です。

治療:保存的治療(手術しない方法)が原則です。日常生活動作の注意点を指導します。炎症緩和に非ステロイド性抗炎症剤外皮用薬ビタミンB12製剤を処方します。効果がなければ神経障害性疼痛薬を検討します。難治例には足根管内にステロイド注射を検討します。また足部の安静目的にサポーターギプスシーネをすることもあります。再発を繰り返す症例は、足根管の内圧を軽減するために足底板も検討します。これらの保存的治療に抵抗する症例や腫瘍(ガングリオンなど)や足首の変形が原因でであれば手術的治療を検討します。手術は屈筋支帯切離術、脛骨神経剥離術、腫瘍摘出術を行います。

 たはら整形外科