踵骨骨折
踵骨骨折は比較的よく見られる骨折の1つです。高所より転落したり、飛び降りた際に踵(かかと)へ長軸方向の外力が加わって発生します。軽度な踵骨骨折もありますが、大半は圧迫骨折粉砕骨折になりやすく、治療が難しい骨折の一つです。また、骨粗鬆症を基盤とした高齢者では踵骨疲労骨折をよく見ます。時に、若年者でも疲労骨折を見受けます。

症状:踵の激痛や腫れで、皮下出血や変形を認めます。診断はレントゲン検査で確定されます。予後(治り方)は距踵関節(踵骨と距骨の関節面)の損傷の程度で決まりますので、出来るだけ解剖学的な位置に戻すこと(距踵関節面を整えること)が大切です。

治療:保存的治療(手術しない方法)が原則です。転位が軽度な症例はギプスシーネで経過観察します。転位が中程度ある症例は、徒手整復術を行います。徒手整復術は、まず患者さんを腹仰位(腹ばい)にして、下腿から足先までギプスを巻き、ギプスが乾かない内に、両手の平で踵を圧迫し、内反(内ひねり)や外反(外ひねり)、さらに牽引(引っ張る)を加え整復します。整復後は早期にリハビリテーションを開始します。踵骨は海綿骨が豊富なため、短期間の固定でも容易に骨萎縮(骨が痩せる状態)を起こします。早期より骨萎縮予防のためにギプス内での等尺性運動を指導します。その後、足底板免荷装具を着用していただき、徐々に荷重歩行(体重を乗せての歩行)を開始させます。

なお、高度な変形や偽関節(骨がつかない状態)を残すと、後脛骨神経枝が圧迫されて足根管症候群を来すことがありますので要注意です。手術的治療は関節面の転位(ずれ)が高度な症例に行われます。術式(手術の方法)は、経皮的骨接合術(ピンや釘の様な器具を使用して皮膚の上から骨折部を固定する手術)や内固定術(皮膚を切開して、プレートなど骨をつなぐ手術)などが検討されます。なお、距踵関節不適合のために痛みが長期続く症例では、関節固定術が必要となることもあります。

 たはら整形外科