足関節捻挫 (靭帯損傷と剥離骨折を含む)
足関節捻挫は、足首に内反力や外反力が強制されて、軟部組織や靭帯が損傷する疾患です。中には、靭帯損傷や剥離骨折を来す症例もあります。年齢を問わず日常の外来診療において最も多い疾患です。足首の靭帯は、「外側のくるぶし」に脛腓靭帯と外側側副靭帯(前距腓靭帯、後距腓靭帯、踵腓靭帯)があり、「内側のくるぶし」に内側側副靭帯(三角靭帯)があります。これらの靭帯によって足首の安定性が保たれています。

タイプ靭帯損傷のない症例(単なる捻挫)と、靭帯損傷のある症例(靭帯が伸びたり断裂した症例)と、小さな骨折がある症例(剥離骨折)に分かれます。靭帯損傷は外側側副靭帯損傷と脛腓靭帯損傷と内側側副靭帯損傷に分かれますが、多くは内反が強制されて起こる外側側副靭帯損傷(特に、前距腓靭帯損傷)です。剥離骨折を認める症例の大半は足関節外果剥離骨折です。症状は足首の痛みや腫れ、皮下出血、足部の不安定感、歩行障害です。

診断:レントゲン検査が不可欠です。レントゲン検査は2方向撮影(正面像、側面像)で骨折の有無を確認します。さらに、受傷機転(ケガをした時の足首の状態)を再現するストレスレントゲン撮影を行い、靭帯損傷の有無を確認します。時に、ストレスレントゲン撮影にて剥離骨折が発見されることが多々あります。

したがって、足首の捻挫の際は、常に、靭帯損傷や剥離骨折を念頭に置き、受傷機転を再現したストレスレントゲン写真を撮ることが大切です。ストレスレントゲン検査での評価は、軽症は5度未満で、中等症は5度から10度未満で、重症は10度以上です。詳細な情報は動的観察が可能な超音波検査が有益です。

足関節捻挫を診断するにあたって、困ることがあります。過去の捻挫で靭帯損傷や剥離骨折があったにもかかわらず、当時、「単なる捻挫」として取り扱われた症例です。このような方が再び捻挫されると、新鮮例(今回の捻挫で起きた損傷)なのか、陳旧例(過去の捻挫で起きた損傷)なのかの判断に困ります。

このような場合は、疼痛や腫れの程度、皮下出血の有無を参考にします(足首がグラグラするけど、腫れがない症例は陳旧例と考えます)。また、剥離骨片のある症例は骨片の形状で判断します(骨片の辺縁が滑らかな場合は陳旧例と考えます)。時に、捻挫によって距骨の骨軟骨損傷を認めることがありますので注意して下さい。

治療:保存的治療(手術しない方法)が原則です。受傷直後はライスの処置を行います。疼痛緩和に短期間の外皮用薬アセトアミノフェン非ステロイド性抗炎症剤を処方し、損傷の程度により、軽症はサポーター固定をします。中、重症例はギプス包帯ギプスシーネを行います。なお、骨や筋肉の萎縮(衰え)を防ぐためにギプス固定のまま歩行や走行を許可します。固定期間は、損傷の程度に応じて2〜4週間程度とします。ギプス除去後は足首のストレッチング膝の筋力強化足首の筋力強化(特に、外返しの訓練)を指導します。手術的治療は、重度の損傷で早期スポーツ復帰を希望される症例、将来にわたり激しいスポーツ活動を継続される症例、複合靭帯損傷の症例が対象となります。術式は、縫合術や靭帯再建術を検討します。足関節捻挫は的確に診断、治療しないと、将来、変形性足関節症を招き、ロコモへと進行するので要注意です。

よく患者さんから、「テーピングについてのお尋ね」があります。お答え:「テーピングは皮膚にするのであって、靭帯や骨にテーピングするものではありません。15分後には汗のため固定力がなくなります。十分な固定力が得られませんので、靭帯損傷や剥離骨折の治療にはお勧めできません」と説明しております。テーピングはスポーツ傷害(スポーツ外傷やスポーツ障害)の予防や治療後の安心や安全に必要と思います。なお、小児の足関節捻挫こどもの整形外科を参照されて下さい。

 たはら整形外科