腰椎分離症

腰椎の解剖
腰椎は5個の椎骨よりなり、前方部分と後方部分で構成されています。前方部分は椎体、椎間板、横突起よりなります。後方部分椎弓根、椎弓、椎間関節、棘突起から構成されています。前方部分と後方部分で囲まれた管を脊柱管(脊髄が入っている管)と言います。脊柱管の中には、腰髄や馬尾神経、腰神経が存在し、腰神経は椎間孔(腰神経が出てゆく穴)よりでて左右5対の枝を出し、臀部や大腿〜下腿〜足先へ下降します。なお、詳しくは、腰椎の構成体の項を参照されて下さい。

腰椎分離症とは、腰椎の椎弓が分離した状態連続性を失い、離れた状態)を言います。多くは第5腰椎、第4腰椎に好発します。時に、第3腰椎にも認められます。原因として遺伝的要因も考えられていますが、大半は小児期に繰り返される激しいスポーツ活動によって起こる疲労骨折と思われています。すなわち、スポーツ活動中に、腰部が前屈動作(前かがみの状態)から急に回旋(捻れ)を伴った後屈動作(後ろ反りの状態)を繰り返すことで、上位の下関節突起のテコ作用により下位の椎弓を骨折させると考えられています。ちょうど、飛行機がフライトを重ねるうち、機体が風圧によって金属疲労を来たし、やがて破損する状態とよく似ています。成人の腰椎分離症は、小児期に発生した分離症がほぼ無症状のまま経過し、加齢と共に腰椎症性変化(老化現象)が加わって症状が発生するものと考えられています。

症状:大半が腰痛です。しかし、中には、腰神経が圧迫されて根性坐骨神経痛(腰痛やお尻の痛み、足先に放散する痛み、シビレなど)を認める症例もあります。根性坐骨神経痛の発生メカニズムは、繰り返される機械的刺激(前、後屈の動作)によって起こる腰椎症性変化(椎体変形や椎間関節変性、椎間板変性)や分離部の瘢痕形成が神経を圧迫すると考えられています。

診断:レントゲン検査の側面像で確認されることもありますが、正確な分離症の判定には斜位像が必要となります。さらに、詳細な情報収集や手術的治療に備えて、CTやMRI、脊髄造影神経根造影椎間板造影などの検査が必要なことがあります。

治療:まず日常生活動作の注意点を指導します。疼痛緩和に物理療法アセトアミノフェン、炎症緩和に非ステロイド性抗炎症剤を処方します。改善がなければ、神経ブロック療法として分離部ブロック椎間関節ブロック神経根ブロック腰部、仙骨部硬膜外ブロックなどを検討します。また、簡易コルセットダーメンコルセットを着用していただきます。なお、小児の腰椎分離症の発症時は、出来れば硬性コルセットの使用がベターです。さらに、再発予防に腰部のストレッチング股関節のストレッチング腰部筋力強化訓練股関節の筋力強化訓練を指導します(特に、殿筋や腹筋、大腿部の強化が大切です)。

これらの保存的治療で改善されず、日常生活動作やスポーツ活動や作業にかなり支障を来す症例は、手術的治療が検討されます。手術的治療は、痛みの原因が分離部由来か、椎間板由来か、腰神経根由来かで異なります。術式は、後方椎間固定術や前方椎間固定術、経椎間孔椎体固定術、分離部骨移植術などが行われます。なお、若年者の脊椎分離症については、こどもの整形外科を参照されて下さい。

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