若年者の腰椎分離症

腰椎は5つの椎骨からなり、前方部分と後方部分で構成されています。前方部分は椎体、椎間板、横突起よりなります。後方部分は椎弓根、椎弓、椎間関節、棘突起より構成されています。腰椎分離症とは、腰椎の椎弓が分離した状態連続性を失い離れた状態)を言います。大半は第5腰椎第4腰椎に認められます。瞬時に前屈、後屈(腰を曲げ、直ちに反らす動作)と回旋(捻る動作)を繰り返す種目(体操や柔道、野球、重量挙げ、サッカー、バレーボール、バスケットなど)の選手によく認められ、10歳前後の男性に好発します。

原因:遺伝的要素(先天性)も考えられますが、多くは小児期に繰り返される激しいスポーツ活動によって起こる疲労骨折と思われます。すなわち、腰部の前屈動作(前かがみ)から急激な回旋を伴った後屈動作(後ろ反り)の繰り返しにより、上位の下関節突起がテコとなり、下位の椎弓を骨折させると考えられています。飛行機がフライトを重ねるうちに機体が風圧により金属疲労を来す状態とよく似ています。

症状:腰痛です。成人に見られるような根性坐骨神経痛(お尻の痛み、足先にひびく痛み、シビレ感など)を訴えることはあまりありません。診断はレントゲン検査で確定されます。側面像で確認されることもありますが、正確な診断には斜位像が必要となります。先天性の症例では、正常の椎弓に比べ分離部の椎弓が小さく、分離部先端の辺縁は滑らかで、分離部の間隔が広がっています。一方、疲労骨折の早期の症例では、分離部辺縁が不規則で、滑らかさを欠きます。なお、陳旧例(分離症を起こして時間の経過した症例)では、分離部辺縁に硬化像を認めます。なお、詳細な情報収集にはCTやMRIが必要です。

治療:保存的治療(手術しない方法)が原則です。新鮮例(分離症を起こして早期の症例)は、スポーツ活動を完全に中止していただきます。骨癒合(骨がつくこと)のためにダーメンコルセット硬性コルセットを着用していただきます。陳旧例は物理療法や運動療法として腰部のストレッチング股関節のストレッチング腰部筋力強化訓練股関節の筋力強化訓練を指導します(特に、殿筋や腹筋、大腿部の筋力強化が大切です)。疼痛が持続する頑固な症例は、薬物療法として疼痛時にアセトアミノフェンを処方します。頑固な疼痛では、神経ブロック療法として分離部ブロック椎間関節ブロックなどを試みます。しかし、これらの保存的治療で効果なく、競技生活を継続したい年長者の症例では、手術的治療を考慮します。大人の症例の腰椎分離症の項をご参照されて下さい。

 たはら整形外科