上腕骨外側上顆炎(テニス肘)
上腕骨外側上顆炎とは、前腕の伸筋群と回外筋群(手首を伸ばす筋肉、腱と外ひねりする筋肉、腱)の使い過ぎによって、外側上顆部で伸筋腱や骨膜が炎症を起こし痛みをもたらす疾患です。外来で高頻度に見られます。ただ、治療のタイミングが遅れると厄介です。多くの患者さんは、いつか治るだろうと、数ヶ月間放置され受診されます。そのため、治療に苦慮します。

原因:前腕の伸筋腱(主に短橈側手根伸筋腱)の損傷や炎症と考えられています。手作業を強いられる職種の方(パソコン操作やフライパンなどを扱う料理人、大工さんなど)や肘や手首を酷使する主婦に多く認められます。また、バックハンドを多用するテニスの選手に多いことから、別名「テニス肘」とも呼ばれています。なお、手首と肘を多用するあらゆるスポーツ選手に発生します。

症状:運動時や作業時の肘の外側の痛みです。特に、肘を伸ばした状態で物を持つ時に痛みを訴えます。診察所見としては疼痛誘発テストが陽性です(肘を伸ばした状態で手首を反らさせ、力比べをするように抵抗を加えると、肘の外側上顆部を痛がります)。レントゲン検査では特徴的な異常所見はありませんが、長期間放置された症例では外側上顆部に骨の輪郭の不整像石灰化像を認める症例があります。このような症例は治療に抵抗します。なお、診断には変形性肘関節症などの鑑別(見極め)が大切です。

治療:まず日常生活動作の注意点(肘を伸ばした状態で物を持たないで、抱きかかえるように持つことなど)を指導し、原因となったスポーツや作業をできれば中止していただきます。なお、症状が悪化しないために予防として、作業中や運動中は外側上顆炎用バンドの着用を勧めます。また、疼痛緩和に物理療法(スポーツ後はライスの処置)やストレッチング筋力強化訓練を指導し、炎症緩和に非ステロイド系抗炎症剤外皮用薬を処方します。難治例(なかなか治らない症例)では、ステロイド腱鞘内注射や体外衝撃波照射、多血小板血漿が行われています。これらで効果がない症例は、直視下手術や鏡視下手術が検討されます。

 たはら整形外科