キーンベック病
(月状骨無腐性壊死・月状骨軟化症)

手首の手根骨は8個の骨から構成されています。その中の月状骨と呼ばれる骨が壊死する(骨が腐る)疾患をキーンベック病と言います。別名、「月状骨無腐性壊死」や「月状骨軟化症」とも呼ばれます。明らかな原因は不明です。何らかの原因で月状骨への血行が絶たれて発生すると考えられています。若年者ではリストを良く使うスポーツ活動(テニスやゴルフなど)で発生することがあります。中高齢者では手首を酷使する職業(大工さん、調理師、振動工具を使う方など)によく認められます。また、軽微な外傷(捻挫や打撲など)をきっかけに発症する症例もあります。

症状::手首の痛みや運動制限、握力の低下です。進行すると手首が変形します。診断にレントゲン検査が不可欠です。レントゲンでは4つの病期に分類されます。stage1は異常を認めません。stage2は硬化像を認めます。stage3は圧潰像を認めます。stage4は変形性関節症の状態です。レントゲンで進行例の診断は容易ですが、早期(stage1)の症例は、レントゲンで異常所見を認めないため診断は困難です。したがって、問診や理学所見で骨壊死が疑われた際は、早期診断に有益なMRICTを行なうことが大切です。

治療:保存的治療(手術しない方法)が原則です。まず、誘因となったスポーツ活動や作業を一旦中止していただきます。安静を目的にギプス包帯ギプスシーネ手関節固定装具を勧めます。疼痛緩和にアセトアミノフェンや炎症緩和に非ステロイド性抗炎症剤外皮用薬を処方します。手関節の拘縮(手首が固まった状態)に対しては、物理療法や手首のストレッチ、運動器リハビリテーションを開始します。

これらの保存的治療で改善されない症例は手術的治療を検討します。術式は、橈骨短縮術や橈骨楔状骨切り術、尺骨延長術、手根骨固定術、月状骨置換術、腱球挿入術などがあります。性別や年齢、職業、趣味、活動性を考慮して決定されます。

 たはら整形外科