アキレス腱炎と類似疾患
(アキレス腱炎・アキレス腱周囲炎・アキレス腱滑液包炎・アキレス腱石灰化症)

アキレス腱は人体で最大の腱です。アキレス腱は、腓腹筋とヒラメ筋が合体し下腿三頭筋となり、踵骨(かかと)隆起に付着します。
アキレス腱炎:アキレス腱自体が微細な部分断裂によって炎症を起こした状態です。
アキレス腱周囲炎:アキレス腱周囲の結合組織であるパラテノンが炎症を起こした状態です。パラテノンはアキレス腱の表層にあり、アキレス腱に血流や栄養を促しています。
アキレス腱滑液包炎(アキレス腱付着部炎):アキレス腱付着部周辺にある滑液包が炎症を起こした状態です。滑液包はアキレス腱の衝撃を吸収し、摩擦を軽減する作用があります。
アキレス腱石灰化症:アキレス腱の内、外に石灰が沈着した状態です。
これらの発症のメカニズムは多少の違いがあるものの、症状や治療は同様です。原因は体質的要因もありますが、大半は長期間、長時間のスポーツ活動や作業や靴からの慢性的な刺激で起こります。

症状:痛みや腫れ、運動障害、歩行障害です。アキレス腱石灰沈着症は激痛を訴え受診されます。所見としてアキレス腱の圧痛や肥厚、運動制限を認めます。レントゲン検査で、時に、アキレス腱付着部の骨棘(骨のとげ)や石灰化像を認めることがあります。超音波検査ではアキレス腱の肥厚、癒着、滑液包炎、石灰などが確認できます。

治療:保存的治療(手術しない方法)が原則です。アキレス腱炎は早期に適切な指導(運動後のライスの処置とストレッチングなど)を行えば予後(治り)は良好です。治療は、誘因となったスポーツ活動や作業を一旦中止していただきます。物理療法や運動療法として足首のストレッチングアキレス腱のストレッチング足首の筋力強化アキレス腱の筋力強化を指導します。炎症緩和に非ステロイド性抗炎症剤外皮用薬を処方します。慢性化した症例はステロイド注射を検討します。また、再発を繰り返す症例は、アキレス腱を安静にする目的でギプス包帯ギプスシーネ,、短下肢装具を勧める場合もあります。

これらで改善なければ手術的治療を検討します。術式は、病巣掻把術(アキレス腱周囲の瘢痕化した組織を切除したり、アキレス腱の癒着を剥離、滑液包摘出、石灰摘出を)を行います。

 たはら整形外科