痛風・高尿酸血症

痛風とは、血液中に尿酸が異常に多くなり、関節の滑膜に尿酸結晶が沈着し、激しい疼痛発作(結晶誘発性関節炎)を起こす疾患です。60万人存在すると考えられています。高尿酸血症とは、痛みなどの自覚症状はなく、単に血中の尿酸値が7mg/dl以上になった状態です(年齢、性別を問いません)。高尿酸血症は日本人では5人に1人(20%)に認められ、男性が95%を占め、女性は5%程度と考えられています。

尿酸とは
尿酸は蛋白質のもとになるプリン体(体の細胞や食物の中に含まれている物質)が分解されて発生する最終代謝産物です。分かり易く言えば、尿酸は古い細胞の「残骸」やエネルギーの「燃えカス」のようなもので、体内でこれ以上分解できない物質です。大半は核酸(生体の遺伝子情報を伝える物質)由来のもので、食物によるものは20%です。プリン体が肝臓で分解されて尿酸(1日700mg)がつくられます。尿酸は腎臓で濾過され、尿として排泄(1日500mg)されます。一部、腸内で分解(1日200mg)されます。そのため、肝臓で尿酸が過剰につくられたり、腎臓で尿酸の排泄がわるくなると高尿酸血症になります。

原因
食生活による場合もありますが、多くは体質的素因、遺伝子異常と考えられています。高尿酸血症は3つのタイプがあり、尿酸産生過剰型(肝臓で尿酸が過剰に産生されるタイプ)と尿酸排泄低下型(腎臓で尿酸が排泄されにくいタイプ)と混合型(尿酸産生過剰型+尿酸排泄低下型)に分類されます。6割が尿酸排泄低下型で、1割が尿酸産生過剰型で、3割が混合型と考えられています。

症状
数年間の無症候性高尿酸血症(尿酸値は高いのですが、何ら症状を認めない状態)を経て、ある日、突然、痛風発作(痛風性関節炎)が発生します(ただし、発作時に必ずしも尿酸値が高いわけでもありませんので診断の際は注意して下さい)。典型的な発作は母趾(足の親指)に好発します。しかし、最近では足関節や足趾の関節、膝、手関節、指の関節などによく見かけます。痛みは運動時のみならず、安静時や夜間に耐え難い激痛として認められます。昔は裕福な貴族で飽食を好む中年に好発したため、「ぜいたく病」とか「帝王病」と呼ばれていました。最近では食生活の欧米化に伴い若者に多発する傾向にあります。大半が男性で30歳〜50歳代に多く、女性は高齢者に認められる傾向にあります。

高尿酸血症を治療せずに、放置しておくと、余剰な尿酸は脳や心臓、腎臓、尿管などの組織に沈着し、やがて脳血管障害や狭心症、心筋梗塞、腎炎(昔は尿毒症で死亡しておりました)及び尿管結石などを併発させ、危険な状態をもたらします。高尿酸血症はメタボリックシンドロームの誘因の一つです。したがって、痛風、高尿酸血症と診断されますと、生涯にわたり尿酸値のコントロールが必要となります。

治療
痛風発作の前兆(関節がうずく状態)を有する症例では、発作予防にコルヒチンを投与します。すでに発作を認める症例では、非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)を常用量の1.5程度使用します。NSAIDsが無効の症例では、ステロイド剤の内服ステロイド関節内注射を検討します。概ね、発作は2週間以内に治まります。しかし、発作が消失しても、依然として高尿酸血症は存在している訳ですから、高尿酸血症に対する治療が必要です。高尿酸血症の治療方針は、痛風発作の有無とメタボリックシンドロームの有無で決定されます。

●痛風発作を経験のある症例は尿酸値7mg/dl以上で薬物療法を開始いたします。
●痛風発作の経験がない症例は7〜8mg/dlで生活指導します。
@メタボリックシンドロームのある方では8mg/dl以上で薬物療法開始します。
Aメタボリックシンドロームのない方は9mg/dl以上で開始いたします。
なお、生活習慣の改善だけでは、尿酸値は1mg/dl程度しか下がらないと言われています。

薬物療法は少量から開始し、ゆっくり尿酸値を下げていきます。6mg/dl以下を目標値とします。(急に尿酸値を下げ過ぎると、関節に沈着していた尿酸塩が融解して、再発作を招くことがあるからです)。薬物療法は大きく2つに分かれます。一つは尿酸産生阻害剤(尿酸を作らなくする薬)です。一般名アロプリノール(商品名ザイロリック)、フェブキソスタット(フェブリク)、トピロキソスタット(トピロリック)があります。一つは尿酸排泄促進剤(尿酸を体内から排泄させる薬)です。一般名ドチヌラド(商品名ユリス)、ベンズブロマロン(ユリノーム)、プロベネシド(ベネシッド)、ブコローム(パラミヂン)などです。どちらの薬剤を選択するかは腎障害や肝障害、尿路結石の有無、他の既存症を考慮し、尿酸クリアランス、及びクレアチニンクリアランス法(早朝、空腹時1時間法)で決定されます。

なお、生活指導で改善される方もおられますが、大半の方は生涯にわたり服薬することになります。。喉もと過ぎれば熱さ忘れると言う諺がありますが、中には、疼痛発作がなく、無症状の期間が長く続くと、服用を嫌がられる方がおられます。中止すると再発作を起こし受診されます。服薬の重要性を説くために、あえて服用を1ヶ月間中止していただき、再検査すると、ほぼ尿酸値は再上昇しております。規則正しい服用が大切と思われます

 たはら整形外科