帯状疱疹後神経痛

帯状疱疹は水痘と同じウイルスで起こる帯状疱疹ウイルスの感染症です。小児期(3歳〜6歳)に、このウイルスに感染しますと、水痘(水ぼうそう)を起こします。水痘は発熱や咽頭痛を伴い発疹を主な症状とし、1週間程度で治ります。しかし、このウイルスは皮疹(皮膚にできた発疹)の知覚神経を介して神経の根元(脊髄神経節や脳神経節など)に密かに潜伏します。帯状疱疹とは、成人になって(時に、抵抗力の弱い小児にも起こりますが)体の免疫力が低下した際に、神経節に潜んでいた水痘、帯状疱疹ウイルスが再び活性化し、末梢神経の走行に沿って痛みと発疹(紅斑や水疱など)を引き起こす疾患です。

症状は痛みと皮疹です。痛みはウイルスによって犯された末梢神経の走行に沿って認められ、耐え難い痛み、ピリピリする様な痛み、焼ける様な痛み、針で刺される様な痛み、締めつけられる様な痛みなどと表現されます。多くは早期に診断され、適切に治療されれば、痛みは1週間程度で軽快し、2〜3週間程度で皮疹も治まります。

しかし、中には帯状疱疹後神経痛と言って、数ヶ月から数年間以上にわたって痛みが続くことがあります。この神経痛は水痘、帯状疱疹ウイルスによって末梢神経がかなりのダメージを受け、神経が変性した結果起こると考えられています。多くは免疫機能の衰えた60歳以上の高齢者に生じます。

治療は早期診断と早期治療が大切です。急性期には抗ウイルス薬を投与し、疼痛緩和にアセトアミノフェン、炎症緩和に非ステロイド系抗炎症剤を処方します。頑固な疼痛には神経障害性疼痛薬トラマドール塩酸塩デュロキセチンを検討します。症例によっては各種の神経ブロック療法を早期より行います。なお、神経ブロック療法は早期に行うことが大切です。神経ブロック療法は治癒期間(治り)を短縮させ、帯状疱疹後神経痛の発症を減少させる効果があります。また、症状が長期におよびますと、心因的疼痛も発生し疼痛の悪循環をもたらしますので抗不安剤や抗うつ剤が必要な症例もあります。

 たはら整形外科