ばね指

ばね指は腱鞘炎です。腱鞘(けんしょう)とは、腱を包んでいる鞘(さや)のことです。中に、滑液という油のようなものがあり、腱を滑りやすくしています。ばね指は、何らかの原因で腱鞘が炎症を起こし屈筋腱(指を曲げる腱)と腱鞘が肥厚し腱の滑走が悪くなり、痛みや運動障害をもたらす疾患です。名前の由来は、引っかかった指を無理に伸ばそうとすると、あたかもバネ現象のようにビヨーンと伸びるのでバネ指と言われます。別名、「弾発指」や「snapping finger」と呼ばれています。

症状:指の付け根の痛みと運動障害です。患者さんは「指の曲げ伸ばしが困難だ」、「朝起きると指が曲がったままで伸びない」、「無理に指を伸ばそうとすると引っかかりを感じる」などと訴えられます。中高年者によく見かけます。時に、多発性(同時に数本の指)に訴えて受診されます。慢性的な機械的刺激(使い過ぎ)が原因と思われますが、体質的な要因も関与していると考えられています(10本の指のうち、8本手術された方も経験しました)。全ての指に起こります。好発部位は母指が多く、次に3指、4指によく認められます。診断は理学所見(触診)で容易です。詳細な情報収集に超音波検査は有益です。時に、ガングリオンによって腱鞘や屈筋腱が圧迫されて発症されるケースもあります。

治療:生活指導として誘因となった作業や運動を一旦控えていただき、軟膏剤を利用して指の伸展ストレッチをしていただきます。炎症緩和に非ステロイド性抗炎症剤を処方します。効果のない症例はステロイド腱鞘内注射を行います。これらで改善されない症例や早期に改善を望まれる方には腱鞘切開術を勧めます。腱鞘切開術は成績が良く満足されます。

稀に、先天的に乳幼児の母指に屈筋腱炎を発生することがあります。乳幼児の場合は成人と違って、関節が固まって全く伸びません。別名「剛直指」と呼ばれます。治療は、曲がった指を徒手整復(強制的に伸ばして)、指装具(母指を過伸展位にした状態で)数か月間装着させます。改善されない症例は腱鞘切開術を検討します。

 たはら整形外科