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2025年1月からの医療情報 |
デジタル聴診器で心音をAI解析 心音をセンサーで読み取る「デジタル聴診器」を検診に活用する実証実験を、群馬大学が4月からスタートする。データを解析するAI(人工知能)の精度が上がれば学校での検診などに活用できるほか、労働時間が問題となっている医師の負担軽減にもつながる可能性がある。国内では初の取り組みで、関係者は期待を寄せている。デジタル聴診器は手のひらサイズで、重さ300グラムほど。仰向けに横になった状態で、胸の上に載せて使用する。約8秒で心音のデータを取得し、パソコンに送信。パソコンに搭載したAIが解析し、1分ほどで結果が出るという。(2025年4月2日朝日新聞) パーキンソン病の正体 みのもんたさんが80歳で亡くなりました。6年前、知人の葬儀で、勝手に上半身が前に傾き、じっと立っていられないという体の異常に気付き、パーキンソン病と診断されました。高齢者人口が増える中、日本でも世界でも、パーキンソン病患者が増えています。パーキンソン病は、脳の中央部の中脳にあるドパミンという神経伝達物質を分泌し運動調節などをする神経細胞が変性、脱落するために起こる進行性の神経変性疾患です。動作は緩慢になり、筋肉は硬く緊張し、手足が震え、姿勢を安定に保つことが難しくなります。運動障害に加えて自律神経なども支障を起こし、便秘や嗅覚障害、立ちくらみや痛みも出ます。経過中には認知症も発症します。50~65歳で発症が多く、高齢になるほど発症者が増えます。日本では10万人に50人程度の頻度です。男女比は3対2で男性に多い病気です。原因は分かっていませんが、遺伝と環境因子が関与し、40歳以下の若年性パーキンソン病では特定の遺伝子に異常をよく認めます。環境要因には殺虫剤などの有機溶媒への暴露や頭部外傷があり、逆に運動は発症リスクを下げます。治療には薬物治療と脳深部刺激療法、リハビリなどです。現在の治療法は症状改善に有効ですが、病気の進行を遅らせたり、治したりするものではありません。しかし、予後は決して悪くなく、寿命は発症していない人より少し短いだけです。(2025年4月1日産経新聞) HIV感染、新規エイズ患者増加目立つ 厚生労働省のエイズ動向委員会は2024年に千人のエイズウイルス(HIV)感染が新たに判明したと発表した。報告されたHIV感染者は664人、エイズ患者は336人だった。検査件数は10万8988件で前年より多かったが、新型コロナ流行前の水準には戻っていない。委員長は「外国籍のエイズ患者報告が増加しており、早期発見と早期治療が重要だ」とコメントした。(2025年3月31日 共同通信社) H. pylori感染の診断と治療のガイドライン改訂のポイント H. pylori感染の診断と治療のガイドラインが8年ぶりに改訂された。感染診断と除菌治療に関わる医師に向けた改訂ポイントとして、ペニシリンアレルギーなどの特殊な除菌治療の流れが明確になった。また、 これまで標準的な1次除菌はプロトンポンプ阻害薬(PPI)もしくはカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)にβ-ラクタム系抗菌薬アモキシシリンとクラリスロマイシンを加えた3剤併用療法だったが、 これまでにPPIベースの3剤併用療法に比してP-CABベースの3剤併用療法の除菌率が高いというエビデンスが集積したことを踏まえ、 本ガイドラインではP-CABであるボノプラザンを軸にした3剤併用療法が推奨となっている。(2025年3月31日ケアネット) 児童虐待22万件、過去最多 全国の児童相談所による2023年度の虐待相談対応件数が、過去最多の22万5509件に上ったことが厚生労働省のまとめで分かった。現段階で統計開始から33年連続増。暴言などで心を傷つける心理的虐待が13万4948件と59・8%を占め、うち子どもの前で家族に暴力を振るう「面前DV」が7万8914件だった。虐待相談種別は、心理的虐待の他は身体的虐待が5万1623件(22・9%)、ネグレクト(育児放棄)が3万6465件(16・2%)、性的虐待が2473件(1・1%)だった。虐待された子の年齢は3歳が1万4423件で最も多い。全体の中で身体的虐待の割合は、年齢が上がるにつれて増える傾向がみられる。(2025年3月26日 共同通信社) 「ゾフルーザ」インフル治療薬で首位 今冬に処方されたインフルエンザの治療薬でゾフルーザの処方が首位となったことが、医療従事者向けサイトを運営するエムスリーの調査で分かった。エムスリーが全国約6500のクリニックなどに調査した診療情報データベース「JAMDAS」によると、今シーズン(昨年11月13日~今年2月18日)の統計で、ゾフルーザのシェアが36・4%。タミフルとそのジェネリック医薬品は34・9%。イナビルは26・7%だった。ゾフルーザは昨年9月、世界規模の臨床試験(治験)の結果、ゾフルーザを投与することで周囲への感染抑制につながる効果が確認できたことを発表。抗ウイルス薬で感染を抑えるデータが治験で明確に示されたのは世界初。(2025年3月26日産経新聞) 外国人介護士、倍増498人 厚生労働省は2024年度の介護福祉士国家試験で経済連携協定(EPA)に基づきインドネシア、フィリピン、ベトナムから来日した人の合格者数が過去2番目に多い498人だったと発表した。前年度の228人から倍増した。合格率は37・9%。EPAで来日した場合、日本語の研修を受け、介護施設や病院で数年働いた後に国家試験を受ける。24年度の3カ国の受験者数は過去最多の1314人だった。国別で合格者数を見ると、インドネシアが237人で最も多く、ベトナムが150人、フィリピンが111人だった。併せて、看護師国家試験の合格者数も発表した。EPAに基づく3カ国の合格者数は36人増の53人で、合格率は18・6%だった。(2025年3月25日 共同通信社) 新型コロナ治療薬「パキロビッド」に効果なく ファイザーの新型コロナウイルス感染症治療薬「パキロビッド」は、予防接種を受けた高齢者の入院や死亡を減らす効果がみられないとの研究を米国のチームが米医師会雑誌に発表した。薬の実用化の根拠となった臨床試験では、参加者はワクチン未接種で、年齢層も若かった。接種の進んだ高齢者では有効性の研究が乏しかった。カナダ・オンタリオ州の65~74歳の約162万人、2022年4~11月のデータを対象にした。その9割近くがワクチンを2回以上接種していた。その結果、70歳より少し若い人と比べて、70歳から少し上の人は、この薬を処方された割合は倍以上だったのに、入院者や死者の割合には違いがみられなかった。(2025年3月25日 共同通信社) 国内最大規模の感染症研究拠点 国内最大規模の新たな感染症研究拠点「大阪大学・日本財団 感染症センター」が大阪府吹田市の阪大吹田キャンパスに完成した。最先端の機器を導入し、新たな感染症の拡大に備えて治療薬やワクチン開発に向けた体制を強化する。センターは地上10階、地下1階。様々な機器をそろえた7階の「共用実験室」は、阪大内外の研究者や企業が利用可能で、細胞の感染後の変化などを迅速に解析できる。センターを拠点に、若手研究者の育成も進める計画だ。(2025年3月25日 共同通信社) 風邪症状抑える乳酸菌発見 江崎グリコは免疫調整機能を持つ乳酸菌の中で、特に優れた調整能力を持つ菌を発見したと発表した。摂取すると風邪の自覚症状を抑える効果があることも実証。成果は国際科学誌などに掲載された。2000年ごろから腸内細菌研究を続け(1)免疫系統のスイッチを入れる(2)ウイルスに感染した細胞を排除する(3)病原体の侵入を防ぐ―といった機能を持つ三つの細胞や抗体を活性化した唯一の乳酸菌「GCL1815株」を発見した。23年1~3月には成人男女192人を対象に効果を検証。二つの集団に分かれGCL1815株を含むカプセルと含まないカプセルをそれぞれ毎日飲んでもらうと、菌を摂取した集団の方が免疫細胞が活性化した。倦怠感や疲労感、鼻づまりなどの発症日数は約42~48%少なかった。感染症予防など健康維持に望ましく、今後も効果の検証を進めるとしている。(2025年3月18日 共同通信社) 有料老人ホーム、高額な紹介料、対策を検討 難病患者ら向け有料老人ホームの一部が入居者の紹介会社に高額な紹介料を支払っていた問題を受け、厚生労働省は有識者検討会を設置して対策を議論すると明らかにした。入居者紹介の実態を把握した上で透明性を高める方法や、自治体による指導監督の強化などを検討し、夏ごろに方向性をまとめる。有料老人ホームを巡っては、スタッフの訪問回数や人数を不必要に増やすなどして報酬を過剰に請求する問題もあり、検討会では自治体が適切にチェックできる体制も議論する。入居者向けに訪問看護ステーションを併設しているホームもある。難病の入居者向けの訪問看護では多額の診療報酬を得ることができるため、ホーム運営会社の一部が平均額の約6倍に当たる1人150万円を紹介会社に支払っていたことが共同通信の取材で判明。(2025年3月18日 共同通信社) 高額療養費制度、外国人の利用 高額療養費制度の見直しをめぐり、国民民主党の発言が波紋を呼んでいる。現行制度では外国人でも3カ月程度の滞在で数千万円相当の高額療養費を受けることができると主張し、不適切利用を防ぐためにも制度を見直すべきだと訴えている。「3カ月日本にいれば外国人でも制度を使える。数万円払ったら1億6千万円の治療が受けられる。現役世代が苦労して支払う社会保険料は、原則、日本人の病気や怪我のために使われるべきと主張。政府は、国籍を問わず、国内に住所がある人に対し国民健康保険への加入を義務づけているが、外国人であっても就労や留学などで在留期間が「3カ月を超える」中長期在留者や特別永住者が対象であり、保険料を支払うことで高額療養費制度を利用できる。(2025年3月18日 朝日新聞) 「介護DX」オンラインで情報確認 介護分野のデジタル化などを進める「介護DX」について、厚生労働省は2026年度から始める方針を示した。自治体や事業所の事務負担を軽減し、サービスの質を高めたり、早く提供したりする狙い。今後、マイナンバーカードの活用などについても検討していく。同省が開いた審議会の部会で方針を示し、了承された。現在進行中の自治体の情報システムの統一が前提で、2026年4月以降、作業を終えた自治体から取り組む。具体的には、要介護認定に必要な主治医意見書や、ケアマネジャーが作成するケアプラン(介護サービス計画書)、要介護度などの利用者の基本的な情報を一つのシステムにまとめる。介護事業所や医療機関、自治体などがオンライン上で確認できるようにする。これまでは郵送やファクスなど紙でやり取りしていたため、要介護度の認定手続きが長期化するなどの影響があった。(2025年3月17日朝日新聞) 脊髄損傷で生じた麻痺、回復促進 横浜市立大などの研究チームは富士フイルムと共同開発した化合物が、脊髄損傷で生じた麻痺に対するリハビリ効果を大きく促進することが分かったと発表した。ニホンザルを使った実験で確認した。チームは「数年以内の臨床試験開始を目指したい」としている。 この化合物は「エドネルピクマレイン酸」。チームは、細い隙間から餌を落とさず指でつかみ取るようサルを訓練。脊髄を傷つけて指を麻痺させ、3匹は化合物を投与し、別の3匹は偽薬を与えて、それぞれ餌をつかみ取るリハビリをした。すると偽薬を投与したサルでは、餌をつかみ取る成功率が約50日後でも50%程度だったが、化合物を投与したサルは40日前後でほぼ100%となった。投与したサルは、指の運動に関わる脳の領域が拡大していた。成果は国際専門誌に掲載された。(2025年3月13日産経新聞) 終末期医療の指針、10年ぶりに改訂へ 助かる見込みがなくなっても、一度装着した人工呼吸器は取り外せない。こうした問題意識のもと、救急や集中治療を担う医師たちの学会が、終末期医療に関する指針の改訂に向けて動き始めている。最大のポイントは、10年前に合同で指針をつくった日本救急医学会、日本集中治療医学会、日本循環器学会に加え、新たに緩和ケアを専門とする日本緩和医療学会が加わり、4学会合同の指針として改訂作業をすすめている。人工呼吸器などの治療の中止をめぐっては、医師が訴追される事件が1990年代以降に相次いだ。厚生労働省は2007年患者にとって最善の終末期医療を決めるための手続きをまとめた指針を公表した。指針では、生命を短縮させる意図をもつ積極的安楽死は対象外とした。そのうえで、患者の意思を尊重することや、医師単独ではなく他職種の医療・ケアチームで対応することの大切さを説き、治療の中止も容認した。ただ、終末期とはどのような状態かを定義していないなど、使いづらいとの声が現場では強かった。厚労省の指針を踏まえつつ、救急や集中治療の現場での具体的な手順をまとめたのが、日本救急医学会などの3学会が14年に公表した今の指針だ。どのような状況を「救急や集中治療における終末期」と呼ぶかを定義し、具体的な状況を例示した。筋弛緩剤などで死期を早めることは行わないことも明記された。だが、結果的には、十分に活用されているとは言えないまま、10年が推移した。現行指針の3つの課題。一つは、想定された終末期の範囲が限定的だったこと。今の指針では、終末期の対象を、集中治療室で積極的治療を続けても「おおよそ2~3日程度以内」に亡くなることが予測できる患者に限っている。ある救急医は「現場で実際に困っているのは、指針が想定したケースではなく、数日では亡くならないけれど、回復が見込めないケース。だから、指針は使えなかった」と指摘する。もう一つは、法的な責任を問われる懸念が払拭できなかった。厚労省の指針も学会の指針も、治療を中止した医師が訴追されないことを法的に担保しているわけではない。三つ目は、治療を中止した後、命を閉じるまでにどのような医療を提供すればよいのかが、指針にまったく記されていなかったことだ。4学会合同のシンポジウムは今年3月の集中治療医学会でも開かれ、指針の改訂に向けて、さらに内容を議論する予定だ。(2025年3月13日朝日新聞) 「地域から医療機関なくなる」病院の6割超が赤字 日本病院会など病院関係6団体は、2024年度の診療報酬改定後に病院がより深刻な経営難に陥っているとする緊急調査の結果を公表した。物価の高騰や賃金の上昇に伴い、診療にかかる費用が収益を上回り、経常利益が赤字の病院が6割超に上ることが明らかになった。調査は今年1~2月、6団体の会員である5901施設を対象に実施し、1816施設(30・8%)が回答した。改定後の昨年6~11月と23年同期の経営状況を比較した。その結果、経常利益が赤字と回答した病院は61・2%で、23年同期(50・8%)から10・4ポイント増加した。通常の入院や外来診療といった医業収益は1・9%増だったのに対し、給与費は2・7%増、診療材料費や水道光熱費などの経費は2・4%増と、いずれも医業収益の増加率を上回った。病院経営は年々悪化していることから、「このままでは、ある日突然、医療機関が地域からなくなってしまう」と危機感を強調。日本医師会長は「非常に厳しく、差し迫った状況にある。物価・賃金の上昇に適切に対応する診療報酬の仕組みが必要だ」と述べた。(2025年3月12日読売新聞) 訪問看護の「指導」を強化へ 訪問看護事業所で診療報酬の高額請求に不適切なケースがあるとして、厚生労働省は事業所への「指導」を2025年度中に強化する方針を明らかにした。規模の大きな事業者には本省も対応する。質の向上を目的とした「指導」により、サービス内容と報酬請求の実態を把握しやすくするのが狙いだ。要介護度高い高齢者に「高額値付け」老人ホーム紹介ビジネスが横行。厚労省が同日に開いた中央社会保険医療協議会で「指導」の強化案を示し、了承された。案では、複数の都道府県で訪問看護ステーションを運営する事業所に対し、地域ごとに指導業務を所管する地方厚生局だけでなく、厚労省本省が指導に入れる仕組みをつくる。指導対象には「請求の平均額が高い」といった事業所も加え、適正な請求の方法などを指導する考え。不適切な事案の把握は、これまで関係機関や利用者などからの情報提供に頼っており、指導対象を広げることでより把握できるようにする。(2025年3月12日朝日新聞) 新型出生前診断、全染色体に拡大へ 妊婦の血液から胎児の染色体の状態を調べる新型出生前診断で、日本医学会が認証する全国の大学病院など13施設の研究チームが、特定の染色体でダウン症候群など三つの病気を調べる現在の検査について、全ての染色体を対象に広げる臨床研究計画をまとめ、関係学会に伝えた。対象はエコー検査で胎児の体から病気が疑われたケースなど約2000人の妊婦で2025年度にも研究を始める。染色体は人体の設計図で計23対46本ある。2本ずつが基本だが、本数が1本や3本になることや、染色体の一部が欠けたり重なったりすると、病気の原因になることがある。認証施設では13、18、21番染色体の本数が3本になっているかどうかに限って18年から本格実施されている。一方、美容外科など認証を受けていない施設では、全ての染色体の状態も調べるとうたう検査が広がっている。3項目以外の病気は現れる頻度がまれで検査の精度は確立しておらず、誤った検査結果で混乱が生じるケースがある。研究計画によると、全ての染色体を対象に、染色体の数や、一定の大きさ以上の欠失や重複を調べる。全染色体を対象にした新型出生前診断の実施を視野に、検査の精度を保てるか、色体の変化と胎児の病気との関連を明らかにすることを目指す。対象は妊娠10週以降で、エコー検査で胎児の形態の特徴から病気が疑われた人や過去に染色体疾患の子を出産した人などに限る。結果は希望者に開示する。検査項目の拡大で多発奇形や知的障害、発達の遅れなどの症状につながる、染色体の変化が分かる可能性があるとする。(2025年3月11日毎日新聞) 日本で臓器提供数増えず 脳死は、脳全体の機能が失われ、元に戻ることはなく、やがて心臓が停止する状態だ。呼吸など脳の一部の機能が保たれ、回復の可能性がわずかでも残る「植物状態」とは異なる。脳死状態になったとき、私たちには臓器を「提供する権利」と「提供しない権利」がある。提供できるのは、心臓、肺、肝臓、腎臓、 膵臓 、小腸、眼球で、いずれも臓器移植でしか治療できない患者に届けられる。国内では近年、脳死下の臓器提供数がようやく増え始め、2023年、24年は約130件になった。ただし脳死提供者(ドナー)は人口100万人あたり1.05人(2023年)で、米国と比べ29分の1と依然として先進国で最低水準だ。一方、2月末時点で約1万6800人が移植を望んでいる。臓器提供に関する意思表示は運転免許証やマイナンバーカードなどで行えるほか、日本臓器移植ネットワークのウェブサイトでも登録できる。(2025年3月8日読売新聞) 「エコーウイルス11型」を調査へ 厚労省 欧州を中心に2022年以降、夏風邪の原因となる「エコーウイルス11型(E11)」に感染した新生児の重症・死亡例の報告が相次いでいる。日本でも昨年、急性肝不全などを発症して死亡した新生児3人からE11を検出。厚生労働省は同様のケースがないか、全国調査に乗り出した。厚労省や国立感染症研究所によると、E11に感染した新生児の重症例は近年、欧州各国で増加。フランスでは2022~23年、急性肝不全などを伴う9例(うち7例が死亡。イタリア、スペインなどでも重症例の報告が続いた。新たな変異株の出現も確認されている。一方、国内でも令和6年8月以降、重症例の報告が相次いでおり、東京都内では、嘔吐や黄疸症状などが出て入院した新生児3人が、急性肝不全などを起こして死亡。3人からはE11が検出された。E11の症状や重症度は十分に解明されておらず、さらなる情報収集が必要としており、重症・死亡例の実態を調べる方針。E11は小児を中心に夏風邪症状が出るといわれるエンテロウイルスの一種。夏場に感染者が増えるとされる。患者の便に触れた手などを介してウイルスが別の人の体に入る糞口感染や接触感染、飛沫感染が主な感染ルートとされている。感染しても大半は無症状や微熱など軽度な風邪症状で治るが、新生児が感染するとまれに肝不全や髄膜炎など重篤な疾患を発症することがある。特効薬はなく、治療は対症療法となる。(2025年3月6日産経新聞) 尿中遺伝子検査で進行性前立腺がんを高精度で検出 前立腺がんの診断を受けた場合には、どうすればよいのだろうか。がん自体が命に関わるものではない場合でも、治療の結果として失禁や勃起不全に悩まされることは少なくない。患者によっては、不安を抱えはするが、がんとともに生きながら経過観察を続ける方が良い場合もある。こうした中、尿サンプルを用いた遺伝子解析に基づく新しい検査が、早期死亡につながる可能性の高い進行性の前立腺がんの特定に役立つ可能性が示された。研究グループは、この検査が、前立腺がんを治療すべきか、経過観察すべきかを判断する際に役立つ可能性があるとしている。米ミシガン大学泌尿器科学分野の研究結果はThe Journal of Urologyに1月21日掲載された。この検査は、尿サンプルから抽出したRNAを用いて解析を行い、進行性前立腺がんに関連する18種類の遺伝子の発現レベルを評価する。この検査の最大の利点は、進行性前立腺がんの発症リスクを正確に予測できる。現在の前立腺がん検査のゴールドスタンダードはPSA検査である。しかし、PSA値が上昇した男性のうち、実際に早急な治療が必要なのは25%未満に過ぎないという(2025年3月3日HealthDay News) 子宮頸がんワクチン、「前がん病変」8割減少 米疾病対策センターは子宮頸がんを予防するヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種が、若い世代の女性に効果があったとする報告書を公表した。2008年から22年に検査を受けた米国の20~24歳の女性では、前段階である「前がん病変」と診断された割合が約8割減少したとしている。子宮頸がんは子宮の出口近くにできるがんで、ウイルスの感染が主な原因。20代から患者が増え始めるとされる。米国では11~12歳の女児にHPVワクチン接種が推奨され、2021年まで接種率は着実に増加した。20~24歳が最も接種率が高い世代という。中度と重度の前がん病変を調べた結果、20~24歳ではいずれも約8割減少したが、25~29歳では重度の前がん病変の減少率は4割近くにとどまった。日本では2013年から定期接種が始まったが、全身のしびれなどの訴えが相次ぎ、積極的勧奨を中止。有効性や安全性が確認されたとして2022年から勧奨を再開したが、接種率は低迷している。日本産科婦人科学会によると、日本では毎年約1万人が子宮頸がんとなり、約3千人が死亡している。(2025年2月28日共同通信社) 医療ソーシャルワーカーと紹介業者との関係 高齢者施設に入所者を紹介する業者に対し、入所者の要介護度に応じた高額な紹介料が施設から支払われている問題で、日本医療ソーシャルワーカー協会は全国の約5500人を対象に、紹介業者との関わりについて実態調査を始めた。医療ソーシャルワーカーは病院などで社会福祉の立場から患者らをサポートする専門職で、退院先の調整も担う。高額紹介料の問題では、元紹介業者が朝日新聞に対し、医療ソーシャルワーカーに飲食などの接待を行い、患者の紹介を受けていたと証言した。要介護度高い高齢者に「高額値付け」老人ホーム紹介ビジネスが横行。同協会の調査は、紹介業者の利用の有無や接待を受けた経験について、回答を集めるという。協会によると、医療ソーシャルワーカーの退院支援には、患者の自己負担分や保険料でまかなう診療報酬が支払われているという。(2025年2月28日朝日新聞) 膵臓がん早期発見、胃カメラで 胃カメラで採取した液体を調べることで早期の 膵臓がんを高精度に発見する手法を開発したと、大阪大などのチームが発表した。5年後の実用化を目指すという。論文が国際医学誌に掲載された。膵臓がんは年間約4万5000人が診断され、約4万人が亡くなる。早期では自覚症状もなく、診断時点でかなり進行していることが多く、特に治療が難しいがんの一つだ。がん細胞で遺伝子が変異することが知られているが、がんが進行しないと血液検査ではわからず、早期発見が課題となっている。チームは、膵臓から十二指腸に分泌される膵液に変異したがん細胞の遺伝子が含まれることに注目。分泌を促す薬剤を注射し、特殊な胃カメラを十二指腸まで挿入して膵液を採取し、遺伝子検査で早期がんを見分ける方法を開発した。健康な46人と、早期膵臓がん患者41人を対象に臨床試験を行うと、早期患者を正しく判定する精度が81%、健康な人を正しく判定する精度が100%だった。体への負担はほぼないという。膵液分泌を促進する薬剤は米国では医薬品として承認されているが、国内では未承認となっている。チームは今後、薬剤を製造する国内企業を探しながら、追加の臨床試験で有効性を検証していく方針だ。(2025年2月26日読売新聞) 25年度予算案、医療費4兆円削減明記 自民、公明、日本維新の会の3党政調会長は2025年度予算案の修正案で合意した。合意文書案は、社会保険料改革に関し、医療費総額の年間4兆円の削減目標を明記。私立高校に通う世帯への支援金は「26年度から45万7千円に引き上げる」とした。25年度から国公私立で年収を問わず全世帯に年11万8800円を支給。私立への支援金は26年度に所得制限を撤廃し、現行の年39万6千円から増額。全国平均授業料45万7千円と明確にした。給食無償化に関しは、まずは小学校を念頭に26年度に実現する。社会保険料改革では、市販薬の保険適用除外や、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)を通じた効率的な医療の実現を列挙。(2025年2月25日共同通信社) フロスの使用に脳梗塞の予防効果 デンタルフロス(歯間ブラシで以下、フロス)の使用は、口腔衛生の維持だけでなく、脳の健康維持にも役立つようだ。米サウスカロライナ大学医学部神経学分野のSouvik Sen氏らによる研究で、フロスを週に1回以上使う人では、使わない人に比べて脳梗塞リスクが有意に低いことが示された。この研究結果は、米国脳卒中学会で発表された。この研究では、フロスの使用と脳梗塞(血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症、ラクナ梗塞)および心房細動との関連が検討された。脳梗塞の既往がない6,278人とし、内65%がフロスを使用していた。25年の追跡期間中に434人が脳梗塞を、1,291人が心房細動を発症していた。解析からは、フロスを使用していた人では使用していなかった人に比べて、脳梗塞全体のリスクが22%低く、特に心原性脳塞栓症のリスクについては大幅な低下が認められた。心房細動についてもリスク低下の傾向が認められた。一方、フロスの使用と血栓性脳梗塞およびラクナ梗塞との間に有意な関連は認められなかった。こうした結果を受けてSen氏は、「フロスの使用が脳梗塞の予防に必要な唯一の方法と言うわけではないが、本研究結果は、フロスの使用は、健康的なライフスタイルに加えるべきもう一つの要素であることを示唆している」と述べている。また同氏は、「フロスを使うと、炎症と関係のある口腔感染症や歯周病が軽減される」と指摘する。その上で、炎症は、脳卒中リスクを高める可能性があるため、「定期的にフロスを使うことで、脳梗塞やAFのリスクが軽減すると考えるのは理にかなっている」と話している。(2025年2月24日HealthDay News) ずさんなオンライン診療 スマホなどを介したオンライン診療でトラブルが相次いでいる。医師が診察しなかったり、初診で禁じられた向精神薬を処方したりと、医師法や国の指針に抵触しかねないケースも目立つ。放置すれば重大事故につながりかねず、厚生労働省は規制強化のため法改正に乗り出す。精神面に不調を感じた関東地方の50歳代の女性は、東京都内のクリニックのオンライン診療を予約した。LINEで薬の服用歴などの簡単な質問に答えると、スマホが鳴った。看護師を名乗る女性だった。よく眠れないことを伝えると、睡眠薬の服用を勧められた。数日分を希望したが、1か月分からしかないと言われた。届いた薬を口にすると、めまいがしたため、怖くなって服用をやめた。医師は出てこず、副作用の説明もなかった。緊急避妊薬(アフターピル)を巡っても、不適切な事例が確認された。女子中学生はLINEで手続きの流れや頭痛などの副作用を説明された。その後、電話をしてきた女性は職業や名前を告げず、希望する薬の名称を聞くだけだったという。オンライン診療の主な流れについて「医師が診察せずに薬を処方することを禁止。厚労省が2018年に策定したオンライン診療の指針では、基礎疾患の情報が未把握の患者に対しては、8日分以上の薬の処方を禁じている。患者の通院の負担が減るオンライン診療は離島などで導入され、18年度に公的医療保険の適用対象になった。利便性が高い一方、触診や聴診ができないといった制約があり、対象は対面診療を一定期間受けている患者に限られた。この条件が緩和されたのがコロナ禍だった。待合室での感染リスクが低減されるなどの利点があり、特例的に初診から認められた。22年以降は恒久化され、24年10月時点で、全医療機関の1割にあたる1万2507か所が実施を届け出た。厚労省が電話とオンラインでの診療について調べたところ、初診時に基礎疾患の情報が未把握なのに8日以上の薬を処方したり、向精神薬を出したりといった指針違反の恐れがある事例が、23年1~3月だけで1740件発覚した。全国の消費生活センターにも23年度、ダイエット目的の事例を中心に、オンライン診療に関して258件の相談が寄せられ、21年度の約5倍に増えた。同省幹部は「病院側が迅速さを重視し、対応がずさんになりがちだ。基礎疾患の把握や副作用のリスク説明を適切にしないと、重大な医療事故を引き起こしかねない」と危惧する。(2025年2月23日読売新聞) がんの早期発見に期待 AI(人工知能)を使って、全身の細胞から分泌される微粒子「細胞外小胞(EV)」を高効率に検出できる技術を開発したと、東京大などの研究グループが発表した。がんの早期発見につながると期待される。EVは脂質の膜で分子を包み、細胞から分泌されたもので、直径は数十~数百ナノメートル(ナノは10億分の1)。血流で離れた臓器に情報を伝える役割があり、効率よく検出できれば、がん検査などに応用できる可能性がある。高速で解析する従来の装置は感度が低く、微粒子の信号を見逃してしまうことが課題だった。そこで、研究グループは装置を改良するとともに、AIで粒子由来ではない信号(ノイズ)を取り除くことで感度を上げる手法を開発した。その結果、最小30ナノメートルの微粒子を1秒間に約10万個検出できた。感度と速度は世界最高水準という。さらに、この技術で検出したEVを濃縮して解析することで、大腸がん患者と健常者で、がん特有の物質の含有率の違いを見分けることに成功した。(2025年2月21日朝日新聞) 老人ホーム紹介ビジネスが横行 高齢者らが老人ホームなどの高齢者施設に入る際、施設を紹介する業者が介在し、施設側から業者に高額の「紹介手数料」が支払われるケースが相次いでいる。要介護度が高く、施設が多く報酬を得られる入所者ほど、紹介料を高額にするビジネスが横行している。厚生労働省は、要介護度にひもづいた料金設定は不適切として、紹介料に関し施設を指導するよう求める通知を自治体に出した。ただし紹介業者は指導対象ではない。高齢者施設は、入所者の要介護度に応じて介護報酬を得られる。施設運営会社が訪問看護事業所も経営していることがあり、入所者への訪問看護で診療報酬も入ることになる。朝日新聞は、老人ホーム側と紹介業者が結んだ複数の契約書を入手した。業者側が入所者をホームに紹介する「手数料」が記されている。要介護度が上がって介護報酬が高くなるのに従い、紹介料が上がる仕組みになっていた。関西のあるホームの契約書では、要介護度1の入所者の紹介料は30万円で、要介護度5は50万円。さらに1日3回の訪問看護を受ける場合、要介護度1が70万円、要介護度5が100万円になっている。このホームの運営会社は訪問看護事業所も経営している。症状ごとに高齢者に「値段」が付けられている形だ。紹介業者が手数料を取るのは入所者や家族からではなく、ほとんどが施設側からだが、入所者側には知らされずに金銭授受が行われているケースが多くある。紹介料の高さが優先され、入所者が希望の施設に入れない事態が起きている。病院にいる高齢者の場合、入院が一定期間を過ぎると診療報酬が減るため、長期入院の高齢者は採算が悪いとされ、退院になることが多い。老人ホーム側は高い介護・診療報酬を得られる入所者を求める。病院とホームそれぞれの事情の間に紹介業者が介在し、紹介料の高騰が起きている。(2025年2月17日朝日新聞) 自傷や自殺未遂、20代が最多 自殺未遂などの救急搬送症例を登録するシステム「自傷・自殺未遂レジストリ」が始まった2022年12月から23年末までに集積された1987件のうち、年代別は20代が570件(28・7%)と最多だったことが報告書で分かった。救命救急センターからの退出時も「死にたい」という気持ちがあったケースが全体の2割に上った。報告書によると、登録症例は男性733件、女性1254件。年代別では、20代が570件(28・7%)、30代334件(16・8%)、50代269件(13・5%)の順に多かった。10~20代は女性が男性の2倍以上で、60代以降は男女差がほぼなかった。時間帯は午後6~11時台が目立ち、少ないのは午前3~8時台。救命救急センター来院時に死にたい気持ちがあったのは694件、なかったのは356件で、他は不明だった。センター退出時に死にたい気持ちがあったのは400件だった。(2025年2月16日産経新聞) 老いたら「栄養のギアチェンジ」 腹囲や血圧に中性脂肪、コレステロール、血糖値など、現役世代、とりわけ40歳以上は健康診断でこれらの数値をチェックされ、基準を外れていれば改善を指導される。一言で言えば肥満は厳禁だ。こうした健康指標は万人の真理と思いがちだが、そうではないようだ。老年医学が専門の佐々木医師は「高齢になったらしっかり食べる『栄養のギアチェンジ』が必要」と話す。高齢者では死亡リスク因子が切り替わる。主に40歳以上の現役世代にとって、肥満は悩みの種だ。食べ過ぎにより内臓脂肪が蓄積されると高血圧や糖尿病などの生活習慣病のリスクが高まり、脳梗塞や心筋梗塞といった、血管の老化による動脈硬化性疾患につながる。そのため食べ過ぎを控え、白米は玄米に切り替え、肉は控えて野菜や魚を多めに、塩分や油の多いファストフードは避ける。現役世代はそれでいいが、年を取ったらたくさん食べて太った方がいいと話す。そもそも現役世代が動脈硬化性疾患の予防に努めるのは、心身ともに自立して健康的に生活できる健康寿命を延長させるためだ。2024年暮れに発表された日本人の健康寿命は女性75.45歳、男性72.57歳。一方、平均寿命は女性87.14歳、男性81.09歳。平均寿命と健康寿命の差は女性で約12年、男性で約9年ある。要介護者の割合が高まる80歳以上では死亡のリスク因子は、動脈硬化性疾患から低栄養とサルコペニア(筋肉減少症)に変わる。それらを放置すると脆弱(ぜいじゃく)性疾患と呼ばれる誤嚥(ごえん)性肺炎や転倒骨折を起こしやすくなる。誤嚥性肺炎は字面から食べ物が誤って肺に入って起きると思われがちだが、多くは就寝中に唾液が気管から入り込んで起こる。健常者であればせき反射や免疫によって排除できるが、要介護状態やその前段階であるフレイル(虚弱)だとそのバリアーが低下してしまう。また、転倒による骨折は要介護状態の第一歩だ。年代別の人口に占める要介護認定者の割合は、加齢とともに急増し、80~84歳では26.0%、85歳以上では59.5%と半数を超える。それらを防ぐのが摂取エネルギーのギアチェンジが必要だ。(2025年2月15日毎日新聞) RSV感染症 vs インフル RSウイルス(RSV)は小児だけでなく成人にも重大な影響を及ぼすが、成人のRSV感染症の入院患者の重症度や転帰に関する報告は少ない。今回、東京科学大学の井上 紀彦氏らがRSV感染症とインフルエンザの成人入院患者を比較した後ろ向き観察研究の結果、RSV感染症は入院中だけではなく長期アウトカムにおいてもインフルエンザと同等以上の健康上の脅威が示された。Infectious Diseases誌オンライン版2025年2月4日号に掲載。本研究では、日本のDPCシステムに基づく358病院の請求データを基に、2010年4月~2022年3月にRSV感染症またはインフルエンザで入院した18歳以上の5万6,980例を対象とした。短期アウトカムは入院中の重症度指標として医療資源(ICU入室、酸素補充、機械的人口換気、体外膜酸素療法)利用率および院内死亡率とし、長期アウトカムは生存者の退院後1年以内の再入院および入院後1年以内の全死亡とした。逆確率重み付けによる調整後、ポアソン回帰を用いてリスクを推定した。主な結果は以下のとおり。 ・RSV群はインフルエンザ群と比較して、入院中に機械的人工換気を必要とするリスクが高かった ・院内死亡率はRSV群とインフルエンザ群で同等であった ・RSV群はインフルエンザ群と比較して、生存者の退院後1年以内の再入院リスク、および入院後1年以内の全死亡リスクが高かった。 ・年齢層別解析では、60歳以上で、RSV群がインフルエンザ群よりも1年以内の院内死亡、再入院、全死亡のリスクが高かった。(2025年2月14日ケアネット) エンディングカード 医療、介護関係者でつくる「山陽小野田市在宅医療・介護連携推進協議会」は、どのような医療やケアを望むかを書き記す同市版エンディングカード「もしもの時、わたしの思いを伝えるカード」を作成した。お薬手帳に貼り付けるタイプで県内では珍しい取り組み。医療や介護のケアに自らの思いを反映することができるのが特徴だ。もしもの時に大切にしたいことなどを信頼する人たちと話し合うのを「人生会議」という。最期まで自分らしく過ごすために自らの希望を家族や支援者に打ち明けることで、信頼する人に人生の価値観に触れてもらうことができる。さらに、命に関わる病気やけがをした場合、身近な人の心の負担を軽減することにもつながる。カードは協議会の研修会で集まった意見をふまえて作成。お薬手帳に貼れる小型サイズで、記入日欄と緊急時やケアマネジャーの連絡先、人生の最期に過ごしたい場所、受けたい医療などが書き込める。何度も書き直すことができ、人生会議を経ることで、互いの感謝や命の大切さも考えるきっかけにもなる。また、お薬手帳に貼ることで、家族や医療、介護従事者ら多職種で、その思いを共有できる。協議会事務局がある市高齢福祉課は「思いが変わったら家族や支援者と何度も話し合い、書き直してほしい。大切な人への思いをそれぞれが考える社会になれば」と話す。1万部作成しており、同課と市認定の「スマイルエイジング薬局」など11カ所で配布している。(2025年2月13日毎日新聞) 市販薬購入、コンビニでも可能に 薬剤師らからオンラインで説明を受けるのを条件に一般用医薬品(市販薬)をコンビニエンスストアでも購入可能にする医薬品医療機器法などの改正案を、閣議決定した。社会問題となっている市販薬の乱用対策では、若年者への購入制限を設ける。市販薬は薬剤師や登録販売者による販売が義務付けられている。改正案では、パソコンやスマートフォンを使って薬剤師らから服薬の説明を受けるなどすれば、薬局が委託したコンビニで薬が買える。当面は薬局と委託先のコンビニは同一都道府県内とする。「乱用の恐れのある医薬品」に指定されている、せき止めやかぜ薬などについては、若年者への販売を小容量製品1個に制限する。法改正に向けた厚生労働省の医薬品医療機器制度部会では、制限するのは20歳未満としていたが、改めて検討した上で対象を決める。(2025年2月13日産経新聞) 進行期のがん、39万人データを集計 国立がん研究センターは、がんと診断された患者の5年生存率について、診断後の10年間のデータを初めて集計した。ステージ3や4といった、よりがんが進行した段階で見つかった患者では、胃や大腸など多くのがん種で、生存した期間が長くなるほど、その後の5年生存率が上がっていた。2012年に全国のがん診療連携拠点病院など361施設でがんと診断された約39万人分の「院内がん登録」のデータを対象に、19種のがんについて、進行度を示す4段階のステージ別に集計した。それによると、胃がんは、早期のステージ1の場合、診断から5年後までの生存率と、診断5年後~10年後の生存率はほぼ変わらなかった。一方、より進行したステージ3の場合、診断から5年後までの生存率は36.5%だが、1年生存するごとにその後の5年生存率は上昇。診断5年後~10年後は69.1%となり、長く生存するほど、次の5年間の生存率が上がっていた。ステージ4の患者も同じ傾向だった。(2025年2月13日朝日新聞) 診療所の半数は後継者いない 医師が不足する地域を対象に、厚生労働省が診療所の承継や開業の支援事業を始める。高齢医師の引退や後継者不足により、2040年には全国の自治体の2割で診療所が消滅するとの試算もある中、診療所の建物や設備の整備費、人件費を補助する。都市部に医師が集中する偏在解消の観点から、24年度の補正予算に102億円を盛り込んだ。事業費は、厚労省と都道府県が出す。都道府県が偏在対策を重点的に進める区域を指定し、全国の医師に重点区域内の診療所の承継や新規開業を募集する。都道府県の呼びかけに応じた医師には、建物の改修、医療機器の更新に関する費用の一部を補助する。医師や看護師の人件費やマスク、アルコール消毒液など消耗品の購入費の一部も、区域内での診療が軌道に乗るまでの一定期間、補助の対象とする。厚労省によると22年時点で、診療所がない市区町村は77にのぼる。今後、全国の診療所の医師が75歳で引退し、承継や市区町村内での開業がないと仮定した試算では、40年には4・4倍の342になる。全市区町村の2割に相当する。診療所が1か所のみの市区町村は175から249に増える見込みだ。民間信用調査会社の帝国データバンクのまとめでは、24年に、診療所の休廃業・解散は587件で、比較可能な00年以降、過去最多を記録した。同社は、「増加している最大の要因は、経営する医師の高齢化」と分析している。日本医師会総合政策研究機構の19年調査では、全国の診療所の半数が「現段階で後継者候補はいない」と回答した。厚労省は、重点区域で働く医師の手当の増額や、都市部で働く中堅・シニアの医師に、医師が不足する地域の医療機関を紹介する事業も始める。補助事業と合わせ、都市部の医師が地方に赴任しやすい環境を整える。(2025年2月12日読売新聞) スタチンと認知症リスクに関するメタ分析 世界の認知症患者数は、5,500万例に達するといわれており、2050年までに3倍に増加すると推定されている。心血管系への効果を期待し広く用いられているスタチンには、神経保護作用があるとされているが、認知症リスクに対する影響については、相反する結果が報告されている。ブラジル・アマゾナス連邦大学の研究者は、スタチンと認知症リスクとの関連を明らかにするためメタ解析を実施し、Alzheimer's & Dementia誌に報告。主な内容は以下のとおり。700万例超の観察研究をメタ解析に含めた。・スタチン使用は、非使用と比較し、認知症リスクが有意に低かった。・アルツハイマー病および脳血管認知症のリスク低下も認められた。・サブグループ解析では、2型糖尿病患者、3年以上スタチンを使用している患者、最大の保護作用が認められたアジア人集団において、認知症リスクが有意に低下していることが明らかとなった。・すべての原因による認知症に対し最も顕著な予防作用を示したスタチンは、ロスバスタチンであった。著者らは「認知症予防に対するスタチンの神経保護作用の可能性が示唆された。観察研究の限界はあるものの、大規模データセットおよび詳細なサブグループ解析により、結果の信頼性は高まった。これらの結果を確認し、臨床ガイドラインを啓発するためにも、今後のランダム化臨床試験が求められる」としている。(2025年2月10日ケアネット) エコーウイルスで赤ちゃん3人死亡 2024年夏以降、エンテロウイルス(エコーウイルス11型)と呼ばれるウイルスに感染した赤ちゃん3人が亡くなったとの報告を受け、厚生労働省は実態を把握するため、全国調査に乗り出した。感染が疑われる乳児が入院した医療機関に報告を求める。全国調査では、生後3か月以下の乳児が急性肝炎や敗血症、髄膜炎などで入院し、エコーウイルスの感染が疑われる事例について、医師に保健所へ届け出るよう要請した。国立感染症研究所などによると、風邪の原因となるエコーウイルスは、感染しても多くは無症状だが、乳児でまれに重篤な疾患を発症することがある。22年夏以降、欧州で死亡や重症例が相次いで報告され、国内でも、24年8~11月に、生後間もない赤ちゃん3人が急性肝不全などを発症して亡くなり、いずれもエコーウイルスが検出された。エコーウイルス11(E-11)は、新生児や乳児に重篤な疾患を引き起こし、高い罹患率と死亡率を示すことが報告されています。さらに、E-11は母子間で垂直感染する可能性があり、感染制御を難しくしています。感染症は、凝固障害を伴う重症急性肝炎など、新生児に重篤な炎症性疾患を引き起こす可能性があります。E-11やその他のエンテロウイルスは、ヨーロッパ地域で継続的に流行しています。E-11感染が疑われる、または確認された新生児をケアする際の接触予防策の励行を中心に感染予防・管理措置を実施すべきです。E-11感染が疑われる新生児やE-11感染が確認された新生児に対しては、隔離を検討し、コップ、スプーン、注射器などの食器類を共有しないようにし、おむつ交換を含む新生児の世話中の衛生と手洗いについて母親や介護者を教育する必要もあります。(2025年2月9日読売新聞) 膵がんパネル検査 がんの原因となる遺伝子(ゲノム)の変化をみつけ、その人のがんに効く薬を使うゲノム医療は膵がんでも注目されている。がん組織や血液から、100種以上の遺伝子の変異を解析できる検査は、がん遺伝子パネル検査と呼ばれる。がんゲノム医療中核拠点病院など全国の277施設で受けられ、費用は56万円。公的医療保険が適用されているが、対象となるには、全身状態や臓器の機能が保たれ検査後に治療できる可能性が高いがんで進行または転移があり、標準治療が終了したか終了が見込まれる条件を満たす必要がある。検査を受けて治療薬にたどりつく割合は、全がん種で約1割。国立がん研究センター中央病院が2024年6月までに登録した膵がん398例では、約3%の13例だった。膵がんでみつかる変異の代表例は、90%の頻度のKRASや70%のTP53、20~40%のCDKN2Aなど。ただ、これらを標的にした有効な治療薬は確立していない。一方で、見つかる頻度は低いものの、対応する薬を保険診療で使えるNTRK融合遺伝子やMSI―High、BRAFといった変異もある。(2025年2月8日朝日新聞) 50代で急増の帯状疱疹、4月からワクチンが定期接種 65歳になった高齢者らを対象にした帯状疱疹ワクチンの定期接種が4月から始まる。帯状疱疹は80歳までに3人に1人が発症するといわれる。帯状疱疹は、日常生活に支障が出るほどの痛みや後遺症が出たりすることもある。接種費用の一部を公費補助する定期接種の導入で、シニア世代の発症者の減少が期待される。原因となるのは、幼少期に発症することも多い水ぼうそう(水痘)を引き起こすのと同じウイルスだ。水ぼうそうが治った後も神経に潜伏し、免疫の働きが落ちることで再び活性化し、帯状疱疹が起こるという。帯状疱疹ワクチンには「生ワクチン」と「不活化ワクチン」の2種類がある。多くの自治体が接種費用を助成しており、自己負担は自治体によって異なるが、1回接種の生ワクチンで数千円、2回接種が必要な不活化ワクチンは2回で数万円のケースが多い。効果や持続性は不活化でより高い値が報告されている。(2025年2月2日産経新聞) 65歳以上の全女性に骨粗鬆症スクリーニングを推奨 米国予防医学専門委員会(USPSTF)は65歳以上の全ての女性に対して、骨折予防のための骨粗鬆症スクリーニングを推奨するという内容のステートメントを発表した。また65歳未満であってもリスク因子のある女性は、やはりスクリーニングの対象とすべきとしている。一方、男性に対するスクリーニングに関しては、まだ十分なエビデンスがないとした。骨粗鬆症患者に現れる最初の症状が骨折であることが非常に多い。このことが、その後の深刻な健康障害を引き起こしている。未診断の骨粗鬆症患者が少なくないという問題を指摘し、スクリーニング対象基準を明確にすることの意義を強調。骨も体のほかの組織と同じように、新陳代謝を繰り返している。しかし加齢とともに、骨の吸収と形成のバランスが負になりやすく、吸収された骨が十分に補充されなくなっていく。骨粗鬆症の多くはこのような加齢の影響により進行し、徐々に骨密度が低下していき骨折のリスクが上昇してくる。骨粗鬆症による骨折が生じやすい部位は股関節、手首、脊椎などと報告されている。スクリーニングのための検査手法として、「二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)による骨密度測定とされた。(2025年1月30日HealthDay News) がん患者の訴え 患者が負担する月ごとの医療費の限度額を定める「高額療養費制度」の上限引き上げを政府が検討していることを受け、患者から不安の声が上がっている。特に、高額な治療を長期にわたって受けざるをえないがん患者らは、「治療を続けられなくなる」と深刻な懸念を抱いている。高額療養費制度は、公的医療保険の「セーフティーネット」として機能している。高額な治療を受け、窓口での支払いが高くなっても、上限があることで、自己負担を一定額に抑えることができる。月々の自己負担の上限は、その人の年齢や所得区分によって決まる。政府は、増え続ける社会保障費の伸びを抑えるため、2025年度当初予算案で、高額療養費制度を見直し、自己負担限度額の計算に使う基礎的な部分の金額の引き上げを盛り込んだ。政府案では、25年8月に所得区分ごとに2.7~15%を引き上げ。さらに、26年8月と27年8月にも区分を細分化して引き上げる。最終的には、中間的な収入の人で現行から5万8500円増の月13万8600円となる層がある。患者への影響は大きい。全がん連の理事長は、「近年、長く高額な薬を飲み続けることを前提とした治療が増えている。こうした治療は続けなければ長期生存がかなわない。高額療養費が引き上げられれば、患者への影響は甚大で、生活が成り立たなくなったり、治療をやめたりするケースが出てくるおそれがある」と話す。(2025年1月28日朝日新聞) NSAIDsとPPI併用で下部消化管出血リスク上昇 プロトンポンプ阻害薬(PPI)は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)使用者の上部消化管出血を予防し、消化性潰瘍や胃食道逆流症などの治療に広く使用されている。しかし複数の先行研究では、NSAIDs単独使用よりも、NSAIDsとPPIの併用のほうが下部消化管出血の発生率が高いことが指摘されていた。韓国・慶熙大学のMoonhyung Lee氏らは、実臨床での NSAIDs+PPI併用者とNSAIDs単独使用者間の下部消化管出血リスクを比較したところ、NSAIDs+PPI併用者のほうが下部消化管出血リスクが高いことが判明した。Gut and Liver誌オンライン版2に掲載。(2025年1月24日ケアネット) オンライン診療、公民館や駅中など身近な所で 厚生労働省は、情報機器に不慣れな高齢者らが、公民館や駅の中など身近な場でオンライン診療を受けやすくする体制づくりに乗り出す。診療所の開設許可がなくても、受診施設として届け出れば、オンライン診療を受ける場として認める。一方、診療の法令基準を設け、医療機関に対し順守を義務化して安全性の向上を図る。スマートフォンやパソコンの画面越しに行うオンライン診療は昨年10月現在、医療機関の1割にあたる約1万2500か所で対応している。患者の通院の負担が減るだけでなく、地方の患者が、都市部に集中する専門医の診察を受けることも容易になる。医師偏在の対策として注目される。施設は、都道府県に届け出た上で個室や仕切りで患者のプライバシーを守れるスペースを設けるなど体制を整える。診療を担う医療機関は、施設の体制をチェックし、患者の急変時に受け入れる近隣の医療機関を確保する義務を負う。現在、公民館などの施設がオンライン診療に対応するには、都道府県から診療所の開設許可を受ける必要があり、ハードルが高い。許可が不要になれば対応する施設が増え、高齢者らが施設の職員らの助けを借りて、オンライン診療を受けやすい環境が整う。働き盛りの世代が、移動の合間に施設に立ち寄って受診することも可能となる。また、オンライン診療を行う医療機関の届け出制度を創設、現行の指針を踏まえて法令基準を定める。基準には、医師と患者がお互いに身分証明書を示し、本人確認を行うほか、効果や副作用に応じた薬の処方、急変時に対面診療できる体制を盛り込む。(2025年1月23日読売新聞) 市場から消えた 医療機関は過去最多の786件 2024年の医療機関(病院、診療所、歯科医院)の倒産は64件、休廃業・解散は722件となり、それぞれ過去最多を更新した。倒産、休廃業・解散ともに「診療所」と「歯科医院」が急増し過去最多となったことで全体を押し上げた。特に経営者の高齢化に伴う「診療所」の休廃業・解散の増加が目立っている。倒産は「病院」が6件、「診療所」が31件、「歯科医院」が27件となり、「診療所」「歯科医院」が過去最多を更新して全体を押し上げた。倒産主因を分析すると、「収入の減少」が41件と全体の64.1%を占めた。休業・廃業・解散が判明した医療機関は722件で、2023年(620件)を上回って過去最多を更新した。10年前(2014年)と比べて2.1倍、20年前(2004年)と比べて5.6倍に増えている。業態別では「病院」が17件、「診療所」が587件、「歯科医院」が118件となり、「診療所」と「歯科医院」が過去最多を更新した。休業・廃業・解散が増加し続けている最大の要因は、全体の81.3%(587件)を占める「診療所」における経営者の深刻な高齢化にある。帝国データバンクによると、70歳以上の経営者が全体の54.6%と過半数を占めた。さらに日本医師会が全国の病院・診療所に行った「医業承継実態調査」(2020年)によると、診療所の50.8%が「現段階で後継者候補はいない」と回答するなど、今後、高齢化がさらに進むことで、経営者の健康上の問題や死去によって廃業となる「診療所」は、年々増え続けることが予想される。(2025年1月22日帝国データバンク) 働き方改革による診療体制縮小 厚生労働省が、2024年4月から始めた罰則付き医師の残業時間の上限規制(医師の働き方改革)の影響を調べたところ、調査に回答した医療機関のうち300施設で派遣医師の引き揚げがあり、82施設で医師引き揚げに伴う診療体制の縮小があったことが分かった。このうち15施設が「地域医療に影響が出る」と回答。大学病院、基幹病院などから派遣されていた医師が引き揚げられたことにより、医療資源が乏しい地域にも一定の影響が及んでいる実態が明らかになった。回答した医療機関数は5653だった。医師の働き方改革の施行に関連し、「大学・他医療機関から派遣されている医師の引き揚げ(派遣医師数の減少)があった」と回答した医療機関は300あった(2025年1月20日経ヘルスケア) 開業規制、医師の偏在対策パッケージ 厚生労働省は2024年12月に「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」を取りまとめた。高齢者人口の増加と人口減少の進展により、必要な医療提供の維持が困難になる地域が出てくることが見込まれている。2024年12月に取りまとめられた。施策の柱は、医師が多数いる区域における新規開業への規制的手法の導入、経済的インセンティブを用いた医師不足地域における医師確保強化、若手医師に加えて中堅・シニア医師を対象に含めた医師派遣機能の強化、医師養成過程への介入強化と医療機関の集約化・重点化だ。将来にわたり国民皆保険が維持されるよう、医師偏在を是正して医療提供体制を維持する狙いがある。(2025年1月16日日経ヘルスケア) 2040年を見据え、介護サービスの提供体制を議論 厚生労働省は2025年1月9日、「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方検討会」を初開催した。本検討会は、85歳以上人口を中心とした高齢者が増加して生産年齢人口が減少する2040年に向け、高齢者等に係る施策や他の福祉サービスも含めた共通の課題などを検討し、医療・介護におけるサービス提供体制等の在り方の基盤を作ることを目的としている。特に介護人材の確保については最大の課題であり、構成員からは、他産業との賃金差の改善や高齢者・外国人の活用による人材確保策の整備を求める意見が多く挙がった。厚労省は本検討会の論点として、(1)人口減少・サービス需要の変化に応じたサービスモデルの構築や支援体制、(2)介護人材確保・定着、テクノロジー活用等による生産性向上、(3)雇用管理・職場環境改善など経営の支援、(4)介護予防・健康づくり、地域包括ケアと医療介護連携、認知症ケア──の4つを提示した。(1)は、地域の実情に応じて「中山間・人口減少地域」「都市部」「一般市等」の3類型に分けた上で、それぞれの地域におけるサービス提供体制や支援体制、それらを実行するための方策を議論する。(2)では、介護人材の不足に伴い、処遇改善などの人材確保・定着策を検討するとともに、テクノロジーの活用などによる介護サービスの質の向上と離職防止、人材確保・定着を推進する考えだ。(3)の経営支援においては、多くの経営課題を有する介護事業者について、地域の実情を把握し将来的な経営状況を見通すため、情報の分析手法や介護事業者同士の連携を活発にする手法などの普及が注目されている。(4)に関しては、地域における介護予防事業を活発化するため、介護予防・日常生活支援総合事業やインセンティブ交付金の在り方、さらには医療と介護の複合ニーズに対応するための医療・介護連携の構築や認知症高齢者への地域支援について検討する。(2025年1月16日経ヘルスケア) 介護事業者の休廃業、612件で最多、訪問介護が7割超す 2024年の介護事業者の休廃業・解散件数は612件に達し、前年(510件)より2割増えたことがわかった。調査した東京商工リサーチによれば、データがある10年以降で最多となった。調査によれば、内訳は訪問介護事業が448件と全体の7割以上を占め、通所・短期入所事業が70件、有料老人ホーム25件、その他事業が69件だった。今月上旬に公表した介護事業者の倒産件数は172件で、介護保険制度が始まった2000年以降、最多となった。うち約半数が訪問介護だった。訪問介護をめぐっては、2024年度に実施された介護報酬の見直しで基本報酬が引き下げられ、「在宅介護の崩壊につながる」との危機感が現場で広がっている。今回の調査で、訪問介護は倒産のみならず休廃業も急増している実態が浮き彫りとなった。(2025年1月16日朝日新聞) 肝臓がんの増殖抑制に新治療 血管の近くにあるなど手術で取り切れない肝臓がんに対し、既存の治療薬2剤を投与する手法でがんの増殖を抑える期間を1・5倍に延ばせることを確認したと、近畿大などの国際共同研究チームが発表した。肝臓がんは、腫瘍切除後も5年以内に約8割が肝臓内で再発しており根治が難しい。国内では年間約2万3000人が死亡している。切除できない場合は、腫瘍に栄養を送る血管を塞ぐ治療が検討される。近大や国立がん研究センターを含む日本、米国、中国などのチームは、切除できない腫瘍がある患者に、血管を塞ぐ従来法に加えて免疫治療薬「キイトルーダ」とがん細胞を狙い撃ちする抗がん剤「レンビマ」を投与する新たな組み合わせでの臨床試験を計画した。20代~80代の男女480人について、従来法に2剤を組み合わせたグループと、従来法に偽薬を加えたグループで比較。その結果、偽薬のグループは腫瘍の増殖が抑えられた期間(中央値)が10か月だったのに対し、2剤を加えたグループは14・6か月と効果が高かった。国内ではキイトルーダは肝臓がんの薬になっておらず、実施には製薬企業による国への承認申請が必要となる。近大の消化器内科は「生存期間を延ばせる傾向も確認できており、早期承認を期待したい」としている。(2025年1月11日読売新聞) コンビニで薬剤師不在でも薬購入可能に 厚生労働省は、コンビニエンスストアなど薬剤師や登録販売者がいない店舗でも、一般用医薬品を購入できるようにする方針を決めた。薬剤師らからオンラインで説明を受けることを条件とする。時間を問わず、身近な場所での購入が可能となる。市販薬は、医師の処方箋なしで購入できるが、薬剤師らによる情報提供や相談対応が必要とされている。現行のルールでは、薬剤師らが常駐しない店舗では、市販薬は取り扱えない。新しい仕組みでは、患者はまず、自宅などで薬剤師らとオンラインで面談し、必要な説明を受けたことを示す確認証をメールなどで受け取る。その後、スマートフォン上の確認証を店舗で示し、薬を購入する。自動販売機での購入も可能となる方向だ。販売する店舗は薬局やドラッグストアと連携する。連携先の薬局などが薬の在庫の把握やオンラインの面談を担う。当面の間、店舗と同一の都道府県内となる見通しだ。デジタル技術の進展で薬剤師らがその場にいなくても遠隔で対応できるようになったことから、厚労省は新しい仕組みを導入する。(2025年1月7日読売新聞) 広がるロボット手術 外科医が手術台から少し離れた操作卓に座って画面をのぞき込み、ロボットアームを操作してがんの切除などを行うロボット手術。操作性の高さや精密な動きから、消化器や泌尿器などの分野で導入が広がっている。前立腺がんでは既に手術の約9割でロボットを使用。大腸では2022年までにすべてのがんで保険適用になった。手術には開腹と腹腔鏡および胸腔鏡、ロボットの3種類があり、腹腔鏡とロボットは器具を差し込む体の傷が小さいため痛みが少なく、回復が早い低侵襲の手術とされる。ロボットのアームは多数の関節があり自由に曲がり、臓器の奥に回り込んでの処置が可能だ。術者の手元を1センチ動かしても鉗子の先端は3ミリしか動かず細かい動きが可能で、手ぶれも自動で防ぐ。画面はフルハイビジョンの立体画像で、約10倍に拡大できる。これに対して、腹腔鏡は棒状で曲がらず、体に開けた穴を支点にてこのように動かすため、奥に入れるほど手で動かした際の振れ幅が大きくなる。画像もほとんどが平面的で、患部の奥に回り込んでの視界が得にくい。腹腔鏡は相当訓練しないと上手に扱えない。ロボットは習得が容易で、エキスパートでなくても難しい手術ができてしまう。こうした操作性の高さで、例えば直腸がんを切除する際に、周囲にある性機能や排尿に関する神経を傷つけないようなミリ単位のメスさばきが可能になるという。全国49施設の医師が、男性の直腸がん患者410人を対象に行った共同研究で、手術1年後の射精障害の発生率は腹腔鏡で41%に対してロボットでは25%、性交障害発生率は腹腔鏡29%に対してロボット18%と、ロボット手術の優位性が明らかになった。ほかに、開腹手術への移行の少なさや出血量、在院日数、肛門の温存でロボットは腹腔鏡より優れていたとの報告がある。手術時間はアームの設定に時間がかかる分、ロボットのほうが長く、病院側が負担する費用もロボットのほうが高い。診療報酬明細書のデータでは、保険適用が先行した直腸手術では22年にロボット手術の割合は全国で22%、直腸を除く結腸のがんでは3%。体への負担が大きい開腹手術から低侵襲の腹腔鏡やロボットへ、習得に時間がかかる腹腔鏡から操作性が高く細かい動きが得意なロボットへ。こうした傾向は基本的にはほかの臓器の手術でも同じだという。ただ、開胸手術が多い心臓や、腹腔鏡で技術が完成している分野ではロボット手術の普及率は比較的低い。(2025年1月7日共同通信社) 2040年、診療所医師数が全国各地で半減 2040年には、日本各地で診療所の医師数が半数以上減少する見通しだ。厚生労働省は、現在の医師が80歳で引退し後継者がおらず、さらに新規開業が行われないと仮定した場合、診療所の医師数がどの程度減少するかの予測を示した。北海道で47.2%減、▽東北地方で54.0%減、▽関東地方で41.5%減、▽中部地方で48.4%減、▽近畿地方で48.2%減、▽中国地方で53.2%減、▽四国地方で56.4%減、▽九州地方で49.3%減──とそれぞれの地域で大幅な減少が見込まれる。二次医療圏ごとに見ると、2020年から2040年にかけて診療所医師数が50%以上減少する地域は、▽北海道では16医療圏(全体の76.1%)、▽東北地方で27医療圏(同73.0%)、▽関東地方で24医療圏(同34.3%)、▽中部地方で38医療圏(同66.7%)、▽近畿地方で29医療圏(同56.9%)、▽中国地方で27医療圏(同90.0%)、▽四国地方にある16の二次医療圏すべて、▽九州地方で41医療圏(同65.1 %)となり、大都市部を除くと多くの二次医療圏で診療所医師数が半減することが予測されている。(2025年1月2日m3.com) ◎1次医療圏は診療所などの外来を中心とした日常的な医療を提供する地域区分で、原則は市区町村が中心。2次医療圏は、救急医療を含む一般的な入院治療が完結するように設定した区域。2020年9月時点で335区域ある。人口や入院患者の流出入の状況に基づき、通常は複数の市区町村で構成する。医師数や病床数などの計画は2次医療圏をベースにしており、地域医療の基本的な単位といえる。3次医療圏は、重度のやけどの治療や臓器移植など特殊な医療や先進医療を提供する単位で、北海道を除いて各都府県がひとつの区域となる。 |
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