2024年4月~2024年8月

新クラスの抗菌薬
新たな抗菌性化合物により、マウスに感染した化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)を効果的に除去できることを示した研究成果が報告された。S. pyogenesは「人喰いバクテリア(劇症型溶血性レンサ球菌感染症)」の主な原因菌であり、この細菌による感染症により毎年50万人が死亡している。研究グループは「この化合物は薬剤耐性菌との闘いにおいて貴重な存在となり得る、新規クラスの抗菌薬の第1号となる可能性がある」と述べている。米セントルイス・ワシントン大学医学部分子微生物学分野の研究結果は「Science Advances」に掲載された。ペプチドミメティックなジヒドロチアゾロ環縮合2-ピリドンという分子構造を持つこの新しい化合物は「GmPcides」と名付けられている。(2024年8月30日HealthDay News)

HIV治療薬ツルバダ、曝露前予防
抗HIV薬のツルバダ配合錠がHIV感染症の曝露前予防に適応追加の承認を取得した。HIVの予防薬が承認されるのは国内初となる。ツルバダは、2005年にHIV感染症の治療薬として承認を取得した。ツルバダは曝露前予防薬として中国や韓国といったアジア諸国を含む58の国と地域で承認されている。「曝露前予防利用の手引き」では、薬剤耐性ウイルスの発現を防ぐため、曝露前予防を開始あるいは再開する前の1週間以内にHIVの抗原・抗体検査が陰性であることを確認すべきとしているほか、性的ネットワークにおける感染拡大の低減、薬剤の安全な投与のため、性感染症やB型肝炎、腎機能などの検査も強く推奨している。厚労省エイズ動向委員会によれば、新規HIV感染者・エイズ患者の報告数は2016年以降6年連続で減少していたが、2023年は増加に転じ960件となった。(2024年8月30日日経メディカル)

大学病院で働く医師らの研究時間確保を支援
文部科学省は来年度、大学病院で働く医師らの研究環境を改善するため、研究時間の確保や業務負担の軽減に取り組む大学に補助金を支給する制度を創設する方針を固めた。今年4月に始まった「医師の働き方改革」では、残業時間に上限規制が設けられた。規制の範囲で研究時間を確保するよう大学に促すことで、新たな薬や治療法の開発が停滞しないようにする。対象は、医師が協力して診療を分担する体制を整える試みや、人工知能(AI)を活用した書類作成業務の自動化、事務作業の外部委託を通じて医師を支える大学などを想定している。文科省は、人件費や委託費の一部などに使う補助金を大学に支給。来年度予算の概算要求に関連費約30億円を盛り込み、1件あたり2億円程度を支援する。国の調査によると引用された回数が上位10%に入る質の高い研究論文の数は臨床医学分野で1999~2001年の平均で世界4位だったが、2019~2021年は9位に下落。基礎生命科学分野でも4位から12位に落ち込んだ。臨床医学と基礎生命科学の論文数は、全世界の自然科学系の論文の5割を占めるほど比重が大きい。医学研究の低迷は、科学技術立国の地位を脅かす問題だ。(2024年8月27日読売新聞)

新型コロナの経鼻ワクチン
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の次世代経鼻ワクチンは、従来の注射型のワクチンにはできなかった、人から人へのウイルスの伝播を阻止できる可能性のあることが、動物実験で示された。この経鼻ワクチンが投与されたハムスターは、ウイルスに感染しても他のハムスターにそれを伝播させることはなく、感染の連鎖を断ち切ったと米セントルイス・ワシントン大学医学部分子微生物学および病理学・免疫学分野が報告した。注射型のCOVID-19のワクチンは重症化例や死亡例を減らすことはできたが、感染拡大を防ぐことはできなかった。ワクチン接種済みの軽症患者でも、ウイルスを他の人にうつす可能性はあった。注射型のワクチンは、血流中と比べると鼻の中での効果が大幅に低いため、鼻の中は急速に増殖して広がっていくウイルスに対して無防備な状態になりやすい。そのため、研究者らは長年、スプレーや滴下によって鼻や口にワクチンを投与すれば、最も必要とされる場所で免疫反応が引き起こされ、感染症の伝播を抑えることができると考えてきた。(2024年8月27日HealthDay News)

認知症に伴う「暴言」「暴力」などの初の治療薬
厚生労働省はアルツハイマー型認知症に伴う暴言や暴力などの症状に対する初の治療薬を承認する方針を決めた。9月にも承認される見通しだ。この薬は脳内の神経伝達物質の働きを調整する飲み薬。国内外でうつ病と統合失調症の治療に使われてきた。米国など3か国ではすでに、アルツハイマー型認知症にみられる暴力などの症状に対する治療薬として承認されている。国内で行われた最終段階の臨床試験は、55~90歳の患者410人が参加。10週間投与したグループは、偽薬を投与したグループに比べ、暴言や暴力などが起こる頻度が減った。今回、治療対象となる症状は、アルツハイマー型認知症患者の約半数にみられ、家族や介護者の心身の負担になる。昨年9月に承認されたアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」(商品名レケンビ)は、進行を抑える効果があり、認知症の早期段階の患者らが使える。一方、ブレクスピプラゾールは、主に病気が進行した患者が対象となる。(2024年8月26日読売新聞)

mRNAで膝の軟骨摩耗防ぐ
東京医科歯科大などの研究チームが、遺伝物質メッセンジャーRNA(mRNA)を高齢者に多い膝の関節痛の患者に投与する治験を計画していることがわかった。対象の病気は「変形性膝関節症」で、国内の患者は推計2000万人以上に上る。整形外科分野でmRNA医薬品が実用化されれば世界初。チームは2030年代の承認と普及を目指している。変形性膝関節症は膝の軟骨が加齢などで少しずつすり減り、関節が変形する病気。痛みで歩行や階段の利用が難しくなり、高齢者の外出や運動が減って健康寿命を縮める一因になる。対症療法や運動療法はあるが、進行が速いと人工関節を入れる手術などが必要になる。今回のmRNAは、膝軟骨の細胞の働きを高めるたんぱく質の遺伝情報でできている。患者の膝に注入すると、膝の細胞がこのたんぱく質を作り出し、軟骨を構成するコラーゲンを増やすなどして、軟骨が壊れるのを防ぐ。動物実験では軟骨の摩耗や関節の変形を抑えることに成功した。
◆メッセンジャーRNA(mRNA) =細胞の中にあり、生命活動に必要なたんぱく質の設計図として働く小さな物質。細胞の核からDNAの情報を写しとり、たんぱく質を合成させる働きがある。(2024年8月21日読売新聞)

卵巣予備能検査で保険適用
結婚の高年齢化に伴い妊娠しにくくなり、不妊治療を受ける人が増えている。卵巣にどれくらい卵子が残っているかを示す卵巣予備能を測る「抗ミュラー管ホルモン(AMH)検査」が今年6月から一般の不妊治療でも保険適用になり、産婦人科医は「不妊治療をどこまで続けるか、方針決定がしやすくなる」と期待している。女性の卵子は胎児の間に原始卵胞という形で数百万個がつくられ、出生後は減る一方となっている。卵巣の中で待機していた原始卵胞は、思春期以降、定期的に発育して卵子となって排卵されるが、卵巣の中にある特定の時期に分泌されるAMHの濃度を測定することで、卵子がどのくらい残っているかの目安となる。生理の周期などによって増減する卵胞刺激ホルモンとは異なり、卵巣機能を安定的に評価することができるとされる。AMH検査は血液を採取し測定するが、従来は体外受精をする前提としてのみ、保険適用だった。不妊症の患者に対する卵巣機能の評価や治療方針の決定などに対し、6カ月間で1回に限り保険適用が決まった。AMH値が高いほど採卵できる数が多いという。(2024年8月20日共同通信社)

EDの男性1400万人、20代で2割以上
日本性機能学会は、男性の不妊症の原因の一つである勃起障害(ED)について、25年ぶりとなる全国調査で推計1400万人となったことを明らかにした。1998年の前回調査時から約270万人増え、20歳代では2割以上に上る。順天堂大浦安病院泌尿器科のチームは昨年、オンライン調査を行い、20~79歳の男性6228人の回答を分析した。「性交渉に十分な硬さではない」などと自己評価した人をEDとして集計したところ、全年齢平均は31%だった。20~24歳が27%、25~29歳は22%で、20歳代が30~40歳代(17~19%)を上回った。性行為の頻度は「1か月に1回未満、1年に1回未満」「性交未経験」を合わせると70%で20~24歳では未経験が44%だった。射精までの時間が短い早漏については23%が「悩んでいる」と回答した。WHO(世界保健機関)によると、希望しても妊娠に至らない「不妊症」の48%に男性が関与している。男性不妊の原因は、精子が正常につくられない「造精機能障害」が最も多いが、少子化が課題となる中、学会はEDについても治療環境の整備や周知を進めたい考えだ。(2024年8月16日M3.com)

進行食道がんに「3剤併用」生存率高く
進行した食道がんの手術前の抗がん剤治療について、国立がん研究センターなどのチームは、従来の2剤併用療法より、もう1種類を加えた3剤併用療法の方が、3年生存率が10ポイント高くなったとする臨床試験の結果を発表した。論文は6月、英医学誌「ランセット」に掲載された。チームは3剤併用療法が、海外でも標準治療として広がる可能性があるとしている。今回の臨床試験は2012~18年、国内44病院から患者601人が参加して行われた。2剤併用療法と、抗がん剤「ドセタキセル」を加えた3剤併用療法、欧米で主流となっている抗がん剤と放射線治療を併用する化学放射線療法の3グループに分けて、治療開始時点からの生存率を比べた。その結果、3剤併用療法の3年生存率は72・1%で、2剤併用療法の62・6%よりも明らかに高かった。一方、化学放射線療法は、2剤併用療法と生存率に差がなく、放射線の影響で肺炎や心疾患などの死亡リスクを高める可能性が示された。日本食道学会は現在、チームが先行してまとめた発表を踏まえ、3剤併用療法を強く推奨している。ドセタキセルは、乳がんなど様々ながん治療で使われ、食道がんでは単剤で用いられてきた。同センター中央病院頭頸部・食道内科は「既存の薬を組み合わせた治療法で、世界的に標準治療になり得る成果を発信できたのは意義深い」と話している。(2024年8勝ち15日読売新聞)

感染止まらぬ梅毒

「50年に1度」ともいわれる規模で流行している性感染症の梅毒が広がっている。2023年は3701件に上り、3年連続で過去最多を更新した。梅毒感染、10代妊婦の「200人に1人」 胎児感染は近年で最多。性別に見ると、23年は男性2409人、女性1292人。20~50代と幅広い年代で感染が多い男性に対し、女性は特に20代の感染が多かった。妊娠中の感染で胎児が感染してしまう「先天梅毒」も昨年は過去最多の9件だった。厚生労働省によると、梅毒は性的接触を介して誰でも感染する可能性がある。無症状の場合もあるため、知らないうちに感染を広げることもある。また、一度治っても何度でも感染する。(2024年8月14日朝日新聞)

ダニ媒介感染症に注意
近年、野外のダニが媒介する感染症が相次いで報告されている。このうち致死率が高い重症熱性血小板減少症候群は今年、国立感染症研究所によると西日本を中心に約90人。野山に生息するダニが感染源で春から秋に活動的になる。ダニ媒介感染症は、つつが虫病、日本紅斑熱などが昔から知られる。一方、2013年に日本で初めて山口での重症熱性血小板減少症候群の感染が発表されたほか、21年に北海道でダニが媒介したとみられるエゾウイルス、23年に茨城でオズウイルスが人から検出されたことが報告されるなど、近年新しい感染症も見つかっている。このうち重症熱性血小板減少症候群は致死率が約27%と高いのが特徴だ。6~14日の潜伏期を経て発熱や下痢などの症状が出る。2023年は133件。主に野外でダニにかまれて発症するが、ペットから人への感染例や、患者から医師への感染例もあった。体の部位別では首や頭、手脚をかまれることが多い。痛みを感じにくく、すぐに気づかないこともある。ダニは吸血すると、自分の体の数倍以上に膨張する。ただし吸血中のダニを無理に引き抜くのは危険だ。皮膚の中に潜り込んだダニの頭部が残ってしまうことがあり、その場合は医療機関での処置が必要となる。対症療法しかなかった治療法に、アビガンが治療薬として承認された。(2024年8月14日共同通信社)

臓器移植推進へ体制見直し
脳死の人からの臓器提供を円滑に進め、移植を受けやすい環境を整備するため、厚生労働省は今の体制を大幅に見直す方針を決めた。脳死下の臓器提供ができる医療機関は国内に約900施設ある。だが、臓器提供の経験があるのは約300施設にとどまる。うち110施設はこれまで1件しか経験がなく、地域差も大きい。臓器提供できる可能性があっても、その選択肢を家族に示すことが十分にできていないことも指摘されている。厚労省の推計によると、2022年度、脳死とされうる状態の患者は約4400人いたが、家族に臓器提供の選択肢が示されたのは1113人(25・2%)。実際に脳死下の臓器提供に至った人は105人だった。(2024年8月14日朝日新聞)

脚のむずむず
不快感で脚がむずむずして動かしたくなる衝動にかられるレストレスレッグス症候群・RLS(むずむず脚症候群)という病気がある。夕方から夜にかけて悪化する傾向があり、睡眠を妨げられる患者も多い。患者の約3割が、憂鬱な気分になって気力を失う「抑うつ状態」を抱えていると、滋賀医大などの研究チームが、日本を含む世界の24の研究を解析し、睡眠医学誌に発表した。RLSは女性に多い感覚運動障害で、全世界の有病率は約7%。糖尿病や透析患者で合併する人も多く、喫煙や飲酒、運動不足など生活習慣との関連も指摘されている。日本での有病率は1~4%と世界全体よりは低い。だが、安静時に症状が悪化し脚を動かすことで緩和するものの、夜に症状が出ると睡眠が妨げられ、精神的な苦痛も大きい。神経系の異常という点でうつ病との関係が注目されている。研究グループは、医学論文のデータベースから「RLSとうつ病」に関する検索し、解析データが使える日本などアジアを中心にした24研究について総合的に評価した。全体の患者数は2039人の分析の結果、30.4%がうつ病を含む抑うつ状態だったと明らかになった。合併率が高い背景には、睡眠障害の影響や、うつ病と共通するドーパミン神経系の異常が考えられるという。一方、うつ病と抑うつ状態の重症度に、患者の年齢やRLSの罹病期間、発症年齢などとの関連は統計上、見られなかった。(2024年8月13日朝日新聞)

美容医療、「直美(ちょくび)」
医師偏在に関する議論で、問題視されるのが美容医療の道に進む医師の増加だ。2年間の臨床研修後、すぐに美容医療の道に進む医師を形容し「直美(ちょくび)」と言われる。厚生労働省が「美容医療の適切な実施に関する検討会」を発足させており、日本美容外科学会の理事長に美容医療を巡る現状をお聞きした。形成外科の専門研修プログラムは4年間で、その後は大学病院や市中病院など様々なキャリアを歩まれます。大学病院の形成外科ですから、先天性疾患の治療や乳がん切除後の乳房再建、外傷形成外科やマイクロサージェリーなどの分野を目指される方が多いです。形成外科医の中には美容医療の道に進まれる方もいますが、その数はそれほど多くはありません。一方で最近、「直美(ちょくび)」と言い、2年間の臨床研修修了後に、そのまま自由診療の美容医療の分野に進まれる方が増えている。年間200人くらいいる、と言われています。厚生労働省が医師の偏在是正に向け、専門研修のシーリングで各領域の定員をコントロールしようとしている時に、多くの医師が美容医療の分野に流れてしまっては、その前提が崩れてしまうでしょう。国公立か私立かを問わず、医学部には国の税金が投入されています。医師になった以上は、それを国民に還元する役割も担っているのではないでしょうか。「直美(ちょくび)」の場合、医師の知識、技術などの面で問題はないのでしょうか。美容目的であっても、人に何らかの侵襲を加えることには変わりはありません。二重まぶたや、皮膚のピーリングなどの比較的簡単な手技でも、縫合のスキルや、解剖、創傷治療などの知識が必要です。麻酔を伴う場合には、万が一に備えて、救急対応もできなければいけません。2年間で美容医療に必要な知識、スキル、経験、さらには倫理観を身に付けることは難しいのではないでしょうか。(2024年8月8日m3.com)

HPVワクチン、無料は9月まで
1997~2007年度生まれの女性が、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の予防接種を無料で受けられる期限は来年3月です。無料で接種を受けるには、9月末までに初回の接種をしておく必要がある。HPVは200種類以上あり、少なくとも15種類で子宮頸がんを引き起こすことが分かっている。性交渉を通じて、女性の多くが生涯に1度は感染すると言われる。感染しても自然に消滅することが多いが、一部の人では感染が持続し、数年から数十年かけて子宮頸がんになることがある。HPVワクチンは、子宮頸がんの原因になる種類のHPVの感染を防ぎ、子宮頸がんの原因となるHPVの8~9割を予防できるとされる。過去2013年4月、小学校6年~高校1年相当の女性を対象に、予防接種法に基づき無料で接種を受けられる定期接種となった。しかし、接種後の体の疼痛や運動障害などを訴える声が相次ぎ、厚労省は同年6月に定期接種を中止した。その後の研究によって安全性が裏付けられたとして、厚労省は22年4月、9年ぶりに積極的勧奨を再開した。そこで厚労省は再開に合わせ、1997年4月2日~2008年4月1日生まれの女性を対象に、自費で打つと数万~10万円ほどかかる接種費用を、定期接種と同様に公費で全額負担している。若い世代に多い子宮頸がん、毎年2900人が亡くなる(2024年8月6日朝日新聞)

脂肪肝からの肝がんのリスク見分ける新指標発見
日本でも脂肪肝から肝がんを発症する患者が増えているが、肝硬変のように肝臓が硬くならなくても発症する場合があり、リスクを予測するのが難しい。大阪大や北海道大、佐賀大などの研究チームは、血液中の特定のたんぱく質が多い脂肪肝患者が肝がんになりやすいことを発見した。肝がんは日本では従来、C型肝炎やB型肝炎などウイルス性が多くを占めていたが、ここ20年で脂肪肝やアルコールなどによる非ウイルス性が増え、新規患者の約6割を占めるほどになっている。脂肪肝は食生活の欧米化や運動不足などを背景に世界中で増え、日本でも成人の4人に1人が脂肪肝とされる。研究チームは、血液中に分泌され、肝臓のがん細胞を成長させることでも知られるGDF15というたんぱく質に注目。肝がんではなく、肝生検をうけた518人の脂肪肝患者の血中のGDF15の量を測定したところ、1ミリリットルあたり1.75ナノグラムを境に、その後の肝がんの発症率が跳ね上がった。1.75ナノグラム以下だと、肝臓が硬くても5年以内に肝がんを発症した患者はいなかった。(2024年8月3日朝日新聞)

アルツハイマー病治療薬「ドナネマブ」保険適用
厚生労働省は米製薬イーライリリーのアルツハイマー病治療薬「ドナネマブ」(商品名ケサンラ)について、製造販売の承認を了承した。病気の原因とされる物質を除去するタイプの薬では、日本の製薬大手エーザイなどが開発したレカネマブに次いで2例目。11月にも公的保険が適用される見込み。ドナネマブは、患者の脳内に蓄積する異常なたんぱく質「アミロイド βベータ (Aβ)」の塊を取り除き、病気の進行の抑制を図る。対象は、認知症の前段階となる軽度認知障害(MCI)の人を含むアルツハイマー病の早期の患者。点滴で月1回、最長1年半投与する。1年をめどに検査してAβの塊の消失が確認できれば投与をやめられる。約1700人が参加した最終段階の臨床試験では、認知機能などの低下を22%抑える効果が確認された。病状がより早期のグループでは35%の抑制効果があった。副作用として脳の微小出血や腫れがみられた。米国での年間治療費は約480万円となっている。日本の薬価は今後議論される見通し。(2024年8月1日読売新聞)

コロナを攻撃する免疫細胞
新型コロナウイルスに感染した細胞を標的に攻撃する免疫細胞をES細胞(胚性幹細胞)から作ることに成功したと、京都大のチームが発表した。がん治療などで免疫力が著しく低下した新型コロナの患者に投与すれば、治療に役立つ可能性があるという。2029年度の実用化を目指す。免疫細胞は「キラーT細胞」と呼ばれ、ウイルスに感染した細胞やがん細胞を殺す働きがある。チームは、ES細胞にゲノム編集を施し、拒絶反応を起こしにくくした遺伝子を組み込み、コロナウイルス表面の突起物「スパイクたんぱく質」を見つけて攻撃できるようにした。こうして作ったキラーT細胞と、新型コロナのスパイクたんぱく質を発現させて感染を模した細胞を混ぜると、数時間後にはキラーT細胞が感染した細胞を殺していた。健康な細胞は攻撃されなかった。この技術を用いればウイルスの種類に応じたキラーT細胞を作製できるため、新型コロナだけでなく、他の致死的なウイルスにも使える可能性がある。(2024年7月30日毎日新聞)

「ドラッグロス」解消
欧米で承認された医薬品が日本で使えない「ドラッグロス」の解消に向け、2026年度までに必要性の高い薬の臨床試験に着手し、28年までに創薬を担うスタートアップ(新興企業)を10社以上誕生させることなどが柱だ。厚生労働省によると、欧米で承認されているが、日本では開発が行われていない薬が23年3月時点で、がんや難病の分野などで86品目に上る。このうち、子ども用が4割近い32品目を占めている。24年夏から5年間程度の工程表では、ドラッグロスが生じている86品目のうち必要性が高い薬について、臨床試験を26年度までに始める目標を掲げる。より深刻な子ども用の薬では、28年度までの5年間で開発計画を50件策定する。承認申請に関わる要件の緩和などを進めることで、製薬会社に開発を促し、国民に最新の薬を迅速に届けることを目指す。新薬の開発では近年、米国を中心に新興企業が中核的な役割を担うようになっている。日本では、こうした企業の育成が進んでおらず、企業価値100億円以上の新興企業を28年までに10社以上、生み出す目標を打ち出す。国際共同治験に日本が参加できていないことも多いため、届け出件数を現状の1・5倍の年間150件に拡大することも盛り込む。(2024年7月30日読売新聞)

人工妊娠中絶の飲み薬「メフィーゴパック」を無床診療所でも使用可能に
人工妊娠中絶に使う国内初の飲み薬「メフィーゴパック」について、厚生労働省は入院できる病床がある医療機関だけでなく、無床診療所にも使用を広げる見直し案をまとめた。国の研究で、従来の手術より安全だとする調査結果が示されたことを踏まえたもので、自民党厚労部会小委員会に報告した。厚労省はこの案を軸に見直しの検討を進める方針だ。研究は、昨年2023年5月~10月に2096施設で行われた中絶3万6007件を分析。子宮破裂や大量出血など重い合併症は、手術では0・2~0・6%の割合で起きたが、飲み薬は0件だった。(2024年7月25日読売新聞))

がんの死者数
国内のがんの種類別による年間の死者数で、1位肺がん、2位大腸がん次いで、膵臓がんが胃がんを抜いて3位になったことが2023年の国の人口動態統計で明らかになった。膵臓がんは原因がはっきりしない上、早期発見や治療が難しく、今後も増加が見込まれるとして、専門家は国に対策の検討を求めている。6月に厚生労働省が発表した人口動態統計によると、23年の1年間に国内で膵臓がんで死亡した日本人は4万174人で前年の3万9468人から増加。一方、胃がんは前年の4万711人から3万8767人に減少。かつてはがん死の1位だった胃がんは2010年ごろまで約40年間にわたり年間5万人前後で推移していたが、原因とされるピロリ菌の除菌が幅広く健康保険の適用になった13年以降、着実に減少し、10年間で20%の大幅減となった。5位に位置する肝臓がんは、原因となる肝炎ウイルスの対策が進んだこともあり、05年以降、減少傾向にある。23年の肺がんの死者は7万5762人、大腸がんの死者は5万3130人で高止まりの傾向にある。(2024年7月23日共同通信社)

加齢とやまい
老化した細胞が周りに炎症を引き起こす酵素を見つけたと熊本大学のチームが明らかにした。研究チームは、老化細胞でどんな遺伝子が働いているかを調べ、ACLYという酵素を作る遺伝子が働いていると判明した。この炎症は加齢によって起こる全身の病気につながっている。ACLY酵素の働きを抑えることで老化をコントロールできる可能性がある。多くの細胞は分裂して増殖するが、増殖を繰り返し、紫外線などでDNAがダメージを受けると、増殖が止まった「老化細胞」になる。しかし細胞が死んだわけではなく、たんぱく質を出して周囲に炎症を起こし、動脈硬化や認知症、糖尿病といった加齢による病気を誘発する。研究チームは遺伝子の働きを抑え、薬によってACLY酵素を抑制すると、老化細胞が炎症反応を抑えられたと、報告した。(2024年7月23日朝日新聞)

狂犬病の死亡は「子犬からの感染」
フィリピンは年間200人から300人が狂犬病で亡くなる狂犬病高蔓延国である。新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響で、動物の狂犬病ワクチン接種率が低下し、狂犬病の発生がさらに増加している。その結果、現在フィリピンでは、年間100万人以上の人々が動物咬傷後の狂犬病発症予防のためにワクチンを接種しており、非常に大きな経済的負担となっている。これまで狂犬病患者に関する詳細な検討は行われておらず、原因動物の年齢など詳細はわかっていなかった。大分大学医学部部生物学講座研究グループと長崎大学熱帯医学研究所は、狂犬病患者に関し、感染原因を詳細に検討する研究をフィリピンで実施した。3年間で151例の狂犬病患者を登録。この研究は世界でも最も大規模な前向き研究となった。その結果、子犬が狂犬病の最も主要な原因動物であることが確認された。この事実は、子犬への狂犬病ワクチン接種方法に問題があることを示唆するもので、研究グループはワクチン接種方法の早急な見直しが必要であることを提唱した。さらに、動物咬傷後に発症予防法を受けない最も一般的な理由として、軽度の咬傷であるために自己判断で治療の必要がないと考えるケースが多く、それが狂犬病による死亡につながることが多いことが明らかになった。狂犬病は世界中で蔓延している恐ろしい感染症である。
動物に咬まれた場合、たとえ軽症であってもすぐに咬傷部位を15分以上洗浄し、現地の動物咬傷外来を受診することが重要だ。狂犬病ワクチンや狂犬病グロブリンの接種は、発症をほぼ100%防ぐことが可能だ。(2024年7月22日m3.com)

「うつ病」はどのように遺伝するのか
うつ病には、「うつ病になりやすい」人と、そうでない人がいて、「うつ病になりやすい体質」は遺伝率30~50%で遺伝することがわかっています。しかし、その仕組みはまったくわかっていませんでした。うつ病の原因がヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)のSITH-1(シスワン)遺伝子であることを発見した東京慈恵会医科大学・ウイルス学講座研究チームは、今回、「うつ病になりやすい」人とそうでない人は何が異なるかを発見し、「うつ病になりやすい体質」が遺伝する仕組みを、世界で初めて解明しました。その遺伝の仕組みは、これまで知られていなかった、全く新しいメカニズムでした。うつ病を引き起しやすいタイプのSITH-1遺伝子は、SITH-1が発現しやすい遺伝子変異を持っており、うつ病患者の67.9%がこのタイプのSITH-1遺伝子を持つHHV-6に感染していました。このタイプのHHV-6に感染している人は、そうでないタイプのHHV-6に感染している人の約5倍、うつ病になりやすいことが判りました。また、HHV-6は新生児期に主に母親から感染し、その後、一生涯ウイルス感染が持続することが知られています。うつ病を起こしやすいSITH-1遺伝子は、HHV-6とともに親から子に伝搬することで遺伝に関係することも判りました。この発見は、メンデル遺伝として知られている染色体の親から子への伝搬による遺伝のメカニズム以外にも、親に持続的に感染している常在微生物(マイクロバイオーム)の子への伝搬が遺伝のメカニズムになり得ることを示す世界で初めての発見であるとともに、HHV-6のSITH-1がうつ病の原因となることをさらに確実とする証拠でもあります。この発見により、うつ病の遺伝については、新生児期に「うつ病を起こしにくい」HHV-6をワクチンとして接種することが可能であると考えられます。また、これまでMissing Heritability(失われた遺伝率)と呼ばれ、謎とされていたうつ病の遺伝のメカニズムが明らかになり、解決策が得られたことで、うつ病に対する社会的偏見が減ることが期待されます。(2024年7月19日m3.com)

コロナ定期接種10月から開始 高齢者が対象
65歳以上の高齢者らを対象にした新型コロナウイルスワクチンの定期接種が10月1日から始まることが7月18日、厚生労働省への取材で分かった。準備が整った自治体、医療機関から順次、接種できる。具体的な接種期間は、来年3月31日までの間で各自治体が決める。定期接種は65歳以上の高齢者と、心臓や腎臓、呼吸器に機能障害があるなど基礎疾患を持つ60~64歳の人が対象。重症化予防を目的に、年1回接種する。自己負担額は自治体によって異なるが、最大7千円となるよう、国が接種1回当たり8300円を各自治体に助成する。インフルエンザや肺炎球菌などの他のワクチンとの同時接種は、医師が特に必要と認めた場合に受けられる。同時に打たない場合の接種間隔に制限は設けない。ワクチンには、オミクロン株の「JN・1」や、それに近い系統の変異株に対応したものが使われる見込み。各自治体が定めた期間外の接種や、対象外の人が打つ場合は原則全額自費の任意接種となる。(2024年7月19日M3.com)

新型コロナ流行「第11波」
新型コロナウイルスが全国的に広がり、11度目の流行の波が来ている。「第11波」は熱中症患者の増加と重なることも懸念され、専門家は感染対策の継続を呼びかけている。厚生労働省は7月19日、新型コロナの最新の感染状況を公表した。定点医療機関(1医療機関当たりの平均の感染者)から報告された新規感染者数は1週間で計5万5072人。1定点(1医療機関)あたりで前週の1・4倍増加の11・18人、10週連続で増加。昨年同時期と同じ水準だ。入院者数も急増している。定点医療機関からの届け出によると、1週間で3081人が入院。5カ月ぶりに3千人を超えた。集中治療室(ICU)に入院した患者は113人と、前週から11人増えた。(2024年7月11日朝日新聞)

人間のペニスから初めてマイクロプラスチックを検出
人間のペニスから7種類のマイクロプラスチックが初めて検出されたことを、米マイアミ大学ミラー医学部の研究グループが発表した。この研究では、5点のペニスの組織サンプルのうちの4点でマイクロプラスチックが検出されたという。マイクロプラスチックは主要臓器の細胞や組織に浸潤する可能性があるとしている。今回、勃起不全(ED)と診断され、2023年8月から9月の間に陰茎インプラント手術を受けるために入院した6人の患者から採取したペニスの組織サンプルを用いて分析を行った。その結果、7種類のマイクロプラスチックが見つかった。最も多く検出されたのはポリエチレンテレフタレート、次いで多かったのはポリプロピレンであった。今後は、マイクロプラスチックがEDに関係しているのか、病理学的症状を引き起こすレベルはどの程度のものなのか、どのような種類のマイクロプラスチックが病理学的症状を引き起こすのかを明らかにする必要があると述べている。(2024年7月15日HealthDayNews)

心血管疾患の予防、LDL-Cはより低く
第56回日本動脈硬化学会総会・学術集会で、動脈硬化性心血管疾患患者の二次予防を対象とした、LDLコレステロールの新たな管理目標値が提言された。急性冠症候群、アテローム血栓性脳梗塞、末梢血管疾患など病型に応じて、LDL-C55~70mg/dL未満という、現行の診療ガイドラインよりも一段厳格な目標値になっている。学会内での最終的な議論を経て、年内に正式発表される予定だ。脂質異常症に関する現行の診療ガイドラインである「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」では、冠動脈疾患のLDL-C目標値は、100mg/dL未満。ただし、アテローム血栓性脳梗塞、家族性高コレステロール血症、糖尿病では、70mg/dL未満を考慮すると書かれている。(2024年7月12日日経メディカル)

白血病、骨髄移植後の合併症を特定
白血病治療に伴う合併症を悪化させる毒性の強い腸内細菌を突き止めたと、大阪公立大と東京大医科学研究所のチームが発表した。この細菌だけを「狙い撃ち」できる酵素の合成にも成功し、新しい治療薬の開発につながると期待される。科学誌ネイチャーに掲載された。白血病の治療では他人の骨髄などから採取した造血幹細胞を移植するが、その後、移植した造血幹細胞から作られる免疫細胞が患者の体を「異物」とみなして攻撃し、下痢や皮膚がはがれる 紅皮症などを起こすことがある。移植片対宿主病と呼ばれる合併症で、患者の3~5割で発症し、命に関わる危険性もある。過去の研究で腸内細菌の一種が移植片対宿主病の悪化に関わることが知られていた。チームは造血幹細胞の移植を受けた患者46人の便を採取し、その中に含まれているDNAを解析。その結果、移植片対宿主病を起こした患者にはこの腸内細菌が多く、その中に赤血球を溶かす強毒株がいることを突き止めた。この細菌は膜状のバリアを作る遺伝子を持ち、患者に投与される抗菌薬から逃れて増殖していると推定された。さらに、この細菌だけを攻撃する「バクテリオファージ」と呼ばれるウイルスの遺伝子も検出。このウイルスが作る、細菌を溶かす酵素の合成に成功した。今回見つかった強毒性の細菌をマウスの腸に定着させて移植片対宿主病を発症させると、25日間で半数近くが死んだが、酵素を投与すると死ななかった。既存の薬が効かない難治性移植片対宿主病に効く画期的な薬につながることを期待したい。(2024年7月11日読売新聞)

米国の乳牛で広がる鳥インフル
米国の農場の乳牛で感染が広がる高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1)が、従来のH5N1よりヒトへの感染効率が高まっている可能性があることを東京大などの研究チームが確認した。8日付の英科学誌ネイチャーに発表した。H5N1は野生や飼育下の鳥で広がり、高い病原性を持つ。感染した鳥などと接触したヒトへの感染がまれに起き、致死率は50%程度とされる。一方、2020年後半に欧州で見つかったH5N1の亜型ウイルスは、鳥だけでなく、ネコやイヌの哺乳動物への感染も相次ぐ。南米ではアシカやアザラシの大量死が報告されている。今年3月以降、米国の乳牛にも広がり、これまでに12州で感染が確認された。いずれも軽い症状だったが、7月3日までに農場労働者4人の感染も報告されている。従来のH5N1は、ヒトで流行する季節性インフルエンザのH1N1と、ヒトの細胞に感染する際に結合する細胞表面の糖鎖が少し異なる。しかし、研究チームが感染した乳牛のミルクから採った亜型のH5N1を調べると、H1N1が結合する糖鎖にも結合できることが判明した。この糖鎖は、ヒトの鼻やのどなどの上気道の細胞に多い。研究チームは「牛由来のH5N1は、ヒトの上気道の細胞に結合する能力を持つ可能性がある」と報告した。また、イタチ科のフェレットを使った実験で、H1N1より効率は低いが、飛沫(ひまつ)感染することも確認した。牛由来のH5N1に感染したフェレットがいるケージの隣に、感染していないフェレットを入れたケージを置くと、実験した4匹のうち1匹で、ウイルスに対する抗体量が上昇し、感染していたことが確認された。こうした結果から、研究チームは「季節性インフルよりも効率は低いが、牛由来のH5N1は飛沫感染する」と結論づけた。マウスの鼻から感染させ、3日目と6日目に臓器中のウイルス量を測ると、従来のH5N1と同じく、脳や乳腺、筋肉などの全身の臓器でウイルスが増殖していた。フェレットでも全身の臓器で増殖した。(2024年7月9日朝日新聞)

大腸がん治療薬の効果予測へ
進行、再発性の大腸がん患者のより良い治療薬を選ぶために、遺伝子の働きを抑える「DNAメチル化」を調べる世界初の検出キットが国内で販売される。理研ジェネシスが東北大学と共同開発し、厚生労働省が製造販売を承認した。同社は公的医療保険の適用をめざし、保険収載に合わせて販売を始める予定だ。大腸がんの患者は増加傾向にあり、国立がん研究センターによると年間に診断される人は15万6千人。亡くなる人は年5万2千人で、女性では部位別で最も死亡者数が多い。大腸がんの薬物療法では、がんの原因遺伝子ごとに分子標的薬が使えるようになってきた。だが、分子標的薬はすべての患者に効果があるわけではない。薬の効果を精度の高い方法で予測ができれば、患者の負担が減り、より効果が期待できる治療を選べる。分子標的薬が効きそうな患者を早く見極める目安として、東北大の研究チームはDNAのメチル化に着目した。遺伝情報を含むDNAにメチル化という化学的な変化が起きると、メチル化した部位の近くにある遺伝子の働きが抑えられる。(2024年7月8日朝日新聞))

コロナ感染 抑制物質を特定
長崎大高度感染症研究センターの研究グループは、土壌に存在する微生物が生産する天然物質プラディミシンAが、新型コロナウイルスの感染を抑制することを発見したと発表した。同ウイルスの変異株に有効な抗ウイルス薬が開発できる可能性があるとしている。新型コロナウイルスを覆う突起状のスパイクタンパク質には、糖が鎖状につながった「糖鎖」が巻き付いている。研究では、プラディミシン-Aが糖鎖にくっつくことや、その仕組みを確認。さらに培養細胞を使った試験で、プラディミシン-Aの濃度を高めると同ウイルスの感染を抑制できることが裏付けられた。新型コロナは変異株に有効な薬の開発が課題となっているが、糖鎖はウイルス表面にあるので、プラディミシン-Aの効果は変異株に対しても変わらないとされる。糖に結合するタンパク質レクチンも、感染抑制に有効なことが既に報告されているが、有害な抗原抗体反応を引き起こす危険性があるなど薬に利用するには多くの課題がある。これに対し、プラディミシン-Aは有害な影響を及ぼすこともないという。今後はプラディミシン-Aを含む化合物を合成する研究を進め、どの化合物がより効果的かを調べていく。(2024年7月5日長崎新聞)

薄毛治療、毛髪再生医療
東邦大学医療センター大橋病院は、培養自家毛球部毛根鞘細胞加工物「S-DSC」を用いた毛髪再生医療による薄毛治療の提供を始めた。脱毛していない後頭部の頭皮から毛球部毛根鞘(DSC)細胞を採取し、体外で細胞を増やしてから脱毛部に投与することで毛髪の成長を促す。同治療には臨床研究を進めてきた東京医科大学、杏林大学、資生堂との共同開発による技術を活用。自由診療のため費用全額が患者負担となるが、薄毛治療の新たな選択肢として普及を目指す。薄毛に悩む人の生活の質向上を目指し、東邦大学などが2016年から医師主導の臨床研究を行ってきた。S-DSCの頭皮薄毛部への注入施術の安全性と有効性を確認し、同治療法の実用化に世界で初めてこぎ着けた。治療では、まず大橋病院で患者の脱毛していない後頭部の頭皮からDSC細胞を採取する。その後、資生堂による管理・監督下で適切に輸送、培養、凍結保管される。投与日に大橋病院で解凍し専用の注入器を用いて脱毛部に投与する。DSC細胞を移植し、毛髪の成長に重要な役割を果たす毛乳頭細胞の活動を活発化させることで、髪が太く長く成長しヘアサイクルや頭皮環境が整うことが期待できる。治療回数などにもよるが、費用の目安は、約156万~363万円としている。従来の薄毛治療は薬剤によるものが一般的で、継続的な服用や女性の場合は薬剤の選択肢に制限があるなどの課題があった。一方、新たな治療法は性別の制限がなく、服薬が不要のため治療による負担も軽減される。自分の細胞を用いることから拒絶反応などのリスクも極めて低いという。(2024年7月3日化学工業日報)

アルツハイマー薬「ドナネマブ」日本で申請中
米食品医薬品局(FDA)は、新たなアルツハイマー病治療薬「ドナネマブ」を承認した。脳内にたまったアミロイドベータという有害タンパク質を取り除く薬で、使用開始後1年半の時点で症状の進行を22%抑える効果を示した。1年分の費用は約510万円。日本でも承認申請している。認知症の原因とされる物質を除去する薬としてはエーザイのレカネマブに続く実用化。エーザイの「レカネマブ」は月2回点滴し、その後も頻度を落として投与を続ける想定なのに対し、ドナネマブは月1回で、有害タンパク質が除去できれば使用をやめられる。臨床試験では1年で半数がこの水準に達した。対象は、物忘れが現れた軽度認知障害(MCI)から、生活に支障が出始めた早期認知症の人。それより症状が進んだ人には使えない。60~85歳の1736人が参加した臨床試験では、日常生活を送る力や認知機能が落ちていくスピードを22%抑えた。一方、投与された人の36%に脳の微小な出血やむくみが起き、投与との関連が疑われる死亡も3例あったため、添付文書で注意を促した。両親から「APOE4」という遺伝子を受け継いだ人は特にリスクが高いため、治療に入る前に遺伝子検査を実施すべきだと指摘した。(2024年7月3日共同通信社)

コロナ後遺症患者、半年後、日常生活に深刻な影響8・5%
新型コロナウイルス感染後の後遺症患者の8・5%が感染から約半年後も日常生活に深刻な影響があったとする研究結果を厚生労働省研究班が発表した。オミクロン株流行期の感染者を調べた。チームは2022年7~8月に新型コロナに感染した20~60代の8392人と感染しなかった6318人を比較して分析。感染から約半年後にアンケートしたところ、感染者の11・8%に当たる992人に後遺症とみられる長引く症状があった。このうち8・5%の84人が日常生活に深刻な支障があると答えた。主な症状は味覚障害、筋力低下、嗅覚障害、脱毛、集中力低下、頭にもやがかかったように感じる「ブレインフォグ(脳の霧)」などだった。後遺症が出た割合は、女性や基礎疾患のある人で新型コロナの症状が重かった人で高かった。一方、ワクチン接種者では低かった。(2024年7月2日共同通信社)

紅麹サプリ、8割超の患者で腎機能障害続く 
紅麹サプリメントの問題で、6月30日に日本腎臓学会は、サプリ摂取後に医療機関を受診した患者206人の分析結果を発表した。治療後の経過を確認できた105人のうち、依然として8割超の患者で腎臓の機能低下が続いていることが明らかになった。患者の年齢は50代が38%、60代が32%、40代が16%だった。女性が67%を占めた。多くの患者で腎臓の中にある尿細管という部分がダメージを受けることで起こる「ファンコニー症候群」を疑う症状や検査結果がみられた。2割近くがステロイド薬による治療を受けていた。腎臓の組織を調べる腎生検を実施した110人のうち、47%が尿細管間質性腎炎を、28%が尿細管壊死を起こし、多くの人たちに慢性腎臓病がまだまだ残っている状態だと指摘した。(2024年6月30日朝日新聞))

機能性表示食品、健康被害情報を報告義務化
消費者庁は、機能性表示食品を製造・販売する事業者に対し、医師の診断がある健康被害情報の全件報告を2024年9月から義務づける方針を固めた。品質管理体制の強化は2026年9月から求める。小林製薬の「 紅麹べにこうじ 」成分入りサプリメントを巡る健康被害問題を踏まえた措置で、国が安全性などを審査して販売を許可する特定保健用食品(トクホ)にも適用する。9月以降、届け出事業者に対し、因果関係や症状の軽重にかかわらず、全ての被害情報を保健所などに報告することを義務づける。小林製薬が報告までに約2か月かかったことから、被害情報を収集する体制の強化も求める。製品の品質を一定に保つための適正製造規範に沿った製造・管理も義務化する。これまでは品質管理を行うかどうかは事業者任せだった。機能性表示食品については、トクホや医薬品との混同を避けるため、製品のパッケージなどの表示方法を同月から見直させる。(2024年6月27日読売新聞))

血を作る遺伝子発見、白血病治療に期待
体内で重要な役割を果たす赤血球や白血球などの血液細胞を作るのに必須の遺伝子をマウスで発見したと大阪大などのチームが発表した。ヒトの急性白血病などの血液がん患者でこの遺伝子に変異が見られることも判明。血液がんの治療を変えうる研究とし、新たな治療の開発が期待できるとしている。血液細胞は骨髄にある造血幹細胞から複数の遺伝子が関わって作られるが、その仕組みは不明な部分も多い。血液細胞に関わる病気として、急性白血病や、悪性リンパ腫が知られている。チームはさまざまな遺伝子を壊したマウスの胚性幹細胞(ES細胞)を200種類作成し、それぞれ血液細胞になるように変化させた。その中で、ある特定の遺伝子を壊すと、血液細胞がほとんど作られないことを発見。この遺伝子をAhedと名付けた。このAhed遺伝子が壊したマウスの胎児は、生まれる前に死亡し赤血球や白血球はほとんど作られていなかった。大人のマウスでもAhed遺伝子を壊すと血液細胞の量が激減。胎児期から成長するまで、血液を作るのに重要な遺伝子だと分かった。また、既存のデータベースで調べたところ、急性白血病患者の約1割にAhed遺伝子の変異があったという。(2024年6月26日共同通信社)

マダニ感染症にアビガン承認
富士フイルム富山化学は、新型インフルエンザ薬「アビガン」を、マダニが媒介する重症熱性血小板減少症候群の治療にも使えるようになる厚生労働省の承認を取得したと発表した。世界初の治療薬となる。重症熱性血小板減少症候群の致死率は約27%と高い。主にウイルスを持つマダニにかまれることで感染する。6~14日の潜伏期を経て発熱や下痢などの症状が出る。患者は西日本に多い。ペットからの感染が報告されているほか、患者を診察した医師への感染例も報告された。アビガンは新型インフルエンザの流行に備えて国が備蓄している飲み薬。新型コロナウイルス流行当初に使われ、話題になった。重症熱性血小板減少症候群の治療では、緊急時に対応できる医療機関で十分な知識を持つ医師が投与する。動物実験で胎児に奇形が出る恐れが指摘され、妊婦や妊娠している可能性がある人には使えない。(2024年6月25日 共同通信社)

Long COVID(コロナ後遺症)の定義
米国科学・工学・医学アカデミーはLong COVIDの定義を発表した。Long COVID(コロナ後遺症)の定義は、これまで世界保健機構(WHO)や米国疾病予防管理センター(CDC)などから暫定的な定義や用語が提案されていたが、共通のものは確立されていなかった。今回の定義によると、LongCOVIDは、新型コロナウイルス感染後に発生する感染関連の慢性疾患であり、1つ以上の臓器系に影響を及ぼす病状が少なくとも3ヵ月間継続するとしている。LongCOVIDの徴候、症状、診断を挙げると200項目以上に及ぶという。以下が主な症状です。息切れ、咳、持続的な疲労、労作後の倦怠感、集中力の低下、記憶力の低下、繰り返す頭痛、ふらつき、心拍数の上昇、睡眠障害、味覚や嗅覚の問題、膨満感、便秘、下痢、間質性肺疾患および低酸素血症、心血管疾患および不整脈、認知障害、気分障害、不安、片頭痛、脳卒中、血栓、慢性腎臓病、起立性調節障害およびその他の自律神経失調症、筋痛性脳脊髄炎、慢性疲労症候群、肥満細胞活性化症候群、線維筋痛症、結合組織疾患、脂質異常症、糖尿病、および狼瘡、関節リウマチ、シェーグレン症候群などの自己免疫疾患など。(2024年6月25日ケアネット)

がんの男児の精巣保存、成人後の不妊治療に備え
がん治療を受ける男児の精巣の一部を凍結して長期保存し、成人後に正常な精子を作れるようにする不妊治療技術の開発に、大阪大など日米共同研究チームが着手した。将来の実用化を見据え、男児の精巣の一部を採取する「精巣バンク」の運用を、来年にもスタートさせる計画。がんで放射線照射や抗がん剤の投与を受けると、病気の治療が成功しても不妊になるケースが多い。成人は治療前に卵子や精子を凍結温存する技術があるが、精巣が未成熟な男児の治療法はない。研究チームは、未成熟な精巣を体外で培養し、精子を作る研究を始めた。マウスで子どもを産ませることに成功しており、サルなどの動物で研究を進める。iPS細胞から精子を取り囲む細胞を作り、体外で精巣の環境を再現して、人間の精子を成熟させる技術を確立する。(2024年6月24日読売新聞)

帯状疱疹ワクチン、定期接種化か
厚生労働省の専門家委員会は、高齢者を対象とする帯状疱疹ワクチンについて、「科学的に定期接種化が妥当」と判断した。今後、定期接種化に向けて、対象年齢やワクチンの種類などの詳細な議論を進める。国内で使用されている帯状疱疹ワクチンは1回接種の「生ワクチン」と2回接種の「不活化ワクチン」の2種類ある。接種から1年後の発症予防率は4~9割で、神経痛などの合併症による重症化も防ぐ効果が確認されている。現在、任意接種のため、生ワクチンは約1万円、不活化ワクチンは計約4万円かかる。50歳以上の人に接種費用を補助している自治体も増えている。定期接種になれば、費用の一部もしくは全額が公費負担となる。(2024年6月20日朝日新聞)

不妊治療費の自己負担分を全額補助(青森県)
青森県は県内に住む人を対象に不妊治療費の助成を7月1日に始めると発表した。体外受精など、公的医療保険が適用される「生殖補助医療」の自己負担分(3割)を全額補助する。子どもを望む世代を支援するとともに、少子化が進む中、出生数を増やすのが狙い。県によると、自己負担分を上限なしで全額補助するのは全国初。女性が43歳未満の場合に適用する。採卵・採精、体外受精や顕微授精、受精卵・胚培養、胚凍結保存、胚移植-の一連の治療が対象となる。適用は、子ども1人につき40歳未満は6回まで、40歳以上43歳未満は3回までとする。県は、採卵から胚移植までの一連の診療にかかる負担額を10~15万円程度と想定。年度内に約2千組の利用を見込み、本年度当初予算で2億471万円の事業費を確保した。県は、女性一人が生涯で得る子どもの推定人数・合計特殊出生率が「2」以上となる道筋を付けることを政策に掲げている。(2024年6月19日 東奥日報)

梅毒感染、10代妊婦の「200人に1人」、胎児感染は近年で最多
2022年に10代の妊婦の約200人に1人が、性感染症の梅毒に感染していたことが、日本産婦人科医会の調査で分かった。梅毒の感染者はこれまで男性が大半を占めているが、若い女性にも感染が広がっており、胎児に感染する「先天性梅毒」も急増している。梅毒は「梅毒トレポネーマ」という細菌による感染症。性交渉だけでなく、キスで感染することもある。流行の背景には、性感染症の知識不足やSNSで見知らぬ個人がつながりやすくなったことなどがあるとみられている。日本産婦人科医会が昨年、お産を扱う全国の医療機関に2022年の状況を尋ねた調査(1346施設)によると、10代の妊婦3504人のうち18人が梅毒に感染していた。感染率は0.51%で、6年前の調査の0.19%から約3倍に増えていた。20代では13万9432人のうち238人で0.17%。30代では24万5730人のうち108人で0.04%。感染率はどちらも前回調査の約4倍だった。40代以上は2万8014人のうち8人で感染率は0.03%だった。国立感染症研究所によると、23年の感染者数は、10年前の約12倍の約1万5千人。先天性梅毒は37人で過去最多だった。感染経路で見ると、10年ほど前は、男性間が全体の約3分の1を占め、最も多かった。だが、近年は男女ともに異性間の感染が急増している。(2024年6月16日朝日新聞)

難病ALSに白血病治療薬が効果、患者の半数以上で進行抑える
全身の筋肉が衰える難病・ 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の初期の患者に、白血病の治療薬を投与する治験について、京都大iPS細胞研究所は、患者26人のうち半数以上で病気の進行を抑える効果があったと発表した。使用したのは慢性骨髄性白血病の治療薬「ボスチニブ」。患者から作製したiPS細胞(人工多能性幹細胞)でALSの状態を再現した細胞を作り、約1400種類の既存薬などを投与する実験を行ったところ、ALSの治療効果が期待できることがわかった。今回の治験は2022年3月から、京大や徳島大、北里大など全国7か所の大学病院で「発症後2年以内」などの条件を満たした中高年の患者計26人を対象に実施。3か月の経過観察の後、ボスチニブを24週間、毎日服用して症状の変化を点数化し、既に承認されている別の治療薬の治験データなどと比較した。その結果、少なくとも13人で症状の進行が強く抑えられることが判明。患者の血液を調べると、神経細胞のダメージを示す物質の量が減っていた。治験は第2段階で、今後最終段階の治験の実施も視野に入れ、早期の実用化を目指す。ALSは運動神経が徐々に失われ全身の筋肉が動かなくなる難病。国内に約9000人の患者がいる。(2024年6月12日読売新聞)

膵臓がん、1センチ以下で検出
国立がん研究センターなどの研究チームは、微小な 膵臓がんを発見できる新しい画像診断技術を使った治験を始めたと発表した。従来の検査法では難しい0・3~1センチのがん検出を目指す。実用化されれば、初期に自覚症状がほとんどない膵臓がんの早期発見につながることが期待される。研究チームは、がん細胞の表面にあるたんぱく質にくっつきやすい性質を持つ新しい放射性医薬品を開発した。治験ではこれを 腹腔内に投与し、PET(陽電子放射断層撮影)検査で撮影すると、がん細胞が光って見える。マウスを使った実験では0・3センチ程度のがんが検出できたという。現状ではCTやMRIなどの検査方法では1センチ以下の検出は困難となっている。(2024年6月12日読売新聞)

世界の平均寿命、2050年までに4年以上の延長か
今後30年間に世界の平均寿命(出生時平均余命)は男性では5年近く、女性で4年以上延長することが予測されるとの最新の分析結果を、世界疾病負担研究の研究者らが、Lancetに発表した。結果、世界全体で平均寿命は2022年から2050年にかけて73.6歳から78.2歳へ延びると予測された。男女別に見ると、男性では71.1歳から76.0歳へ4.9年の増加、女性では76.2歳から80.5歳へ4.2歳の増加であった。また、同期間に健康な状態で生きる年数は、男性では62.6歳から66.0歳へ、女性では64.7歳から67.5歳へ延びると予測された。さらに、全体的な平均寿命の延長に加え、地域間の平均寿命の格差が縮小することも予測された。今後、平均寿命の長さには、感染症よりも心臓病や糖尿病、がん、肺疾患などの慢性疾患が与える影響の方が強まることが予測された。(2024年6月12日HealthDay News)

劇症型溶連菌、過去最多に、致死率3~7割
国立感染症研究所は、溶血性レンサ球菌(溶連菌)の感染で、致死率が3~7割と極めて高い「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」の今年の患者数が過去最高の977人となったと発表した。溶連菌は一般的に咽頭炎などを引き起こす細菌だが、まれに劇症化して手足の壊死や多臓器不全を伴うショック症状に至ることがあり、「人食いバクテリア」とも呼ばれる。症状が出てから急激に悪化するのが特徴。病原性が強く感染が広がりやすいとされる「M1UK」株が増加傾向。都道府県別で多かったのは東京145人、愛知67人など。溶連菌は足の傷口から感染しやすいといい。予防には水虫や靴擦れなど、小さい傷を放置せずに治すことが重要。高齢者が感染すると48時間で死亡するケースもある。高熱、傷口の腫れが急に広がったりしたら危険なサインです。(2024年6月11日共同通信社)
●溶血性レンサ球菌
連鎖状につながる球形の細菌で、赤血球を溶かしながら増殖する。このうち子供で流行するA群は発熱、喉の痛みが主な症状で、1週間以内に回復する。劇症型溶血性レンサ球菌感染症は子どもから大人まで幅広く発症し、特に30歳以上に多い。発熱や血圧低下などの症状が出た後に急激に悪化し、手足の壊死や多臓器不全を引き起こす。致死率は30~70%と高い。

慢性腎臓病早期発見
慢性腎臓病(CKD)の予防や早期発見につなげようと川崎医科大の研究グループは、患者のビッグデータとAI(人工知能)を活用した「CKD予後予測システム」を開発した。健康診断で測定した血液検査の結果などを入力すると、将来的に透析治療が必要となるリスクを判定する仕組み。一般公開しておており、自身の腎機能を把握し受診や生活習慣の改善につなげてほしいとしている。システムは同大付属病院を受診したCKD患者延べ約7万人のデータをAIに学習させており、年齢や性別のほか「尿タンパク」「悪玉コレステロール」「クレアチニン」といった検査結果や質問への答え約20項目を入力すると「1年以内に透析が必要になる」または「生命に関わる病状になる」確率が示される。入力する項目が少ない簡易版もある。「高リスク」と判定された場合は専門医への相談を促し「低リスク」となった場合も肥満や糖尿病、高血圧が原因で腎機能が低下することを説明する。国内のCKD患者は1330万人で成人の8人に1人が患っているとされ「新たな国民病」とも呼ばれる。腎機能は加齢によっても低下することが分かっており、高齢化が進めばさらに増えると推測されている。進行すると透析治療が必要になるが、自覚症状がないため早期発見が課題となっている。(2024年6月11日山陽新聞)

パーソナルトレーニング、骨折などの事故
ダイエットや筋力アップなどを目的にトレーナーから個別指導を受ける「パーソナルトレーニング」について、昨年までの6年間で骨折などの事故が209件発生し、うち約3割で1か月以上の治療が必要なケースだったことが、消費者庁の消費者事故調のまとめでわかった。今後具体的な事故防止策を打ち出す方針だ。パーソナルトレーニングを巡る事故が重なったことを受け、事故調は2023年5月から実態調査を開始。18~23年に報告されたスポーツジムなどに絡む事故は505件で、このうち209件が1対1で指導を行うパーソナルトレーニング中の事故だった。事故調がジムなどでの事故件数を公表したのは初めて。年代別では40歳代が最多の51件で、50歳代の41件、30歳代の37件、20歳代の33件と続いた。60歳代以上も35件に上る。女性が全事故の9割超を占めた。209件のうち、治療期間は1か月以上が61件と全体の29%を占め、1週間未満が44件、3週間~1か月が23件、1~2週間が21件。トレーナーに指示された動作をしたら腰椎圧迫骨折や膝関節靱帯損傷の事例もあった。パーソナルトレーニングには現在、法的な定義や法制度がなく、専門知識を学んでいないトレーナーが自己流で指導することもあるとみられる。事故調は「トレーナーとしての教育を受けず、マニュアルもないまま指導すれば、利用者の事故を防ぐことは困難だ」と指摘する。(2024年6月8日読売新聞)

iPSから免疫抑える細胞
人のiPS細胞から、免疫反応を抑える制御性T細胞(Tレグ)に近い細胞を作り出すことに世界で初めて成功したと、京都大などの研究チームが発表した。自己免疫疾患などの治療に生かせる可能性があり、科学誌「セル・ステムセル」に掲載される。ウイルスや細菌から体を守る免疫反応は、過剰になると自身の体を攻撃し、関節リウマチなどの自己免疫疾患や、白血病治療の骨髄移植後に起きる合併症などの原因となる。こうした過剰な反応にブレーキをかけるのがTレグである。しかし、Tレグは培養してもほとんど増えず、数を確保できないことが課題だった。京都大iPS細胞研究所は、人のiPS細胞から免疫細胞を作製。さらに4種類の薬を加えて1~2週間培養し、Tレグの特徴を持つ細胞を作ることに成功した。この細胞を免疫細胞と一緒に培養したり、マウスに投与したりする実験を行った結果、過剰な免疫反応を抑える効果が確認された。iPS細胞は増殖しやすく、治療に必要な大量のTレグを作り出せる可能性が開けたという。今回の成果で、患者自身のTレグだけでなく、健康な他人のTレグを活用する道が示された。コスト削減などが見込める反面、安全性や有効性を慎重に確認していく必要があると言う。(2024年6月7日読売新聞)

人間の精巣からマイクロプラスチックを検出
マイクロプラスチックが男性に特殊な危険をもたらす可能性を示唆する新たな知見が、米ニューメキシコ大学薬学部の研究によって得られた。この研究では、人間の精巣の中には動物の精巣や人間の胎盤と比べて3倍ものマイクロプラスチックが存在していることが示された。体内に取り込まれたマイクロプラスチックが主要な臓器の細胞や組織に侵入して細胞プロセスを阻害する可能性のあることや、マイクロプラスチックにビスフェノール類、ペルフルオロアルキル化合物、ポリフルオロアルキル化合物、重金属などの内分泌かく乱化学物質が吸着する可能性のあることが、エビデンスとして示されている。米国内分泌学会によれば、内分泌かく乱化学物質は、性器の奇形や生殖異常、女性の不妊や男性の精子数の減少を引き起こす可能性がある。特に男性の精子数に関しては、米国を含む世界の国々で過去50年間に50%以上減少したことが報告されている。今回の研究で47匹の犬と、死亡時の年齢が16歳から88歳だった男性23人の精巣サンプルを用いて、12種類のマイクロプラスチックの量を調べて比較した。その結果、全てのサンプルからマイクロプラスチックが検出され、人間でのその濃度は犬の約3倍であることが明らかになった。また、研究グループは今回の研究で、男性が高齢になるほどより多くのマイクロプラスチックが見つかると予測していたが、実際にはそうではないことも示された。「男性の生殖のピークである20歳から45歳までの間はマイクロプラスチック濃度が高く、55歳を過ぎると濃度は低下し始めるようだ。若い人の精巣はエネルギー必要量が多いため、「精巣により多くのマイクロプラスチックが引き込まれる可能性がある」と考えられる。さらに、62人の人間の胎盤中のマイクロプラスチック濃度と比較した。この研究では、調べた全ての胎盤サンプルから組織1g当たり6.5~790μg(平均126.8μg/g)のマイクロプラスチックが検出されていた。その結果、「精巣中のマイクロプラスチック濃度は胎盤で確認された濃度の3倍であったという。これらの結果を踏まえて、われわれがさらされているプラスチックの数は、10~15年ごとに倍増しているのが現状だ。15年後に2倍、30年後に4倍の量にさらされたとき、何が起こるのだろうか。今すぐに対策が必要だと警鐘を鳴らしている。(2024年6月6日HealthDay News)

脊柱側弯症の早期発見へ、精度上げ手術回避
思春期の女子に発症することが多い、背骨がねじれるように曲がる疾患、脊柱側弯症の早期発見に、徳島県では、最新型の検査機器を用いたモデル事業に取り組む。最新機器を用いて見落としを防ぎ、手術が必要になる前段階での治療につなげる。側弯症の手術は、背骨にスクリューを埋め込んで固定するという大がかりなものになり、体への負担も大きい。早めに発見できれば、装具による治療で進行を食い止め、手術を回避できる可能性がある。側弯症の検診は、日本では1979年から学校保健法で義務付けられ実施されてきた。2016年からは、小学生から高校生までの運動器検診のチェック項目に側弯症が含まれている。13、14歳女子の側弯症の有病率は2、5%とされる。しかし、学校検診などでの発見率は全都道府県の平均で0、9%とする調査もあり、視触診では見落としが少なくない。こうした状況を踏まえ、最新型の検査機器を購入し2023年に約800人に検査を実施したところ、女子では、約15%が2次検査が必要な要受診となり、受診者のうち8割近くが側弯症と診断された。この検査機器は、裸の背中に赤外線を当てて等高線を映し出し、左右のしま模様の違いで側弯の有無を判別する。

(脊柱側弯症)
原因不明の特発性側弯症が8割程度を占め、小学4年生から中学3年生の思春期に発症することが多い。性別では女子が男子の7倍に上る。放置しておくと体の成長が止まるまで進行し、手術をしなければ立てなくなったり呼吸器障害を起こしたりする。外見のコンプレックスから、精神的ストレスに悩むケースもある。(2024年6月4日徳島新聞)
・特発性側弯症

出産費用、厚労省HPで公開
厚生労働省は病院やクリニックなど全国約2千施設の出産費用をホームページで公開した。正常分娩は現在、公的医療保険が適用されておらず、医療機関が価格を自由に設定できる。費用の「見える化」を進め、妊婦が施設を選びやすくする狙い。HPの愛称は公募で「出産なび」に決まった。HPでは、出産を希望する市区町村などの地域、病院・診療所・助産所など施設の種類、無痛分娩・立ち会い出産・産後ケアなどのサービスの有無といった条件を選んで検索できる。各施設の平均的な費用や外来の受付時間・アクセスなどを紹介している。妊娠・出産の悩みを相談できる窓口の情報、育児休業や短時間勤務といった育児と仕事を両立するための制度に関する情報も掲載されている。なお、政府は2026年度からの出産費用の保険適用を検討。6月にも有識者会議を立ち上げ、本格的な議論を始める。(2024年5月30日共同通信社)

移植ネット、知的障害の人の臓器提供認めず 
移植医療のために臓器提供を斡旋する日本臓器移植ネットワークは15歳以上の知的障害の療育手帳を持っている人に、一律に臓器の摘出を見合わせるよう周知していたことがわかった。臓器移植法の指針では、主治医の判断によっては知的障害のある人でも臓器提供を認めており、厚生労働相は日本臓器移植ネットワークに対して経緯や再発防止策を報告するよう指示書を出した。厚労省によると、日本臓器移植ネットワークは3月、全国の臓器移植コーディネーターに対し、「15歳以上の療育手帳所持者は知的障害者に該当するため、臓器摘出は見合わせること」を周知した。(2024年5月30日朝日新聞)

秋からの新型コロナ定期接種、公費助成あり
秋にも始まる今年度の新型コロナウイルスワクチンの定期接種について、厚生労働省の専門家委員会はオミクロン株の新系統「JN・1」やその派生型に対応したワクチンを使う方針を決めた。世界保健機関(WHO)が開発すべきワクチンとして推奨していた。定期接種は65歳以上の高齢者らが対象となる。公費助成があり、無料か低額で受けられる。今後、製薬企業が対応するワクチンを開発し、今秋にも接種が始まる見通しだ。(2024年5月29日読売新聞)

難治性前立腺がんにアルファ線を放出する薬開発
標準的な治療が効かなくなった前立腺がんに対して、大阪大の研究グループは新しい治療法を開発し、臨床試験を6月から始めると発表した。アルファ線というエネルギーの高い放射線を出す物質を使う治療で、15人ほどの患者に参加してもらう予定だという。グループはがんに集まる物質とアルファ線を出す物質をくっつけた治療薬の開発に取り組んでいる。今回、注目したのは、前立腺がんの細胞の表面に出ているたんぱく質。このたんぱく質の出ている細胞に取り込まれる物質をつくり、アルファ線を放出する「アスタチン211」をくっつけた薬を開発した。動物実験で安全性と効果を確認した。薬を患者に注射すると、薬を取り込んだがん細胞の中で、高いエネルギーのアルファ線がDNAを傷つけて細胞を破壊すると期待される。アルファ線は細胞のすぐ近くでエネルギーを失うため、まわりの組織には影響が少ないという。体外に出てくることもないため、隔離病棟の必要はない。(2024年5月28日読売新聞)

成長とともに「伸びる」血管パッチ、心臓再手術リスク軽減
生まれつき心臓や血管の形が正常と異なる先天性心疾患の子どもの手術で、血管を広げるために使う修復パッチ「シンフォリウム」が、開発された。患者の体の成長にあわせてパッチが伸びるよう設計され、再手術のリスクなどが減ることが期待できるという。先天性心疾患がある子どもは100人に1人とされ、幼いうちに血管を広げたり、血管のルートを修復したりする手術が行われている。手術で血管を広げるのに使う「修復パッチ」は、ウシの心臓の膜を加工したものや、合成素材製のものが使われてきたが、体の成長とともに心臓は大きくなるのにパッチが伸びないことや、素材が劣化することで、再手術が必要になる。シンフォリウムは素材全体が2倍以上伸びるような織り方になっているという。(2024年5月28日読売新聞)

iPS心筋」細胞シート
iPS細胞(人工多能性幹細胞)から心筋の細胞シートを作って心筋梗塞などの患者の心臓に移植する治療法について、大阪大発の新興企業が製造販売承認を厚生労働省に申請することが分かった。iPS細胞を使った再生医療等製品の承認申請は初めてとなる見通しで、認められれば医療現場での活用が近づく。シートを使った治療は、心筋梗塞などで心筋の動きが悪くなる虚血性心疾患の患者が対象になる。悪化すると心臓移植が必要だが臓器提供者が少なく患者自身の負担も大きかった。人のiPS細胞から心筋細胞を作り、シート状に加工。2020年1月~23年3月、虚血性心疾患の患者計8人に対し、1人当たり約1億個の細胞で作ったシートを心臓に貼り付ける治験を行った。8人全員で安全性が確認され、社会復帰できているという。治験の症例が少なくても有効性などが推定できれば期限付きで実用化を認める制度を利用する方針だ。25年を目標に承認を取得したいとしている。(2024年5月25日読売新聞)

アルツハイマー病、血液検査で早期診断
認知症全体の6~7割を占めるアルツハイマー病について、血液検査で高精度に推定する手法を開発したと、東京大などの研究グループが発表した。アルツハイマー病は、記憶障害や判断力低下などの症状を引き起こす、脳内のアミロイド β(ベータ)やタウと呼ばれる異常なたんぱく質が徐々に蓄積し、神経細胞を傷つけることで脳が萎縮して起きると考えられている。同グループは、認知症の症状がない人と、認知症の前段階とされる軽度認知障害(MCI)の計474人を対象に、血液中に含まれるアミロイドβとタウの量を調べて分析することで、脳内でアミロイドβの蓄積が起きているかの有無を検討し、脳内の蓄積状態を確認できるアミロイドPET検査で確認ところ、血液検査は90%以上の精度で診断可能であった。昨年12月、認知症の進行を遅らせるレカネマブが承認されたが。その対象者は、アルツハイマー病の早期段階と診断された患者に限られ、その使用には、アミロイドPETや脳脊髄液の検査が必要である。研究グループはアルツハイマー病の治療は早期発見が重要だ。負担の大きい検査を多くの人が受けることは現実的ではない。血液検査は診断効率化に役立つ可能性がある。今後、実用化に備えての診療体制の充実が求められると話している。(2024年5月23日読売新聞)

半月板損傷、人工たんぱく質を注射して再生治験
三洋化成工業と広島大学病院は、加齢やスポーツなどで損傷した膝の半月板に人工たんぱく質を注射して再生を促す治験を来春から始めると発表した。実用化されれば、半月板を温存する新たな治療法になる。早ければ2027年の実用化をめざすという。半月板はクッションの役割をしている。半月板が損傷すると自然治癒が難しく、手術で断裂部を縫合術や切除術を行う。半月板損傷の原因の一つである変形性膝関節症は国内に約3千万人いるという。運動機能が衰えて要介護状態につながるロコモティブシンドロームの原因にもなりうる。治験で用いるのはシルクエラスチンという人工たんぱく質は、ヒトの皮膚に張りや弾力を与えるたんぱく質とシルクの原料となるたんぱく質の分子構造をまねて遺伝子組み換え技術で作製する。半月板の縫合部に注入すると、治癒能力を持った細胞を周辺部から呼び集め、半月板が自力で再生する足場になるという。2022年からの医師主導治験では、半月板損傷の患者8人(17~52歳)のうち6人で術後3カ月には断裂部が完全に癒合し、安全性も確認されたという。今後は治療方法として有効かどうか確認する企業治験へ移る。広島大病院の整形外科学教室は「本来ならば縫合しても良い結果が得られにくいような非常に難しい症例をあえて選んで実施したにもかかわらず、驚異的な結果だった」と語った。(2024年5月22日朝日新聞))

ヒトiPSから卵子や精子を大量につくる方法を開発
ヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)から精子や卵子になる手前の細胞を大量につくる方法を、京都大の研究グループが開発した。細胞数を100億倍以上に安定して増やせるため、試験管内で精子や卵子をつくる取り組みが加速しそうだ。将来的に研究がさらに進めば、皮膚や血液など体の一部から精子や卵子をつくり受精させることも技術上は可能になる。論文が5月20日付の英科学誌ネイチャー電子版で発表。精子や卵子ができる基礎的な仕組みの解明や、不妊症や遺伝病の治療法開発に期待がかかる。ヒトの体内では受精卵になってから2週間後に、その次世代の精子や卵子のもとになる「始原生殖細胞」ができ、6~10週間後に精巣や卵巣で、精子、卵子になる手前の「前精原細胞」「卵原細胞」に分化していく。2015年ヒトiPS細胞由来の始原生殖細胞をつくることに成功。今回、ヒトの体内でもつくられるBMP2というたんぱく質をこの細胞に加えて培養する方法で、前精原細胞と卵原細胞をつくった。4カ月ほど培養すれば細胞数を100億倍以上に増やせるという。遺伝子の働き方などを解析し、実際の体内で起きているのと似た過程を再現できていることも確認した。今回の手法では、大量にヒトの前精原細胞と卵原細胞をつくることができ、生殖細胞の研究が一気に進む可能性がある。(2024年5月21日朝日新聞))

尿検査で前立腺がんの生検可否を判定
前立腺がんが見つかった際、治療が必要な進行性のがんか、進行が遅く経過観察でよいのかに苦慮します。現時点の方法は生検である。しかし、新たな研究で、MyProstateScore2.0(MPS2)と呼ばれる尿検査が、侵襲的な生検に代わる新たな検査法になり得る可能性が示された。米ミシガン大学医学部病理学および泌尿器科学の研究で、この検査で陰性であれば、進行性前立腺がんでないことはほぼ確実だと報告された。前立腺がんに対する治療は、過去、全ての前立腺がんに対して治療するのが普通でした。現在では、進行の遅いタイプのがんは治療する必要がないとされている。過去、数十年間、前立腺特異抗原(PSA)検査は前立腺がんを発見するために日常的に使われていた。しかし、この検査のみでは、進行性のがんと成長の緩徐ながんを区別することは困難であり、そのため、過剰治療が行われることもしばしばであった。こうしたことから、現在でのPSA検査の使用頻度は以前に比べると格段に低くなっている。今回、5万8,000以上の遺伝子発現の解析を行い、悪性度の高い前立腺がんの指標となり得る54種類の遺伝子について遺伝子パネルを作成して評価した。生検回避率はPSA検査で11%、MPS2テストで41%であった。MPS2テストは生検の有無の可否判定になると報告した。(2024年5月20日HealthDay News)

男性の不妊症解明に一歩

精子がつくられる際に「指令役」として働く遺伝子を、熊本大学などのチームがマウスを使った実験で発見した。この遺伝子がうまく働かないと、精子はできなかった。無精子症などの不妊症の原因解明などにつながる可能性がある。チームは精巣で働く遺伝子のひとつ「HSF5」に注目。ゲノム編集技術でこの遺伝子を壊したマウスでは精巣が萎縮し、精子がつくられていないことがわかった。遺伝子の働きかたを詳しく調べると、精子の頭部やべん毛といったパーツをつくる遺伝子など、約200の遺伝子を調整する役割を担い、精子の形成を起動させていることが明らかになった。HSF5遺伝子はヒトのゲノムにもあり、似たような役割を果たしているとみられる。不妊症の中でも、精子がうまくできないといった男性不妊症の病態解明につながるという。(2024年5月19日朝日新聞))

新型コロナ感染者、昨年同時期より多く
厚生労働省は、全国に約5千ある定点医療機関に5月6日~12日の1週間に定点医療機関に報告された新型コロナの新規感染者数は計1万3652人で、1定点あたり2.76人だったと発表し増加に転じた。昨年の同時期(2,63人)より多かった。都道府県別の最多は沖縄の12,04人で、鹿児島4,60人、岩手4,51人と続く。東京2,28人、愛知2,85人、福岡2,26人、大阪2,08人で、41都道府県で増加した。1週間に定点医療機関に報告された新規入院患者数は1149人で前週から36人増加。集中治療室に入院した患者は44人で前週から7人減った。季節性インフルエンザの新規感染者数は、1定点あたり0,34人で前週より減少し流行の目安となる1・0を下回った。(2024年5月17日朝日新聞))

出産費用の保険適用
政府は少子化対策の実現に向け、出産費用の保険適用の導入を含め、出産に関する支援などの更なる強化の方向性について検討を進めるとし、検討会を設置することを決めた。保険適用の導入は2026年の実施も視野に入れ議論される。(2024年5月16日 m3.com)

「早老症」の原因の一端を解明
名古屋大学の研究チームは、急速に老化が進行する遺伝性疾患「早老症」の原因として、傷ついた遺伝子を素早く治せないことが関係していることを明らかにした。酒を飲むことなどで細胞の中で作られるアルデヒド類(ホルムアルデヒドなど)が、DNAの遺伝子を傷つけて老化を引き起こす「老化原因物質」であり、日本人の半数は、アルデヒドにより、遺伝子が傷つきやすい性質があることがわかった。酒を少量飲むだけで気分が悪くなってしまうのは、遺伝的にアルデヒド分解酵素「ALDH2」の活性が弱いため、アルデヒドを分解できなくなることが原因とされている。研究チームは2020年に、「ADH5」と呼ばれる別のアルデヒド分解酵素がALDH2と同時に働かなくなることで、血液症状を中心に早期老化症状を示す遺伝性疾患「AMeD症候群」を発症することを報告した。今回の研究では、体内で分解できずに残ったアルデヒド由来のDNAの傷がAMeD症候群で蓄積することや、アルデヒドによりできたDNAの傷が素早く治される仕組みを解明することで、遺伝性早老症や老化の原因の一端を明らかにした。今回の研究成果は、急速に老化が進行する原因の一端を解明したものであり、治療に期待される。研究チームはさらに、老化原因物質としてアルデヒドを新たに提唱した。研究論文は、ネイチャー・セル・バイオロジー(Nature Cell Biology)に2024年4月10日付けで掲載された。(2024年5月15日M3.com)

新型コロナ・インフル混合ワクチン
米モデルナ社のモデルナ・ジャパンはメッセンジャーRNA(mRNA)技術を活用した、新型コロナウイルスとインフルエンザの混合ワクチンの臨床試験を今冬開始を目指すことを明らかにした。順調に進めば、数年以内にも日本国内での実用化が期待できるという。日本でのワクチンの供給体制を強化するため、国内での生産拠点整備を進めていることも明らかにした。混合ワクチンについて米モデルナは2023年10月、初期と中期の臨床試験で安全性と効果を確認したと発表していた。これを受けモデルナ・ジャパンは日本国内で最終の臨床試験を今年の冬に数百例規模で実施したいとしている。結果がまとまれば、できるだけ早く承認申請を行う予定という。既存のウイルスだけでなく、新たなパンデミック(世界的大流行)のリスクは常にあるとし、国内でワクチンを供給できる体制ができると強調。また、米モデルナは米メルク社と共同でmRNA技術を活用した、がんの再発を予防する「がんワクチン」の開発も手がけている。中期の臨床試験では、皮膚がんの一種「悪性黒色腫(メラノーマ)」の患者において、治療薬に加え、ワクチンを接種した群は治療薬だけだった群に比べ、再発または死亡のリスクが44%減少した。(2024年5月15日毎日新聞)

介護保険料、最高更新 
厚生労働省は65歳以上の高齢者が2024年度から3年間に支払う介護保険料(月額)が全国平均で6225円になったと発表した。初めて6千円を超え過去最高を更新した。高齢化の進展で介護サービスの利用が増加しているのが要因。介護が必要な高齢者は2024年は705万人で、高齢者数がほぼピークとなる2040年に843万人に上ると見込まれる。サービスの増大は避けられず、保険料の上昇傾向が続く見通し。保険料の月額が最も高かったのは大阪市の9249円で、1人暮らしの高齢者が増加しサービス利用が増えたことなどが要因という。都道府県別の平均では大阪府が7486円で、山口県の5568円が最も低かった。一方、40~64歳の人が負担する介護保険料は毎年度改定され、2024年度の平均は月6276円の推計で過去最高を更新した。
※介護保険料
介護保険を運営するため、40歳以上の人が払う義務のある保険料。介護サービスにかかる費用は、利用者の自己負担分を除いた残りを公費と保険料で半分ずつ賄う。65歳以上の保険料は、介護が必要となる人数の予測などを基に市区町村や広域連合ごとに基準額を決め、3年に1度見直される。実際の保険料は所得によって変わり、原則公的年金から天引きされる。40~64歳の人の保険料は毎年度改定され、加入する公的医療保険を通じて納められる。(2024年5月14日配信共同通信社)

自分のiPS細胞から自分だけの美容商品
化粧品大手コーセーは利用者自身の体細胞から作製したiPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いた美容商品開発の実証実験を年内に数十人規模で始め2026年にも事業展開すると発表した。利用者個人のiPS細胞由来の美容商品は世界初という。利用者の血液などから採取した体細胞からiPS細胞を作り、抽出成分を美容商品として提供する。自分自身のiPS細胞を活用することで、アンチエイジング(老化防止)効果も期待できるという。クリームやジェルといったタイプを選べるなど、使い心地や感触も一人一人の好みに合わせる。美容皮膚科などの医療機関を通して販売する。価格は、美容液6本に定期的なカウンセリングを含め、年間100万円を想定する。(2024年5月13日読売新聞)

健康な女性の「卵子凍結」
健康な女性が卵子を保存しておく「卵子凍結」への関心が高まっている。子どもは欲しいが、仕事などが理由で今は妊娠を避けたいという健康な女性の選択肢になっているためで、東京都が始めた費用助成制度には想定の7倍の応募があった。ただ妊娠や出産の成功率はそれほど高くない。卵子凍結は、抗がん剤や放射線による治療を受けるがん患者が妊娠の可能性を残すために始まった「医学的適応」と健康な女性でも30歳代後半になると卵子の数や質が低下し、妊娠しにくくなる。このため、あらかじめ卵子を凍結し、出産や育児の環境が整った時に使う「社会的適応」がある。体外受精を行っている医療機関を対象に行ったアンケートでは、回答施設の3割(60施設)が社会的適応の卵子凍結を実施している。東京都が2023年に始めた凍結費用の助成事業も、広がりを後押ししている。卵子凍結は公的医療保険の対象外で、1回の採卵・凍結に30万~50万円程度かかるほか、保管には年数万円の更新料が必要だ。都は説明会への参加などを条件に、最大30万円を助成する。23年度の利用は200件と想定していたが、申請は1467件に達した。都はニーズが高いとして、今年度も事業費5億円で継続する。山梨県も今年度から助成を始める。福利厚生の一環として、卵子凍結を支援する企業もでている。出産とキャリアを両立する環境を整え、優秀な人材の定着を狙う。(2024年5月12日読売新聞)

公園や森林は幼児のメンタルヘルスを育む
緑地が近くにある環境で育った子どもは、たとえそれが公園や広い裏庭であっても、2~5歳時に不安や抑うつといった感情的な問題を抱える可能性の低いことが、新たな研究で明らかになった。米ノースカロライナ大学フランク・ポーター・グラハム児童発達研究所が公表した。研究所のTowe-Goodman氏は「研究結果は自然の中に身を置くことが子どもにとって良いことを示す既存のエビデンスを裏付けるものだと、述べた。また、就学前の子どもが自然とふれあうことの重要性を示唆する研究結果でもあると付言している。この研究では米国41州、199郡に住む2,103人の子ども(男児50.5%)を対象に、居住地周辺の緑地への曝露と小児期初期(2~5歳)および小児期中期(6~11歳)の内在化障害(不安、抑うつなど)と外在化障害(攻撃、ルール違反など)の関連を検討した。居住地周辺の緑地は、衛星画像を基にした植生密度を示す指標であるNormalized Difference Vegetation Index(正規化植生指標)を用いて評価した。その結果、親の教育レベルや出産時の年齢、子どもの性別などの諸要因で調整しても、居住地周辺の緑地の多さは小児期初期の不安や抑うつなどの内在化障害の症状の少なさと有意に関連することが明らかになった。一方、小児期中期の子どもでは、居住地周辺の緑地と内在化障害や外在化障害との間に有意な関連は認められなかった。同氏は、「将来的には、自然の中でどのような経験をすることが、小児期初期の子どものメンタルヘルスと関係しているのかが検討される可能性がある」とNIHのニュースリリースの中で述べている。同氏はさらに、「家や学校の周囲に緑地を作ったり自然を保護したりすることが、子どものメンタルヘルスにどのような違いをもたらすかも研究すべきだ」と付け加えている。(2024年5月10日HealthDay News)

認知症の高齢者2040年に584万人、7人に1人
65歳以上の人口がほぼピークを迎える2040年には。認知症高齢者数は584万人になるとの推計結果を九州大などの研究チームが発表した。高齢者のおよそ7人に1人の割合だ。認知症の前段階とされる軽度認知障害(MCI)の高齢者数も2040年に612万人になると推計した。研究は2022~2023年度、福岡県久山町や島根県海士町など全国4地域で行った。65歳以上の住民を対象に専門医が診断するなどして、各年齢層で認知症高齢者の割合(有病率)を算出した。(2024年5月8日読売新聞)

唾液の診断で下咽頭がんを早期に発見
のどの奥にできる下咽頭がんを、唾液の成分を調べるだけで早期に発見できることを岡山大の研究グループが発表した。咽頭がんは症状が出にくく、がんが進行してから見つかる割合が高い。特に下咽頭がんは悪性度が高く、進行期での5年生存率は40%以下という。研究グループは下咽頭がんで内視鏡治療をする患者61人と、がんではない患者51人の唾液中のDNAを抽出し、がん化に影響を及ぼす遺伝子のメチル化について比較した。その結果、下咽頭がんの患者のメチル化が極めて高かった。また広島市民病院の下咽頭がん患者26人の唾液で調べても、22人(約85%)の患者から高いレベルのメチル化が検出された。この結果から、唾液を調べれば、がんの早期発見が可能となり、局所を切除して根治を目指すことができるようになるという。(2024年5月6日朝日新聞)

母乳に含まれる抗体が子どもの脳の発達や行動に影響
群馬大はマウスの実験で母乳に含まれている抗体が子どもの脳の発達や行動に影響を与えていることを発見したと発表した。今後、人間の脳への影響を調べることで、疾患防止などにつながる可能性があるとしている。母乳は乳児に与える期間と知能指数に関連があるとの報告はあったが、影響する成分や作用は判明していなかった。母乳は人工ミルクと違い、母親が持つウイルスの抗体も含まれている点に着目し、抗体を受け取るマウスと、受け取れないよう遺伝子を変えたマウスを使用した。その結果、抗体を受け取ったマウスの脳内では、抗体と脳内で異物除去を担う免疫細胞(ミクログリア)が結合していた。結合したミクログリアは、記憶や学習で重要な役割を果たす神経細胞の生存に関与する1型インターフェロンも分泌していた。一方、遺伝子を変えたマウスは、社会性行動に影響を与える特定の神経細胞が減少し、受け取ったマウスと異なる行動をとった。抗体が脳や行動に違いを生じさせることはわかった。今後は人間の母乳の抗体濃度と母乳で育った子どもで相関性を調べる予定。良い影響の場合は、抗体が入った人工ミルクを製造し、悪影響であれば母親の抗体が増えた場合に母乳を与えないように呼びかけることもできると話している。(2024年5月5日読売新聞)

核医学のがん治療施設開設
藤田医科大病院は放射性物質を含む薬剤を患者に投与してがんなどを診断・治療する「セラノスティクスセンター」を開設する。放射性医薬品のもとになる「核種」の製造から放射性医薬品の合成や患者への投与を一元的に集約した施設で、国内初という。2024年5月1日から本格稼働する。センターは放射線治療の一分野である核医学の臨床・研究施設。放射性物質を含んだ薬剤を静脈注射や服薬で患者の体内に投与し、薬剤ががんなどの病巣や臓器に集まる様子を可視化して診断や治療につなげる。すでに放射性医薬品を使った神経内分泌腫瘍の治療を始めており、アルツハイマー病や前立腺がん、脳腫瘍の診断に使う放射性医薬品は現時点で同センターで合成できるという。今後は前立腺がんなど治療の対象とする疾患を順次広げる。(2024年4月30日日本経済新聞)

後発薬の使用を促進、患者の自己負担額引き上げ
厚生労働省は10月から、ジェネリック医薬品(後発薬)がある特許切れの先発薬について、患者の自己負担額を引き上げる1095品目のリストを公表した。インフルエンザ治療薬「タミフル」や保湿剤「ヒルドイド」などが含まれる。安価な後発薬の使用を促して医療費を抑制する。患者が先発薬を選んだ場合、最も価格が高い後発薬との差額の25%を保険適用から外し、自己負担にする。例えば、タミフルは1カプセルの薬価が約206円で、後発薬の最高価格が約112円のため3割負担の人だと、現在の約62円から約81円に上がる。(2024年4月30日読売新聞)

人の皮膚持つマウスが誕生
東京医科歯科大などの研究チームは、妊娠中のマウスの羊水に人の皮膚のもとになる細胞を入れ、人の皮膚を持つマウスを作ることに成功したと発表した。重いやけどや外傷を負った人への移植用皮膚として実用化を目指すという。チームは、遺伝子を改変するゲノム編集技術を使って、皮膚の成長に必要な遺伝子が機能しないマウスの受精卵を作製した。この受精卵を移植して妊娠させたマウスの羊水に人の皮膚のもととなる幹細胞を注入した。その5日後、胎児のマウスを調べたところ、体表面の広い範囲に人の皮膚が作られていたという。遺伝子改変したマウスの受精卵に、別のマウスの幹細胞をより早いタイミングで混ぜ合わせると、毛が生える毛包など、より機能の高い皮膚が作られた。チームは、妊娠期間が長いブタなどを使えば、高機能な人の皮膚を大量に作製できるとみている。やけどなどで皮膚が広く損傷した患者への治療は、他人から提供された皮膚の移植や、シート状に培養した細胞を貼り付ける方法などがある。シート状の細胞は、細胞を支える組織などがなく、深い傷の修復には課題があった。研究チームは、患者さんの治療に役立つ移植用皮膚の提供につなげたいと話す。(2024年4月29日読売新聞)

希少疾患新薬、日本人の臨床試験なしで可能に
海外で承認された薬が日本で使えない「ドラッグロス」の問題を改善するため、厚生労働省は、小児がんなどの希少疾患の新薬について、承認申請の要件を緩和することを決めた。日本人の臨床試験データがなくても申請できる新たな仕組みを、5月にも導入する方針だ。海外の製薬企業による申請を促し、薬の実用化の時期を早める狙いがある。薬によっては、人種などで効果や副作用に差が出ることもあるため、通常は日本人を対象に行った臨床試験の結果も提出する必要があり多大な費用がかかる。このため海外企業が日本での申請を見送ることがあり、ドラッグロスの一因と指摘されていた。海外で承認されたが日本で使えない薬は増えている。昨年3月時点で、欧米で承認されているが日本で未承認の薬143品目のうち、86品目は国内で申請されておらず、40品目は患者が少ない病気の薬だった。新たな仕組みでは、海外での試験結果をもとに、日本人患者にも薬の効果が高く副作用を考慮しても恩恵が大きいと見込まれる場合は、日本人のデータがなくても申請を認める。ただし、海外での臨床試験が既に終了している薬。患者数が数百人以下など少なく日本での追加試験が難しい薬。病気の進行が速く命に関わるなどの条件を満たした薬が想定される。(2024年4月29日読売新聞)

普及が進まない診療所向けの電子カルテ、政府が開発へ
政府は、電子カルテの導入が進まない診療所に普及させるため、基本機能を必要最小限に絞り込んだ新しいシステムの開発に乗り出す。入院に対応する機能は省き、外来機能に特化して導入コストを抑える。2024年度中に開発し、来春から数か所の地域で試験導入する。電子カルテは2030年までに、ほぼ全ての医療機関に普及させる目標を掲げており、新システムを活用することで達成を目指す。診療所向けの電子カルテシステムは、デジタル庁で開発する。民間事業者の電子カルテは、導入コストとして数十万から数百万円かかるとされるが、診療所向けは、できるだけ安価なものを目指す。医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の一環。(2024年4月27日読売新聞)

ヒトiPSでサルの心機能改善
ヒトのiPS細胞からつくった心筋の細胞を心筋梗塞を起こしたサルの心臓に移植し、心機能を回復させることに成功したと信州大や慶応大などのチームが発表した。これまで、移植後に起きる不整脈が課題だったが、移植する細胞の純度を高めることで、不整脈の頻度を格段に減らせたという。心筋梗塞が起こると、心筋の細胞が数億個も失われ「心不全」につながる。心不全患者は高齢化とともに増え、2030年に130万人を超えるという。チームは、皮膚や血液の細胞からつくれて、さまざまな細胞に変化できるiPS細胞から心筋細胞をつくり、心臓に移植する治療法の開発をめざして研究した。ただ、移植から数カ月間にわたって、心拍数が多くなる不整脈が出てしまうことが課題だったが、研究チームはiPS細胞から心筋細胞をつくるときの条件を改良して、必要なタイプの心筋細胞だけをつくる手法を確立させ、「心筋球」と呼ぶ1千個ほどのかたまりにした。今回の研究では、心筋梗塞を起こした4匹のカニクイザルの心臓に6千万個の心筋細胞に相当する数の心筋球を移植した。比較のため、同様に心筋梗塞を起こした5匹のサルには移植をしなかった。全てのサルには免疫抑制剤を与えた。移植から3カ月後、移植を受けたサルの心臓を解剖したところ、移植されたヒトiPS細胞由来の心筋細胞が、周囲の心筋細胞とつながっていることも確認できた。細胞移植による心臓の再生医療の実現のためには、不整脈が最も大きなハードルだった。現在、冠動脈バイパス術という別の心臓の手術と同時に、心筋球を移植する臨床試験に取り組んでおり、2022年末以降に4人の患者が移植を受けた。一時的に軽い不整脈はみられたが、これまでのところ安全性に問題ないという。(2024年4月26日朝日新聞)

医師数統計公表(厚労省調査)
厚生労働省は「医師・歯科医師・薬剤師統計」の最新結果を取りまとめ2024年3月19日に公表した。それによると、全国の医師数は34万3,275人で2020年に比べ1.1%増加。人口10万対医師数は274.7人で、前回に比べ5.5人増加している。医療施設(病院・診療所)に従事する医師のうち女性は7万7,380人となり、前回よりも4.8%増と大きく数字を伸ばした。年齢階級別にみるとすべての階級で男性が多くなっているが、年齢階級が低くなるほど女性の割合が増え、29歳以下では36.2%を占めている。医師数を施設の別にみると、医療施設の従事者は32万7,444人(総数の95.4%)で、前回に比べ3,744人(1.2%)増加。介護老人保健施設の従事者は3,298人(同1.0%)で前回に比べ107人(3.1%)減少している。医師数が最も増えたのは美容外科、減ったのは気管食道外科、診療科別にみると、内科が6万1,149人(18.7%)と最も多く、次いで整形外科2万2,506人(6.9%)、小児科1万7,781人(5.4%)と続いた。診療科別の平均年齢をみると、肛門外科が60.5歳と最も高く、内科(59.1歳)、臨床検査科(58.7歳)と続いた。救急科が41.9歳と最も低く、美容外科(42歳)、集中治療科(42.8歳)と続いた。前回調査時(2020年)と比較して医師数が増えた診療科は、美容外科(対前回比で132.4%)、アレルギー科(同110.7%)、産科(同108.3%)、形成外科(同106.8%)など。一方で医師数の減少が大きかったのは気管食道外科(同95.4%)、小児外科(同95.7%)、外科(同96.7%)、心療内科(同97.5%)、耳鼻咽喉科(同97.7%)などであった。なお、本稿で紹介した診療科別の統計結果については「臨床研修医」や「主たる診療科不詳」および「その他」の回答はいずれも除外している。(2024年4月ケアネット)

実験用サルの価格が高騰、一匹あたり数百万円
人体への薬剤の影響を調べる上で、サルは重要な役割を果たしてきた。そんな実験用サルの価格が高騰しているという。新規感染症の大流行やバイオテロが起きた時に、どう対応するのか。サルの確保は国家の安全保障に関わると、医科学界からは研究停滞を懸念する声が上がっている。実験用のサルは、新薬やワクチンの安全性を確かめるため、人に投与される前段階での試験に利用される。その多くがおとなしく繁殖させやすいカニクイザルだが、新型コロナウイルス禍以降、価格が急騰している。製薬会社などが購入する実験用のカニクイザルは、日本製薬工業協会によると、2023年時点で1頭あたり、運賃などを含めてカンボジア産が約140万円、ベトナム産が約320万円。新型コロナ禍前の19年と比べると、カンボジア産で6倍、ベトナム産に至っては9倍にも跳ね上がっている。これに飼育コストも上乗せされ、販売価格は300万~400万円で推移している。国内でも実験用のカニクイザルを繁殖させているが限定的で、多くは限られたアジア諸国から輸入されているのが実情だ。(2024年4月23日毎日新聞)

迅速承認の抗がん剤の臨床的有用性調査
米国では、食品医薬品局(FDA)の迅速承認を受けたがん治療薬の多くは、承認から5年以内に全生存期間または生活の質に有益性を示せれないものが半数あったことが、米国・ハーバード大学医学大学院の研究で報告された。本研究では公開されているFDAのデータを用いて、2013~23年にがん治療薬を受けた129件において、全生存期間と生活の質の解析を行った。臨床的有用性を示したのは43%であったと報告された。報告者らは、迅速承認は有用と考えられるが、中には患者の延命や生活の質の有益性を示すことができないものもある。患者には有益性を示さないがん治療薬について明確に情報提供を行うべきであるとしている。(2024年4月22日ケアネット)

膀胱がんに国内初手術法 
高知大学医学部付属病院は早期の膀胱がんに対する国内初の手術方法を導入したと発表した。レーザー熱で腫瘍部分を気化、蒸散、止血するため、出血がほぼないのが特長。膀胱がんは喫煙などが要因で、高齢男性に多い。痛みのない血尿が重要なサインです。従来の手術は、内視鏡を尿道から挿入し、先端部にある電気メスで腫瘍部分を焼き切る方法で、出血や膀胱に穴が開くリスクがあり、退院まで3~5日かかります。一方、新手術は従来の電気メスに代わり、前立腺肥大症手術にも使われるレーザー手術装置を活用。半導体レーザーで腫瘍部分を一瞬で蒸散させるため、出血などのリスクを大きく下げることができる。痛みもほとんどなく、術後2日で退院できるという。(2024年4月21日高知新聞)

保険証廃止 マイナ一本化
武見敬三厚生労働相はマイナンバーカードに健康保険証の機能を持たせた「マイナ保険証」の利用率に関係なく、12月に現行の健康保険証を廃止し、マイナ保険証に一本化すると述べた。政府は12月2日から健康保険証の新規発行を停止し、廃止すると既に決定している一方、3月現在、マイナ保険証利用率は5・47%と低迷している。(2024年4月19日共同通信社)

2023年度の医療機関の休廃業や解散最多に
民間の信用調査機関、帝国データバンクは、「医療機関の休廃業・解散の動向調査(2023年度)」の結果を公表した。2023年度における病院、診療所、歯科医院を経営する事業者の休業や廃業、法人の解散は合計709件。2019年度の561件を上回り、2000年度以降で過去最多となった。病院は前年度と同じく19件だが、診療所は159件増の580件、歯科医院は33件増の110件といずれも過去最多を更新。とりわけ診療所の件数増加が著明だ。その背景として、後継者難と経営者の高齢化を指摘される。日本医師会の『医業承継実態調査』では、後継者候補がいないと回答した診療所が過半数を占めていた。事業の継続を断念する施設が出て、休廃業・解散の件数はさらに増える可能性が高いという。倒産も55件で最多となった。一方、破産や民事再生などの法的整理を選択した医療機関の倒産件数も、2023年度は前年度より17件多い55件を数え、2000年度以降で最多となった。2024年度の診療報酬改定について件数増加が加速する要因になる可能性はあると指摘している。(2024年4月19日日経メディカル)

受動喫煙が特有の遺伝子変異でがん化
受動喫煙は喫煙者と異なるタイプの遺伝子の変異が肺にたまり、がんの悪性化を促進している可能性があると、国立がん研究センターなどのチームが発表した。受動喫煙は肺の末梢にできる肺腺がんを誘発しやすいことが知られていたが、そのメカニズムはわかっていなかった。チームは、同センターで肺腺がんの手術を受けた主に50代以降の女性で非喫煙者(291人)と喫煙者(122人)の計413人について、切除したがんのゲノム全体の変異数やその特徴を調べた。結果、非喫煙者291人の内、受動喫煙があった213人と受動喫煙がなかった78人を比較すると、受動喫煙があった人の変異の割合が有意に高かった。変異タイプの「APOBEC型」と呼ばれる割合が、受動喫煙があった人は15,6%で、受動喫煙がなかった人(7,32%)であった。一方、喫煙者では「たばこ型変異」と呼ばれる、たばこに含まれている発がん物質による直接的な変異がほとんどだった。APOBEC型は、たばこの煙を吸って起こる炎症に伴ってできる変異で肺にたまると初期のがん腫瘍ができた際、悪性化を促進することが過去の研究でわかっていたが、実際の患者でわかったのは初めてという。今回の調査で、女性だけに限ったのは受動喫煙の環境を合わせるためで、男性でも同様のことが言えると考えられる。(2024年4月16日毎日新聞)

難病「脊髄髄膜瘤」を胎児段階で治療
脊髄の一部がむき出しの状態で生まれ、身体障害などを伴う脊髄髄膜瘤を胎児の段階で治療する国内初の手術に成功したと、大阪大などのチームが発表した。脊髄髄膜瘤は、胎児の体ができる途中で脊髄神経が体外へ露出する難病。国内では年間推計200~400人の新生児で見られ、出生直後に手術を行っているが、歩行などに重い障害が出るケースが多い。海外では2011年、胎児段階の手術で症状を軽減できるという報告が米国であり、欧米を中心に行われているが、産婦人科や脳神経外科など多くの診療科が連携する必要があり、国内の取り組みは遅れていた。阪大病院は超音波検査などで胎児に異常が見つかった6例について、妊娠25週の段階で母親の子宮の一部を切開。胎児の髄膜瘤を修復する手術行った。5例は既に誕生し、脚の運動機能などに改善傾向が見られたが、1例は合併症により生後3か月半で亡くなった。今後は保険診療と併用できる先進医療として国に申請し、3年後をめどに保険適用を目指す。(2024年4月15日読売新聞)

「腸内細菌バンク」開始
順天堂大などの研究者が設立したバイオ新興企業が今月、健康な人の便に含まれる腸内細菌を保管する日本初の「腸内細菌バンク」の運用を開始した。腸内細菌を大腸の病気やアレルギー、がんなどの患者に移植する新しい治療法の開発に役立てられる。人の腸内には、約1000種類の細菌が生息している。細菌の構成バランスが乱れると、様々な病気の発症に影響することが報告されている。そこで、健康な人から提供してもらった便に含まれる腸内細菌の溶液を作り、病気の人の大腸に移植して症状を改善させる治療法「腸内細菌叢そう 移植」が国内外で広がっている。バンクの運用を始めたのは、腸内細菌移植で腸の難病「潰瘍性大腸炎」などの治療を目指し、順天堂大の研究チームらが2020年に創業した。バンクでは、18~65歳の協力者を専用サイトで募集し、条件に合った人は、血液や便の検査などを受けてもらい提供者として登録されて便を提供できる。提供者には、研究協力費として数千円が支払われるという。(2024年4月13日読売新聞)

健康効果うたう食品
いわゆる食品は、一般的な食品と保健機能食品に分かれます。保健機能食品は特定保健用食品(国の審査と許可が必要で、健康効果の表示ができる食品)と機能性表示食品(国に届けるだけで、健康効果の表示が可能となる食品)と栄養機能食品(国の届け出は不要で、健康効果の表現が限定される食品)に分かれます。特定保健用食品は「トクホ」と言われ、国が効果や安全性の審査を行い、許可する制度で限られた食品でしたが、政府は2015年、成長戦略の一環として商品を増やそうと機能性表示食品を作りました。その結果、機能性表示食品は消費者庁に関連情報を届け出るだけで国の審査は不要となり販売できるようになりました。最近話題になっているサプリである紅麹コレステヘルプは機能性表示食品です。機能性表示食品は、事業者にとって健康関連の機能を検証するコストや手間が削減できるメリットがあります。この制度が導入されて以来、多くの事業者がサプリや飲料、加工食品を国の審査を受けずに届けるだけで市場にでます。消費者庁の検索システムによると、現在、機能性表示食品として届け出されている商品は約6700種類に上ります。(2024年4月13日m3.com)

性感染症
性感染症)とは性器クラミジア感染症や性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、梅毒及び淋菌感染症などで、性的接触を介して感染する可能性がある感染症です。性的接触により、口や性器などの粘膜や皮膚から感染します。オーラルセックス(口腔性交)やアナルセックス(肛門性交)などでも感染します。性感染症は、かゆみや痛みのような症状が問題であるだけではなく、感染症の種類によっては、治療をしなかった場合、不妊の原因となったり、神経や心臓などに深刻な合併症や後遺障害を残したりすることもあります。また、粘膜が傷つくことによりHIVに感染しやすくなるなど、他の感染症に罹りやすくなることもあります。特に、生殖年齢にある女性が性感染症に罹患した場合には、母子感染により、先天性の体の障害の原因となり、放置すると障害が残る可能性もあります。感染しても、比較的軽い症状にとどまる場合や無症状であることもあるため、治療に結びつかないこともあり、感染した人が気付かないままパートナーに感染させてしまうこともあります。このため、不安に感じたら検査を受けることが大切です。なお、現在梅毒の流行が拡大しています。(厚生労働省ホームページより)

糖尿病患者にブタの膵臓組織を移植研究
膵臓の細胞が正常に働かない1型糖尿病患者にブタの膵臓組織「 膵島」を移植する臨床研究を国立国際医療研究センターなどのチームが来年にも実施する計画であることがわかった。移植した組織から血糖値を下げるホルモンがつくられ、注射治療が継続的に必要な患者の負担軽減につながる可能性がある。人とサイズが近いブタの臓器や組織を人に移植する治療法は「異種移植」と呼ばれ、次世代の医療として注目されている。国内で腎臓や心臓などの病気に対して複数の移植計画があるが、実施例はない。同チームの計画では、生後2~3週間のブタの膵臓から、血糖値を下げるインスリンホルモンを分泌する細胞の塊「膵島」を取り出す。人に移植したときに起こる拒絶反応を防ぐため、直径0・5~1ミリ・メートルの特殊なカプセルで1~3個程度の膵島を包む。そのうえで、数十万個の膵島を1型糖尿病患者の体内に移植して壊れた細胞の機能を代替させる。カプセルには微小な穴があり、血糖値の上昇に合わせてインスリンが放出されると期待できるという。移植手術は、国の認定を受けた委員会などの審査を経て来年にも実施する。死亡した人から提供された膵島を患者に移植する治療は2004年以降、国内でも行われているが、提供者不足が課題。ブタの膵島を使った異種移植も1990年代からニュージーランドなどで行われ、一定の有効性が確認されているが、細胞の加工設備などに課題があった。1型糖尿病 =インスリンを分泌する膵臓の細胞が壊れ、自分でインスリンを十分作れなくなる病気。若い人が発症することが多く、国内患者は10万~14万人いる。(2024年4月10日読売新聞)

日本人高齢者における高感度CRPと認知症が関連
血清高感度C反応性蛋白(CRP)とアルツハイマー病などの認知症との関連についての報告は一貫していない。今回、愛媛大学および全国8地域の高齢者約1万人を調査したところ、血清高感度CRP値の上昇が認知症全体やアルツハイマー病と関連し、側頭皮質萎縮のリスクの増加とも関連することが示唆され、ScientifcReports誌2024年3月28日号に掲載された。65歳以上の地域住民1万1,957人を募集し、除外基準の適用後、血液検査と健康関連検査を受けた1万85人について解析した。血清高感度CRP値を臨床的カットオフ値に従って分類し、各血清高感度CRP値について認知症全体およびサブタイプの存在に関するオッズ比(OR)を算出した。さらに、脳MRIを受けた8,614人のデータを用いて、血清高感度CRPと脳容積の関心領域との関連を共分散分析によって調べた。(2024年4月9日ケアネット)

劇症型の感染症増加
致死率が高い「劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)」の患者が国内で増えている。STSSの患者報告数は過去最多のペースだが、担当者は「基本的な感染対策をしてもらえれば、それほど心配はない」としている。STSSは、主に小児の急性咽頭炎などの原因となる「溶血性レンサ球菌(溶連菌)」による感染症が、まれに劇症化したもの。新学期が始まる4、5月に感染者が増える傾向がある。発症後、急速に筋肉周辺の組織の壊死や多臓器不全を引き起こす。発症は30歳以上で多く、致死率は3割ほどとされる。国立感染症研究所によると、23年の国内の患者報告は過去最多の941人。今年も3月24日時点で、すでに556人が報告されている。STSSは、手洗いやマスク着用、傷口を清潔に保つなどの基本的な感染対策が有効です。(厚生労働省)劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)について

医師確保へ開業に助成金6000万円、滑川市
滑川市は今年度、市内で診療所を開設すると土地や建物、必要な医療設備に最大6千万円を助成する事業を始めた。地域医療を担う開業医が高齢化や後継者不足により、足りなくなる可能性が大きいため、将来の医師確保を目指す。助成事業では、土地や建物の取得に最大5千万円、医療機器の購入に最大1千万円を助成する。補助率はいずれも2分の1で、全ての診療科目が対象となる。滑川市には現在、厚生連滑川病院と吉見病院、13の診療所がある。特に開業医の高齢化が進んでおり、新たな医師確保が課題となっている。市によると、開業医は地域の医療を維持するだけでなく、学校医として子どもたちの健康も担っている。助成条件には、滑川での10年以上の診療継続や市医師会への加入などがあり、長く地元で事業を続けてもらえるようにする。富山県内では、小矢部市が2012年度から、市内で産婦人科医療施設を開設する医師に対し、上限1億円を補助する制度を設けている。市内に分娩を取り扱う医療機関がない状態が続いているためで、これまでに応募はなく、市は今年度から対象を助産所にも広げている。(2024年4月4日北國新聞)

がん免疫薬の効果を事前に予測
近畿大学と京都大学の研究グループは、がん免疫薬「オプジーボ」などの効果を投与前に予測する方法を見つけたと発表した。肺がん患者の血液中の分子を調べることで高精度に予測できる。治療が難しいがんの中には、免疫細胞が持つ分子の「PD-1」や「CTLA-4」に結合して自らに対する攻撃にブレーキをかけるものがいる。オプジーボはPD-1にくっつくことでがんと免疫細胞の結合を防ぎ、免疫が正常に働けるようにする。肺がんや胃がんに使うが、効果が長く続く患者は1~2割と少ない。約半数は効果が出ずに強い副作用だけが出る。同研究チームは肺がんの8~9割を占める非小細胞肺がんで50人の患者の血液を事前に採取し、オプジーボを投与した。血液中の分子の量と治療効果の関係を調べると、PD-1やCTLA-4が少ない患者ほど効果が高かった。がん細胞が持つ「PD-L1」という分子の量を調べて効果を予測する手法もあるが、精度が低い。血液の分析と組み合わせることで精度を高められる。PD-1などの分子は攻撃や増殖の能力が低下した免疫細胞で増える。こうした細胞が壊れると血中に分子が出てくるとみられる。血中の分子が多い人は弱った免疫細胞が多く、がん免疫薬が効きにくい可能性がある。今後、多数の患者で性能を確かめて実用化を目指す。(2024年4月2日日本経済新聞)

75歳以上の医療保険料、過去最高
75歳以上が入る公的医療保険「後期高齢者医療制度」の4月からの保険料の全国平均(月額)は、2023年度までの2年間より507円(7・7%)引き上げられ、7082円となる見込みだ。7千円を超えるのは初めてで、過去最高となる見通し。厚生労働省が全国の状況をとりまとめ、1日に発表した。後期高齢者が支払う保険料は都道府県ごとに決め、2年ごとに見直している。25年度はさらに増え、月額7192円となる見込み。(2024年4月1日朝日新聞)

「医師の働き方改革」スタート
勤務医の残業時間を規制する「医師の働き方改革」が1日、スタートした。これに先立ち、厚生労働省は、全国の医療機関の6・2%にあたる457施設が、診療体制の縮小を見込んでいるとする調査結果をまとめた。うち132施設は、自院の体制縮小が地域の医療提供体制に影響すると答えた。調査は昨年10月から、大学病院を除く病院や分娩を取り扱う産科の有床診療所を対象に実施し7326施設から回答があった。体制縮小を見込む457施設のうち49施設では、大学病院などから派遣されている医師の引き揚げを要因として挙げた。調査結果が示された厚労省の検討会では、委員から「診療体制の縮小によって、いろいろな悪影響が起きる可能性がある。地域医療に与える影響について引き続き調査してほしい」との意見が出された。医師の働き方改革は2019年4月に施行された働き方改革関連法に基づくもので、勤務医の残業時間は原則として年960時間が上限となる。ただし、地域医療を担う病院の勤務医らは、例外的に年1860時間が上限となっている。(2024年4月1日読売新聞)


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