2023年8月~2024年3月

高齢者保険料4月引き上げ、75歳以上540万人
75歳以上の人が支払う公的医療保険料が4月から上がる。年金収入が年211万円を超える約540万人が対象となる。対象は75歳以上の約3割に当たる。介護分野では65歳以上で年金や給与の合計所得が420万円以上ある人は保険料が上がる。厚生労働省が公表している試算によると、年金や給与の合計年収400万円の人は、保険料が年間で1万4千円高くなる。25年4月には対象を広げ、年金収入で年153万円超の人の保険料も上げる。試算では年金収入200万円の人は年3900円負担が増える。(2024年3月28日 共同通信社)

子宮頸がん予防ワクチン、男性の接種費用を全額助成(東京・品川区)
東京都品川区は女性の子宮頸(けい)がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)感染を予防するワクチン接種について、区内在住の小学6年生~高校1年生相当の男性の接種費用を全額助成すると発表した。主に性交渉を通じて感染するため、男性への接種を増やし、女性の感染リスクを抑えたい狙いがある。HPVは男性にも性感染症や肛門がん、中咽頭がんなどを引き起こす原因となることがわかっている。(2024年3月28日朝日新聞)

コロナ後遺症、年代高いほど割合低め、ワクチン接種回数も影響
神奈川県が実施した新型コロナウイルスのウェブアンケートを分析したところ、感染歴のある人のうち、年代が若く、ワクチン接種回数が少ないほど、後遺症に悩む割合が高い傾向を示した。ワクチン接種回数を分類できた9437人のうち、後遺症に「悩んでいる」「悩んでいた」と回答したのは4238人。年代別に見ると、10歳未満~20代は接種「0回~2回」の6割超が後遺症に悩んでいた。「4回」は44%、「5回」は14%で、回数が多いほど後遺症に悩む割合が低かった。30~40代は「0回」が63%で「6回」は49%、50~60代は「0回」が61%で「6回」が40%、70代以上は「0回」が37%で「6回」が29%だった。後遺症の具体的な症状は、年代別に大きな違いはなかった。一方、感染時の症状をそのまま引きずる傾向があり、中でも記憶障害や抑うつ、息切れ、脱毛で顕著だった。(2024年3月26日東京新聞)

日本人の口腔・咽頭がんの飲酒量による死亡率
飲酒と口腔・咽頭がんの予後との関連については研究が少なく、多くは欧州の研究である。今回、日本における口腔・咽頭がん患者における飲酒と10年全死亡率の関連を大阪国際がんセンターがん対策センターが報告した。本研究は、1975~2010年に診断され、院内がん登録で特定された2,626例の口腔がんおよび咽頭がん患者を対象に、最長10年間追跡調査した。対象者をアルコール摂取量により、非飲酒者、元飲酒者、軽度飲酒者(エタノール23g/日以下、尚エタノール23gは日本酒1合、ビール大瓶1本)、中程度飲酒者(23~46g/日)、多量飲酒者(46g/日超)の5群に分け評価した。飲酒と10年全死亡率との関連は、性別、年齢、原発部位、病期、多発がんの数、手術、放射線療法、化学療法、喫煙状況、診断年について調整後、Cox比例ハザード回帰モデルを用いて評価した。その結果、多量飲酒者(エタノール46g/日以上摂取)では非飲酒者と比較して死亡リスクが1.36倍、女性では2.52倍になることが示唆された。Cancer Epidemiology誌2024年4月号に掲載された。(2024年3月26日ケアネット)

ブタの腎臓、患者に初移植 
米マサチューセッツ総合病院は重い腎臓病を患った62歳男性にブタの腎臓を移植した。生きている患者への移植は世界初。人体側の拒絶反応を避けるため、ブタの69カ所の遺伝子操作を施した。男性は順調に回復し、近く退院できる見込み。移植用臓器の不足を緩和するための重要な一歩だと評価した。この手法が、世界で腎不全に苦しむ何百万人もの人々にとって頼みの綱になることを望むとコメントした。使用した腎臓は米企業eGenesisが供給した。遺伝子を高効率で改変するゲノム編集技術を使ってブタの一部遺伝子を削除し、人間の遺伝子を挿入することで人体への適合性を高めた。ブタのウイルスの機能を失わせる感染対策もした。サルへの移植で有効性を検討し、人間の患者への実施に踏み切った。(2024年3月22日 配信共同通信)

ピロリ除菌で大腸がんリスクも低減
Helicobacter pylori(H. pylori)陽性で除菌治療を受けた場合、治療を受けなかった陽性者と比較して、大腸がんの発症リスクと死亡リスクの両方が有意に低減したことを、米国・VASan Diego Healthcare SystemのShailja C. Shah氏らが明らかにした。解析には、1999~2018年に退役軍人健康管理局でH.pylori検査を行った退役軍人のデータが用いられた。H. pylori検査を受けた81万2,736人のうち、陽性は20万5,178例(25.2%)であった。陰性群と比べて、陽性群では大腸がん発症リスクは18%高く、死亡リスクは12%高かった。また、除菌治療を受けた群と比べて、治療を受けていない群では大腸がん発生リスクは23%高く、死亡リスクは40%高かった。(2024年3月18日ケアネット)

男性のHPVワクチン定期接種、当面見送り 
子宮頸がんなど複数のがんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐワクチンの男性への接種について、厚生労働省の専門家委員会は男性の定期接種は当面見送られる見込みとなった。HPVワクチンは女性の子宮頸がん予防を目的に、小学6年から高校1年相当の女性を対象に定期接種化されている。子宮頸がんの主な原因は性交渉によるHPVへの感染。女性の感染機会を減らす観点などから、厚労省は2022年8月から男性の定期接種化に向けた議論をしていた。HPV感染が原因となるがんは、子宮頸がんのほかに、肛門がんや、中咽頭がんなども知られる。世界保健機関(WHO)加盟国のうち59カ国では男性もHPVワクチンの定期接種の対象としている。現在日本で男性に認められているのは、4種類のHPV型を防ぐ4価ワクチンの3回接種のみ。がんを防ぐ効果がある。全額自費で計約5万円かかるため、接種費用を助成する自治体も増えている。(2024年3月14日朝日新聞)

コロナ脳症重くなりやすく 死亡・後遺症が25%超
新型コロナウイルスに感染して急性脳症を発症した子ども103人を分析したところ、死亡したり、重い後遺症があったりした例が25%以上を占め、他のウイルス感染症に比べ多かったとの結果を、東京女子医大や東京都医学総合研究所などのチームがまとめた。感染症による急性脳症は、発熱に伴うけいれんや、免疫の過剰な反応で神経細胞が傷つくのが原因とされる。新型コロナでは数万人に1人の割合で発症するとされる。2020年1月~22年11月に新型コロナに感染し、急性脳症になった18歳未満の103人を分析した。11人が死亡し、17人に重度の後遺症があった。合わせて約27%に上る。インフルエンザなどに比べて頻度が高い。(2024年3月14日共同通信社)

フランス大統領、終末期患者に致死量の薬投与認める法案発表
フランスのマクロン大統領は、終末期患者に厳格な条件の下で致死量の薬の投与を認める「死への積極的援助」を導入する法案を発表した。5月から議会で審議する方針。自身で死を決断できる能力があり、短期・中期的に死の恐れがある重病に冒され、苦痛を和らげることができない成人に限るとしている。自身で薬を投与できない場合は、医師ら第三者の助けを得ることもできる。(2024年3月12日毎日新聞)

はしかの世界的流行 欧州で60倍 国内も感染相次ぐ 
はしか(麻疹)が世界的に流行し、国内でも感染が広がる可能性があるとして、厚生労働省がワクチン接種など感染対策に取り組むよう呼びかけている。はしかは感染力が非常に強く、マスクでは予防できない。関西空港着の国際便から計8人の感染者が確認されるなど、国内での感染確認が相次いでいた。はしかは10~12日間の潜伏期間を経て発症する。発熱やせきなどの症状が2~3日続いた後、39度以上の高熱と発疹が出る。肺炎などの合併症を起こしやすく、1千人に1人の割合で脳炎を発症する。空気感染し、手洗いやマスクでは予防できない。予防にはワクチン接種が有効で、2回の接種で95%以上の人が免疫を獲得できるとされる。2023年は世界保健機関(WHO)によると、23年の世界の感染者数は前年の1・8倍の30万人超。特にロシアや中央アジアを含む欧州地域の23年の感染者数は5万8114人と、22年(942人)の60倍となった(2024年3月11日読売新聞)

コロナワクチン217回接種、副反応なし
新型コロナウイルスワクチンを自発的に217回接種したドイツ人男性(62)が、副反応は全くなく、免疫機能にも異常はないという報告が「ランセット感染症ジャーナル(LancetInfectious Diseases)」に掲載された。検察は、男性が9か月間に130回の接種を受けた証拠を集めた。だが、本人は2年5か月の間に、mRNAワクチンの変異株対応版を含む8種類のワクチンを計217回接種したと主張している。研究チームは、過剰ワクチン接種について調査する極めてまれな機会を得ることになった。研究者からは、ワクチン接種をあまりに何度も繰り返すと免疫細胞が抗原に慣れてしまい、免疫機能が低下してしまうという声も上がっている。だが、この男性の場合、免疫機能の低下は起きなかった。それどころか、3回接種を受けた対照群と比較し、男性の方が新型コロナに対する免疫細胞の量と抗体の量(抗体価)がかなり高かった。さらに、217回目の接種でも、男性の抗体値は上昇し、副反応は全くなかったと報告した。研究チームは、この一つの事例から一般的な結論を導かないようにと警告している。(2024年3月7日 AFPBB News)

ブロッコリーが慢性炎症と死亡を低減
ブロッコリーが、全身の慢性炎症と死亡率の低下に関連していたことが、米国・サウスフロリダ大学の研究よって明らかになった。全身性の異常な炎症が続くことで、心血管系やがんなどの様々な疾患のリスクが上昇することが知られている。食事習慣の中には、炎症に関与するものもあれば、炎症を抑えて健康を改善するものもある。研究グループは、慢性炎症と死亡率に関連する食品を特定するため、前向きコホート研究を実施した。評価の炎症マーカーは、IL-6、フィブリノゲン、CRP、D-ダイマー、IL-2、MMP-3、TNF-α、酸化LDL、血中総ホモシステインであった。単変量解析では、ブロッコリーのカテゴリー(ブロッコリー、キャベツ、カリフラワー、芽キャベツ、ザワークラウト、キムチ)の摂取が最も一貫して炎症と死亡率の低下に関連していた。IL-6とD-ダイマーを使用した多変量解析では、ブロッコリー摂取はその摂取量の多寡にかかわらず死亡リスクの低下と関連していた。なお、わが国では、2026年からブロッコリーが農林水産省の指定野菜(重要な野菜として位置付けているもの)に追加されることになった。(2024年3月5日 ケアネット)

がん治療標的の遺伝子変異15% 
患者ごとにがんの遺伝子を調べて治療する「がんゲノム医療」が実用化されている。これまで欧米のデータを分析した研究はあったが、日本人を対象にしたのは初めてある。国立がん研究センターは、100種類以上の遺伝子を一度に調べ、効果のある薬を見つける「遺伝子パネル検査」のデータを活用し、2019年6月~2023年8月、がんゲノム情報管理センターに集められた4万8627例を分析した。全体の15・3%が治療薬の標的となる遺伝子変異があったと発表した。薬が見つかるのは1~2割とされていた当初の想定に合致する結果であった。また、がんの種類によって割合が大きく異なることも明らかになった。がん種別で治療薬の標的となる変異などが見つかる割合は、甲状腺がんの85・3%が最も高く、浸潤性の乳がん60・1%、肺腺がん50・3%が続いた。甲状腺がんは多様な薬が開発されていることが背景にあるとみられる。割合が低いのは唾液腺がん、脂肪肉腫、腎細胞がんで、いずれも0・5%未満だった。

※がんゲノム医療
患者から、がんの組織や血液を採取して解析し、がんの原因となる遺伝子変異などを特定、効果が見込める薬を選んで治療する医療。国内では、100種類以上の遺伝子を一度に調べる「遺伝子パネル検査」が2019年6月に保険適用された。検査の対象は標準治療をしても効果が得られなかった固形がんや、標準治療のない希少がんと原発不明がんの患者らとされる。(2024年3月1日 配信共同通信)

ピロリ除菌後の胃がん発症リスク
東京大学医学部附属病院はカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(PCAB)使用がピロリ菌除菌後に発症する胃がんのリスクを高めると発表した。胃がんの主な原因はヘリコバクター・ピロリ菌の慢性感染であり、ピロリ菌を除菌することにより胃がん発生を一定程度予防できると考えられている。しかし、ピロリ菌除菌後の患者の中にも経過とともに胃がんが発生することがあり、除菌後胃がん発生の原因や危険因子に関する研究が進められている。逆流性食道炎などの消化器疾患で胃酸分泌抑制剤として使用されるプロトンポンプ阻害薬(PPI)を長期内服することによってピロリ菌除菌後胃がんのリスクが上昇するという報告が散見されていたが、PCAB内服に関しては使用年数が浅く不明な点が多くあった。今回5万4,055人のピロリ菌除菌後患者を対象に解析し、PCAB内服群、H2RA内服群、PPI内服群でのピロリ菌除菌後の胃がん発症リスクを比較した。結果、PCAB群はH2RA群に比べて高リスク、PPI群とは同等で胃がん発症リスクを有すると考えられた。今後、PCABの長期使用のリスクに関して、国際的なより大規模の検討がなされることが期待されると、研究グループは述べている。(2024年2月26日M3.com)  なお、PPIは商品名タケプロン、ネキシウム、パリエットなどで、H2RAは商品名ガスター、ザンタック、アシノンなどで、PCACは商品名タケキャブです。

飲酒少量でも健康障害、厚労省が初の指針
厚生労働省は初の指針「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を公表した。酒量より純アルコール量に着目することが重要で、疾患別に発症リスクを例示した。大腸がんは1日当たり約20グラム以上で、高血圧は少量でもリスクが高まるとしている。純アルコール量20グラムは、ビールロング缶500ml1本、日本酒1合180ml、ウイスキーのダブル1杯60ml、ワインは2杯弱(200ml)、酎ハイ管1本350mlです。指針によると、1日当たりの摂取量として脳梗塞は男性40グラム、女性11グラムで発症の恐れが上がる。女性の乳がんは14グラム、男性の前立腺がんは20グラム。男性は、少しでも飲酒すると胃がんや食道がんを発症しやすくなるとの報告がある。高齢者は若い時に比べて酔いやすく、一定の酒量を超えると認知症発症や転倒のリスクが高まる。若年者は多量に飲むと脳機能が落ちるほか、飲んで顔が赤くなるなどアルコール分解酵素の働きが弱い人は、口内や食道のがんのリスクが非常に高くなるという。政府の健康づくり計画「健康日本21」では、生活習慣病リスクが高まるとされる純アルコール量「1日当たり男性40グラム以上、女性20グラム以上」としている(2024年2月20日共同通信社)

新型コロナの公費負担、4月から全面撤廃
新型コロナ治療薬の公費負担をなくし、患者の保険診療の負担割合に応じて1~3割の窓口負担を求める。入院医療費の公費支援なども打ち切り、コロナ禍の緊急措置から通常の診療体制に移行する。現在、年齢、収入に応じて、3000~9000円を自己負担しているが。4月からは、重症化予防に用いるラゲブリオを使う場合、1日2回5日分の1処方あたり約9万円のうち、3割負担であれば約2万8000円を自己負担することになる。入院医療費に対する公費支援やコロナ患者用病床を確保した医療機関に支払われる病床確保料も終了する。(2024年12月20日読売新聞)

致死率ほぼ100%の狂犬病の発症を防ぐには、すぐワクチン接種を
狂犬病はウイルスによる感染症で、いったん発症すると致死率はほぼ100%という恐ろしい病気です。狂犬病ウイルスを含んだ感染動物の唾液が、かまれた傷口や目や口の粘膜に触れたりすることで感染します。感染したウイルスは、増殖しながらゆっくりと神経を伝って脳に到達し、興奮、錯乱、幻覚といった脳炎症状を引き起こします。潜伏期間は通常は約1~3カ月間です。発症してからの有効な治療法はありません。感染前のワクチン接種はもちろん有効ですが、感染後でも直ちにワクチンを接種すれば間に合います。かまれた部位からウイルスが神経を伝って脳に到達する前に免疫がつけば発症は避けられます。できるだけ早く医療機関を受診して狂犬病ワクチン接種などの予防処置を受けてください。日本では最後の発生は1956年です。しかし、海外で感染し、国内で発症した症例があり、全例が死亡しています。今でも世界中で年間数万人が狂犬病で亡くなっています。ヒトへの感染の多くは犬からですが、コウモリやアライグマなどの野生動物からも感染することがあります。(2024年2月19日朝日新聞)
狂犬病~もしかまれたら、すぐ医療機関へ

膵臓がんの治療ワクチン
膵臓の腫瘍は、その90%以上に悪性度を高める可能性のあるKRAS遺伝子の変異があるとされるが、この変異を有する膵臓がんに対し、実験段階にある治療ワクチンが有効である可能性が、米テキサス大学MDアンダーソンがんセンター消化器腫瘍学の小規模臨床試験で示された。現時点では「ELI-002 2P」と呼ばれているこのワクチンは、KRAS変異を有する固形がんを標的にするものだという。膵臓がんは自覚症状がないまま進行し早期発見が難しいことから、「サイレント・キラー」と呼ばれている。米国がん協会(ACS)によると、米国では推定で年間約6万4,000人が膵臓がんと診断され、約5万5,500人がそれによって死亡している。膵臓がんに対するファーストライン治療は手術だが、再発の可能性もある。ELI-002 2Pは、再発を予防するためにデザインされたワクチンで、免疫細胞のT細胞にKRAS変異を認識して破壊するように仕向ける。ELI-002 2Pは、患者ごとに製造することが可能である。「まだ初期段階の試験ではあるが、このワクチンによって多くの患者のがんの再発を防ぎ、生存期間を延長できる可能性があるという有望な結果が示された」と話す。ELI-002 2Pの第2相臨床試験は2024年後半に開始される予定だ。(2024年2月15日HealthDay News)

神経発達障害リスク、中等度・後期早産児で高い
正期産(39週0~40週6日)で出生した子供と比較して、中等度早産(32週0日~33週6日)および後期早産(34週0日~36週6日)で出生した子供は、有害な神経発達アウトカムのリスクが高く、このリスクは在胎週数32週から41週まで徐々に低下することが、スウェーデン・カロリンスカ研究所の調査で示された。対象は、1998~2012年に、在胎期間32週0日~41週6日の単胎の生児として出生し、先天奇形のない子供128万1,690人であった。主要アウトカムは、16歳までに診断された運動障害、認知障害、てんかん発作、視覚障害、聴覚障害、およびあらゆる神経発達障害の複合であった。内訳は運動障害5,899人、認知障害2万7,371人、てんかん発作1万1,870人、視覚障害が1万9,700人、聴覚障害が2万393人であった。正期産児と比較して、中等度早産児および後期早産児で高かった。(2024年2月13日 ケアネット)

大学病院の支援 強化へ
政府は、2024年度から勤務医の残業時間を規制する医師の働き方改革が始まることを受け、大学病院の支援に乗り出す。地域の医療機関への医師派遣を後押しし、最先端の医療機器の導入を補助することが柱だ。24年度予算案に総額116億円を計上し、23年度の補正予算と合わせ、約250億円規模の事業費を見込む。地域の医療機関では、常勤医師では足りない人員を大学病院からの医師派遣で補うケースが多い。働き方改革が進めば、大学病院側に人員の余裕がなくなり、派遣見送りが懸念される。こうした事態を防ぐため、大学病院に医師1人の派遣にあたり月125万円を支給する。補助を通じて、病院側が勤務医を増やすなどの対策をとることが期待される。医師の勤務時間の短縮に取り組む大学病院には、1床あたり最大約26万円の支援を行い、勤務環境の改善に充ててもらう。また、医師の研究の補助役として学生や統計の専門家らを登用するための経費も補助する。1大学あたり年間3000万~7000万円支給する見通しだ。医師のサポート態勢を充実させることに加え、医療界を担う学生らにとっては、最先端の研究に携わることが可能になるという利点もある。医師の育成環境の改善では、手術支援ロボットや放射線治療装置など、最先端の医療機器の配備に1大学あたり最大2億5000万円を補助する予定だ。特に臨床実習を強化し、「医師の卵」が医療現場で即戦力となることを目標とする。24年度には残業時間が改正労働基準法などで定められた上限の960時間を超えると予測しており、働き方改革の実現が急務となっている。2024年度には残業時間が改正労働基準法などで定められた上限の960時間を超えると予測しており、働き方改革の実現が急務となっている。(2024年2月12日読売新聞)

特発性椎骨動脈解離に枕の高さと硬さが関与
国立循環器病研究センターは脳卒中の原因の一つである「特発性椎骨動脈解離」は枕が高いほど発症割合も高く、より硬い枕では関連が顕著であることを立証し、殿様枕症候群(Shogunpillow syndrome)という新たな疾患概念を提唱した。研究グループは今回、起床時発症で誘因のない特発性椎骨動脈解離の患者の中に極端に高い枕を使っている人が存在することに着目し、「高い枕の使用は特発性椎骨動脈解離の関連があるか」「どのくらいの割合の特発性椎骨動脈解離が高い枕に起因するのか」について検討した。2018~2023年にかけて特発性椎骨動脈解離と診断された症例群と、同時期に入院した年齢と性別をマッチさせた脳動脈解離以外の対照群を設定し、発症時に使用していた枕の高さを調べた。高い枕の基準は12cm以上を高値、15cm以上は極端な高値と定義し、枕の硬さや首の屈曲の有無についても調査した。症例群53人と対照群53人で、高い枕の使用と特発性椎骨動脈解離の発症には関連が見られ、枕が高ければ高いほど、特発性椎骨動脈解離の発症割合が高いことも示唆された。また、枕が硬いほど顕著で、柔らかい枕では緩和された。(2024年2月6日)M3.com

乳幼児ワクチン、新年度から5種混合定期接種
百日せきとジフテリア、破傷風、ポリオの4種混合ワクチンにインフルエンザ菌b型(ヒブ)を加えた5種混合ワクチンを2024年度から定期接種とする方針を決めた。乳幼児が対象で、従来のワクチンを使った場合より、接種回数を半分に減らすことができる新たなワクチンは生後2か月から7歳半までの間に4回接種することで5種類の感染症を予防する。接種費用は原則無料となる。(2024年2月5日読売新聞)

薬過剰摂取疑い搬送、若年層目立つ
市販薬を過剰摂取するオーバードーズが原因と疑われる救急搬送者が、昨年1~6月で5625人に上ったことが総務省消防庁と厚生労働省の調査で分かった。20代が1742人で最も多く、10代の846人と合わせて半数近くを占めた。女性が4132人で全体の7割だった。風邪薬やせき止めなどを大量に服用するオーバードーズは、一時的に気分が高揚することもあるが、意識障害や呼吸不全を引き起こす危険がある。52消防本部を対象に救急搬送に関する活動記録に「オーバードーズ」「薬」「過剰」などが含まれる事例を集計した。結果によると、20年9595人、21年1万16人、22年1万682人で増加が続いており、22年と20年を比べると10代は1・5倍、20代は1・2倍に増えていた。10歳未満も毎年30人前後いた。(2024年2月5日配信共同通信社)

世界がん新規患者2千万人 
世界保健機関(WHO)と傘下の国際がん研究機関(IARC)は2022年に新規がん患者が約2千万人、死者が約970万人に上ったと発表した。人口の増加や高齢化を背景にがん患者は急速に増加し、2050年には新規患者が3500万人超に達すると予測される185カ国からデータを集めて分析。2022年の新規患者のうち肺がんが約248万人と最も多く、乳がんが約231万人で2番目、さらに大腸がん、前立腺がんと続いた。男性は9人に1人、女性は12人に1人ががんで死亡しているという。日本の新規患者は約100万人で、死者は約42万人。部位は男性で前立腺と肺、女性で乳房と大腸がそれぞれ多かった。(2024年2月2日 共同通信社)

膵臓の治療が自閉症の子どもの症状を改善
自閉症がある子どもの行動面の問題の軽減に、膵臓に対する治療が有効である可能性が米テキサス大学のDeborah Pearson氏らによる研究で示された。研究グループは、食事からのタンパク質摂取とセロトニンやドーパミンなどの重要な神経伝達物質との関連がこの結果の重要ポイントだと説明している。これらの神経伝達物質がうまく働かないと、子どもの行動に影響が及ぶ。自閉症スペクトラム障害(ASD)のある子どもの多くは炭水化物の多い食品を好む一方、タンパク質の多い食事には抵抗を示す。しかし、神経伝達物質の合成に必要なアミノ酸はタンパク質からしか得ることができない。そこで研究グループは、膵酵素の補充により膵臓でのアミノ酸の産生量を増加させることが子どもの脳に有用であり、脳の神経伝達物質の不足に関連する問題行動の軽減につながるのではないかと考え3~6歳のASDがある子ども190人(平均年齢4.5歳、男児79%)を対象に実施された。まず、12週間にわたってランダムに選ばれた92人の子どもの食事に1日3回、豚由来の高プロテアーゼ膵酵素(900mg、以下、膵酵素)をふりかけた。一方、残る98人の食事には偽の酵素(プラセボ)をふりかけた。この研究期間中、研究者や子どもの親には、どの子に何が与えられているのかは明かされなかった。結果、膵酵素を摂取した子どもでは、親の報告に基づいた子どもの易刺激性や多動性、従順性のなさ、不適切な発言が有意に減少したことが明らかになった。これに対し、プラセボを摂取した子どもでは、このような変化は認められなかった。次に24週間にわたって全員に毎日膵酵素が投与された。その結果、この期間も、子どもの親の報告に基づいた易刺激性や多動性、不適切な発言が有意に減少したほか、無気力、引きこもりの程度も低下していた。全研究期間を通じて、膵酵素投与による重大な有害事象は1件も報告されなかった。(HealthDayNews2024年1月30日)

進行大腸がんの免疫療法、治療中止後もその効果は持続
免疫チェックポイント阻害薬による治療を中止した進行大腸がん患者の多くは、治療中止から2年後でもがんが進行していないことが、新たな研究で確認された。米テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの消化器腫瘍内科のVanKarlyle Morris氏らの研究で、転移性大腸がん、または進行大腸がんと診断され、2014年から2022年の間に免疫療法を受けて奏効が確認された患者64人の医療データが後ろ向きに評価された。これらの患者は、治療開始時にがんの切除は不可能と判断され、キイトルーダ(一般名ペムブロリズマブ)やオプジーボ(一般名ニボルマブ)などの免疫療法を受けた患者であった。その結果、治療中止から中央値22.6カ月後でも88%(56/64人)の患者でがんは進行していないことが確認された。全患者での無増悪生存期間の中央値は53.9カ月であり、治療中止から1、2、3年後の無増悪生存率は、同順で98%、91%、84%と推定された。ただし、研究グループは、本研究が単施設で実施された小規模な後ろ向き研究である点を強調している。(2024年1月29日 ケアネット)

新型コロナ、ワクチン接種不足で重症化リスク増/Lancet
英国において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン接種に関して、推奨回数に満たないワクチン接種不足者が重症COVID-19のリスク増加と関連していたことが、英国・エディンバラ大学のStevenKerr氏らの研究メタ解析の結果で示された。ワクチン接種不足は完全接種と比較して、COVID-19による入院や死亡といった重症アウトカムのリスク増大と関連している可能性がある。研究グループは、Lancet誌に2024年1月15日号掲載の報告。5歳以上を対象に重症COVID-19の発生について、ワクチン接種不足との関連を解析した。完全接種なら、重症COVID-19の2割弱は回避できた可能性がある。(2024年1月29日 ケアネット)

歯磨きは入院患者の肺炎リスクを低下させる
院内肺炎は入院患者に発生する肺の感染症で死亡率の上昇や入院期間の延長、医療費の増大などを招く。しかし、毎日、歯を磨くことで院内肺炎の発症を低減できる可能性が研究で示唆された。また、集中治療室(ICU)入室患者では、歯磨きにより死亡リスクが有意に低下する傾向も示され、JAMA Internal Medicineに12月18日掲載された。1万742人の対象者(ICU入室患者2,033人、ICU非入室患者8,709人)から成る15件のランダム化比較試験を抽出した。その結果、毎日歯を磨いた患者では院内肺炎が有意に低下し、ICU入室患者では、歯を磨くことで死亡リスクも有意に低下した。また、人工呼吸器装着患者では非装着患者と比較し、院内肺炎の発生は有意に低かった。さらにICU入室期間が有意に短縮していた。研究グループでは、「肺炎は、口腔内の細菌が気道に吸い込まれて肺に感染することで発症する。フレイル状態にある患者や免疫力が低下している患者は、入院中に肺炎を発症するリスクが特に高まる。歯を毎日磨くことで口腔内の細菌量が減少し、肺炎の発症リスクが低下する可能性がある」と述べている。(2024年1月26日ケアネット)

RSウイルスの母子免疫ワクチン
RSウイルスワクチン「アブリスボ筋注用」が国内製造販売承認を取得し、発売は2024年6月の予定。乳児の細気管支炎やウイルス性肺炎の主な原因であるRSウイルスは、ほぼ全ての乳幼児が2歳までに感染する。RSウイルス関連の重症下気道感染症の発生率は生後2~3カ月の乳児において最も高い。RSウイルスにはA型とB型のサブタイプが存在する。本剤は、両タイプの融合前F蛋白質の組み換え体を含有する二価ワクチンだ。妊娠24~36週の妊婦に、1回0.5mLを筋肉内に接種する。(2024年1月19日日経メディカル)

人食いバクテリア」報告数が過去最多
「人食いバクテリア」の2023年の患者報告数が過去最多となった。急激に症状が進み、致死率は3割とされる。病原体はA群溶血性レンサ球菌という細菌で筋肉周辺の組織を壊死させることから、「人食いバクテリア」とも呼ばれる。通常は菌が検出されない血液や髄液などに菌が侵入し、多くの臓器の機能が急激かつ劇的に低下するのが特徴だ。(2024年1月17日朝日新聞)taharaseikei-ube.com/832.html

筋強直性ジストロフィー、既存薬転用
全身の筋肉が衰える指定難病「筋強直性ジストロフィー」の治療薬として、感染症に効く既存の抗生物質が有効であることを山口大などの研究グループが昨年12月、英国の医学系学術誌に掲載した。 筋強直性ジストロフィーは、筋肉の再生に関与する遺伝情報「メッセンジャーRNA(mRNA)」が変異し、たんぱく質が正常に生成されないことが原因。現在、根本的な治療法が確立されていない。同グループは抗生物質の「エリスロマイシン」を半年間にわたり患者30人に投与したところ、重篤な副作用を認めず、症状を改善。一般的に、新薬の開発には十年単位の時間と数百億円の費用がかかる。同グループは患者への早期の治療提供とコスト抑制を重視し、安全性が確認されている既存薬を転用する「ドラッグリポジショニング」と呼ばれる手法を用いた。国の承認を含め、最短で2~3年で患者に届けたいと述べている。(2024年1月13日 読売新聞)

厚生労働省、「健康づくりのための睡眠ガイドライン2023」
小学生は9~12時間、中高生は8~10時間、成人は6時間以上の睡眠を推奨。なお、高齢者は8時間以上の睡眠と長時間の昼寝は良くないと報告された。成人は6時間以上の睡眠時間が目安で、平日の不足分を休日に取り戻そうとする「寝だめ」は健康を損なう危険性が生じると指摘した。高齢者は長時間の睡眠や昼寝は死亡リスクが高まるとし、寝床で過ごす時間を短くするよう注意を呼びかけた。こどもは、睡眠不足が肥満、抑うつ、学業成績の低下につながることが報告されているとし、推奨される睡眠時間では1~2歳は11~14時間、3~5歳は10~13時間などと細かく分けて示した。夜更かしや朝寝坊が習慣化しないことを注意点として挙げた。このほか、ウォーキングなどの有酸素運動や就寝1~2時間前の入浴が寝つきを良くし、寝室をできるだけ暗くして寝ることが良い睡眠につながると紹介。カフェイン摂取量が1日400ミリ・グラム(コーヒーカップ4杯分)を超えないことや、就寝直前の夜食を控えることも盛り込んだ。(2024年1月9日 読売新聞)

膵臓がんの治療ワクチン
膵臓の腫瘍は90%以上に悪性度を高める可能性のあるKRAS遺伝子の変異があるとされる。この変異を有する膵臓がんに対し、実験段階にある治療ワクチンが有効である可能性があることが、米テキサス大学MDアンダーソンがんセンター消化器腫瘍学准教授のShubhamPant氏らが実施した臨床試験で示された。現時点では「ELI-002 2P」と呼ばれているこのワクチンは、KRAS変異を有する固形がんを標的にするものだという。(2024年1月9日HealthDayNews )

鳥インフル、ハエが運ぶ?
鳥インフルエンザウイルスを運んでいるのはハエの可能性がある。九州大大学院農学研究院の研究チームがこんな調査結果を明らかにした。研究チームは、鳥インフルエンザが確認された約30カ所で採取したオオクロバエを分析。15%のハエの消化器官から鳥インフルエンザウイルスを検出した。ハエが感染した野鳥の糞や死骸からウイルスを取り込み、媒介している可能性があることが分かった。現状、鳥インフルエンザ対策は野鳥や小動物の侵入防止を目的に防鳥ネットや捕獲装置や人や車両の消毒が中心だ。ハエ対策で感染リスクを下げられる可能性があると提唱している。(2023年12月27日 共同通信社)

老健、介護医療院の相部屋料、月8000円自己負担
介護保険の介護老人保健施設(老健)の一部や介護医療院の相部屋の室料について、厚生労働省は27日、低所得者以外の利用者に2025年8月から月8千円の自己負担を求める方針を示した。特別養護老人ホーム(特養)などを合わせた全施設の居住費(基準費用額)を24年8月から月1800円引き上げる。(2023年12月27日朝日新聞)

コロナワクチ接種費用7000円に
2024年度から始まる新型コロナウイルスワクチンの定期接種について、厚生労働省は低所得者を除き、自己負担額の上限を7000円にすると発表した。これを上回る場合は国が対策を講じる。定期接種は65歳以上の高齢者などが対象。ワクチン価格は3260円、注射を打つ手技料は3740円として積算した。インフルエンザのワクチン価格が1500円程度であることを参考にした。低所得者は無料になるよう、国が接種費用を助成する。新型コロナワクチンは現在、費用を国費で負担し、全世代が無料で受けることができる。24年4月からは高齢者とを対象に定期接種に位置づける。それ以外の人は任意接種となる。費用は全額自己負担となる。(2023年12月22日読売新聞)

コロナ新変異株JN.1
新型コロナウイルスの変異株について、世界保健機関(WHO)は19日、オミクロン株の亜系統「BA2.86」から派生したJN.1を注目すべき変異株に指定したと発表した。欧米などで置き換わりが進んでいる。今後感染拡大を引き起こす可能性もあるとして、注意を呼びかけている。JN.1は感染しやすく変化する可能性がある。XBB株対応のワクチン接種が有効な可能性があるとしている。冬を迎えた北半球では、呼吸器感染症が流行しやすいため、JN.1がコロナの感染増加を引き起こす可能性がある。WHOによると、フランスや米国、シンガポールなど41カ国で確認されており、JN.1への置き換わりがこの1カ月で一気に進んだ国もある。(2023年12月21日朝日新聞)

乳幼児の5種混合ワクチン、定期接種へ ヒブ追加
厚生労働省は、乳幼児を対象にした百日せき、ジフテリア、破傷風、ポリオ、インフルエンザ菌b型(ヒブ)を予防する5種混合ワクチンについて、来年4月から定期接種とする方針を了承した。従来の4種混合ワクチンにヒブワクチンを加えたもので、現在もそれぞれ定期接種の対象となっている。当面は4種混合とヒブも使用できる。4種混合とヒブの両方を接種する場合、生後2カ月から計8回の接種が必要となるが、5種混合は接種回数を4回に減らせる。接種スケジュールは現行の4種混合とおおむね同じ。生後2カ月~7カ月に接種を開始し、4週~8週あけて3回目の接種を終えるのが標準的。4回目は6カ月以上たってから接種する。対象は7歳半まで。(2023年12月20日朝日新聞

つわりの原因、やっと解明 
妊娠中、多くの女性が吐き気などを経験する「つわり」に、特定のホルモンの増加が関係することを、米国や英国などの国際研究チームが明らかにした。つわりは妊娠初期に多く、70%の女性が経験するとされる。軽くすむ女性もいる一方で、飲食ができず、体重減少や脱水などで入院しなければならないほど重症化する人も中にはいる。重症化した「妊娠悪阻(おそ)」の原因についてはGDF15というホルモンとの関連が指摘されている。GDF15は通常時から人の体内に存在し、がんや加齢、喫煙などによって上昇することがわかっている。妊娠すると胎盤でつくられ、妊娠中に大きく増える。研究チームが妊婦の遺伝子や血中成分を解析したところ、妊娠中に吐き気や嘔吐を経験した人GDF15の値が高かった。このGDF15の大部分は胎児に由来していた。また、妊娠前のGDF15の値が低い女性は、つわりが重症化するリスクが高かった。(2023年12月20日 朝日新聞)

※血液中のgrowth differentiation factor 15 (GDF15) タンパク質は、加齢に伴い増加することが知られており、血中GDF15濃度が高い高齢者は、死亡リスクが高いことが海外の研究で報告されていました。群馬県草津町または埼玉県鳩山町に在住の65歳以上の高齢者1,801人を対象に、血液中のGDF15濃度の測定ならびに5.7年間(中央値)の追跡調査を実施しました。今回の研究により、地域在住の日本人においても、血中GDF15濃度が高い高齢者は死亡リスクが高いことが明らかとなりました。健康寿命の延伸には、高齢者の健康リスクを正確に評価し、適切な介入に繋げるシステムが不可欠です。血中GDF15は健康リスクの新たな指標となる可能性があり、今後のさらなる知見の蓄積が必要だと考えられます。東京都健康長寿医療センター研究所 https://www.tmghig.jp/research/release/2023/0516.html

HPV検査、子宮頸がん検診に来年4月導入決定
厚生労働省は、市区町村が実施する子宮頸がん検診に、がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を調べる検査を来年4月から導入することを決めた。30~60歳が対象。子宮頸がんは、性交渉によるHPVの感染が主な原因だ。新たに加わる「HPV検査」は、子宮の入り口近くから細胞を採取し、細胞がHPVに感染していないかを調べる。がん発症のリスクがある人を早期に見つけられる利点がある。(2023年12月18日 読売新聞)

分娩施設まで1時間以上かかる妊婦、政府が交通費や宿泊費を補助
政府は、自宅の近くに分娩施設がない妊婦の交通費や宿泊費を補助する方針を固めた。2024年度予算案に4億7000万円を計上する。自宅や里帰り先から最寄りの分娩施設までの移動に1時間以上かかる人が対象となる。交通費は往復分の8割を補助する。出産予定日前に施設の近くで待機する宿泊費も14泊を上限に、原則として1泊2000円の自己負担を除いた額を支援する。持病などで出産に伴う危険性が高い「ハイリスク妊婦」とされる人には、高度な医療を提供する周産期母子医療センターまでの交通費や宿泊費を同様に補助する。費用は国が2分の1、都道府県と市町村が4分の1ずつを負担する。(2023年12月18日 読売新聞)

アルツハイマー病新薬、レカネマブを承認
アルツハイマー病の治療薬レカネマブ(商品名レケンビ)について、厚生労働相の諮問機関に当たる「中央社会保険医療協議会」は1年間の治療費で約298万円とすることを承認した。公的医療保険が適用される。病気の進行を遅らせる効果が期待される。適応は、脳内に異常なたんぱく質アミロイドベータ(Aβ)の蓄積が確認されたアルツハイマー病患者、軽度認知障害がで、70歳以上の一般所得層(年収約370万円以下)の場合、外来による負担額の上限は年間で14万4000円になる。(2023年12月13日 朝日新聞)

梅毒、男性20代~50代、女性は20代が突出して増加
梅毒とは、梅毒トレポネーマという病原体により引き起こされる感染症で、主にセックスなどの性的接触により、口や性器などの粘膜や皮膚から感染します。オーラルセックス(口腔性交)やアナルセックス(肛門性交)などでも感染します。また、一度治っても再び感染することがあります。梅毒に感染すると、性器や口の中に小豆から指先くらいのしこりができたり、痛み、かゆみのない発疹が手のひらや体中に広がることがあります。また、これらの症状が消えても感染力が残っているのが特徴です。治療をしないまま放置していると、数年から数十年の間に心臓や血管、脳などの複数の臓器に病変が生じ、時には死にいたることもあります。妊娠中の梅毒感染は特に危険です。妊娠中の梅毒感染は特に危険です。妊娠している人が梅毒に感染すると、母親だけでなく胎盤を通じて胎児にも感染し、死産や早産になったり、生まれてくるこどもの神経や骨などに異常をきたすことがあります。生まれたときに症状がなくても、遅れて症状が出ることもあります。
日本では1948年から梅毒の発生について報告の制度がありましたが、報告数は、年間約11,000人が報告された1967年以降、減少していました。ところが2011年頃から報告数は再び増加傾向となりました。2019年から2020年に一旦減少したものの、2021年以降大きく増加しています。2022年には10月下旬の時点で10,000例を超える報告があり、注意が必要です。(厚生労働省 健康・医療より)

麻薬による在宅緩和ケア、非がん患者にも
中央社会保険医療協議会(中医協)総会が2023年11月24日に開催され、2024年度診療報酬改定に向けて、在宅における非がん患者の緩和ケアについて議論された。在宅で医療用麻薬の処方を受けている患者の中に、一定数の非がん患者が存在する実態を踏まえ、その評価の在り方が論点として上った。

心不全や呼吸器疾患の末期など、非がん患者にも在宅での緩和ケアのニーズがあると報告されている。訪問診療を受けており麻薬の注射薬が処方された患者5588人のうち、レセプト上の傷病名として「がん性疼痛」が記載されている割合は82.5%。残りの17.5%は、慢性呼吸不全や慢性心不全といったがん以外の傷病名で注射薬の麻薬が使用されている実態が明らかとなった。(2023年12月4日日経メディカル)

前立腺肥大症、体への負担少ない手術
前立腺肥大症は、男性に起きる病気。加齢とともに進行し、患者は60代の6%、70代の12%にいるとする報告もある。原因はホルモンバランスの崩れなどが指摘されているが、はっきりとはわかっていない。治療は、食事や運動などの行動療法のほか、尿道を広げる薬や前立腺を小さくする薬を使う。薬で改善しないときには手術が検討される。電気メスやレーザーで前立腺を削ったり、くりぬいたりするこれまでの手術に加え、昨年、医療用の糸などで前立腺を縛り上げて尿道を広げる手術と、水蒸気の熱で前立腺の一部を壊死(えし)させる二つの手術が公的医療保険の適用となった。いずれも内視鏡を使った手術で時間は10~15分ほどで済む。出血も少ないため、体への負担が小さい。脳梗塞(こうそく)などの持病がある人や、高齢で従来の手術をするにはリスクの高かった患者が対象となる。(2023年11月30日朝日新聞)

犬を飼うと認知症リスクが4割低下
高齢者で犬を飼っている人は、飼っていない人に比べて認知症の発症リスクが4割低かった、とする調査結果を東京都健康長寿医療センターの研究チームがまとめた。都の疫学調査に協力した65~84歳の1万1194人を対象とし、2016~2020年に認知症になった人の割合を調べた。発症リスクを示す「オッズ比」を算定すると、犬や猫を飼っていない人を1とした場合、犬の飼育者は0・6、猫の飼育者は0・98となった。飼育者でも犬は発症リスクが4割低くなった一方で、猫はほぼ変わらなかった。(2023年11月29日毎日新聞)

新生児用のRSウイルスワクチンを承認へ 妊婦に接種、肺炎を予防
新生児や乳児の重い肺炎を防ぐための、妊婦向けのRSウイルス(RSV)ワクチンの製造販売承認を了承した。高齢者向けワクチンは9月に承認されていたが、新生児や乳児用はなかった。了承されたのは、米ファイザー社のワクチン(販売名・アブリスボ筋注用)。RSVによる感染症は、ほぼ全ての子どもが2歳までにかかるとされる。多くは発熱や鼻水など風邪のような症状が数日続く程度で終わるが、新生児や乳児、高齢者では、肺炎で重症化し、亡くなることもある。妊娠24週~36週の妊婦に1回接種する。ワクチンによりできた抗体が、母体から胎児に移行することで、新生児や乳児のRSV感染症による肺炎などを予防する。治験の結果では、接種した妊婦から生まれた赤ちゃんでは、重症化を予防する効果は生後3カ月以内で81・8%、同半年以内で69・4%だった。(2023年11月28日朝日新聞)

緊急避妊薬の試験販売開始 処方箋なしで購入可能
望まない妊娠を防ぐために性交後に服用する「緊急避妊薬(アフターピル)」について、医師の処方箋なしでの試験販売が28日始まった。日本薬剤師会は同日、全国145の販売薬局のリストを公開。準備の整った薬局から順次、購入できるようになる。試験販売は厚生労働省から業務委託を受け各都道府県で2~3薬局が参加する。人口の多い東京、神奈川、大阪では店舗を多くした。購入を希望する場合は事前に電話連絡する。想定されている価格は7千~9千円程度。研究への参加に同意する16歳以上が購入可能で、18歳未満は保護者の同伴と同意が必要となる。緊急避妊薬はノルレボ錠とジェネリック医薬品(後発薬)のレボノルゲストレル錠。性交後72時間以内に飲むと妊娠を高確率で回避できる。(2023年11月28日共同通信社)

歩行「1日60分以上」、筋トレ「週2~3回」
成人は1日60分以上の歩行、筋トレは週2~3回、厚生労働省の専門家検討会は、健康づくりのために推奨される身体活動・運動の目安となるガイド案を10年ぶり改訂した。ガイド案は、成人は「1日60分(1日約8千歩)以上」、高齢者は「1日40分(1日約6千歩)以上」を推奨する。一定の負荷のかかる筋力トレーニングは、成人、高齢者ともに「週2~3回」を推奨。高齢者は、ダンスやラジオ体操、ヨガなども含め、安全に配慮し転倒などに注意する。筋トレの実施により、死亡や心血管疾患、がん、糖尿病などのリスクが、10~17%低くなるとの報告もある。子どもは、国内でのデータが乏しいため、少し息があがる程度の活動を「1日60分以上」や、有酸素運動など強めの活動を「週3日以上」とする世界保健機関(WHO)のガイドラインの推奨内容を参考として示した。(2023年11月27日 朝日新聞)

急増する働き盛りの帯状疱疹
ぴりぴりとした痛みとともに、発疹が帯状に広がる「帯状疱疹(ほうしん)」。過度なストレスや免疫力の低下により50代以上で発症する人が多いが、ここ数年は20~40代の患者が増えているという。帯状疱疹の原因は、水ぼうそうを起こす水痘・帯状疱疹ウイルスだ。水ぼうそうが治った後も、ウイルスは体内に潜伏し続ける。数十年後に上半身や顔などに帯状の赤い発疹や水ぶくれ、刺すような痛みが出る。80代までに、3人に1人が発症すると言われる。国内では全ての世代で発症する人が増えており、1997年から2020年の間に発症率は1・8倍に増えた。特に、最近は20~40代での増加が目立っている。(2023年11月23日朝日新聞)

新型コロナ、ワクチンで死者9割以上減
新型コロナウイルスワクチンの接種によって、国内の2021年2~11月の感染者と死者をいずれも90%以上減らせたとの推計結果を京都大のチームがまとめた。この期間の実際の感染者は約470万人と推計され、死者は約1万人だったが、ワクチンがなければ、それぞれ約6330万人と約36万人に達した恐れがあるとしている。接種によって感染者数を92・6%、死者数を97・2%減らせたと推計。接種した人の感染が防がれると、その人が感染させる人も減る効果が特に大きかった。(2023年11月17日共同通信社)

20~39歳の若年がん患者、8割が女性
国立がん研究センターと国立成育医療研究センターは15日、小児や15~39歳の思春期・若年(AYA)世代のがん患者のデータを集計し、20~39歳の若年がんの約8割を女性が占めていたとの調査結果を公表した。特に乳がんや子宮頸がんが多く、4年前の初回調査と同じ傾向だった。多いがんの種類や患者の性別は、年齢によって傾向が異なっていた。両センターは、がん検診や子宮頸がんを防ぐヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種によって、乳がんや子宮頸がんを予防することが引き続き重要としている。AYA世代で多かったがんの内訳は、女性では乳がん34、2%、子宮頸がん、子宮がん25、4%、男性では結腸、直腸がん28、1%、甲状腺がん14、4%だった。(2023/11/15 毎日新聞)

肥満症治療薬「ウゴービ」保険適用に
肥満症の治療薬について厚生労働省は公的医療保険の適用対象にすると決めた。22日から適用される。公定価格の薬価は量によって5段階が設定され、1回あたり1876円、3201円、5912円、7903円、1万740円となった。対象は高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のいずれかの病気があり、肥満度を測る指標のBMIが35以上か、27以上で肥満に関する健康障害が二つ以上あるといった条件を満たす患者。週1回注射する。医療機関側にも一定の要件が設けられた。(2023年11月15日)

エクソソーム治療規制を 
日本再生医療学会は10日、「エクソソーム」と呼ばれる細胞が分泌する微粒子を用いた美容目的の自由診療が急速に拡大しているとし、国の規制の対象とするよう求めた。同日の厚生労働省の再生医療評価部会で、学会の提言を報告した。エクソソームは、カプセル状で細胞由来の多様なタンパク質が含まれている。多くの病気への治療に役立つと期待され、国内外で実用化に向けた研究が進む一方、老化防止をうたう美容クリニックで手軽さを売りに投与する自由診療が広がっている。エクソソームは細胞ではないので再生医療安全性確保法の対象外。報告では、管理が不十分な状態で投与した場合、敗血症など細胞加工物と類似の重篤な事故が起こるリスクがあると指摘。海外でもクリニックにおける安易な投与が問題視されているとした。学会は、再生医療の名目で自由診療が広がっている現状を踏まえ、国による製造過程の確認などの規制が必要と強調。同学会は「まったく規制がなく野放しなのはいかがなものか」と、ガイドラインの作成が急務と訴えた。(2023年11月13日配信共同通信社)

チクングニアに初ワクチン、蚊媒介の感染症
米食品医薬品局(FDA)は9日、蚊が媒介するウイルス感染症「チクングニア熱」に対する初のワクチンを迅速承認した。フランスの企業バルネバが開発、臨床試験では防御効果を期待できる免疫反応が得られた。今後、実際に病気を防げることが示されれば本承認となる。チクングニア熱は米国のほか、アフリカや東南アジアなどの熱帯・亜熱帯地域を中心に110カ国以上で発生。蚊に刺されて4~7日で激しい関節痛や発熱が現れる。病名は初確認されたアフリカ・タンザニアの言葉で「(痛みで)体をよじる」が由来。特効薬はなく、予防法は虫よけのみだった。ワクチンの接種対象は18歳以上で、流行地域を訪れるなどウイルスにさらされるリスクの高い人。1回、筋肉注射する。遺伝子の一部を欠損させ病原性を弱めたウイルスが基になっており、臨床試験では頻度は低いがチクングニア熱に似た症状が出る人もいた。多くの人で接種後1週間は血中にワクチンのウイルスが混ざる。妊婦に接種した場合に、新生児に悪影響を及ぼすかどうかは不明という。(2023年11月13日配信共同通信社)

肥満症薬を承認 食欲抑え体重減効果注目
米食品医薬品局(FDA)は8日、米製薬大手イーライリリーが開発した肥満の治療薬を承認した。この薬はすでに糖尿病治療薬として承認されているが、同様のタイプの肥満症治療薬とともに、食欲を抑え体重を減らす効果が注目され、売り上げが急増している。新たに承認されたのは「ゼップバウンド」。糖尿病治療薬としては「マンジャロ」という製品名で承認されていた。血糖値を下げたり、満腹感を感じやすくさせたりすることで、体重を減らすことが期待されている。対象は、肥満度を測る指標として使われるBMIが30以上か、BMIが27以上でかつ高血圧など体重に関連する症状が少なくとも一つ以上ある成人。カロリーを抑えた食事と運動の増加も同時に実施する。臨床試験では、糖尿病ではない成人の場合、参加者の当初の体重は平均105キロ、BMIは38だったが、最も多い用量を注射したグループでは偽薬を注射したグループに比べて体重が18%減ったという。(2023年11月9日 朝日新聞)

コロナなど四つ同時検査 インフルにRSも
富山大のチームは、新型コロナウイルスの他に二つの型のインフルエンザとRSウイルスの計四つの抗原を同時に検出できる検査キットを開発した。1回の検体採取で済み、患者の負担軽減が期待できる。チームは「RSウイルスは子どもの感染が多く、小児医療現場で役立つ」としている。共同開発した東洋紡(大阪市)が厚生労働省の製造販売承認を得ており、10月末から医療機関や検査施設向けに販売を始める。同社によると、4種類を同時に検出できるキットの承認は国内初。いずれも呼吸器系の感染症で症状が似ている新型コロナとA型、B型のインフルエンザ、RSウイルスの4種類を約15分で検出可能で、医療従事者の作業効率向上にもつながる。(2023年10月25日配信共同通信社)

牛乳を飲むほど骨折が増える
乳製品摂取量と大腿骨近位部骨折の発生リスクとの関連を調べた。牛乳摂取量の増加は骨折リスクの増大と関連するものの、ヨーグルトとチーズは摂取量が多いほど骨折リスクが低減したことを、米国・メリーランド大学のSuruchiMishra氏らが報告した。Journal of Nutritional Science誌2023年9月11日号の報告された。1946~2021年12月に英語で発表された、乳製品摂取量と骨折リスクに関する前向きコホート研究を検索した。解析には13件の研究から成人48万6,950人、骨折1万5,320件を含めた。牛乳の摂取は、400g/日まで段階的に大腿骨近位部骨折のリスクを増大させ、用量効果として200g/日当たり7%のリスク増大と関連していた。牛乳摂取量が0g/日群と比較して、400g/日群では大腿骨近位部骨折のリスクが最も高かったヨーグルト250g/日当たり大腿骨近位部骨折リスクが15%低下するという逆相関が得られたチーズ摂取に関する5研究の分析では、チーズ43g/日当たり大腿骨近位部骨折リスクは19%低下した。なお、小児のデーター解析は今後の課題となる。 (2023年10月23日 ケアネット)

アセトアミノフェンの処方拡大へ、心不全などの禁忌解除
セトアミノフェン含有製剤の添付文書について、2023年10月12日、厚生労働省が改訂を指示し、「重篤な腎障害のある患者」「重篤な心機能不全のある患者」「消化性潰瘍のある患者」「重篤な血液の異常のある患者」及び「アスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛剤による喘息発作の誘発)又はその既往歴のある患者」の5集団に対する禁忌解除を行った。添付文書における禁忌への記載が、成書やガイドラインで推奨される適切な薬物治療の妨げになっていたことから、今年3月に日本運動器疼痛学会が禁忌解除の要望を厚生労働省に提出していた。アセトアミノフェン[経口剤、商品名:カロナール原末ほか]、アセトアミノフェン[坐剤、同:カロナール坐剤小児用50ほか]、アセトアミノフェン[注射剤、同:アセリオ静注液1000mgバッグ]、トラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン配合剤[同:トラムセット配合錠ほか]、ジプロフィリン・アセトアミノフェン等配合剤[同:カフコデN配合錠] (2023年10月16日 ケアネット)

RSウイルスワクチン承認 60歳以上対象、国内初
厚生労働省は25日、英製薬大手グラクソ・スミスクラインが開発したRSウイルス感染症のワクチン「アレックスビー」の製造販売を承認した。60歳以上が対象。この感染症のワクチンは国内初となる。ほとんどの人が幼いうちに一度は感染し、発熱やせきといった風邪の症状が出る。生涯に何度も感染し、乳幼児や、免疫の働きが低下した高齢者では、重症化して肺炎などになるリスクがある。日本では毎年、60歳以上の約6万3千人が入院し、約4500人が死亡しているとの推計もある。承認されたのは、ウイルスの一部を基に作った組み換えタンパクワクチンで、筋肉注射する。年に1回の接種で発症を予防。臨床試験(治験)では有効性82・6%との結果が出た。(2023年9月26日配信共同通信社)

特定のワクチン接種でアルツハイマー病リスクが低下する可能性
特定の成人用ワクチンには、アルツハイマー病の発症リスクを低下させる効果があるようだ。帯状疱疹ワクチン、肺炎球菌ワクチン、破傷風およびジフテリアの二種混合(Td)ワクチン、またはこれらに百日咳を加えた三種混合(Tdap)ワクチンを接種した人では、これらのワクチンを接種していない人と比べて、アルツハイマー病の発症リスクが25~30%低下していたことが、米テキサス大学健康科学センターのPaulSchulz氏らによる研究で明らかにされた。Schulz氏らは2022年に、インフルエンザワクチンを1回以上接種した成人では、同ワクチンを接種したことのない成人と比べてアルツハイマー病を発症するリスクが40%低下していたとする研究結果を報告していた。今回の研究で、165万1,991人の患者の医療記録データを解析し、成人期の定期接種が推奨されている帯状疱疹ワクチン、肺炎球菌ワクチン、Tdワクチン、Tdapワクチンを接種した人と未接種の人の間でのアルツハイマー病の発症率を比較した。患者は、2年間の振り返り期間には認知症がなく、8年間の追跡期間の開始時点で65歳以上だった。その結果、TdapまたはTd(以下、Tdap/Td)ワクチン接種者ではワクチン接種者では未接種者に比べてアルツハイマー病の発症リスクが30%低いことが示された。また、帯状疱疹ワクチンでは25%、肺炎球菌ワクチンでは、27%低下していた。なお、研究グループによると、アルツハイマー病の新たな治療薬として注目されている3種類の抗アミロイド抗体を使用した場合、それら3剤がアルツハイマー病の進行を抑制させる効果は、それぞれ25%、27%、35%であるという。ワクチンは、免疫細胞によるアルツハイマー病に関わるタンパク質除去の効率を高めたり、それらのタンパク質に対する免疫反応を強化し、周囲の健康な脳細胞への『付随的損傷』を軽減したりすることで、その蓄積に対する免疫システムの反応を変化させる可能性がある」と説明している。(HealthDay News 2023年09月25日)

新型コロナワクチン追加接種とインフルワクチンの同時接種
コロナワクチン単独接種群と比較して、コロナ+インフルワクチン同時接種群では統計学的な有意差はなく、副反応リスクも同程度であったことを、イスラエル・Sheba Medical CenterのTal Gonen氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2023年9月5日号掲載し報告した。コロナワクチンとインフルワクチンの同時接種は、単独で接種した場合と比較して有効性および安全性が劣らないという報告があることなどから現在は実施可能となっている。しかし、多くの報告はコロナワクチンの初回接種を評価したものであり、オミクロンBA.4/5変異株対応2価ワクチンの追加接種でのデータは乏しい。そこで研究グループは、すでにコロナワクチンを接種している集団における反応原性および免疫原性を比較するために前向きコホート研究を行った。対象は、Sheba Medical Centerに勤務する医療者で、2022-2023シーズン中のインフルエンザワクチン(アボット)とオミクロンBA.4/5変異株対応2価ワクチン(ファイザー/BioNTech)のどちらか、またはその両方を接種した。ワクチン接種後の副反応の発現率(局所症状[疼痛、腫脹、発赤など]、全身症状[発熱、頭痛、筋肉痛、倦怠感など])とその持続期間、免疫原性解析として新型コロナウイルス抗スパイクIgG抗体価を調べた。ワクチン接種は2022年9月に開始し、2023年1月までデータを収集した。ワクチン接種後の局所症状の発現率は、コロナワクチン群で49.4%38、インフルワクチン群で34.5%、同時接種群で52.1%であった。全身症状は、コロナワクチン群で27.4%、インフルワクチン群で12.7%、同時接種群で27.6%に発現した。これらの結果より、コロナワクチンの単独接種と比較して、コロナ+インフルワクチン同時接種は免疫反応の大幅な低下や有害事象の頻発とは関連しておらず、これらのワクチンの同時接種を支持するものであるとまとめた。(ケアネット 2023年09月22日)

コロナ1~2割が後遺症あり、ワクチン接種者で少ない
2020年1月~22年9月の感染者と非感染者を対象にした。約5万3千人分の有効回答より、新型コロナウイルス感染後に症状が長引く後遺症について、厚生労働省は成人の感染者の11・7~23・4%に後遺症を認め、ワクチン接種をしていた人は未接種者に比べて後遺症の発現頻度が少なかったと公表した。ワクチン接種者は未接種者に比べて、後遺症が出た割合は約25~55%少なかった。子どもで後遺症が出た割合は成人より少なく、感染者の6・3%だった。主な症状は疲労感や倦怠感、せき、集中力低下など。オミクロン株流行期はそれ以前より発症頻度は低かった。後遺症の定義は世界保健機関(WHO)に合わせ、感染から3カ月たってもみられ、少なくとも2カ月以上続いた症状とした。 (2023年9月19日配信共同通信社)

オリーブ油の摂取で認知症の死亡リスク低下
オリーブ油の愛用者は、オリーブ油をほとんど摂取しない人に比べて、今後30年間で認知症により死亡するリスクが25%低いことが明らかになった。米ハーバード大学公衆衛生大学院によるこの研究によるとオリーブ油が心血管の健康や死亡リスク、認知機能に有益なことは過去の研究で示唆されている。しかし、オリーブ油が食生活全体とは無関係に、認知症による死亡リスクの低下と関連しているのかは明らかになっていない。参加女性6万582人と、Health Professionals' Follow-Up Studyへの参加男性3万1,801人を対象に、オリーブ油の摂取と認知症による死亡との関連を検討した。ベースライン(1990年)時の対象者の平均年齢は56±8歳で心血管疾患やがんに罹患している人はいなかった。28年にわたる追跡期間中に、4,749人が認知症により死亡していた。1日に大さじ半分超(>7g/日)のオリーブ油を摂取していた人では、オリーブ油を全く、オリーブ油の摂取と食事の質との間に、認知症による死亡リスクに影響を与える交互作用は認められなかった。また、1日5gのマーガリンやマヨネーズを同量のオリーブ油に置き換えることで、認知症による死亡リスクが5?12%低下することも示された。他の植物油やバターをオリーブ油に置き換えても同リスクの有意な低下は認められなかった。(2023年09月4 日HealthDay News)

乳幼児定期接種5種混合へ
4種混合は百日ぜき、ジフテリア、破傷風、ポリオ予防のワクチン。ヒブは感染すると肺炎や敗血症などを発症する場合があり、2013年にワクチンが定期接種に導入された。いずれも基本的には計4回打つ必要があった。5種混合が現行ワクチンと比較して安全性や有効性が同等であり、接種費用も抑えられる見込みであるとして、事務局が導入案を提示。委員からは、打ち損ねると5種全ての感染症に対する免疫ができないとして「しっかりと周知し、打てなかった人へのサポートが必要」との意見が出た。メーカー側は来年4月には5種混合ワクチンを供給できるとの見解を示した。(2023年8月30 日配信共同通信社)

RSVワクチン60歳以上向け承認へ
発熱やせきなど風邪の症状を引き起こすRSウイルス(RSV)について、60歳以上向けワクチンを厚労省担当者は「準備が整えば速やかに承認する」と説明している。国内初のRSV感染症ワクチンとなる。RSVは、ほとんどの人が幼いうちに一度は感染するが、免疫の働きが低下した高齢者が感染した場合、肺炎などを起こし重症化するリスクが高い。日本では高齢者の年間約6万3千人の入院と約4千人の死亡につながるとの推計もある。開発されたワクチンはRSVの一部を基に作った組み換えタンパクワクチンと呼ばれるタイプ。臨床試験では有効性82・6%との結果が出ていた。(2023年8月29日 配信共同通信社)

筋トレは1日3秒、週3日で効果あり
新潟医療福祉大学とオーストラリア・Edith Cowan Universityの研究グループは、1日3秒、週3日の全力の伸張性収縮(重りをゆっくりと降ろすなどの運動)を4週間実施することで、筋力が増加することを明らかにした。健康な大学生26人を対象として、全力の伸張性収縮を1日3秒週2日実施する群(週2日群)と、1日3秒週3日実施する群(週3日群)と、1日3秒週5日実施する群(週5日群)で4週間実施した。4週間後に短縮性収縮と等尺性収縮、伸張性収縮時の最大筋力の変化を3群で比較した。また、上腕二頭筋、上腕筋の筋厚も比較した。結果は、先行研究において1日3秒、週5日のトレーニングを4週間実施した群(週5日群)1)とも比較した。結果は、週2日群は最大筋力に有意な変化はみられなかった。週3日群は短縮性収縮および伸張性収縮時の随時最大筋力が有意に増加した。週5日群では短縮性収縮および伸張性収縮時の最大筋力が有意に増加し週3日群よりも大きかった。著者らは「1日3秒の全力の伸張性収縮によって筋力増加効果を得るためには、少なくとも週3日のトレーニングが必要で、1週間当たりのトレーニング日数が多いほど、大きな筋力増加効果が得られるとした。(2023年08月23日 ケアネット)

乳児用RSVワクチン承認 (米国)
米食品医薬品局(FDA)は21日、ファイザーが開発した乳児のRSウイルス感染症予防ワクチンを承認した。妊娠32~36週の女性に注射し、体内でできた抗体を胎児に渡すことで、出生後に肺炎や気管支炎になるのを防ぐ。日本でも承認申請中。RSウイルスは2歳までにほぼ全員が感染する。多くは風邪のような症状で済むが、免疫が弱い乳児では症状が重くなることがある。日本では推定で1歳以下の乳幼児が年12~14万人、このウイルスの感染症と診断され、患者の4人に1人は入院が必要になる。臨床試験には妊婦約7千人が参加した。接種を受けた集団では子どもが生まれてから半年までの重症化を69・4%抑えた。(2023年8月22日 共同通信社)

アルツハイマー新薬「レカネマブ」
軽度の患者に対するアルツハイマー病(AD)治療薬「レケンビ点滴静注」(一般名:レカネマブ)を承認した。レカネマブはアミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル(PF) に選択的に結合し、ミクログリアによる食作用を介してこれを除去することにより、早期ADによる軽度認知症患者の進行を抑制することが期待される。通常、10mg/kg を2週間に1回、約1時間かけて点滴静注する。認知症の原因物質に直接作用する医薬品としては初めて。ただし、進行を遅らせる薬でアルツハイマー病を治す薬ではない。(2023年8月21日 m3.com)

急増するホスピス型住宅
末期がんや難病の患者らに特化した介護施設「ホスピス型住宅」が急増している。高齢者が終末期を過ごす「看取り(みとり)」の受け皿が不足しており、開設ペースが速まる要因になっている。厚生労働省によると2022年の国内死亡数は156万8961人で、21年の143万9856人より12万9105人増加と過去最高を更新した。死亡数の9割は70歳以上の高齢者だ。同居して介護する世帯のうち、高齢者の介護を別の高齢者が担う「老々介護」の割合も6割を超える。夫婦や親子だけで看取りを進めるのは限界がある。そこで、受け皿として期待されているのがホスピス型住宅だ。入居者はがんの末期状態の患者や国指定の難病患者など医療的依存度の高い人に限定されている。病院にいるような安心感のある「自宅」の位置づけで、外出や飲食、家族と過ごす時間を持つなど、人生の最後を自由に設計できる。看護師は痛みの評価をして医師の指示のもと医療用麻薬の投与をするほか、点滴、気管内吸引、排痰ケア、人工呼吸器の管理などができる。利用者側の費用負担はどの程度になるのか。一般的には、入居費用は月額10万~20万円で、1~3割の自己負担の介護費や医療費を足し、月額20万~50万円程度。これに余命月数を掛け合わせた金額が総額となる。 (2023年8月19日日本経済新聞)

オミクロン株派生型「EG・5」 、世界で拡大
新型コロナウイルス・オミクロン株の新しい派生型「EG・5」の感染が世界各地で広がっている。専門家によると、これまで流行の主流だった派生型「XBB」よりも感染力がやや強いと見られ、日本でも置き換わりが進む可能性がある。日本で秋以降のワクチン接種に使われるのは「XBB・1・5」に対応した製品になる見込みだ。EG・5とXBB・1・5の構造は似ているとされ、ワクチンの効果はEG・5にも期待できると思われる。

看取り士、24時間態勢でサポート
余命を宣告された人とその家族が希望する最後を過ごせるようにサポートする「看取(みと)り士。「みとり期」と言われる余命1カ月から死後の「お別れ期」まで、本人と家族の不安に寄り添い安心を届ける「看取り士」は民間資格で、2012年に設立された。「日本看取り士会」の講座を一定時間受けると取得できる。全国に約2300人おり、60カ所の拠点がある。活動内容は主に自宅でみとられたい依頼者や親族を支えるために葬儀などを含めて相談に応じ、24時間態勢で待機する。ボランティアと組んで見守りに訪れ、当事者と親族の間に入り、命と向き合う機会をサポートする。近年は新型コロナウイルスの影響で病院や施設では面会が制限され「自宅で最後を迎えたい」との声が増えているという。 (2023年8月18日山陰中央新報)

英国の子宮頸がん予防(HPV)ワクチン、1回接種に移行
イングランドにおけるヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種プログラムは、2023年9月より1回接種に移行すると英国健康安全保障庁(UKHSA)が発表した。HPVに関連するがんの予防には1回接種でも2回接種と同等の有効性があることが示された。この結果を受け、イングランドの12歳から13歳の若年者たちは、2回接種ではなく1回接種を受けるようになる.。なお、2019年からは、女子だけでなく男子にも投与されるようになっている。およそ10人に8人が、一生のうちにいつかはHPVに感染する。HPV感染は、多くの人にとって問題にならないが、特定の「ハイリスク」タイプのHPVに感染した場合は、がんにつながる可能性がある。HPVは子宮頸がんの主要な原因であり、同様に膣、外陰部、陰茎、肛門から生じるがんの主原因でもある。また、一部の頭頸部がんにも関連している。HPVワクチンは、特にリスクが高いとされるタイプのHPV感染を予防するための効果的な方法である。1回接種への移行は、予防接種・免疫合同委員会(JCVI)による数年にわたるエビデンスレビューを受けて決定された。世界保健機関(WHO)の予防接種の専門家からなる戦略諮問委員会(SAGE)も支持しており、SAGEは2022年4月に「HPVワクチンの1回接種がHPVに対して確実な予防効果をもたらす」と結論付けるレビューを発表している。(2023年8月17日 キャンサーリサーチU K)

頭頸部がんに光免疫療法、 胃や食道でも治験
がん細胞にくっつく抗体を利用して、光を当ててがん細胞だけを殺す「光免疫療法」が2020年に世界に先駆けて日本で頭頸部(けいぶ)がんを対象に薬事承認された。今年7月末時点、大学病院など42都道府県の100余りの医療機関で保険診療で受けられる。米国立衛生研究所(NIH)の日本人研究者が開発したNIHの小林久隆(主任研究員)によると、がん細胞の表面に多く現れている抗原「上皮成長因子受容体(EGFR)」にくっつく抗体と、近赤外線に反応する光感受性物質を組み合わせた薬剤を点滴で患者に投与する。薬剤はがん細胞だけに結合し、翌日に近赤外線を照射すると、光のエネルギーで抗体の形が変わり、細胞膜を傷つけ、がん細胞が瞬時に破裂する。胃や食道などほかのがんでの治験も進められている。一見、がん細胞だけを選択的に殺す分子標的薬と似ているが、異なるのはその殺し方だ。細胞内への信号や免疫を介した生物学的な殺し方と違って、この療法は物理的に細胞膜を破壊する。細胞内のがん抗原が放出され、それを見つけた付近の免疫細胞が活性化し、残ったがん細胞を攻撃することが動物実験で確かめられている。「がんを直接殺しながら、がんに対する免疫を増強する点が、ほかのがん治療と異なる」と小林さんは強調する。(2023年8月15日配信共同通信社)

肥満症、治療の基本は食事と運動で 新薬も登場
日本では、体重(キロ)を身長(メートル)の2乗で割った体格指数(BMI)が25以上で肥満、35以上で高度肥満とされる。肥満の人の割合は世界の中では低いが、増えている。厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、BMI25以上の人の割合は2009年の24・3%から19年は26・3%となっている。特に50代と60代の男性で増加が目立つ。日本肥満学会の診療ガイドラインでは、減量目標を3~6カ月で現体重の3%、高度肥満症は5~10%としている。治療の基本は、食事療法と運動療法。食事療法と運動療法で十分な効果がでない人は、今年3月、新しい肥満症治療薬「ウゴービ」(一般名セマグルチド)が薬事承認された。「GLP―1」というホルモンと似た構造でインスリンの分泌を促す作用があり、食欲を抑え、腸の動きを少なくする作用がある。ただし、自由診療で肥満症ではない人に使うクリニックがある。急性膵炎など重い副作用が出る場合もあり、厚生労働省や消費者庁、国民生活センターが注意を呼びかけている。(2023年8月13日朝日新聞)

睡眠中のアロマセラピー、高齢者の記憶を200%超改善
認知機能障害や認知症のない60~85歳の男女43人を対象とした。睡眠時にエッセンシャルオイルの香りに曝露する群(嗅覚刺激群)、微量の匂い物質の香りに曝露する群(対照群)に1対1の割合で無作為に割り付け、6ヵ月間嗅覚刺激を実施した。嗅覚刺激群は、7種類のエッセンシャルオイルを用いて、毎晩1種類ずつ2時間曝露した。対照群は、同様に微量の匂い物質の香りに曝露した。ベースライン時と6ヵ月後において、神経心理学的評価と機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いた脳機能の解析を行った。記憶機能は、ReyAuditory Verbal Learning Test(RAVLT)を用いて評価した。また、Wechsler Adult IntelligenceScale 3rd edition(WAIS-III)を用いた知能検査も実施した。結果は、、嗅覚刺激群は対照群と比較して226%の有意な改善が認められた(p=0.02)。 (2023月08月1日ケアネット)

脳卒中予防のアスピリン、健康な高齢者ではむしろリスク増
低用量アスピリンは、脳卒中の予防に広く用いられているが、高齢者においては、脳卒中の有意な減少は認められず、むしろ頭蓋内出血が有意に増加したという結果が示された。
オーストラリア・メルボルンのモナシュ大学の研究で、参加者は米国とオーストラリア在住の心血管疾患の既往のない70歳以上の高齢者で1万9,114例、女性1万782例(56.4%)、年齢中央値74(IQR:71.6~77.7)歳がアスピリン投与群(毎日100mg・9,525例)とプラセボ群(9,589例)に1対1で割り付けられた。脳卒中を含む頭蓋内イベントの発生率は、低く、1,000人年あたり5.8人であった。虚血性脳卒中は、アスピリン群146例(1.5%)、プラセボ群166例(1.7%)で発生し、両群のリスクに統計学的有意差はなかった。出血性脳卒中は、アスピリン群49例(0.5%)、プラセボ群は37例(0.4%)で発生し、こちらも有意差は見られなかった。出血性脳卒中を含む頭蓋内出血の合計は、アスピリン群はプラセボ群より有意に増加していた。研究者らは「低用量アスピリンの連日投与による虚血性脳卒中の有意な減少は認められない。一方、頭蓋内出血は有意に増加していた。これらの所見は、転倒などで頭蓋内出血を発症しやすい高齢者に対しては、アスピリン使用に配慮する必要があることを示すものだ」としている。 2023年08月8日ケアネット

コロナワクチンの秋接種、9月20日開始
接種可能な全ての年代を対象とする新型コロナウイルスワクチンの秋接種を巡り、厚生労働省は6日までに、現在流行の主流となっているオミクロン株派生型「XBB」に対応した1価ワクチンを使い9月20日から始めると、都道府県などに周知した。XBB対応品の対象を生後6カ月以上として承認申請している。(2023年8月7日毎日新聞)

新型コロナ感染、5人に1人無症状
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患すると、大多数に咳や喉の痛みなどの症状が現れるが、約5人に1人では何の症状も現れない。これは、ある遺伝的バリアント(変異)が関与しているようだ。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)神経学および疫学・生物統計学分野教授のJillHollenbach氏らによる研究で、HLA(ヒト白血球抗原)-B遺伝子の特定のアレル(対立遺伝子)を保有している人では、新型コロナウイルスに感染しても症状の現れない可能性が、保有していない人の2倍以上であることが示された。Smith氏は、「ウイルスに対するより効果の高いワクチンを作るためには、HLAがどのようにして鍵となるウイルスのペプチドを認識するのかの理解を深めることが重要だ。私には、HLAの遺伝子型のように、遺伝子によって免疫反応を最大限に高めるために受けるべきワクチンを決めるような世界が想像できる」と述べている。(2023年8月4日HealthDay News)


 最新の医療情報         たはら整形外科