血液疾患について



インターフェロン、肝炎治療用に造血制御の機能 白血病治療応用に期待

肝炎などの治療に使われている「1型インターフェロン(IFN)」に、赤血球や白血球など血液細胞の源である造血幹細胞の増減を制御する機能があることを、樗木俊聡・東京医科歯科大教授と佐藤卓・秋田大助教が発見した。慢性骨髄性白血病治療への応用などが期待できるという。1日付の米医学誌ネイチャー・メディシン電子版に発表した。造血幹細胞は通常、分裂しない休眠状態だが、何らかの刺激で活性化すると1個の造血幹細胞が新たな造血幹細胞1個と血液前駆細胞1個に分裂する。この前駆細胞が赤血球などの血液細胞になる。 研究チームは、1型IFNが過剰に働くマウスで、造血幹細胞の働きに異常が生じることに着目。1型IFNの分泌を誘発する薬剤をマウスに投与して調べた。その結果、薬剤を一度だけ投与すると、休眠中の造血幹細胞の働きが活発化し、前駆細胞と新たな造血幹細胞を大量に作った。だが、1日おきに3度の投与では、造血幹細胞は前駆細胞2個に分裂し、造血幹細胞の数が減った。慢性骨髄性白血病は、異常な造血幹細胞である「白血病幹細胞」が原因だ。抗がん剤治療は、増殖する白血病幹細胞を標的にするが、休眠状態でいると効果は低い。樗木教授は「治療前に1型IFNを投与し白血病幹細胞の増殖を促せば、抗がん剤の効果を高められるのではないか」と話す。(平成21年6月1日 毎日新聞)

末梢血幹細胞移植、52人が提供後に健康悪化

健康な人から、血液のもとになる造血幹細胞を採取して白血病などの患者に移植する末梢(まっしょう)血幹細胞移植で、提供後に、くも膜下出血を起こすなど提供者の健康が悪化した例が52件あったことが日本造血幹細胞移植学会の調査で29日、分かった。 因果関係は不明だが、細胞を増やす目的で、提供前に投与する薬剤の副作用の可能性もあるという。 学会は移植の安全性を確認するため、病院に5年間、提供者の健康状態の報告を求めている。2000年から昨年末までの調査で、232施設から3143例の移植報告が集まり、1.7%に当たる52例の提供後30日以内の健康悪化例が報告された。症状別では血小板減少症が13人、肝障害が11人と多い。死亡例はなかったが、くも膜下出血(1例)、間質性肺炎(2例)など死につながりかねない症例もあった。 30日を過ぎた後の中長期調査では、2例の白血病のほか、乳がん5例、甲状腺障害6例などが報告されたが、提供から発症まで時間がたっており、因果関係は低いと考えられるという。(平成17年1月29日 日本経済新聞)

さい帯血移植患者、生存率は軽度免疫反応で高い

白血病などで、さい帯血移植を受けた患者が病気が再発せずに生存する確率(無病生存率)は、移植されたドナーのリンパ球が患者の体を異物として攻撃する免疫反応「移植片対宿主病」(GVHD)が全くないより、軽度に発症した方が高いことが分かった。 日本さい帯血ネットワークがあっせんした2059例(11月末)のうち、約1000例の治療成績を分析した。調査した東海大の加藤俊一教授(細胞移植学)は「医療現場では経験として知られていた現象だが、具体的なデータで示されたのは初めてだ」としている。加藤さんらは、97〜03年に実施した白血病などの成人患者へのさい帯血移植706例を対象に、移植の回数や移植前に患者の骨髄を破壊した度合いなどの場合に分けた。 このうち、初移植で骨髄破壊した移植例265例で患者の無病生存率を、移植後に起きたGVHDの重さ(5段階)で比較した。湿しんや軽い下痢が起きる2度が30%で最も高く、軽い湿しんが起きる1度(23%)が続き、全く症状が出なかった0度(18%)より生存率が高かった。重症の3度(9%)と4度(8%)は成績が悪かった。GVHDはさい帯血と患者の白血球の型(HLA)の合致度が低いと起きることが多く、肝臓や消化管などの障害や湿しんを起こし、重症の場合は感染症を起こしやすくなり死亡率も高い。一方で、移植されたさい帯血のリンパ球は患者の体に残っているがん細胞を攻撃し、白血病の再発を抑える効果があることも知られている。加藤さんは「GVHDは強く起きると患者さんの全身状態が悪化するが、全く起こらなければ白血病が再発しやすくなる。GVHDはある程度あった方が良いということだ」と話している。(平成16年12月26日毎日新聞)

骨髄ドナー、登録を18歳に引き下げ

白血病などの患者に骨髄を提供するドナーの登録者数拡大策を話し合ってきた厚生労働省の造血幹細胞移植委員会は24日、ドナー登録の最低年齢を現行の20歳から18歳に引き下げることを決めた。提供可能年齢は20歳以上のままにするが、登録から提供までに必要な手続きをあらかじめ進めておくことで、ドナー探しの時間が短縮できる。来年3月にも実施する。また、これまでドナー登録時に求めていた家族の同意は必要ないとした。提供前に骨髄バンクが実施する最終面談で、家族の同意を得る。ドナーの上限を現行の50歳から55歳に引き上げる案も話し合われたが、「提供時の安全性が確認されていない」との理由で、来春まとまる厚労省研究班の調査結果を待つことにした。(平成16年12月24日 毎日新聞)

さい帯血移植の仲介組織 提供者の発症報告求める

へその緒や胎盤に含まれる「さい帯血」を提供した乳幼児がその後、白血病になった例があったことから、さい帯血移植の仲介組織「日本さい帯血バンクネットワーク」と厚生労働省は、提供した子が白血病などの血液疾患を発症した場合、診断した医師が同ネットワークに報告するシステムを作ることになった。日本医師会や関連学会に協力を要請する。 さい帯血は血球に育つ細胞を豊富に含み、白血病や再生不良性貧血などの治療に使われる。提供した子がその後、白血病になった例は従来、医師の自主的な報告で確認しており、同ネットによると、提供後2―6年後に白血病を発症した例が計3件あったという。いずれも治療には使われなかったが、厚労省は、仮に治療に使われた場合、患者が新たに白血病になる可能性もあるとみている。現在は、出生から6か月後、家族も含めて健康調査を行い、異常がなければ、さい帯血を移植用に登録している。ただ、白血病は生後6か月以降でも発症するため、関連団体の協力を求めることにした。報告があったさい帯血の廃棄についても今後、検討する。(平成16年12月13日 読売新聞)

臍帯血移植、2千例超す

白血病などの治療で97年に始まった臍帯血(さいたいけつ)移植が2千例を超えたことが、「日本さい帯血バンクネットワーク」のまとめで分かった。血液の病気では、骨髄移植と並ぶ有力な治療方法として急速に普及。小児を対象に始まった移植だが、現在は大人が約8割を占めるようになっている。出産時にへその緒や胎盤から取る臍帯血は、造血幹細胞が豊富で骨髄とともに血液の病気の治療に用いられている。97年2月に初めて臍帯血移植が行われ、千例に達したのが03年6月。骨髄移植と違い、提供者の負担が軽いことから、1年5カ月で、2千例に倍増した。03年以降、臍帯血移植希望者の8割を16歳以上の大人が占める。同ネットワークが約千人の移植患者を調査したところ、移植が成功して再発がない「無病生存率」は、治療後3年で16歳未満が約30%、16歳以上は約20%だった。(平成16年11月15日 朝日新聞)

臍帯血移植、子供へは骨髄移植に近い効果

15歳以下の子供への臍帯血移植は、病状によって骨髄移植に近い効果が得られることが16日、東京都内で開かれた日本さい帯血バンクネットワークの設立5周年記念大会で報告された。臍帯血移植は、赤ちゃんの臍の緒の血液から採れる造血幹細胞を白血病患者などに移植する治療法。1人の赤ちゃんから採れる量が少ないため、子供のための治療方法とされる。報告した加藤俊一・東海大教授(細胞移植学)によると、国内で実施された臍帯血移植は1940例。 このうち子供は460例で、5年生存率は全体で30%。 最も多い小児急性リンパ性白血病(ALL)では早期に移植すれば25%、次に多い小児急性骨髄性白血病(AML)も早期移植では4年生存率が63%に上った。 子供への骨髄移植の5年生存率は早期のALLで67〜69%、早期のAMLで45〜77%。加藤教授は「AMLに関しては骨髄移植に匹敵する。骨髄移植は準備に数カ月かかるが、臍帯血移植はすぐにでもできる。状況に応じて使い分けるべきだ」と話している。臍帯血移植は、成人では骨髄移植を補完する方法としてとらえられている。成人への臍帯血移植例は増えているが、実施されてからの期間が短いため、長期の生存率は示されなかった。(平成16年10月16日 毎日新聞)

白血病治療など、提供の危険ない臍帯血移植が急増

赤ちゃんのへその緒から危険なしに採れる臍帯血(さいたいけつ)を利用して白血病などを治療する非血縁者間の臍帯血移植が、03年度に前年度の2.4倍と急増し、非血縁者間の骨髄移植に件数でほぼ並んだことが、日本さい帯血バンクネットワークなどのまとめで分かった。治療の機会を広げているが、骨髄移植と比較できる成績などでは情報が少なく、同ネットは治療成績の公開などの検討を始めた。臍帯血や骨髄に含まれる造血幹細胞は、様々な血液細胞のもとになる。白血病などの血液病で造血幹細胞の移植が必要な患者は、年間2000人を超す。非血縁者間の臍帯血移植は5年前の98年度には約80件だったが、03年度には出産時の臍帯血採取が軌道に乗ったことなどから提供数が増え、移植件数も695件に急増した。非血縁者間の臍帯血移植は、国内では97年2月に初めて実施された。採取できる細胞数が少なく、当初は小児の白血病が治療の中心だった。その後、(1)増殖能力が高く一定量以上あれば大人にも移植可能(2)骨髄移植と違い白血球型(HLA)がぴったり一致しなくても生着率が大きく変わらない、などから大人への移植が増え、5年前は5%程度だったのが、03年度には約8割に達した。臍帯血バンクは全国で11カ所あり、わずか5年で急速に伸びてきたことから、移植した細胞の生着率や、移植後の生存率などを、統一した基準で把握できていない。このため、治療成績を骨髄移植と比較するのが難しい。同じ疾患でも病院や医師によって、骨髄か臍帯血かで、異なる道を選ぶ可能性が否定できない。骨髄移植は実施まで平均170日と時間がかかり、登録や検査などで数十万円かかるなど、患者負担が大きく、近年、非血縁者間の移植は年間750件前後と横ばい。臍帯血移植を希望する患者もおり、患者が治療法を選択する際の情報提供が不可欠となってきている(平成16年6月11日 朝日新聞)

骨髄移植後の白血病患者生存率、病院で大差

骨髄移植推進財団(骨髄バンク)のあっせんで非血縁者からの骨髄移植を受けた慢性骨髄性白血病患者の8年後の生存率に、病院によって20%から88%まで4倍以上の差があることが1日、分かった。 同財団が、実施件数が多い全国の七病院の成績を比較した。財団は、患者が生存率の高い病院を選べるよう病院の成績を公開したり、成績が低い病院の認定を取り消したりするなどの対策の検討を始めた。財団は「提供者からもらった貴重な骨髄をできるだけ有効に使うことがあっせん機関の責務」としており、今年度内に結論を出す。将来は、臍帯血(さいたいけつ)をあっせんしている「日本さい帯血バンクネットワーク」と共同で情報公開を進める方向だ。同財団は一定の基準を満たした128病院を移植施設に認定し、提供者からの骨髄をあっせんしている。(平成16年5月2日 日本経済新聞)

白血病に関連する遺伝子発見

慢性骨髄性白血病の発病にかかわる遺伝子を、京都大生命科学研究科の湊長博教授らが発見した。新しい治療薬の開発に役に立つという。22日付の米科学誌キャンサー・セルに発表する。 湊教授らは細胞の増殖に関係する「SPA1」という遺伝子を特定してその詳しい働きを研究。 この遺伝子が働かないネズミを作ったところ、生後1年を過ぎるころから慢性骨髄性白血病の症状を示し始め、さらに半年ほどたって急性骨髄性白血病になった。 中年以降に多く発病し、後に急性となる人間の慢性骨髄性白血病と同じような進み方だった。 SPA1が作るたんぱく質は、細胞増殖などの刺激を伝えるスイッチにかかわる。 これがないとスイッチが入りっぱなしになって細胞ががん化するとみられる。 人の慢性骨髄性白血病の9割以上は、染色体に異常が起きてできる異常たんぱく質が原因。 湊教授らは、この異常たんぱく質ができると、SPA1たんぱく質の量が減ることも突き止めた。 湊教授は「いま使われる薬は異常たんぱく質を標的にしているが、長く飲んでいると効かなくなることがある。 SPA1の働きを補う薬を開発すればより有効な治療ができるだろう」と話す。(平成15年7月22日 朝日新聞)


高圧送電線の電磁波、急性リンパ性白血病に集中して影響

文部科学省は28日、高圧送電線などから出る超低周波の電磁波(電磁界)と健康との関係を調べる全国疫学調査の最終解析の一部を公表した。昨年夏の中間解析で小児白血病の発症率増加が確認されたが、新たに「急性リンパ性白血病」に集中して影響していることが分かった。 「生活環境中電磁界による小児の健康リスクに関する研究」と題したこの調査は、国立環境研究所と国立がんセンターなどが、全国の主要な小児がん治療施設の協力で行った。 小児白血病と小児脳腫瘍(しゅよう)について、15歳未満の患者と、比較対照のための健康な子どもの計約2千人を対象に、子ども部屋の磁界の強さや送電線からの距離などを調べた。 この結果、小児白血病の中でも「急性リンパ性白血病」が、日常環境の4倍にあたる0.4マイクロテスラ以上の磁界で、発症率が2倍以上に増えることが確認された。一方、「急性骨髄性白血病」の発症率と磁界との関連は見られなかった。 小児脳腫瘍と電磁波との関連でも発症率の増加が見られた。(平成15年1月29日 朝日新聞)

電磁波を浴び続けると小児白血病の発症頻度が倍増

高圧送電線や家電などから出る超低周波(50〜60Hz)の電磁波を高いレベルで浴び続けると、小児白血病の発症頻度が倍増する可能性があることが分かった。国立環境研究所と国立がんセンターの研究班が、WHO(世界保健機関)の国際電磁波プロジェクトの関連研究として実施した国内初の疫学調査で判明した。調査対象は、15歳以下の健康な子ども約700人と白血病の子ども約350人。子ども部屋の電磁波の強さを1週間続けて測り、家電製品の使用状況や自宅と送電線の距離なども調べて、電磁波と病気の関連を見た。その結果、子ども部屋の電磁波が平均0.4マイクロテスラ以上の環境では、白血病の発症頻度が2倍以上になることが分かった。通常の住環境での電磁波は、平均0.1マイクロテスラ以下。携帯電話や電子レンジから出るのは、違う周波数帯の高周波の電磁波だ。電磁波と小児白血病の関係は70年代から指摘されてきた。WHOの国際がん研究機関(IARC)は、79年以降の9つの疫学調査結果や各国の研究結果を再検討し、01年、「0.4マイクロテスラを境に発症の危険が倍増する」との結論を出した。しかし、(1)脳腫瘍(しゅよう)や他のがんの増加はみられない(2)動物実験では発がん性の増加は認められない、とも指摘し、危険か安全かの議論は決着していない。 日本には電磁波を浴びる量を制限する規制はない。研究班によると、0.4マイクロテスラの環境にさらされているのは、日本では人口の1%以下とみられる。この調査を統括する総合推進委員会委員の志賀健・大阪大名誉教授の話 問題の環境下にいる子どもの数は、今回の調査では1ケタと少なく、リスク評価は慎重にしなければならない。本当に危険かどうかを確かめるため、幅広く研究を進める必要がある。(平成14年8月24日 毎日新聞)