目の病気

赤ワインで眼病予防を期待

赤ワインなどに含まれるポリフェノールの一種、レスベラトロールに、目の血管を拡張させる機能があることを、旭川医大の研究チームが突き止めた。成人の失明原因でトップを占める糖尿病網膜症をはじめ、血流障害による病気の予防効果が期待される。研究チームは、がんの抑制効果が報告されているレスベラトロールに着目。人が赤ワイン3〜4杯を飲んだ場合の血中濃度に相当するレスベラトロール溶液を作り、ブタの網膜血管を5分間浸して血管の直径を測定したところ、通常の状態から約1・6倍にまで拡張した。同様の効果は、血中のコレステロールを低下させる「スタチン」にもあるが、スタチンが血管内皮に作用するのに対し、レスベラトロールは、血管内皮とその外側にある平滑筋(へいかつきん)の両方に作用し血管を広げていた。研究チームの長岡泰司は「人間で同様の効果が得られるかどうか確かめ、目の病気を予防する薬の開発につなげたい」と話している。(平成19年4月21日 読売新聞)

ビタミンC、白内障を抑える効果

日ごろの食事でビタミンCを多くとっていると白内障になる率が低いとの結果が、厚生労働省研究班の調査で出た。白内障は目の中の水晶体が酸化されて濁ることで発症するが、ビタミンCには酸化を抑える作用があり、濁りを防ぐとみられるという。研究班は95年、岩手、秋田、長野、沖縄の各県に住む男性約1万6000人と女性約1万9000人を対象に調査した。摂取量で5グループに分けて比べると、男性で最多のグループ(1日のビタミンCが約210ミリグラム前後)は、最少のグループ(同約50ミリグラム前後)に比べ、白内障にかかる率が約35%低かった。女性でも最多のグループ(同約260ミリグラム前後)の発症率は、最少のグループ(同約80ミリグラム前後)より約41%低かった。吉田助手によると、ビタミンCは、温州みかん1個に約35ミリグラム、レモン1個に約20ミリグラム含まれる。野菜ではホウレンソウやブロッコリーに多い。吉田助手は「1種類でなく、さまざまな食べ物からビタミンCをとってほしい。たばこを1本吸うと約25ミリグラムのビタミンCが破壊されるため、白内障予防には禁煙が望ましい」と話している。ビタミンCをサプリメントでとった場合の効果は、今回検証していない。海外の研究でも結論は出ていないという。(平成19年2月27日 毎日新聞)

神経まひ性角膜障害、点眼で回復

神経まひ性の角膜障害に対し、神経伝達物質などから作った成分の点眼によって、治癒を促進させることに、山口大眼科の西田輝夫教授のグループが世界で初めて成功した。神経まひ性角膜障害は、三叉神経痛の手術後やヘルペス感染、コンタクトレンズ障害、糖尿病による神経障害などのせいで、角膜に潰瘍や欠損が生じる。従来の治療は、抗菌薬の点眼などをしながら角膜の自然治癒を待つにとどまり、重症の場合は視力を失うこともある。西田教授らは、サブスタンスPと呼ばれる神経伝達物質と、インスリンに似た物質のインスリン様成長因子(IGF―1)の創傷治癒効果に着目し、それぞれ四つのアミノ酸からなるペプチドを特定。動物に投与して効果を確認した後、人での臨床研究を行った。1日4回点眼し、角膜上皮欠損の20人中19人で治癒した。治療日数は最短3〜89日で、平均11日だった。脳腫瘍や聴神経腫瘍の手術後に起きる角膜障害の場合は、再発することが多いため、西田教授は「再発予防のため長期の点眼継続も検討する必要がある」と話している。(平成18年9月29日 読売新聞)

コンタクトレンズの定期検査、保険対象外に 

厚生労働省は、コンタクトレンズ購入後の定期検査や買い替え時の検査について、原則として保険給付の対象から外す方針を固めた。06年4月から実施したい考えだ。定期検査は義務ではないが、同省は推奨し、店頭でも検査を求められるケースが多い。このため、買い替え時などの検査が引き続き行われると、こうした費用は全額、利用者負担になる。一方で、検査を受けずにレンズを購入する人たちが増えることによる安全性の問題を指摘する声もある。14日の中央社会保険医療協議会に示した。同省によると、コンタクトレンズの使用者は約1500万人。使い捨てレンズなどの量販店に隣接して、レンズ処方のための検査に特化した診療所も増えている。平均すると購入時の初診で6610〜7460円、検査などの再診で1900円の医療費がかかっているという。同省は、レンズの購入は医師の処方箋がなくても可能として、買い替えなどの際の定期検査は保険対象外とする方針。レンズを初めて購入する際や、使用中に目の異常を感じたときの検査は、引き続き保険の対象とする。同省は00年、医療関係者に対する安全性情報の中で、自覚症状がないときでも定期検査を推奨。(平成17年12月15日 朝日新聞)

白内障にかかわるたんぱく質の構造観察に成功

京都大学理学研究科の藤吉好則教授らは、目の水晶体(レンズ)が白く濁って視力障害を引き起こす白内障の発症に関係するたんぱく質の構造を、電子顕微鏡で観察することに成功した。水晶体の細胞をどのように接着しているかが分析できるようになり、白内障が起きる仕組みの解明につながる。12月1日付の英科学誌ネイチャーに掲載される。電子顕微鏡で立体構造を観察したたんぱく質は「アクアポリン0」。水晶体の細胞にあって細胞同士を接着すると同時に、水分の通り道にもなる。研究グループは試料を生きたままの状態で見ることができるように炭素の膜で挟む新手法を開発して、観察することに成功した。0.19ナノメートルという分解能(2つの点を見分けることができる最小距離)で、アクアポリン0の詳細な構造がわかるようになった。白内障は水晶体の細胞同士の接着力が弱まったり、水分の通りが悪くなったりして起こるのではないかという説があり、アクアポリン0の構造がわかれば、白内障の発症の仕組みが明らかになるのではないかと期待されている。(平成17年12月1日 日本経済新聞)

角膜内皮障害、細胞利用で移植以外の治療法拡大へ 

角膜の内皮に変身する細胞を人の角膜から取り出すことに、東大医学部付属病院が成功し、米眼科専門誌に紹介された。角膜内皮障害の治療はこれまで角膜移植しか方法がなかったが、この細胞を使えば、損傷した内皮を修復できると期待される。すでに動物実験では成功しているという。角膜の内皮障害は、内皮が傷つくことによって角膜が透明でなくなり、視力が極端に低下する症状。角膜移植希望者の6割を占めるとされる。角膜の上皮(表面)が損傷した場合、自分の片方の正常な角膜などから上皮細胞を取り出し培養し、損傷部分を再生する医療が行われている。 しかし、内皮細胞は増殖しない特徴があり、供給源となる細胞も見つかっていなかった。同病院の山上聡・助教授らは、角膜から内皮細胞に変身する細胞を発見。これらの細胞を注射器で角膜の内皮細胞に付ければ、損傷部分を元通りに修復できると考えられる。大量培養することも可能で、今後、臨床応用を目指すという。山上助教授は「内皮組織は拒絶反応が起こりにくいというデータがあり、他人の細胞を使うこともできると思う」と話している。(平成17年5月18日 毎日新聞)

網膜に電気刺激で視力の衰え防ぐ

大阪大学医学系研究科の不二門尚教授のグループは、患者の網膜に電気刺激を加えて視力の衰えを防ぐ新治療法の臨床試験に着手した。網膜に微弱な電流を流して視神経が死ぬのを防ぐ。このほど患者2人の治療を開始、今年中に20人の治療を試みる計画だ。緑内障などの治療にも応用できると期待している。今回の臨床試験は、視神経周辺の血管が詰まるなどして神経に栄養が供給できなくなり、視神経が障害を受ける「虚血性視神経症」の患者が対象。 患者数はそれほど多くないが、視力の低下や視野が狭くなるなどの症状がある難病。医薬品で治療することは難しい。患者の目にコンタクトレンズ型の電極を装着し、パルス状の微弱な電流を約30分間流す。電流は、目の表面にある角膜から網膜へと伝わる。これにより網膜の「神経節細胞」の周囲に神経保護作用がある物質が集まり、細胞が死ぬのを防げるとみている。(平成16年2月2日 日本経済新聞)

目に電気刺激で視力改善

重い目の病気を持つ患者の角膜に、電極を埋め込んだコンタクトレンズを取り付け、電気刺激で視力を改善させたり、視力の低下を防いだりすることに大阪大病院眼科の不二門尚教授らが世界で初めて成功した。

動脈硬化などで目の血行が悪くなり、視力が著しく低下する難病「虚血性視神経症」の患者を対象に、本格的な治療を始める。 片方の目の角膜に、電極を埋め込んだコンタクトレンズを取り付け、約30分間、弱い電流を流して網膜に刺激を与える。外来で治療でき、1回の処置で済む。動物実験では、細胞の劣化を防ぐホルモンなどが出ているのを確認。網膜神経細胞の細胞死を防いでいるとみられる。 今年1月に同大学の倫理委員会で承認され、これまで3人の虚血性視神経症患者を治療した。 2人は約1週間から1か月で視力が改善、うち1人は0・2から0・5になった。残りの1人も低下を防ぐことができた。 治療チームは今後、20人に実施し、有効な治療法のない眼底骨折による神経損傷などの患者の治療にも応用する。(平成15年10月21日 読売新聞)

白内障、発生の仕組み解明 

目の水晶体(レンズ)が濁って物が見えにくくなる白内障が起きる仕組みを、長田重一・大阪大教授(生化学)らが解明した。国内の白内障患者は145万人。新たな治療法の開発に役立つと期待される。28日発行の英科学誌「ネイチャー」に掲載された。水晶体は透明な細胞でできている。この細胞には、大部分の細胞に存在するDNAなどの内部構造物が存在しない。研究グループは、細胞が成長していく過程で核などが消失する仕組みがあると考えた。どのような酵素が働いているか調べたところ、「DLAD」という酵素が活発に働いていることが分かった。マウスで、この酵素をつくる遺伝子を壊したところ、DNAが除去されずに水晶体が白濁、光の透過力が大幅に低下することを確認した。DLADはヒトの水晶体の細胞にも存在し、先天性の白内障患者では、その遺伝子に欠陥を持つ可能性がある。(平成15年8月28日毎日新聞)

白内障の目薬、「科学的根拠無し」

白内障の治療法について、進行を抑える目的で使われている目薬や飲み薬は「有効性に関する十分な科学的根拠がない」とする初の診療指針を、厚生労働省の研究班がまとめた。 人工レンズの移植手術を唯一の治療法と位置づけている。27日から京都市で始まる日本白内障学会で発表する。 白内障は、目の中でレンズの役目をしている水晶体が濁り、視力が低下する病気。老化と関係が深く、80歳以上のほとんどに症状が見られる。 治療法は濁った水晶体を取り出して、人工レンズを入れる手術が一般的だ。 日本では、症状の進行予防として目薬(成分名ピレノキシン、グルタチオン)や飲み薬(同チオプロニン、パロチン)なども使われてきた。 これらの薬は20年以上前に認可され、当時は有効性があると判断された。 欧米では薬による治療はほとんどない。 研究班は目薬などを使った白内障治療の発表文献など1000件以上を調べた。 信頼できる発表データがなく、現在の基準に照らすと有効性を裏付ける証拠はないと判断した。 研究班の北原健二・東京慈恵会医科大教授(眼科)は「全国の患者の約8割は薬物治療を受けていると推測されるが、効果のあるなしについてはっきりした根拠はない。 医師は十分な説明をし、患者に判断してもらうのが望ましい」と話す。(平成15年6月24日朝日新聞)

失明患者に“光”、人工網膜の臨床応用に成功

電極を組み込んだ人工網膜を眼球に埋め込み、目の病気で失明した患者の視力を一部回復させることに、米南カリフォルニア大医学部のチームが成功し、9日にフロリダ州で開かれた視覚眼科学会で報告した。 人工網膜は、シリコンとプラスチックでできた薄板上に16個の電極が組み込まれ、コンタクトレンズの3分の1の大きさ。 これを眼球に埋め込み、患者には極小のビデオカメラ付きの眼鏡をかけてもらう。患者が「見た」映像は、処理装置で信号に変え、人工網膜上の電極に転送。電極が、眼球に残る正常な網膜細胞を刺激することで、視覚を取り戻す仕組みだ。 臨床試験は昨年2月に始まり、3人の患者が埋め込み手術を受けた。 視覚の全面回復にはまだ遠いが、物体の有無や明暗などは分かるようになったという。 研究チームは、電極の数を増やすなどして、より鮮明な視覚の回復を目指す。(平成15年5月10日読売新聞)

口の粘膜を角膜代わりに移植、視力も回復

口の中の粘膜を培養して、角膜上皮の代わりに目に移植する治療法を、京都府立医大の木下茂教授、中村隆宏医師らが開発した。神戸市で開会中の第2回日本再生医学会で12日に発表する。 目の表面にある角膜上皮が病気やけがで傷ついた患者の口の中から、2ミリ四方の粘膜を取り、胎児を包んでいた羊膜の上で培養。2〜3週間かけて3センチ四方の膜にして、目に移植する。昨年6月から10〜80代の患者9人に移植すると、別の病気を併発していた1人を除き全員の視力が改善した。失明から視力0.2程度まで回復した女性もいた。 他人の角膜を移植した場合、拒絶反応を防ぐ免疫抑制剤を長期間飲まなければならないが、自分の粘膜ならその必要はない。中村医師は「膜が長く定着するか、あと数年は見守りたい」と話す。 日本眼球銀行協会によると、常時約5000人が角膜移植を待っているが、うち約2割が角膜上皮移植の対象者だという。(平成15年3月12日 朝日新聞)

緑内障患者は40歳以上の17人に1人

視野が狭くなり失明の恐れがある緑内障の患者は40歳以上の17人に1人にのぼると、日本緑内障学会(北沢克明理事長)が6日発表した。12年前の調査では30人に1人とされていた。 岐阜県多治見市で約3千人を対象にした検査をもとに全国の患者を推定した結果、400万〜500万人と分かった。受診しているのは1割しかいないとみられる。北沢理事長は「早期に発見すれば進行を遅らせることができる。検診の充実と必要性を訴えていきたい」と話す。(平成15年3月6日 朝日新聞)


細胞培養し角膜を再生

自分の目の角膜の細胞を培養して角膜をシート状に再生させることに大阪大病院眼科の西田幸二講師らのグループが成功し、角膜表面が損傷した患者に移植する臨床験を12月から始める。口の粘膜から採った細胞からも同様に再生することを動物実験で確認しており、慢性的に提供が不足している角膜移植に代わる可能性を持つ治療法として期待される。 グループは、岡野光夫・東京女子医科大教授らとの共同研究で、角膜の上皮に含まれる幹細胞(角膜組織のもとになる細胞)をシャーレで増やし、薄いシート状に再生させることに成功した。(平成14年11月27日 読売新聞)

角膜、網膜、内耳で再生医療」プロジェクトを立ち上げ

文部科学省は失明者や高度難聴者などの新たな治療法確立を目指し、網膜や角膜、内耳の再生医療プロジェクトを今月からスタートさせた。5年後の臨床応用を目標にしている。再生医療技術を利用し、わが国に約30万人いるとされる失明者や重度視力障害者の視力再生や、約50万人という人工内耳治療で限界のある高度聴覚障害や完全聴覚が失われた人への聴覚再生を可能とすべく、従来の治療法に代わる新たな技術開発を目指す。角膜疾患による視力障害者は、国内で10万人を超えるといわれる。東京歯科大学市川総合病院の坪田一男教授(角膜センター研究部長)は、角膜治療の向上を目指し、体性・胚性幹細胞を利用した人工角膜を作製するための研究を開始した。初年度の研究費は約1億円。現在、視力障害の治療には角膜移植が行われているが、国内で約2万数千人と予測される移植適応患者に対し、アイバンクから提供される角膜は、年間1500件程度でしかない。高齢化社会の進行とともに、移植適応患者数はさらに増加すると考えられ、ドナー不足を補う手だてが求められている。坪田氏らは移植医療に用いるため、10年計画で免疫原性を除去した人工角膜をヒト胚細胞から作製する。同氏らは角膜実質のマトリックス作製、角膜上皮細胞・実質細胞・内皮細胞の幹細胞分離培養を目指すほか、上皮、実質、内皮を3次元構築するための技術を確立する。さらに生体適合性が高く、免疫原性の低い人工角膜を表材面および免疫学的手法を用いて開発する。失明の多くは、最終的に網膜の神経細胞が障害されることに起因するが、今までのところ治療法が確立されていない。その開発に向け、京都大学病院探索医療センターの高橋政代助教授らは、幹細胞を用いて網膜視細胞や色素上皮細胞を産生し、網膜難病患者への細胞移植療法を確立する研究に着手した。(平成14年8月19日 薬事日報)


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