メタボリック症候群


メタボ症候群、Tリンパ球が原因

内臓に脂肪がたまると、そこに体内で免疫を担う「Tリンパ球」が集まって炎症を引き起こし、高血糖などのメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)につながることを、東京大学の永井良三教授らのグループがマウスを使った実験で突き止めた。Tリンパ球の働きを抑えるメタボ治療薬の開発に道を開くと期待される。 26日発行の米科学誌ネイチャー・メディシン(電子版)に発表した。永井教授らは、高脂肪食で太ったマウスの脂肪組織に「CD8陽性T細胞」とよばれるTリンパ球が集まり、炎症を引き起こすことを確認。このTリンパ球の働きを抑えたところ、炎症が改善し、インスリンの働きもよくなって血糖値が下がった。Tリンパ球を持たないマウスに高脂肪食を与えても、炎症は起きなかった。永井教授は「Tリンパ球の働きをうまくコントロールする薬を開発できれば、メタボリックシンドロームに伴う生活習慣病などの治療に役立つだろう」と話す。(平成21年7月30日)

太り気味、やせ形より7年長生き

40歳時点の体格によってその後の余命に大きな差があり、太り気味の人が最も長命であることが、厚生労働省の研究班(研究代表者=辻一郎東北大教授)の大規模調査で分かった。最も短命なのはやせた人で、太り気味の人より6〜7歳早く死ぬという、衝撃的な結果になった。「メタボ」対策が世の中を席巻する中、行きすぎたダイエットにも警鐘を鳴らすものといえそうだ。研究では、宮城県内の40歳以上の住民約5万人を対象に12年間、健康状態などを調査した。過去の体格も調べ、体の太さの指標となるBMI(ボディー・マス・インデックス)ごとに40歳時点の平均余命を分析した結果、普通体重(BMIが18.5以上25未満)が男性39.94年、女性47.97年なのに対し、太り気味(同25以上30未満)は男性が41.64年、女性が48.05年と長命だった。しかし、さらに太って「肥満」(同30以上)に分類された人は男性が39.41年、女性が46.02年だった。一方、やせた人(同18.5未満)は男性34.54年、女性41.79年にとどまった。病気でやせている例などを統計から排除しても傾向は変わらなかった。やせた人に喫煙者が多いほか、やせていると感染症にかかりやすいという説もあり、様々な原因が考えられるという。体格と寿命の因果関係は、はっきり分かっていない。このため、太り気味の人が長命という今回の結果について、研究を担当した東北大の栗山進一准教授は「無理に太れば寿命が延びるというものではない」とくぎを刺す。同じ研究で、医療費の負担は太っているほど重くなることも分かった。肥満の人が40歳以降にかかる医療費の総額は男性が平均1521万円、女性が同1860万円。 どちらもやせた人の1.3倍かかっていたという。太っていると、生活習慣病などで治療が長期にわたる例が多く、高額な医療費がかかる脳卒中などを発症する頻度も高い可能性があるという。(平成21年6月10日 読売新聞)

お酢飲んでメタボ解消

酢を飲み続けると内臓脂肪が減ることを、ミツカン中央研究所(愛知県半田市)が成人対象の実験で確認した。長崎市で開かれる日本栄養・食糧学会で21日、発表する。実験は、肥満度を示す体格指数(BMI)が25〜30の「軽度肥満」に該当する成人男女175人(うち女性64人、平均44.1歳)を対象に実施。過度の運動を避けてもらうほかは通常の生活を送り、リンゴ酢を配合した飲料を1日2回、12週間飲み続けてもらった。腹部のコンピューター断層撮影(CT)画像による内臓脂肪面積の変化や体重などの変化を比較。データが得られた155人を分析したところ、1日30ミリリットル(酢酸量1500ミリグラム)摂取した群は内臓脂肪面積が平均約6.72平方センチ減り、腹囲は同1.85センチ減少。15ミリリットル(同750ミリグラム)摂取した群も減少した。酢を含まない飲み物を飲んだ群には変化が見られなかった。また、酢を摂取した群は、血中1デシリットルあたりの中性脂肪が28.2〜42ミリグラム減った。研究チームはこれまでに、酢の主成分である酢酸が脂肪の合成を抑え、燃焼を促進することを動物実験で確かめている。(平成21年5月15日 毎日新聞)

心筋梗塞や脳卒中、メタボじゃなくてもご用心

高血圧や高血糖といった生活習慣病の危険要因を同時に抱えると、心筋梗塞や脳卒中を起こす危険が高まるが、その程度は、太っているよりもやせている人の方が高くなりやすいことが、厚生労働省研究班の調査でわかった。来年度から、生活習慣病予防のための特定健康診査が始まるが、その柱となる「メタボリック症候群(内臓脂肪症候群)」の診断基準が、やせた人たちのリスクを見逃してしまう可能性を示したものだ。同症候群は心筋梗塞や脳卒中など循環器病とかかわりが深い。危険要因として、肥満、高血圧、高血糖、高中性脂肪、低HDLコレステロールが挙げられ、欧米では基本的に、うち三つ以上の値が一定値を超えると、「あなたはメタボ」などと診断される。日本の診断基準では特に肥満が重視されており、ウエストサイズが一定以上であることが必須条件。例えば血糖値がかなり高くても、太っていなければ同症候群には該当しないことになる。調査で、この診断基準ではそんな人たちのリスクを見落とす可能性があることがわかった。肥満の指標となるBMI(体格指数)が25以上の太った人が循環器病で死亡するリスクは、肥満でなくほかの危険要因もない人と比べると、危険要因が肥満以外に二つの場合は1.5倍。三つ以上だと2.4倍だった。一方、BMIが25未満の人で同じ比較をすると、それぞれ2倍、2.8倍となり、肥満傾向の人よりも高かった。やせた人でも、体質的に高血糖や高血圧などを起こしやすい人がおり、そういう人は太っている人よりむしろリスクが高まりやすいらしい。同症候群については、肥満でなくても糖尿病などを通して循環器病になる人が少なくない。(平成19年5月28日 朝日新聞)

メタボと寿命の関係

メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の人と、そうでない人との死亡率にほとんど差はないことが、自治医科大学の調査でわかった。内臓脂肪型肥満(腹囲が男性で85センチ以上、女性で90センチ以上)であることに加え、血液中の脂質の異常、血糖値が高い、血圧が高い、三つの危険因子のうち二つ以上に該当すると、メタボリックシンドロームと診断される。自治医大は、1992〜95年に全国2176人(男性914人、女性1262人)の健康診断データなどを追跡調査し、メタボリックシンドロームの該当者と死亡率の関連を調べた。対象者のうち、02年末までに男性が79人、女性が58人死亡。死亡者には、調査開始時点でメタボリックシンドロームに該当した男性82人中7人、女性22人中2人が含まれていた。年齢や喫煙、飲酒習慣などの影響を調整して死亡率を比較すると、メタボリックシンドロームの人の死亡率は、そうでない人の1・09倍で、統計的に意味のある差はなかった。ただ、虚血性心疾患や脳卒中など血管病による死亡率は、メタボリックシンドロームの方が約2倍高かった。全体の死亡率に差がないのは、日本人の死因1位ががんで、心疾患が欧米ほど多くないことも関係ありそうだ。もっとも、メタボリックシンドロームだと動脈硬化や糖尿病などのリスクは高まるものの、すぐに死の危険が迫ると言われていたわけではなく、石川講師は「メタボリックと診断されても恐れず、生活習慣の改善に努めればよいのでは」と話している。(平成19年5月12日 読売新聞)

メタボリック症候群と血圧

メタボリックシンドロームであっても、生活習慣で血圧が正常に保たれていれば動脈硬化のリスクは上がらない。そんな傾向が東京大病院循環器内科の調査で浮かんだ。同シンドロームは生活習慣病の危険を高め、心臓病や脳卒中を招く動脈硬化につながるとして注目されるが、同シンドロームの有無だけにとらわれず、生活の中で個々の危険因子に注意する必要性が示される結果だ。都内の病院で約8000人の血圧や血中脂質の値などを分析したほか、首の動脈に軽度の動脈硬化が起きていないかどうか、超音波装置で調べた。このうち、血圧がやや高めだが正常範囲である「上140未満、下90未満」の約6000人を対象に、同シンドロームの有無と動脈硬化のリスクの関係を調べてみた。 女性の場合、同シンドロームがある人の動脈硬化のリスクは、ない人に比べて2.7倍高かった。だが、女性のうち、同じ血圧でも降圧剤に頼っていない人の動脈硬化のリスクは、同シンドロームがあってもなくても、変わらなかった。血圧が同じでも、薬を飲んでいる人のリスクが高くなっているらしい。薬に頼らないと正常な血圧を保てないこと自体がリスクを高めている可能性が考えられるという。男性はいずれの場合もリスクに違いはなかった。(平成18年11月3日 朝日新聞)

寝過ぎの高校生は持久力が劣る

1日8時間以上睡眠をとる高校生は、6時間未満の人より持久力で劣る傾向がある。文部科学省が公表した2005年度の体力・運動能力調査で、こんな結果が出た。持久力と生活習慣との関係では、朝食抜きやテレビの見過ぎも影響するらしい。6〜17歳については持久力をみるため、20メートル区間を徐々にペースを速めながら走って折り返せた回数と、睡眠時間などとの相関関係を分析した。その結果、睡眠時間が「8時間以上」と答えた高校生(15〜17歳)は男女とも、「6時間未満」の高校生より回数が少なかった。その差は15歳男子と16歳女子で約13回だった。一方、小学生(6〜11歳)は男女とも「8時間以上」の方が好成績で、中学生(12〜14歳)もほぼ同じ傾向だった。朝食については男女とも、「毎日食べない」と答えた方が「毎日食べる」より回数が少なかった。ただし、その差は7歳男子で約3回、12歳男子で約11回なのに対し、15歳男子では20回強と年齢が上がるにつれて開きが大きくなっていた。テレビゲームを含めたテレビの視聴時間との関係でも同様で、17歳男子では「3時間以上」と答えた方が「1時間未満」より約14回少なかった。調査・分析に携わった順天堂大の内藤久士・助教授は「寝過ぎやテレビの見過ぎが直接の要因というよりも、そうした子供たちには規則正しい生活習慣が確立されていないからではないか」と分析している。このほか、青少年層全体(6〜19歳)では、走る・跳ぶ・投げるの基礎的な運動能力と握力で、85年前後から続く低下傾向は今回も変わらなかった。 一方、20〜64歳の成年層は、敏捷(びんしょう)性をみる反復横跳びが緩やかに向上、全身持久力をみる急歩は低下した。(平成18年10月10日 朝日新聞)

早食いの子、肥満度が高い

食べ物を早食いする子供は、ゆっくり食べる子供に比べて肥満度が高いことが、東京歯科大とライオン歯科衛生研究所の共同研究で明らかになった。研究グループは5年前、早食いするサラリーマンほど肥満度が高いとする調査結果を公表していたが、小学生でも同様の傾向があることが浮き彫りになった。調査は食生活が激変しているとされる沖縄県八重山地区の小学5年生256人(男子137人、女子119人)を対象に、食生活など生活習慣を尋ねるとともに、身長と体重を測定。子供の肥満度の指標であるローレル指数(標準は116〜144)を使って、双方の関係を調べた。その結果、他人よりも食べるのが「はやい」と答えた子供の肥満度は平均141で、標準でも太り気味に近かった。一方、「ゆっくり」と答えた子供は平均125だった。また、一口で食べる量が「多い」と答えた子供の肥満度は平均139で、「少ない」と答えた子供の平均129よりも高かった。 反対に、「おやつの回数」や「夜食の有無」「運動する頻度」といった、一般には肥満との関連が指摘されている生活習慣は、今回の調査では、関連性がみられなかった。同大千葉病院の石井拓男病院長(社会歯科学)は「ゆっくりとよくかんで食べるといった、正しい食習慣を早くから身につけさせることが必要だ」と話している。(平成18年10月7日 読売新聞)

メタボリックで胃がんリスク高まる

内臓の周りに脂肪がたまる内臓脂肪症候群(メタボリック・シンドローム)に陥ると、動脈硬化や糖尿病だけでなく、胃がんのリスクも高まることが、東大腫瘍外科の北山丈二講師らの研究でわかった。肥満解消が、がんの予防や再発防止にもつながる可能性を示す成果と言えそう。北山講師らの研究チームは、脂肪細胞から分泌される「アディポネクチン」というホルモンに着目した。脂肪の燃焼を助ける働きなどをするが、内臓脂肪症候群になると、分泌量が減り、血液中の濃度が下がる。チームが突き止めたのは、アディポネクチンに強力な抗がん作用があること。ヒトの胃がん細胞を移植したマウスにこのホルモンを投与すると、腫瘍が最大で9割も減少した。さらに、胃がん患者75人の血液中のアディポネクチン濃度を調べたところ、がんの進行した患者ほど濃度が低かった。このホルモンは、胃がん細胞と結合しやすい構造をしており、結合したがん細胞を殺す働きがあるとみられる。抗がん作用は、血液1ミリ・リットルあたりの量が0・03ミリ・グラムを超えると強まる。内臓脂肪症候群の人の濃度は、その5分の1〜6分の1という。がん増加原因として、脂肪の過剰摂取が挙げられるが、がんを引き起こす仕組みは十分に解明されていない。(平成18年9月19日 読売新聞)


メタボリックシンドローム、「腹囲」健診で測定 

平成20年度から40歳以上の人が受ける新しい健康診断の検査項目と判定基準が26日、固まった。内臓脂肪の蓄積に高血圧や高脂血、高血糖が重なり生活習慣病の危険性が高まる「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」の考え方を導入したのが特徴で、これまで実施していなかった腹囲(へそ回り)の測定を必須とする。 健診の結果「要治療」とならなくても、生活習慣病の「危険度」に応じて受診者を3つのレベルに分類。 生活習慣の改善などをきめ細かく指導する仕組みを取り入れる。 新しい健康診断は、厚生労働省が20年度から、健康保険の運営者に対して、40歳以上の加入者への実施を義務付けるもの。 検査項目や判定基準は26日、有識者でつくる検討会に示され、基本的に了承された。 検査項目には従来と同様の身長や体重、血圧などに加え、腹囲や尿酸の測定を追加した。 これらは「基本健診」として受診者全員に実施。 一方で尿検査や心電図検査などは「精密健診」として医師が必要と判断した場合に実施することにした。 内臓脂肪症候群は、腹囲が「男性85センチ、女性90センチ以上」で、さらに高血糖、高脂血、高血圧のうち2つ以上に当てはまる場合。それぞれが定められた数値以上に悪ければ治療のため医療機関の受診を勧めるが、数値が低くても内臓脂肪症候群の該当者や、生活習慣病の危険度が高いと判断した人は「積極的支援レベル」と判定し、3―6カ月間、生活改善や禁煙、運動などの保健指導をする。 それに次ぐ危険度の人は「動機づけ支援」として生活改善などの指導を1回実施し、それ以外の受診者には生活習慣病に関する情報を提供する。 厚労省は今秋以降いくつかの都道府県で準備事業を開始、20年4月から本格導入する予定だ。(平成18年6月27日 産経新聞)

心臓病予防、やはり魚に効果 

魚を多く食べる人はあまり食べない人に比べて心筋梗塞になるリスクが6割前後低いことが、約4万人を対象にした厚生労働省研究班の調査で分かった。魚の心臓病予防効果は欧米の研究などで指摘されてきたが、日本人で大きな効果があることが大規模調査によって初めて裏付けられた。17日付の米医学誌サーキュレーションに発表される。研究をまとめたのは磯博康・大阪大教授(公衆衛生学)ら。岩手、秋田、長野、沖縄の4県で成人住民約4万人の協力を得て、食事アンケートをし、90年以降11年間の発症を追跡調査した。 心筋梗塞や狭心症といった虚血性心疾患になるリスクは、魚を食べる量が最も少ない人たち(1日20グラム程度)に比べて、最も多い人たち(1日180グラム程度)は37%低かった。 診断確実な心筋梗塞に限れば、56%も下回った。 魚に心臓病予防効果があるのは、油成分のエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)が血栓を作りにくくし、動脈硬化を防ぐ働きがあるためとされている。 EPAやDHAはイワシやサバなどの青魚に多い。たとえば、マイワシ100グラムに含まれるEPAとDHAは計2.5グラム程度だ。 食べた魚の種類からEPAとDHAの合計摂取量を計算したところ、摂取量が最も少ない人たち(1日0.3グラム程度)に比べ、最も多い人たち(1日2.1グラム程度)は虚血性心疾患のリスクが42%、診断確実な心筋梗塞で65%低く、効果がはっきり出た。 磯教授は「日本人でも魚をよく食べる人のリスク低下がはっきりした」と話している。(平成18年1月17日 朝日新聞)

生活習慣病、保健指導を民間に委託 

厚生労働省は来年度から、健康診断で生活習慣病のリスクが高いと判断された人に対する個別の保健指導を民間事業者に委託する方針を決めた。生活習慣病対策は、食事や運動など生活改善が不可欠だが、保健所などの保健師だけでは数が不足し十分な指導が行えないため、民間の管理栄養士や健康運動指導士に委ねる。専門家による検討会を設置し、委託先の事業者の基準を作成する。生活習慣病の中で、特に肥満症、糖尿病、高血圧症、高脂血症を放置すると脳卒中や心筋梗塞などに進展する可能性が高く、早い段階でリスクの高い人を発見し、生活習慣を改善してもらう必要がある。しかし、20歳以上の健康診断受診率は約6割にとどまり、さらに受診しても事後の指導につながっていないケースが多い。同省の対策はこうした事後の指導に重点を置くもので、医師にかかる患者は別枠。来年度予算案に1億8420万円を計上し、試行的に5都道府県で、20〜39歳の約5万人を対象に問診票による健康チェックを実施し、リスクが高い人には健康診断を受けてもらう。「予備群」とされた場合、民間の病院やフィットネスクラブの管理栄養士、健康運動指導士、スポーツプログラマーらが食生活の改善や運動を指導する。同省によると、生活習慣病有病者数(推計)は、糖尿病が約740万人、高血圧症が約3100万人、高脂血症が約3000万人。個別指導を行う保健師は全国に約4万人しかおらず、都市部は特に不足している。03年度の医療費総額31兆5000億円のうち、生活習慣病が約3割を占めており、同省は今回の取り組みによって中長期的な医療費の抑制を目指す。(平成18年1月8日 毎日新聞)

お年寄り転倒予防 歩くより自転車こぎ効く

お年寄りが寝たきりになる大きな原因が転倒による骨折だ。大腿(だいたい)部や腰周辺の筋肉の鍛錬が転倒予防につながると言われているが、それにはウオーキングよりも自転車こぎの方が有効なことが東北大の研究でわかった。岡山県倉敷市で開会中の日本体力医学会で発表された。年を重ねると、ひざを高く持ち上げる腸腰(ちょうよう)筋や小臀(しょうでん)筋と呼ばれる筋肉が衰え、転倒しやすくなる。同大の伊藤正敏教授、藤本敏彦講師らは、これらの筋肉を鍛えるには、どんなトレーニングが効果的かを調べた。筋肉は疲労回復のために、盛んに糖分を摂取する特性がある。研究チームは20代の学生5〜7人に、30分〜1時間の様々なトレーニングをしてもらい、身体の糖の取り込み分布を画像化できる陽電子放射断層撮影(PET)装置で分析した。その結果、階段上りでは、ひざ上げに最も重要な腸腰筋、次いで重要な小臀筋が使われた様子が確認されたが、ウオーキングやジョギングでは、腸腰筋の活発な動きは見られなかった。腸腰筋の活動が盛んだったのは自転車こぎで、ペダルを踏み込む際は、大腿部に力がかかるものの、もう一方の脚は、股(こ)関節を曲げてひざを上げるため、腸腰筋を使っていると考えられる。藤本講師は「自転車こぎで鍛えられる筋肉は、お年寄りでも同じ。階段上りは疲労感が残るうえ、無理すると心臓や肺に負担をかけ逆効果」と話している。(平成17年9月25日 読売新聞)

生活習慣病「運動で予防」

糖尿病や脳卒中などの生活習慣病を予防するには、どんな運動をどれだけすればいいの? こんな疑問に答えようと、厚生労働省が国民向けの運動量などの指針づくりを始める。来月にも検討会を立ち上げ、今年度内を目標にまとめる。こうした指針は過去にもつくったが、効果があまり上がっていなかった。生活習慣病の予備軍が増えていることから、最新の研究に基づいて作り直すことにした。 厚生省(当時)は89年、年齢や健康状態に応じた「運動所要量」を作成した。例えば、20歳代なら1週間の合計運動時間は180分、運動時の心拍数(1分間あたり、安静時を70とする)は130の状態を維持するのがよいとされている。60歳代ならそれぞれ140分、110などと定めていたが、ほとんど知られていなかった。 また93年には「運動指針」も作ったが、「歩くことから始めよう」「1日30分を目標に」などの言葉が並び、実用性が低いと指摘されていた。 このため、新たな指針では、階段の上り下り、自転車に乗るなど、ふだんの生活でできる運動や運動によるカロリー消費量を示すことなどを検討している。年齢や性別によってどれだけ効果に違いがあるかも示す方針だ。検討会で、有識者の意見も聞きながら最新の研究成果などをもとに、わかりやすく使いやすい指針作りを目指す。 厚労省によると、20〜60代の男性の肥満者は97年の24.3%から03年には29.5%に増えるなど、「生活習慣病を発症するリスクは年々高まっている」(生活習慣病対策室)という。一方、運動による生活習慣病の予防効果を指摘する声が近年強まっている。糖尿病を発症するリスクが高い人を対象にした海外での研究例によると、薬による治療では4年間で発症を31%抑えられたのに対し、運動や食事などの生活習慣の改善指導のほうが効果が高く、発症を58%抑えられたという。(平成17年6月27日 朝日新聞)

生活習慣病予防に運動を・厚労省が「指導士」増員

動脈硬化や心臓病など生活習慣病の“予備軍”の運動を指導する専門家を増やそうと、厚生労働省は外郭団体が認定している「健康運動指導士」を体育系大学で養成する方向で検討を始めた。現在は3カ月間の講習を受けた人だけに受験を認めている認定試験を、大学で必要な単位を取れば講習なしで受けられる新制度を想定している。有資格者は現在、約1万300人いるが、新制度を導入すれば体育系大学ルートで毎年1000人以上の有資格者が生まれる可能性があると厚労省はみており、フィットネスクラブなどで活躍することを期待している。(平成17年5月22日 日本経済新聞)

生活習慣病は睡眠の敵

高血圧症や糖尿病などの生活習慣病を多く抱えている人ほど、不眠に悩み、気分が沈みがちな抑うつ状態になりやすいことが、久留米大(福岡県久留米市)が行ったアンケートでわかった。 研究チームは「睡眠状態に気を配ることで、抑うつ状態も早期発見でき、自殺に至るような例を減らせるはず」としている。 同大医学部の内村直尚助教授らは、代表的な生活習慣病である高血圧、高脂血症、糖尿病の3疾患と、睡眠、抑うつ状態の関係を調べた。対象は35歳から59歳の働く男女7800人で、6084人が回答した。 不眠で悩んだ経験がある割合は、生活習慣病がない人は26・6%と少ないが、3疾患のいずれかがある人は33・1%になり、三つの病気を抱え、治療もしていない場合は46・4%と高くなった。 抑うつ状態がある割合も、生活習慣病がない人は4・2%と少ないが、三つの生活習慣病があり、治療していない場合は10・7%と高かった。不眠経験がある人ほど抑うつ状態も多かった。一方、生活習慣病の患者で、医師から睡眠状態を聞かれた経験がある人は約30%しかいなかった。(平成17年4月18日 読売新聞)

生活習慣病対策に1日30分の運動

世界保健機関(WHO)総会は22日、肥満症、心臓疾患、糖尿病などを予防するための「食生活と運動に関する世界戦略」を採択した。生活習慣病に対する初の国際指針。各国の実情に合わせて肉付けするよう求めている。 戦略は、生活習慣病など非感染性疾病による死亡が世界の全死亡(年間5600万人)の6割を占め、健康的でない食生活と運動不足が糖尿病や心臓病、一部のがんの原因になっていると指摘。適度な運動を1日に少なくとも30分以上行う。砂糖、脂肪、塩の摂取制限。果物、野菜、豆類の消費拡大などを勧めている。 一方、食品の広告について「非健康的な食習慣を促進するような表現はやめさせる」「子どもの未熟さや、信じやすさにつけこんではならない」などと述べ、事実上、内容を規制するよう求めている。 糖分や脂肪分の多い一部の清涼飲料水、ファストフードなどを念頭に置いているとみられる。 砂糖の摂取制限について当初案は、1日のエネルギー摂取量の10%以下に抑えるとした専門家の報告書に言及していた。 しかし、砂糖生産国が反発し、数値目標のない抽象的な表現にとどまった。(平成16年5月23日 朝日新聞)

結腸がん、肥満女性は「死亡リスクが高い」

女性は肥満の度合いが高いほど、結腸がんで死亡する危険性が高くなるとの疫学調査結果を、名古屋大大学院の玉腰浩司講師(公衆衛生学)らがまとめた。一方、男性では、肥満と結腸がんとの間に明確な相関関係はみられなかった。25日から名古屋市で開催される日本癌(がん)学会で発表する。調査には国内の24研究機関が参加した。1988〜90年に40〜79歳だった全国の男女約10万人の身長、体重などを調べ、対象者を99年まで追跡した。その間に結腸がんで死亡した249人を特定し、肥満の判定基準(BMI)との関係を分析した。BMIは体重(キロ)を身長(メートル)の2乗で割った数値で、22が「標準」、25以上が「肥満」、18.5未満が「やせ」と判定される。分析の結果、BMIが28以上の女性は、BMIが20以上22未満の女性に比べ結腸がんで死亡する危険性が3・41倍になっていた。26以上28未満の場合も同2.27倍、24以上26未満の場合も同2.23倍になった。20歳のころにBMIが高かった女性や、20歳を過ぎてからBMIが大きく増加した女性も結腸がんで死亡する危険性が高まるとの結果も出た。食生活の欧米化が結腸がんの増加につながっているとされるが、玉腰講師は「女性だけがこのような結果になった理由はよく分からない。 これからの研究課題だ」と話している。(平成15年9月24日 毎日新聞)

酒に弱い人の飲酒と喫煙習慣、膵臓がんリスク10倍に

酒を飲むと顔が赤くなりやすい人が日常的に飲酒の上喫煙していると、膵臓(すいぞう)がんになる危険度が、酒は飲むがたばこを吸わない人の10倍になることが、国立九州がんセンター消化器内科の船越顕博医長の調査で分かった。25日から名古屋市で開かれる日本癌(がん)学会で発表される。 アルコールを体内で分解する能力は主に、ALDH2という酵素の型で決まる。日本人には酒に強い型、飲めるがすぐに顔が赤くなる弱い型の人が各45%、まったく飲めない人が10%程度いると考えられている。 膵臓がんになった114人を調べたところ、酒に弱い型は計55人で、うち日常的に飲酒の上喫煙していた人は19人だった。これを酒は弱いが飲酒習慣があり、たばこは吸わない人と比較すると、膵臓がんになる危険度は10倍も高くなっていた。 酒に強い型では、飲酒・喫煙両方の習慣がある人の、飲酒・非喫煙者に比べた危険度は3倍だった。 船越医長は「膵臓がんは酒よりたばことの関係が深いことが知られていた。しかし、酒に弱い遺伝子を持つ人は喫煙の悪影響がさらに顕著に出るので、酒とたばこ両方を習慣的に愛好するのはやめるべきだ」と話している。(平成15年9月24日 読売新聞)

飲酒男性、結腸がんの危険は2倍

お酒を飲む習慣がある男性は結腸がんになる危険が約2倍になる。愛知県がんセンター研究所の若井建志主任研究員らが約5万8000人を約7年半追跡調査したところ、こんな関係が13日までに明らかになった。禁酒した人でも危険度は同様で、同主任研究員は「定期的に飲む人は、やめてもすぐにはリスクが下がらない」と指摘している。名古屋市で25日に始まる日本癌(がん)学会で発表する。同主任研究員らは、1988―90年に当時40―79歳の男女に生活習慣を尋ね、平均7年半、追跡調査した。この間に、結腸がんになったのは約420人。飲まない、禁酒中、飲んでいるグループごとに、結腸がんになった人の割合を調べた。飲まないグループを基準にすると、飲酒中の男性は結腸がんの罹患(りかん)率が2倍近くだった。禁酒中の男性も2倍をわずかに超えた。酒量と危険度に相関関係はみられなかった。女性では、禁酒中の人だけ、罹患率が約1.6倍と高かったが、理由はよく分かっていない。(平成15年9月13日 日本経済新聞)

子ども肥満原因、3歳時の生活慣習


子どもの肥満は、3歳時の生活習慣の乱れが原因――そんな研究結果を、富山医科薬科大などの研究チームがまとめた。子どもたち約1万人を7年間追跡調査して分かった。小児肥満は、大人になってからの心疾患や高血圧の原因とされ、関根道和・同大講師は「乳児からの予防策が大切なことを裏付けた」と話している。 調査は、富山県内の1989―90年生まれの約1万人を対象に、3歳時、小学1年時、4年時の3回にわたり体格測定を行い、同時に子どもたちの両親に生活習慣、家庭環境についてアンケートを実施。国際的な基準で「肥満」とされた子、そうでない子の両グループのデータを比較した。 すると、3歳時に「朝食を時々食べる」「おやつの時間を決めていない」と答えたグループは、「朝食を毎日食べる」「おやつの時間を決めている」グループより、小学4年時に肥満になる例が1・2―1・8倍多かった。また、3歳時に、睡眠時間が11時間以上だったグループに比べ、9時間未満のグループは、肥満が約1・5倍多くなり、睡眠量が少ないと肥満になりやすいことも判明。国民栄養調査(97年)によると、小中学生の約10・7%が肥満で、78年の7・2%から増加傾向にある。(平成15年2月1日 読売新聞)

胃がん防ぐ野菜、果物、食べない人より52%も低く

野菜や果物を週1回以上食べると、胃がん予防に役立つことが、日本人約4万人への長期調査でわかった。 喫煙や年齢など発がんに関係する他の要因が同じ場合、白菜などの淡色野菜を多く食べる人が胃がんになる率は、食べない人より52%も低く、ニンジンなどの黄色野菜だと36%、果物でも30%、それぞれ発生率が低かった。調査は、厚生労働省のがん対策研究の一環として、国立がんセンターなど多くの医療機関が協力し、秋田、岩手、長野、沖縄で実施した。対象は男性約1万9000人、女性約2万1000人。 まず1990年に「食事の好み」などの生活習慣に関するアンケートに答えてもらい、その後の健康状態をずっと観察した。 その結果、10年間で胃がんになった人は404人で、野菜や果物をあまり食べない人ほど発生しやすい傾向が明らかになった。すべての種類の野菜と果物の合計摂取率で比べても、最もよく食べた上位約2割のグループの胃がん発生率は、最も食べなかった約2割より25%少なかった。(平成15年1月14日 読売新聞)

急性心筋梗塞の危険因子

急性心筋梗塞(AMI)で入院した日本人に対する面談調査で、AMIの危険因子として、最も多くの患者が「喫煙」を挙げたことがわかった。この種の調査が日本で行われたのは初めて。欧米で行われた同種の調査でトップに来る「ストレス」は、日本人AMI患者では2位だったという。調査結果は、11月20日のポスターセッションで、米国California大学San Francisco校看護学部の福岡由美氏らが報告した。福岡氏らは、愛知医科大学など日本国内の5カ所の医療機関に協力してもらい、AMIで入院した患者155人に面談。患者自身が「AMIの危険因子」と考えるものを三つ挙げてもらった。見舞い客などの言葉で患者自身の考えが変わる可能性もあるため、面談はAMIで入院してから7日以内に、ベッドサイドで行った。入院から面談までの平均経過時間は87.5時間。調査対象者の平均年齢は62歳で9割弱が男性、約8割が結婚しており6割が仕事を持っていた。AMIの危険因子という観点では、半数強に喫煙習慣があり、3割が糖尿病を合併、6割弱に高脂血症、4割強に高血圧があり、7割が運動不足だった。心疾患の家族歴は3割強にあり、4割が過体重(体格指数=BMIが25以上)だった。面談の結果、155人中48人が、AMIの危険因子と考えるものを三つ列挙。42人は二つ、50人は一つだけ挙げ、15人はわからないと答えた。患者が挙げた危険因子で最も多かったのは「喫煙」で、次いで「ストレス・仕事のし過ぎ」、3番目に「食事」(栄養や食事時間の偏りなど)が挙がった。一方、家族歴や高血圧、過体重、運動不足などは、患者側にはあまり危険因子として認識されていなかった。患者自身が実際に持っている危険因子との比較では、喫煙習慣がある人の多くは「喫煙」がAMIの危険因子だと認識していた。しかし、その他の危険因子に関しては総じて認識率が低く、全体では41%の患者が、自分自身が持っている危険因子を危険因子として認識していなかった。この結果について、福岡氏は「医療者側が認識している危険因子と、患者側が考える危険因子との間に大きなギャップがあることを示すもの」と考察。「AMIの二次予防には患者教育が極めて大切だが、その際はまず患者に、何が危険因子だと思うかを尋ね、患者自身が危険因子として挙げたことから教育を進めることが大切ではないか」と述べた。(平成14年11月2日medwave)

「似たもの夫婦」は病気まで

「似たもの夫婦」という言葉がある。長い間一緒に暮らしていると、顔立ちや言葉遣い、食べ物の好みまで似てくるという意味だが、英国で行われた調査では、なんと夫婦では病気まで似てくることがわかった。特に喘息やうつ病、胃潰瘍では、夫婦の一方がこれらの病気にかかっている場合、もう一方も発病する確率が7割以上も高かったという。調査結果は、British Medical Journal(BMJ)誌9月21日号に掲載された。たとえば風邪のような、ウイルスや細菌で起こる病気なら、夫婦の一方が感染すれば当然もう一人も同じ病気にかかりやすくなる。しかし、高血圧や高脂血症、あるいは喘息、うつ病といった慢性疾患の場合、「夫(妻)がその病気にかかっている」というだけで配偶者が同じ病気にかかりやすくなる理由は見当たらない。とはいえ、これらの病気は生活習慣も一因となっており、太っている、たばこを吸う、あるいは高齢になるだけでも発症率が高くなる。そこで、英国Nottingham大学のJuliaHippisley-Cox氏らは、イングランド中部に住む8386組の夫婦について、上に挙げた点でデータを補正した上で「夫婦が同じ病気にかかる確率」を明らかにした。すると、夫婦の一方がうつ病にかかっていた場合、もう一方がうつ病である確率は、配偶者がうつ病ではない人の2.08倍になることが判明。同様に、胃潰瘍(2.01倍)や喘息(1.69倍)、高血圧(1.32倍)、高脂血症(1.44倍)でも、夫婦で同じ病気にかかる確率が高いことがわかった。一方、糖尿病や虚血性心疾患、脳卒中では、こうした相関は認められなかった。Hippisley-Cox氏らは、「夫婦では食生活や運動習慣が似ており、これがこうした“夫婦で共有しやすい病気”の発症に重要な役割を果たしているのでは」と考察。夫婦で共有しやすい病気で受診した人には、その配偶者にも、スクリーニング検査を検討するよう勧めている。(平成14年9月27日medwave)