脳梗塞

ひとり酒、脳卒中にご用心

一人で酒を飲むより、仲間と飲む人の方が脳卒中になる危険度が低いことが、厚生労働省研究班(班長=津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長)の調査で分かった。研究班は、40〜69歳の男性約1万9000人を、「週1回以上話す友人の人数」や「秘密を打ち明けることのできる人の有無」などの質問を基に、社会的な支えが多い群と少ない群に分け、1993年から約10年間追跡した。調査中に836人が脳卒中や心臓病を発症。エタノール換算で週300グラム(ビール大瓶で1日2本程度)未満の飲酒の場合、社会的支えの多い群は、脳卒中の発症危険度が飲まない人の0.7〜0.8倍と低く、社会的支えの少ない群は、1.2〜1.8倍になった。週の飲酒量が300グラム以上になると、両群とも、飲まない人より脳卒中の発症危険度は高くなった。一方、心臓病の発症危険度は、社会的支えに関係なく、飲酒によって下がった。研究班の磯博康・大阪大教授は「仲間と騒いで酒を飲むと一人で飲むよりストレスを発散できていると考えられ、この結果につながったのでは」と話している。(平成21年7月2日 読売新聞)

脳卒中、発症3割減 乳製品からカルシウム摂取

牛乳やチーズなどの乳製品からカルシウムを多く取る人は、ほとんど取らない人に比べて脳卒中の発症率が約3割少ないことが、厚生労働省研究班の大規模調査で明らかになった。日本人の死因3位の脳卒中予防につながる成果で、牛乳なら1日130ミリリットル前後、スライスチーズら1〜1.5枚で効果が期待できるという。研究班は、岩手、秋田、長野、沖縄の4県在住の40〜59歳の男女約4万人を、90年から12年間追跡し、食事など生活習慣と発病の関係を分析した。02年までに、1321人が脳卒中を発症。乳製品から取ったカルシウムの量で5グループに分けると、1日の摂取量が平均116ミリグラムと最も多いグループは、ほぼゼロのグループに比べて脳卒中の発症率が0.69倍にとどまった。大豆製品や野菜、魚など、乳製品以外から摂取した カルシウムでは、効果はみられなかった。研究班の磯博康・大阪大教授は「カルシウム摂取が多いと血圧が低くなるため、脳卒中予防につながったのではないか。乳製品は他の食品よりも腸での吸収率が数倍高く、効率良くカルシウムが取れたようだ」と説明する。一方、心筋こうそくなど心疾患の発症率は、カルシウム摂取の有無と関連がなかった。乳製品に多く含まれる飽和脂肪酸によって心疾患の発症率が高まり、カルシウムの効果が打ち消された結果と考えられ、乳製品の食べすぎは逆効果になる可能性が高い。また、サプリメントのカルシウムの効果は不明という。(平成20年7月29日 毎日新聞)

脳梗塞リスク、血液で簡単判別

千葉大学病院と同大学発ベンチャー企業のアミンファーマ研究所は、脳梗塞が将来起きるかどうかの危険性を血液だけで簡単に判別する技術を開発した。大型の検査装置が必要なく、検査を受ける人の負担が少ない。同大は病院で脳ドックを受ける40歳以上の男女約1000人を対象に5月から臨床研究を始める考えだ。脳梗塞の患者数は約120万人とされる。特に40歳以上の働き盛りの男女を中心に患者が増えている。ただ、多くの患者は自覚症状を感じないが将来発症する恐れがある「隠れ脳梗塞」とされ、発症前に簡単に検査する方法が求められていた。(平成20年4月18日 日本経済新聞)

血栓、防ぐ抗体を開発

血液を固まりにくくして、脳梗塞や心筋梗塞の原因となる血栓ができるのを防ぎ、一方で内出血などはあまり起こさずに済む抗体を、滋賀県立大の高山博史教授らが開発した。臨床で使えれば、副作用の少ない理想的な血栓予防薬になる可能性があるという。血栓は、血液中の血小板にコラーゲン繊維がからまり、固まりを作ってできる。しかし高山教授らは、固まりができない女性を発見。血液中から、血小板とコラーゲンの結合を妨げる抗体を見つけ、この抗体を人工的に作ることに成功した。抗体には、血小板の表面に存在しコラーゲンと結びつく「コラーゲン受容体」を、血小板の内部に引っ込めさせる働きがあった。さらに、マウスの体内に人為的に血栓を作る実験を行い、普通のマウスには血栓ができるが、同様の抗体を前もって注射したマウスにはできないことを確かめた。血小板の機能を部分的に低下させて血栓を防ぐ薬は既にあるが、副作用で脳出血など体内の出血が起きやすくなる。しかし今回の抗体を持つ患者は、脳出血などを起こさず20年間過ごしている。高山教授は「抗体を実用化すれば、脳出血などの副作用なく血栓を防ぐ薬ができるのではないか」と話している。(平成20年4月2日 毎日新聞)

循環器病の発症、果物の摂取で2割減

果物をたくさん食べる人ほど脳卒中など循環器病のリスクが低くなる、という調査結果を厚生労働省研究班が発表した。岩手、秋田、長野、茨城、新潟、高知、長崎、沖縄の8県に住む男女8万人に野菜や果物の摂取量をアンケート。がんと循環器病の発症を最長7年間追跡した。国立がんセンター予防研究部長が主任研究者となった調査で、1日の摂取量で対象者を4グループに分けて発症率を比べた。果物の摂取量が最も多いグループ(平均280グラム)は、最も少ないグループ(同35グラム)より発症リスクが19%低かった。果物100グラムはみかん1個、りんご半分に相当する。たばこを吸わない人の発症率が低くなる傾向がみられ、吸う人は同じ量の果物を食べても効果が小さい可能性があるという。今回の調査では、野菜と循環器病、野菜や果物とがん全体では関連が認められなかった。坪野吉孝・東北大学公共政策大学院教授(疫学)は「これまで考えられていたほど野菜と果物の病気の予防効果ははっきりしなかったが、個別のがんでは効果が認められるものもある。健康全般に良いことには変わらない」と話している。(平成19年10月25日 朝日新聞)

脳梗塞死亡リスク、緑茶1日5杯で軽減

緑茶を1日5杯以上飲むと脳梗塞の死亡リスクが男性は42%、女性は62%低下するとの研究結果を栗山進一東北大准教授(公衆衛生学)らが4日までにまとめた。栗山准教授らは1994年から宮城県内の40―79歳の男女約4万500人を追跡調査、1日に緑茶を飲む量で4グループに分け分析した。その結果、脳や心臓など循環器系の病気の死亡リスクは、緑茶を飲む量が多いほど低下。1日に1杯未満の人に比べ、5杯以上飲む人は男性は22%、女性は31%低下した。脳血管障害では男性は35%、女性は42%低下。特に脳梗塞はリスクが低かった。一方、がんによる死亡のリスクとは関連はなかった。 紅茶やウーロン茶を飲む量とこれらの病気の死亡リスクに関連はなかった。 栗山准教授は「予想以上の差があり驚く結果だ。 緑茶に含まれるカテキンなどが体に良い影響を与えている可能性がある」と話している。(平成19年5月5日 日本経済新聞)

ADHD発症児、母のたばこ影響か

落ち着きがないなどの症状が表れるADHD(注意欠陥・多動性障害)の子どもの場合、母親の喫煙率が同年代の女性の2倍程度高いことが、大阪府の小児科医の調査でわかった。ADHDは、生まれつきの脳の機能異常による発達障害とされ、集中力がない、衝動的な行動をするなどが特徴。治療経験の豊富な大阪府寝屋川市の小児科医院の安原昭博院長が、小児患者の母親167人に喫煙歴などをアンケートした。その結果、喫煙経験は47%にあり、妊娠時にも35%が喫煙していた。特に出産時の年齢が20〜24歳の母親では、喫煙率が88%にのぼった。一般の出生児を対象にした厚生労働省調査では、母親の喫煙率は17%、うち20〜24歳は35%で、ADHD児の母親は2倍程度高い。安原院長は「ADHDには遺伝的要因もあるが、母親の喫煙も関係があると考えられる。妊娠が分かってから禁煙したのでは遅い可能性がある」と話す。 京都市で21日開かれる子どもの防煙研究会で発表する。(平成19年4月20日 読売新聞)

脳梗塞の後遺症の程度、病院間で大きな差

脳梗塞で入院した患者の後遺症の程度は、病院によって大きく異なり、同じ病状の患者が、ある病院では自力で歩いて退院できるのに、別の病院では歩けなくなるなどの差が出ていることが、厚労働省研究班の調査で分かった。脳卒中専門の内科医が多く勤務する病院ほど後遺症が軽く、専門でない内科医が治療にあたる病院で重かった。研究班は、国立病院機構に所属する病院のうち、脳梗塞の治療に熱心な26病院を対象に、2005年から2006年にかけて入院した脳梗塞患者合計1775人について、入院時の病状や、退院時の後遺症の程度を調べた。後遺症は、国際的な尺度に従い、全く症状がない「0」から、死亡の「6」まで7段階で点数化した。最初の病状を考慮して回復の度合いを比較すると、50人以上の患者を治療した病院に限っても、最も軽い病院の患者は、最も重い病院の患者より約1.2点分、退院時の後遺症が軽かった。患者数の少ない病院も加えると、差は2・3とさらに広がった。分析すると、治療チームに脳卒中専門医が9人以上いる病院は、5人以下の病院と比べ約0.4点、後遺症が軽かった。大規模な病院でも、専門医が少なければ治療成績は上がらなかった。一方、チーム内に脳卒中が専門でない一般内科医が1人でもいると、全員が専門医である病院に比べ約0・2点分重くなった。(平成19年3月22日 毎日新聞)

幹細胞で脳梗塞の新治療

札幌医大の研究グループは本人の骨髄の幹細胞を使って脳神経細胞の再生を促す国内初の脳梗塞の治療を発症後約2カ月の50代の女性に実施した。受精卵を壊してつくる胚性幹細胞(ES細胞)と比べ、倫理的に問題も少なく、拒絶反応が起きない利点がある一方、改善効果の詳しいメカニズムなど解明されていない点もある。国内の脳梗塞の発症者は年間約30万人に達していると言われており、今回の治療で期待した効果が得られるか今後の経過が注目される。治療を受けたのは昨年11月に脳梗塞を発症した北海道の女性。女性の骨盤から12月下旬に骨髄液を採取し、幹細胞を抽出した。この幹細胞を約2週間かけて培養し、細菌やウイルスに感染していないか検査した上で、12日午前に腕に点滴で投与した。拒絶反応は見られないという。脳に達した幹細胞から放出されたタンパク質の一種「サイトカイン」が血管や神経の再生を促す。回復が見られるのは数カ月後という。脳梗塞の症状を完全に治すことはできないが、生き残った神経細胞の保護や血管の再生を促すことで脳機能の促進が期待される。(平成絵19年1月12日 産経新聞)

脳梗塞、起こしやすい遺伝子 

日本人に多い脳梗塞発症に関係する遺伝子が、九州大学大学院医学研究院と東京大学医科学研究所の共同研究で分かった。DNA塩基の個人差で、動脈硬化と密接に関係するたんぱく質ができ、発症率に2.8倍の違いが出た。九大が1961年から福岡県久山町で行っている生活習慣病の疫学調査で集めた健常者と、九大病院などの脳梗塞患者(それぞれ1126人)の遺伝子を比較。DNA上の塩基配列の個人差(一塩基多型=SNP)を調べたところ、「PRKCH」と呼ばれる遺伝子のSNPが脳梗塞と関係していることが分かった。このSNPにはアデニン(A)と、グアニン(G)という塩基があり、人にはAA、GA、GGの3タイプがある。脳梗塞患者は健常者に比べ、Aを持つ人が1.7倍多かった。また、88年に久山町で行った健診受診者約1600人を追跡調査。健診後、脳梗塞を発症した人の遺伝子を調べた結果、AAのタイプの人は、GGの人より脳梗塞発症率が2.8倍高かった。脳梗塞などの生活習慣病は、複数の関連遺伝子と、生活・環境因子の影響で発症するため、Aの塩基を持っているからといって脳梗塞を起こすわけではないが、発症にかかわる遺伝子を解明することで、治療薬の開発や発症予防につながるという。九大などの研究グループは、高血圧や糖尿病など他の生活習慣病のほか、かいよう性大腸炎についても関連遺伝子の研究を進める方針。 九大大学院医学研究院の清原裕教授は「脳梗塞の関連遺伝子は他にもある。発症メカニズムを明らかにして治療法や予防法を確立したい」と話している。(平成19年1月8日 毎日新聞)

幹細胞で脳梗塞治療

札幌医大の研究グループは、患者本人の骨髄の幹細胞を使って脳神経細胞の再生を促す国内初の脳梗塞の治療を実施する。この治療は受精卵を壊してつくる胚性幹細胞(ES細胞)と比べ倫理的に問題も少なく、拒絶反応が起きない利点がある。一方、改善効果の詳しい仕組みなど解明されていない点もある再生医療だけに臨床結果が注目される。治療は脳梗塞の患者の骨盤から骨髄液を採取し、幹細胞を抽出。この幹細胞を数週間かけて培養し、腕に点滴で戻す。脳に達した幹細胞から放出されたタンパク質の一種「サイトカイン」が血管や神経の再生を促すという。脳梗塞を発症して2週間後のラットに、幹細胞を移植した結果、運動機能が回復。移植しないラットに比べ約2、3割速く走った。実験では脳梗塞発症直後のラットほど効果があったという。採取した幹細胞を培養して増殖する過程で細菌やウイルスに感染する危険性もあるが、研究グループは「培養した幹細胞を体内に戻す前に検査を十分行うので安全性は確保できる」と話している。(平成18年10月10日 日本経済新聞)

毎日5杯、緑茶で長寿…脳こうそく死亡率が大幅低下


緑茶を1日5杯以上飲む人は脳こうそくなど循環器疾患による死亡率が顕著に低く、長寿の傾向があることが栗山進一・東北大助教授らの調査でわかった。ただ、がん死亡を防ぐ緑茶の効果は確認されなかった。研究チームは1994年に40〜79歳だった宮城県内の4万530人(男性1万9060人、女性2万1470人)を、1995年から11年間にわたって追跡調査。1日に飲むお茶の量によって四つのグループに分け、死因などを分析した。1日に5杯以上飲むグループの死亡率は、1杯未満のグループに比べ、男性で12%、女性で23%低かった。特に、動脈硬化が原因となる脳こうそくでは、お茶を多く飲むと男性で42%、女性で62%も死亡率が低下した。研究チームは、男女の死亡率の差は、喫煙によるものと考えられるとしている。栗山助教授は「緑茶を飲む量とがんの死亡率には関連が無かったが、緑茶を飲むと長生きの傾向があるとは言えそうだ」と話している。(平成18年9月13日 読売新聞)


パーキンソン病遺伝子治療

自治医大病院は、運動障害を伴う難病パーキンソン病に対する国内初の遺伝子治療臨床研究を厚生労働省に申請した。パーキンソン病は、脳内の物質ドーパミンが不足して引き起こされる難病。脳内でドーパミンに変化する薬剤を内服する治療が有効だが、症状の進行に伴い、薬をドーパミンに変える体内の酵素が減少し、その効果が、薄れるという事態が避けられなかった。申請した治療法は、この酵素を作る遺伝子を特殊なウイルスに組み込み、脳に注入するというもの。(平成18年2月2日 読売新聞)

脳腫瘍手術に新技術

がんだけに集まる色素をレーザー光で光らせて、脳腫瘍の取り残しを可能な限り小さくする新しい外科手術法を、東京医科大学の秋元治朗講師(脳神経外科)らが開発した。脳腫瘍の再発を防ぐ手法として期待される。 脳腫瘍は外見上、脳の正常細胞と区別しにくい。がんの取り残しが少なくなく、再発のおそれがつきまとう。 一方で、正常細胞を傷付けると、言語や運動機能などの後遺症が出る懸念があった。そのため、がん細胞だけを正確に切除する方法が求められていた。新手法は、がん細胞に代謝されず、蓄積しやすい葉緑素由来の色素「レザフィリン」を、手術の12時間前に患者に注射。赤色レーザー光を照射するとがん細胞だけが赤く光る。 光った部分のみを切除していく。肉眼に頼っていた従来の方法に比べ、がん細胞の取り残しが少ない。直径が4〜7センチと大きい脳腫瘍患者13人を、この手法で手術したところ、10人は社会復帰が可能となった。 3人が術後7か月までに亡くなったが、うち2人は再発した患者で治療が難しい症例だった。(平成18年1月8日 読売新聞)

脳腫瘍グリオーマ治療、放射線増量で生存率上昇

脳腫瘍の中でも悪性度が高いものが多い神経膠腫(グリオーマ)の治療で、放射線を従来の限界とされてきた総量より3〜5割多く照射すると、生存期間が大幅に延びることが東京大医学部脳神経外科の藤堂具紀講師らの解析でわかった。副作用も増えたが、藤堂さんは「腫瘍による死亡のリスクと比べた場合、許容できる副作用の範囲と考えられる」という。論文は、英医学誌「ランセット・オンコロジー」電子版に掲載された。グリオーマは脳腫瘍の約3割を占め、手術が難しい場所にできることも多い。放射線は治療の柱の一つだ。藤堂さんらは、東大病院の過去の記録から79〜89年に総線量60グレイの従来型治療を受けた94人と、90〜02年に総線量80または90グレイの照射治療を受けた90人の経過を解析し、比較した。グリオーマで最も多い「神経膠芽腫」は、2年生存率が従来型の11%が、照射が多い例は38%に改善。次に多い「退形成星細胞腫」では5年生存率が15%から51%に大幅に上がった。放射線による副作用が出た人は、従来型は94人中4人、照射の多いケースでは90人中23人と増えたものの、重篤なものは少なかったという。脳の正常細胞に影響を及ぼさない限度線量は理論上60グレイと考えられており、がん細胞への照射もこれをもとに計画されることが多い。今回のような照射は、専門の放射線治療設備があればどの病院でも取り組める治療で、その延命効果は国際的にも議論になっている。(平成17年11月7日 朝日新聞)

血液からBSEやヤコブ病の原因物質検出

牛海綿状脳症(BSE)や変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)の原因となる異常プリオンというたんぱく質を血液から検出する技術を、米テキサス大などの研究チームが開発した。試験管内でたんぱく質を1000万倍に増やすことに成功したためで、プリオン病の早期診断や拡大防止に役立つと期待される。28日付の米科学誌ネイチャー・メディシン(電子版)に発表した。 異常プリオンは体内に入ると正常プリオンを異常型に変え、脳や脊髄(せきずい)などにたまる。血液に含まれる量はわずかなため、検出が難しかった。 研究チームは、試験管内で異常プリオンに正常型を加えて培養するなどして、短時間で1000万倍以上に増幅させることに成功。プリオン病を発症したハムスター18匹をこの方法で調べると、89%にあたる16匹の血液から異常プリオンを検出できた。健康なハムスター12匹からは検出されなかったという。 同チームは異常プリオンに感染させた未発症の動物についても検出が可能か調べているという。 東京医大の金子清俊教授(神経生理学)は「この方法が確立されれば、牛を殺さずに、手早く生前診断ができるようになり、大きな意義がある。動物の種によって検出しやすさに差があると聞いており、人や牛でも可能か確認を進める必要がある」といっている。(平成17年8月30日 朝日新聞)

開頭手術しない脳血管内治療、進まぬ普及

脳卒中を引き起こす脳の重い血管障害を、開頭手術せずに治療する「脳血管内治療」の実施率に、医療機関によって0〜100%と大きなばらつきのあることが、読売新聞社が実施した全国調査で明らかになった。平均の実施率も27%にとどまり、「体に優しい治療」として普及している欧米に比べ大幅に低かった。血管内に細い管を通して行う脳血管内治療は、頭部を切開する従来の手術に比べ、治療成績は変わらない一方、後遺症が少ないとの研究結果が海外で発表され、欧米各国の血管内治療の平均実施率は50〜70%と急増している。調査は今年3月、脳外科治療を行う全国205医療機関を対象に実施。昨年1年間の手術、血管内治療それぞれの件数などを文書で質問し、166施設(81%)から回答を得た。 瘤(こぶ)状に膨らんだ脳血管の一部が破れ、くも膜下出血を起こす破裂動脈瘤(りゅう)の場合、欧米並みに「患者の50%以上に血管内治療を実施している」と答えた医療機関は、19%の31施設に過ぎなかった。逆に全く血管内治療をしていない医療機関が10施設あった。全体の治療件数4855件のうち血管内治療の比率は27%だった。
(脳血管内治療)
脳の血管に細い管を送り込み、瘤(こぶ)状に膨らんだ部分に小さなコイルを詰めてふさいだり、狭くなった血管を広げたりする治療法。管は足の付け根の血管から入れ、エックス線で透視しながら頭部まで到達させる。血管の内側から治療するため、手術に比べ体への負担が少ない。(平成17年5月1日 読売新聞)

1日1合未満の飲酒で脳梗塞4割減 3合以上は脳卒中増

「日本酒を1日平均1合未満(ビールなら大瓶1本未満)飲む」習慣の中年男性は、「時々飲む」人に比べ、脳梗塞(こうそく)の発症率が4割少ないことが、厚生労働省研究班(班長・津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長)の調査でわかった。左党には都合がいい結果にも見えるが、それ以上飲むと出血性脳卒中の発症率が増え、飲酒のメリットを帳消しにしてしまう。「酒は適量に」が改めて裏付けられた。研究班は90年に岩手、長野など4県で生活習慣アンケートに答えた40〜59歳(当時)の人のうち男性約2万人がその後、脳卒中を発症したかどうかや、死亡した場合の原因を11年間追跡した。 その結果、脳の血管が詰まる脳梗塞についてみると、習慣的に飲酒している人(週1〜2日から毎日まで)の場合、1日の平均飲酒量が1合未満の3410人は、時々飲む(月1〜3回程度)2133人に比べ、発症率が0.61倍にとどまった。 1合を超えている人でも、時々飲む人とほとんど変わらなかった。 しかし、脳内やクモ膜下で血管が破れる出血性脳卒中の発症は、1日1合未満でも、時々飲む人の1.83倍で、酒量が多くなるにつれて高くなった。アルコールには血液を固まりにくくさせる性質があるので、脳梗塞を減らし、出血性脳卒中を増やすと考えられる。 両方を合わせた全脳卒中の発症率は、習慣的に飲む人の場合、1日1合未満であれば、時々飲む人とほぼ差がない。 が、1日3合以上になると、出血性脳卒中の増加が脳梗塞の減少を上回り、時々飲む人の1.64倍になった。 同じ追跡調査では、がんなども含む全死亡率と飲酒の関係も調べた。 やはり、習慣的に飲酒していても1日平均1合未満の人が死亡率が最低だった。 研究班の磯博康・筑波大教授は「脳卒中に関しては、飲酒はプラスにもマイナスにもる。1日3合以上の飲酒は勧められないことが、はっきりした。 ほかの病気も考慮すれば、1合未満が望ましい」と話している(平成16年6月8日 朝日新聞)

携帯の長期使用、脳腫瘍に影響なし 

携帯電話の電波による健康影響を調べている総務省の生体電磁環境研究推進委員会(委員長・上野照剛東京大教授)は10日、「長期にわたる携帯電話の使用が脳腫瘍(しゅよう)発生に及ぼす影響は認められない」とする報告書を公表した。委員会はこれまでも影響を否定する見解を出しているが、多数のネズミを使った2年間の実験で裏付けをした。 脳腫瘍を発生しやすくしたネズミに、電波を1日1時間半(週5日)、ほぼ一生にあたる2年の間浴びせた。浴びせる電波の強さは、携帯電話で認められている最大限とその3分の1。100匹ずつで実験した。電波を浴びせない300匹と、浴びた計200匹を解剖して比べた結果、脳腫瘍の発生率に差はみられなかった。 同委員会は旧郵政省が97年に設置。01年1月に、短期間の動物実験、脳腫瘍患者と携帯電話使用との関係についての疫学調査をもとに、「健康に悪影響を及ぼす証拠は認められない」との中間報告を公表した。引き続き、眼球への影響をみる動物実験や疫学調査を続ける。(平成15年10月10日 朝日新聞)

サルのES細胞でパーキンソン病治療

様々な細胞に成長する能力を持つ胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を使って、神経性の難病であるパーキンソン病を治療する動物実験に横浜市立大学や自治医科大学などが共同で成功した。 15日から横浜市で開く日本神経学会で発表する。 サルのES細胞から作った神経細胞を、パーキンソン病の症状を示す別のサルの脳に移植したところ、症状の改善がみられた。 人間に近い霊長類でこうした実験に成功したのは初めてという。 パーキンソン病は「ドーパミン」という脳内の情報伝達物質が減り、手足のふるえなどが起きる。 横浜市大の井上順雄・助教授、中山孝講師、田辺製薬などの共同チームがES細胞由来の神経細胞をサルの脳に移植。 12週間後に画像診断装置で調べたところ、ドーパミンを作る働きは移植なしの場合より10%以上高く、手足の動きなどもわずかに改善したという。 同じ方法をヒトのES細胞に応用すればパーキンソン病を治療できる可能性がある。 ただ、現時点ではヒトES細胞は基礎研究での利用に限られており、治療に応用するには新たな指針が必要になる。(平成15年5月15日日本経済新聞

レーザー照射で人工血栓を破壊

東北大学の高山和喜教授らは、血管に詰まった血の塊(血栓)を取り除くのに有望なレーザー技術を開発した。実験ではレーザー照射で生じた衝撃波が液体に強い流れを起こし人工血栓を破壊した。実用化できれば血栓溶融剤の使用量を減らせる。来年にも臨床試験を始め、脳梗塞(こうそく)や肺動脈血栓塞栓症などの治療に役立てる。開発したのは東北大流体科学研究所の高山教授と医学系研究科の吉本高志教授、高橋明教授ら。高山教授らは水中で小さな衝撃波を作り人工血栓を破壊させた。衝撃波は液体や気体などで起こる音速を超えて伝わる波。 レーザーはYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)結晶にホルミウムを添加した波長2.1マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルのタイプを採用した。結石破砕など医療にも使われている。(平成14年12月2日 日経産業新聞)

脳梗塞に免疫抑制剤が有効 神経細胞死をストップ

脳梗塞(こうそく)の治療に二つの免疫抑制剤が有効なことを東京医大などの研究チームが動物実験で確かめた。脳梗塞になると神経細胞が死んでいくが、従来は細胞死そのものを止める薬はなかった。ところが実験では細胞死を抑えたという。ともに臓器移植などで使われている薬で、チームは臨床応用につなげたい考えだ。 チームは、同医大の内野博之講師や東京都臨床医学総合研究所の芝崎太室長ら。 免疫抑制剤は、カルシニューリンという酵素の働きを抑える。この酵素が細胞死にもかかわり、しかも神経細胞に多くみられることからチームは免疫抑制剤が、脳梗塞の治療に使えるのではないかと考えた。 脳の血流を止めて脳梗塞を起こしたネズミに免疫抑制剤のシクロスポリンAを与えると、ほぼ100%細胞死を抑え、タクロリムスでは50%ほど抑制した。何も与えないネズミでは細胞が死んでいった。 シクロスポリンAには別のたんぱく質の働きを抑える効果もあり、この差が出たとみられる。チームはメーカーと共同研究。免疫抑制作用は弱く、神経細胞保護作用が強い物質も開発した。 芝崎室長は「細胞が死ぬ仕組みは心筋梗塞などともかかわる。こうした薬を臨床応用につなげたい」と話している。(平成14年11月20日 朝日新聞)

くも膜下出血、「開頭」より血管内手術が有効

くも膜下出血の治療は、広く行われている開頭手術より、開頭せず患者の負担の小さな「血管内手術」の方が、死亡率や重い障害が残る割合も低い、という臨床試験結果を、オックスフォード大など欧米の研究グループが英医学誌ランセットに発表した。日本ではこの治療法の採用はまだ約1割にとどまっている。 くも膜下出血の多くを占める、脳動脈瘤(りゅう)が破裂した症例を対象に44の医療施設で臨床試験が行われた。 開頭手術では、出血した血管のこぶの根元をクリップでとめ、血流を遮断して再出血を防ぐ。 血管内手術では、足の付け根の血管から、先端に細いコイルの付いた管を入れて患部の血管まで届かせ、コイルをこぶの中に糸玉のように詰めてふさぐ。 約2千人の患者を無作為に2群に分けてそれぞれの方法で治療。1年後の成績を比べた。 死亡か重い障害が残った割合は、開頭手術だと30・6%だが、血管内手術では23・7%だった。手術中にこぶが破裂する率も、開頭手術19・2%、血管内手術5・4%だった。 血管内手術は新しい治療法で、日本では97年に医療保険の適用が認められたが、脳動脈瘤手術全体のまだ12%。実施には専門的な訓練が必要で、日本脳神経血管内治療学会が認定した指導医・専門医はまだ153人だけ。(平成14年11月17日 朝日新聞)

パーキンソン病を遺伝子治療へ

脳の中の情報伝達物質に関連する遺伝子を使って、パーキンソン病の症状を改善させる動物実験に米国やニュージーランドのグループが成功。米食品医薬品局(FDA)の許可を得て、人間に対する臨床試験を近く始めることになったと10日、発表した。米トーマス・ジェファソン大などのグループは、脳の興奮を鎮める作用があるとされる「ガンマアミノ酪酸(GABA)」という物質の生成にかかわる酵素の遺伝子を、ウイルスに組み込み、パーキンソン病に似た症状を起こしたラットの脳内に注射した。 ウイルスを注入されたラットの脳内ではGABAが作られ、行動の異常などパーキンソン病に症状が抑えられるなどの効果が確認された。 グループによると、臨床試験に関するFDAの許可を得ており、早ければ年内にも、症状が進み他の療法では効果がないパーキンソン病の患者12人に対し、この遺伝子治療を始めるという。(平成14年10月11日 日本経済新聞)

脳炎など引き起こす西ナイルウイルス、米で大流行

蚊が媒介して脳炎などを引き起こす「西ナイルウイルス」が米国で大流行し、死者が出ていることを受け、厚生労働省は23日から担当職員を米国に緊急派遣し、情報収集することを決めた。 「西ナイルウイルス」は鳥の体内で増殖し、蚊の媒介で人間にも感染する。大半の人は感染しても発病しないが、高齢者や体力の弱った人が発病すると脳炎を引き起こし、死亡することもあり得る。米国内では今年、1745人が発病し、このうち84人が死亡している。日本国内では確認されていない。 米疾病対策センター(CDC)は今月19日、「輸血や臓器移植でも感染することが確認された」と発表しており、厚労省では、献血血液の安全確保のためにも、職員の緊急派遣が必要と判断した。 現地では、CDCや米食品医薬品局(FDA)などを訪れ、輸血用血液のウイルス検査方法、流行しているウイルスの型や臨床症状、予防対策などについて情報収集する。 同省では現在、渡米する人に、虫よけ薬の使用や、長そで長ズボンの着用を呼び掛けるチラシを空港で配布。ウイルスを持った蚊が航空機で運ばれてこないか監視するため、検疫所での検査も実施している。(平成14年9月23日 読売新聞)


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