コレステロール、「悪玉」成分解明 「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロールのうち、動脈硬化を促進するのは成分の一つの「酸化LDL」であることを、東北大の片桐秀樹教授らがマウスの実験で確かめた。酸化LDLはLDLコレステロールが酸化したもので、LDLコレステロール全体の中のごくわずかな成分。片桐教授らは、高LDLコレステロール血症のマウスの肝臓に酸化LDLを蓄積させる遺伝子を導入。血液中のLDLコレステロール全体の量はほとんど減らさずに、酸化LDLだけを3分の1程度に下げた状態を作り出した。4週間後、普通の高LDLコレステロール血症マウスは全身の動脈硬化の病変部分が実験前より約4割増加。一方、酸化LDLだけを減らしたマウスは動脈硬化がまったく悪化しなかった。また動脈硬化促進物質の過酸化脂質などの血中濃度も減少した。LDLコレステロールは細胞膜の材料などになる物質もあり、薬でLDLコレステロール全体を下げ過ぎることを懸念する専門家もいる。片桐教授は「酸化LDLだけを減少させる治療法が開発できれば、安全に動脈硬化の進行を抑制し、心筋梗塞の発症予防ができるようになる可能性がある」と話している。(平成20年7月2日 毎日新聞) 脳卒中後のスタチン中止で死亡リスク倍増 脳卒中後の患者がコレステロール降下薬スタチンの使用を中止すると、使用を続けた患者に比べ、1年以内の死亡リスクが倍増することがイタリアの研究で示された。 脳卒中後のスタチン使用の利益はこれまでにも複数の研究で示されている。例えば、先ごろ報告されたスペインの研究では、もともとスタチンを使用していた患者89人のうち、脳卒中後にスタチン治療を中断した患者では46人中27人が3カ月後に死亡するか寝たきりになったのに対して、スタチンを中断しなかった患者で同様の結果となったのは43人中16人であった。 今回のイタリアの研究は脳卒中を起こした人のうち、心疾患などの大きな疾患のない患者631人(平均70歳)を追跡したもの。退院時、全員にスタチンを含む薬剤の服用を指示したが、4年半後、38.9%がスタチン使用を中止していた。中止までの平均期間は48.6日であった。統計解析の結果、スタチン治療の中止は死亡の独立した危険因子となることが判明。中止した理由として、約4分の1の患者が消化不良などの軽い副作用を挙げたが、それ以外は特に理由はなかった。このほか、抗血栓薬(抗血小板薬)の使用中断によっても死亡リスク増大がみられることも明らかになった。高齢者は、関節などの痛みを訴えてスタチンを中止したがることが多く、薬のせいではないと納得させることが難しいという。スペインの研究は入院中の急性の影響に着目したもので、イタリアの研究は退院後に着目したものだが、いずれもスタチン治療継続の重要性を示すものだと専門家は述べている。(平成19年9月6日日本経済新聞) 高脂血症薬、アルツハイマー病のリスク下げる コレステロール値を下げる高脂血症治療薬のスタチン系薬剤には、アルツハイマー病になるリスクを下げる効果があるかもしれない。米ワシントン大グループが発表した。グループは認知能力が正常な65〜79歳の110人について、死後、脳を調べた。その結果、スタチンを飲んでいた人はそうでない人に比べて、アルツハイマー病患者の脳に特徴的な、細胞の外にたんぱく質がたまる「老人斑」や、細胞の中にたんぱく質がたまる「神経原線維変化」が少なかった。こうした変化が進むと、神経細胞が死に、記憶障害などが起こると考えられている。スタチンによる高脂血症改善が、アルツハイマー病発病のリスクを下げるという報告はこれまでもあった。スタチンは近年、血管の炎症を抑える効果が注目されており、高脂血症の予防と炎症抑制がともにアルツハイマー病の予防と関係しているのではないかとグループはみている。(平成19年8月29日 朝日新聞) 善玉コレステロールを増やすには 善玉コレステロールを増やすには、少なくとも1回に30分以上、1週間で計2時間以上の運動量が必要であることが、お茶の水女子大の研究グループの調査でわかった。血液中の余分なコレステロールを回収することから「善玉」とされるHDLコレステロールは、運動によって増えるとの指摘はあったが、どの程度行うべきか明確な指標はなかった。同大生活習慣病医科学講座の児玉暁研究員と曽根博仁准教授は、ウオーキング、ジョギングなど有酸素運動によるHDLコレステロールの変化に関する25の研究論文のデータを解析した。 それによると、HDLコレステロールの上昇には、週当たり推定消費エネルギーで900キロ・カロリー、時間にして2時間以上の運動量が必要だった。一般に1時間の速歩きで300キロ・カロリー程度消費するとされる。運動1回当たりでは、30分以下ではほとんど効果がなく、以降10分増すごとにHDLコレステロールは約1・4ミリ・グラム上昇した。運動の激しさとは無関係だった。足腰を鍛えたり体脂肪を減らしたりするには、短時間の運動をこまめにすることも効果的とされるが、「HDLコレステロールの改善には、ウオーキング、水泳など30分以上のまとまった運動を週に数回行う必要があるとみられる」と曽根准教授は話している。(平成19年5月29日 読売新聞) 高脂血症治療薬に早起き効果 高脂血症の治療薬「フィブレート製剤」に、睡眠のリズムなどを刻む「体内時計」を調節する働きがあることを、産業技術総合研究所生物時計研究グループが突き止めた。睡眠障害を持つマウスにこの薬を飲ませたところ、いつもより早起きし、正常マウスと同じように活動することがわかった。研究チームは今後、この治療薬を飲んでいる患者に早起きの傾向があるか調べ、睡眠障害の治療薬の開発につなげていきたいとしている。 研究チームは、薬を飲む時間帯と効き方との関係をマウスを使って調べた際、薬を飲むマウスが早起きになっていることに気付いた。 薬を含むエサを食べたマウスは3時間ほど活動する時間帯が早くなり、起きる時間が遅くなる「睡眠相後退症候群」の症状を持つマウスに与えたところ、症状が改善したという。薬が体内時計を調節する仕組みは不明だが、同研究グループの大石勝隆・主任研究員は「時差ぼけの改善にも効果が期待できる」としている。(平成19年4月26日 読売新聞) 「高脂血症」あらため「脂質異常症」に 日本動脈硬化学会は、心筋梗塞の引き金になるとされるコレステロール・中性脂肪値の異常を診断する新しい指針を公表した。総コレステロール値を診断の基準にするのはやめ、「悪玉」とされるLDLコレステロール値などで診断するのが柱。病名は「高脂血症」から「脂質異常症」に変更する。指針の改定は5年ぶり。従来の指針では、総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪のいずれかが基準より高いか、「善玉」とされるHDLコレステロール値が基準より低い場合を総称して「高脂血症」と呼んできた。 しかし、善玉コレステロール値が低い場合も「高脂血症」と呼ぶのは適当でないとして、病名を変えた。 また、総コレステロール値は血清1デシリットルあたり220ミリグラム以上を「異常」としてきたが、これだと善玉コレステロールだけが多い人も治療対象になってしまう可能性があるため、診断基準から除いた。 新指針では、LDLコレステロールが140ミリグラム以上、中性脂肪が150ミリグラム以上、HDLコレステロールが40ミリグラム未満の場合を「脂質異常症」と診断する。(平成19年4月25日 朝日新聞) 善玉コレステロールを増やすには 善玉コレステロールを増やすには、少なくとも1回に30分以上、1週間で計2時間以上の運動量が必要であることが、お茶の水女子大の研究グループの調査でわかった。血液中の余分なコレステロールを回収することから「善玉」とされるHDLコレステロールは、運動によって増えるとの指摘はあったが、どの程度行うべきか明確な指標はなかった。同大生活習慣病医科学講座の児玉暁研究員と曽根博仁准教授は、ウオーキング、ジョギングなど有酸素運動によるHDLコレステロールの変化に関する25の研究論文のデータを解析した。 それによると、HDLコレステロールの上昇には、週当たり推定消費エネルギーで900キロ・カロリー、時間にして2時間以上の運動量が必要だった。一般に1時間の速歩きで300キロ・カロリー程度消費するとされる。運動1回当たりでは、30分以下ではほとんど効果がなく、以降10分増すごとにHDLコレステロールは約1・4ミリ・グラム上昇した。運動の激しさとは無関係だった。足腰を鍛えたり体脂肪を減らしたりするには、短時間の運動をこまめにすることも効果的とされるが、「HDLコレステロールの改善には、ウオーキング、水泳など30分以上のまとまった運動を週に数回行う必要があるとみられる」と曽根准教授は話している。(平成19年5月29日 読売新聞) 高脂血症治療薬に早起き効果 高脂血症の治療薬「フィブレート製剤」に、睡眠のリズムなどを刻む「体内時計」を調節する働きがあることを、産業技術総合研究所生物時計研究グループが突き止めた。睡眠障害を持つマウスにこの薬を飲ませたところ、いつもより早起きし、正常マウスと同じように活動することがわかった。研究チームは今後、この治療薬を飲んでいる患者に早起きの傾向があるか調べ、睡眠障害の治療薬の開発につなげていきたいとしている。 研究チームは、薬を飲む時間帯と効き方との関係をマウスを使って調べた際、薬を飲むマウスが早起きになっていることに気付いた。 薬を含むエサを食べたマウスは3時間ほど活動する時間帯が早くなり、起きる時間が遅くなる「睡眠相後退症候群」の症状を持つマウスに与えたところ、症状が改善したという。薬が体内時計を調節する仕組みは不明だが、同研究グループの大石勝隆・主任研究員は「時差ぼけの改善にも効果が期待できる」としている。(平成19年4月26日 読売新聞) 「高脂血症」あらため「脂質異常症」に 日本動脈硬化学会は、心筋梗塞の引き金になるとされるコレステロール・中性脂肪値の異常を診断する新しい指針を公表した。総コレステロール値を診断の基準にするのはやめ、「悪玉」とされるLDLコレステロール値などで診断するのが柱。病名は「高脂血症」から「脂質異常症」に変更する。指針の改定は5年ぶり。従来の指針では、総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪のいずれかが基準より高いか、「善玉」とされるHDLコレステロール値が基準より低い場合を総称して「高脂血症」と呼んできた。 しかし、善玉コレステロール値が低い場合も「高脂血症」と呼ぶのは適当でないとして、病名を変えた。 また、総コレステロール値は血清1デシリットルあたり220ミリグラム以上を「異常」としてきたが、これだと善玉コレステロールだけが多い人も治療対象になってしまう可能性があるため、診断基準から除いた。 新指針では、LDLコレステロールが140ミリグラム以上、中性脂肪が150ミリグラム以上、HDLコレステロールが40ミリグラム未満の場合を「脂質異常症」と診断する。(平成19年4月25日 朝日新聞) 高脂血症の診断基準 日本動脈硬化学会は、心筋梗塞など動脈硬化性疾患の予防や治療の指標から従来の「総コレステロール」をはずし、代わりに「悪玉コレステロール」といわれるLDLコレステロールなどを判断基準とする新しい診療ガイドラインを策定した。狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの病気を招く「高脂血症」の診断基準には、一般的に総コレステロールが使われている。02年に策定したガイドラインでも、血液1デシリットルあたり220ミリグラム以上を「高コレステロール血症」とし、心筋梗塞などを防ぐには220ミリグラム未満に抑えるよう求めてきた。しかし、「高コレステロール」の中でも、「善玉」のHDLコレステロールが多い場合にはLDLコレステロールは通常より低く、動脈硬化につながりにくい。日本人はこうしたケースが多く、総コレステロールを基準にすると、必要量以上の投薬が行われるなどの問題が分かってきた。このため、5年ぶりの改定では総コレステロールを基準から外し、高コレステロール血症は「LDLコレステロール140ミリグラム以上」とした。(平成19年2月4日 毎日新聞) 抗肥満物質、食欲抑制のたんぱく質発見 群馬大大学院の森昌朋教授らの研究グループは、摂食やエネルギー代謝を制御する脳の視床下部に直接働きかけて食欲を抑制するたんぱく質「ネスファチン1」を発見した。動物実験で既に、皮下脂肪型と内臓脂肪型の両方の肥満の解消効果を実証しており、「メタボリック・シンドローム解消の切り札として、できるだけ早く臨床での使用を目指す。正常体重の人の場合、脂肪細胞が分泌するたんぱく質「レプチン」の食欲抑制作用から肥満になりにくい。だが、肥満状態の人には、レプチンが作用しないことは以前から知られていた。森教授らは、脂肪細胞だけでなく、脳細胞で分泌する九つのたんぱく質から、レプチンと同様に視床下部に作用して食欲を抑制させる別のたんぱく質があることを発見し、「ネスファチン1」と名付けた。レプチンの作用しない肥満状態のネズミの脳髄液中にネスファチン1を注射して実験したところ、投与しないネズミと比べ、1日の摂食量は約30%減少、11日後の皮下脂肪は約20%、内臓脂肪は約30%減少させることが確認された。 今後、臨床使用までに、毒性実験など人体への副作用の有無を解明するなど課題は残っている。森教授は「同様の作用をするたんぱく質はこれまでにも数種類発見されているが、レプチンと同等の食欲抑制作用を有するものは、ネスファチン1だけ」と話している。(平成18年10月2日 毎日新聞) キムチでお通じ効果 脂肪増えずに筋肉増 キムチに排便を促す効果があるという女子大生を対象にした実験結果を、桃屋研究所の吉田睦子研究課長らがまとめた。吉田課長らは2005年9─12月、18─22歳の学生37人の協力を得て、キムチを漬け込むために使うトウガラシやニンニクなどの薬味成分を1日に10グラム、鍋料理や納豆に混ぜて食べてもらった。 2週間後の検査で、24人(65%)は排便の量が平均23%増え、軟らかくなった。23人(62%)は体重が増加。うち21人は、体脂肪は増えずに骨量や筋肉量が増えた。悪玉コレステロール(LDL)は23人(62%)で減少。生活習慣病のリスクがある基準値以上だった8人のうち4人は基準値以下になった。(平成18年9月15日 中国新聞) 総コレステロール値と心筋梗塞の発症とは無関係 血液中の総コレステロールの値は心筋梗塞(こうそく)を発症する危険性とほとんど関係がないとの調査結果を、青森県立保健大の嵯峨井勝教授(環境保健学)らが15日、東京都内で開かれた日本動脈硬化学会で発表した。関係するのは血圧や「善玉」と言われるHDLコレステロールの値だった。嵯峨井教授は「総コレステロールより血圧に注意し禁煙と運動で善玉コレステロールを増やすべきだ」と訴えている。同学会は、血液1デシリットル中の総コレステロールが220ミリグラム以上を「高コレステロール血症」と定め、心筋梗塞の可能性が高まるとして、喫煙者や45歳以上の男性、55歳以上の女性は220未満に抑えるべきだとの指針を発表している。220以上は全国で2300万人と推定されるが、今回の調査は指針に疑問を呈する形となった。嵯峨井教授らは、04年度に青森県内で健康診断を受けた40歳以上の男女1491人について、総コレステロール値やHDL、血圧、年齢、性別、喫煙の有無を調査。全国の男女5万人を6年間追跡して心筋梗塞の発症率を調べた別の調査と比較した。総コレステロールが260程度でも、大半の人の発症率は1%未満にとどまった。180程度でも、喫煙などの影響で同約5%に達する人もおり、総コレステロール値と心筋梗塞の発症率にはほとんど関係がなかった。(平成17年16日 毎日新聞) 体内ダイオキシン、高脂血症薬で削減 体内のダイオキシンやポリ塩化ビフェニール(PCB)は、高脂血症を治療する医薬品の服用で濃度を下げられることが、森千里・千葉大学大学院教授(環境生命医学)らの研究で分かった。汚染度の高い人ほど効果が大きく、6カ月間で最大40%の削減効果があったという。福岡県久留米市で開かれている日本臨床環境医学会で2日、発表した。 ダイオキシンやPCBは濃度の多少はあるが、現代人の体内に蓄積され、ごく微量で中枢神経の発達やホルモン分泌にダメージを与えるとの指摘もある。体内濃度を下げる手法が示されたことで具体的な被害防止策を講じる道が開かれた。 森教授らは、ダイオキシンやPCBが油脂に極めて溶けやすいことに着目。高脂血症の治療のためコレステロール値を下げる医薬品「コレスチミド」を服用する患者9人に協力を求め、治療前と半年間の服用後で、体内のダイオキシンやPCB濃度の変化を調べた。 9人の平均で、治療前はダイオキシンが血液中の脂肪1グラムに44ピコグラム(ピコは1兆分の1)、PCBが同260ピコグラムだったのが、服用後はダイオキシンが同35ピコグラム(20%減)、PCBが同200ピコグラム(23%減)になっていた。中でもダイオキシンが同57ピコグラム、PCBが同360ピコグラムだった患者は、服用後それぞれ同35ピコグラム(39%減)、同200ピコグラム(44%減)と、大幅に減少。 9人とも、ダイオキシンとPCBの減少率はほぼ同じだった。 ダイオキシンやPCBは脂肪組織に多く蓄積される。排出速度が遅いうえ、いったん胆汁に溶けて腸内に放出されても、再び腸から体内に吸収される。コレスチミドは腸からの脂肪吸収を抑制することから、効果を示したとみられるという。研究グループはこの結果を受け、40人規模で効果を確認する試験を進めている。森教授は「食生活の改善などと組み合わせれば、さらに効果が上がる可能性が高い」としている。(平成17年7月2日 朝日新聞) もろみ酢に、血中コレステロール値の改善効果 ヘリオス酒造は6月6日、「もろみ酢」に血中コレステロール値を低下させる効果があることを確認したと発表した。もろみ酢は、泡盛を製造する際に生じる「もろみ」を原料に造られる酢のこと。「クエン酸」が酸味の主成分で、酢酸が酸味の主体の食酢より酸味が控えめなのが特徴。血中のコレステロール値が高め(210mg/dL以上)の中高年の男女12人を対象に5週間、1日60mLを飲用させた。飲用3週目、5週目、さらに摂取終了後5週間経過した時点で、コレステロール値の測定。 被験者は、高脂血症に対する薬物や機能性食品の服用を止める以外は通常の生活を送った。その結果、血清中の総コレステロール値が有意に低下し、正常値に近くなった。さらに、摂取終了後5週間を経過した後でも、総コレステロール値が、正常値に近い状態が保たれた。なお、総コレステロール値と同様、LDLコレステロールの減少も確認されている。この研究成果は、今年8月6日〜7日に幕張メッセ国際会議場で開催される第7回応用薬理シンポジウムで、日本薬科大学医療薬学科の渡辺泰雄氏が発表する。(平成17年6月9日 medwave) 酢酸の血中コレステロール値低下作用を確認 ミツカングループ本社中央研究所は、血中コレステロール値が高めの人で、酢酸がコレステロール値を低下させる作用があることを明らかにし、第59回日本栄養・食糧学会で発表した。酢酸の高コレステロール血症に対する効果をヒトで確認したのは初めてという。研究は、血中コレステロール値が180〜260mg/dlと高めの男女95人を対象に行われた。まず95人を、年齢や体重、血圧、コレステロール値などが均等になるように3群に分け、酢酸1500mgを含む食酢30mlを含む飲料を飲むグループ、酢酸750mgを含む食酢15mlを含む飲料を飲むグループ、有機酸である乳酸を含むプラセボ飲料を飲むグループに分けた。試験前に4週間の前観察を行い、血中コレステロール値が安定していることを確認後、各飲料を夕食時や夕食後に12週間毎日飲用してもらった。飲用期間中と、飲料終了4週間後に、血液検査と問診を行った。その結果、プラセボ飲料を飲んだグループでは有意な血中コレステロール値の変化が見られたかった(血中コレステロール値の低減幅は2.5mg/dl)のに対し、酢酸を含む飲料を飲んだ2グループでは、有意に血中コレステロール値の低下が見られた。12週間後の血中コレステロール値低減幅は、酢酸1500mgのグループで14mg/dl、酢酸750mgで13mg/dlだった。一方、飲用終了後のリバウンド現象は両グループで見られなかったという。ミツカンでは、「食酢は原液のまま飲むと胃に負担をかける恐れがあるので、1日15〜30ml程度を5倍程度に希釈して飲んでほしい」としている。(平成17年5月18日 medwave) ビール酵母がコレステロール抑制 麦芽などの発酵に使われる「ビール酵母」に、心筋梗塞(こうそく)や糖尿病の原因となるコレステロールを抑える効果があることが、アサヒビールの研究で明らかになった。 血液中の白血球の免疫力向上も期待できるという。21日から仙台市で始まる日本栄養・食糧学会で発表する。実験は、24〜69歳の男性37人を2グループに分け、乾燥させたビール酵母を含む錠剤と含まない錠剤(偽薬)を、それぞれ8週間毎日摂取させて経過を観察した。血液中の脂質を調べたところ、ビール酵母を摂取したグループ(24人)は、肝臓から全身にコレステロールを運ぶ「LDLコレステロール」値が有意に低下し、総コレステロール値も13人で低下した。LDLコレステロールの抑制は動脈硬化防止に効果があるとされ、生活習慣病の予防が期待できるという。また、白血球が細菌などの異物を排除する能力も、平均69%から73%に上昇した。偽薬を摂取したグループでは、こうした変化は見られなかった。ビール・発泡酒には通常ビール酵母は含まれず、いくら飲んでも同様の効果はない。劣化を防ぐため濾過(ろか)して取り除いてしまうためだが、同社は「ビール酵母が有用な食品・医薬品素材であることが示唆された。脂質代謝や免疫機能に及ぼす影響をさらに解明し、新たな用途へ応用したい」としている。(平成16年5月14日 朝日新聞) 高血圧・高脂血症治療配合剤「カデュエット」をFDA承認 高血圧と高脂血症の両方を治療する成分を配合した世界で初めての治療薬「カデュエット」がFDAの承認を受けたと、ファイザーは6日に発表した。近く発売するとしている。両方を併発している患者は、単発よりも心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まると言われる。配合剤により服薬コンプライアンスを高めることができ、同社は血圧とコレステロール双方を同時に適正水準で管理できるようになることを期待している。この薬はファイザーが開発した。配合されているのは、同社の高血圧治療薬「ノルバスク」(一般名・ベシル酸アムロジピン)と高脂血症治療薬治療薬「リピトール」(アトルバスタチンカルシウム)。昨年3月に申請され、今年1月30日付で承認された。 同薬は、欧州では昨年12月に申請、日本では「開発を含め検討中」だとしている(平成16年2月6日 薬事日報) 緑茶のカテキン悪玉コレステロールの酸化を抑制 緑茶に含まれるカテキンがいわゆる悪玉コレステロールとされるLDLの酸化をinvitro(実験系)で抑制することはよく知られているが、ヒトにおける現実的な摂取量でも効果が期待できることが明らかになった。緑茶摂取とLDLの抗酸化作用との関連について、防衛医科大学校の高橋理恵氏が9月28日のポスターセッション「酸化3」で、また、血小板凝集能などとの関連について、同じグループに所属する同校内科助手の大森玲子氏が27日のポスターセッション「運動・栄養・食事1」でそれぞれ報告した。高橋氏らは、平均年齢33歳(29〜37歳)、非喫煙者の健常男性15人を対象として、緑茶負荷を行った。まず1週間の緑茶摂取禁止期間を設定してウオッシュアウトを行い、その後2週間は水摂取期間、次の2週間は緑茶摂取期間とし、100mlずつ、朝2杯、昼2杯、夜3杯の計7杯を投与した。緑茶投与時のカテキン量は1日当たり542.5mgだった。ウオッシュアウト経過後の第1週末、水投与経過後の第3週末、緑茶投与後の第5週末に血液検査を実施した。 その結果、酸化LDLの代表的形態である血清MDA-LDL濃度と、MDA-LDLとLDL-Cの比は、緑茶摂取時には有意に減少し、LDLの酸化が日常的な摂取量の緑茶カテキンによって抑制される可能性が示唆された。一方、大森氏らは、同一の介入試験における血小板凝集能と血中MMPs(matrix metalloprotease:基底膜破壊酵素)の変化を測定した。その結果、緑茶摂取による血小板凝集能の抑制傾向は見られたが有意差はなかったという。最近、ペットボトル飲料の普及で若者が日常的に緑茶を飲む姿を見かけるようになってきている。日常摂取量の緑茶カテキンに抗動脈硬化作用が確認されたことは、生活習慣の西洋化による動脈硬化関連疾患の増加に歯止めをかける期待を持つことができそうだ。(平成15年9月29日 medwave) シンバスタチンが慢性心不全に有効と発表 佐賀医科大の野出孝一教授(内科学循環器部門)は19日、万有製薬主催のセミナーで、高脂血症治療薬シンバスタチン(製品名「リポバス」)が慢性心不全に有効であることを示す試験結果を発表した。慢性心不全は、ACE阻害薬やβ遮断薬などで治療されているが、十分に治療しきれていない現状がある。野出教授は、ACE阻害薬などとシンバスタチンを併用することで、症状を改善できると説明した。(平成15年8月21日日刊薬業) 糖尿病やトリグリセリドが冠危険因子として重要 アジア系人種社会においては、冠危険因子として、高血圧、糖尿病と並んで高トリグリセリド(中性脂肪)血症の果たすウエイトが高いという調査結果が発表された。アジア太平洋地域の10カ国において、心筋梗塞などの急性冠症候群を発症した患者の持っていた危険因子を比較した結果。欧米人と比べてアジア系人種では冠動脈疾患の予防において、血中コレステロールだけに留まらない総合的な管理がより重要であることが、この結果から示唆される。研究結果は7月18日のポスターセッションで、箕面市立老人保健施設長の山本章氏らが発表した。この「アジア太平洋地域の10カ国における冠危険因子に関する調査研究(ASPAC-study)」では、日本、韓国、台湾、タイ、マレーシア、シンガポール、フィリピン、インドネシア、オーストラリア、ニュージーランドの計130施設で、急性冠症候群患者における危険因子とその管理について調査している。今回は、年間50例以上の心筋梗塞患者を扱う22施設480例について、患者のカルテから危険因子を追跡した。その結果、高血圧はどの国にも共通して見られた普遍的な危険因子だった。例えば急性冠症候群患者における高血圧者の頻度は日本で72%、オーストラリア・ニュージーランドで71%とほとんど差がない。一方、血清高コレステロール血症(>250mg/dl)の頻度は、日本人患者では男性15%、女性30%であり、一般人口中の約2倍に上っていたものの、オーストラリア・ニュージーランドと比べると2分の1だった。アジア系人種社会において特徴的だったのが、急性冠症候群患者における糖尿病の頻度。オーストラリア・ニュージーランドが19%だったのに対し、シンガポール44%、タイ35%、日本、マレーシア34%、台湾31%と高い値を示した。ただし、フィリピン(26%)、インドネシア(22%)、韓国(20%)では20%台に留まった。また、日本において各血清脂質の持つウエイトを調べた結果では、コレステロールよりもトリグリセリドの方が急性冠症候群の発症に与える影響は強く、250mg/dl以上の患者の頻度は一般人口中の3倍にも上った。以上から山本氏は、「日本人における冠動脈疾患のリスクファクターは、高コレステロール血症だけではないということを強く認識しなければいけない」と強調した。(平成14年7月23日medwave) 動脈硬化性疾患診療ガイドライン決まる 日本動脈硬化学会は19日、動脈硬化治療の基準となる新しいガイドライン「動脈硬化性疾患治療ガイドライン2002年版」を発表した。 新ガイドラインは、97年に設定した現行ガイドラインに、新しく得られたエビデンスを反映させるためにまとめられたもの。改訂にあたっては高脂血症以外の危険因子にも十分配慮し、それらのリスクが集積されたマルチプルリスクファクター症候群の把握にも着目。LDLコレステロール以外の主要冠動脈危険因子として加齢(男性45歳以上、女性55歳以上)、高血圧、糖尿病、喫煙などを設定し、危険因子の有無によって治療目標とする総コレステロール値を細かく設定しているのが大きな特長となっている。 具体的には、総コレステロールの目標値を180mg/dl以下、200mg/dl以下、220mg/dl以下、240mg/dl以下の四段階に設定。危険因子の多い患者ほど低い目標値を定め、きめ細かい管理を目指すと共に、リスクの軽減が目標とされている。 また、今回のガイドライン改訂で注目されていた高コレステロール血症の診断基準値は、97年版と同様に総コレステロール値220mg/dlに設定された。220mg/dl以上の患者数は2370万人に上ると推定されている。なお、同ガイドラインでは、薬物療法適応基準は設定されておらず、治療手段はライフスタイルの改善によることを優先させている。(平成14年7月22日 薬事日報) |
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