肺疾患

女性ホルモン、肺がんリスク高める

女性ホルモン剤が肺がんのリスクを高めることが、厚生労働省研究班(主任究者・津金昌一郎国立がんセンター予防研究部長)の大規模疫学調査で分かった。研究チームは今回の調査結果を肺がんが発症する仕組みの解明につなげたい考え。 成果は札幌市で開催中の日本癌(がん)学会で15日、発表する。研究班は喫煙経験がない40―69歳の女性4万5000人を8―12年追跡調査した。このうち肺がんになった153人を詳しく調べたところ、子宮筋腫などの手術を受けて人工的に閉経し、エストロゲンなどのホルモン剤を多く使用した人は、使用していない人に比べて肺がんにかかるリスクが2倍以上高いことが分かった。(平成17年9月15日 日本経済新聞)

血液で肺がん診断

血液の分析だけで肺がんかどうかを80%の精度で診断できる方法を東京大学医科学研究所のチームが考案した。患者の血中に多く健康な人には少ないたんぱく質を発見、これらを検出することで判定する。肺がんは国内で最も死亡者の多いがんで、年間約5万6000人に達する。簡単な血液検査で診断できれば、有力な肺がん対策になりそうだ。研究チームは肺がん細胞の表面に特殊なたんぱく質が伸びていることを発見。一部が切れて細胞の周囲に散らばるほか、血液に混ざるという。このたんぱく質を目印に患者105人、健康な人72人の血液を調べたところ、63%の精度で患者を正しく判定できた。さらに、肺がんのほか大腸がんの患者に多い別のたんぱく質も組み合わせて診断すると、80%まで高まった。肺がんは初期症状が表れにくく、検査で発見したときは転移している恐れがある。最新のCT(コンピューター断層撮影装置)でも小さな病巣は診断が難しい。(平成16年9月25日 日本経済新聞)

肺がん、手術後の抗がん剤投与で生存率が向上

早期肺がんの手術後に抗がん剤を経口投与すると、生存率が向上することを東京医科大の加藤治文教授(呼吸器外科)らが約1000人対象の臨床試験で確認し、25日発表した。 肺がん手術後の抗がん剤投与の効果を大規模に実証した例は極めて少なく、新たな治療法として期待されるという。臨床試験は94年1月〜97年3月、全国の大学病院など110施設で実施。対象はリンパ節などへの転移がない早期の肺がん「1A」(がんの大きさ3センチ以下)と「1B」(同3センチより大)で、手術でがんが完全に切除された患者。インフォームド・コンセントを得たうえ、抗がん剤「テガフール・ウラシル」を2年間投与する群491人と、非投与群488人に分け、追跡調査した。5年間の生存率を比べた結果、「1」期全体では投与群87.9%、非投与群85.4%だったが、「1B」期では、投与群84.9%、非投与群73.5%と差が開いた。統計学的にはこの差は、1年間の平均死亡リスクを52%低下させることになるという。軽い肝機能異常や食欲不振などの副作用がみられたという。 「テガフール・ウラシル」は、がん細胞のDNA合成を阻害する抗がん剤。加藤教授らは、手術によって、肺のがん細胞は取り除けても、血液を通して全身に散らばったがん細胞や、発見できない微小ながん細胞の、転移や再発を防ぐ効果があったのではないかとみている。 同大の坪井正博助手は「肺がん手術後の治療はこれまで、がんの進行度にかかわらずほぼ同じだったが、今回の結果で、1B期の患者さんは、この抗がん剤を飲むという選択が生まれるだろう」と話している。(平成16年5月25日 毎日新聞)

カゼを早く治すには、マスクを

カゼを引いたとき、病院で抗生物質を処方されることがある。しかし、カゼの原因は、その9割が抗生物質の効かないウイルスによるもの。抗生物質は、細菌による2次感染対策に過ぎない。カゼのときに抗生物質をのんでも効果がないとする研究データが、国内外でいくつも出ている。関西医科大学耳鼻咽喉科助教授の久保伸夫氏は、咽頭痛の症状が出てから3日以内の患者約40人を対象に臨床試験を実施。「抗生物質をのむ」「消炎鎮痛剤をのむ」「1日中マスクをする」といった対策法をランダムに組み合わせ、咽頭痛の持続時間を検討した。

その結果、マスクをした人は、何もしない人に比べて痛みの持続時間が半減した。一方、抗生物質や消炎鎮痛剤をのんだ人は、痛みの持続時間は何もしない場合とほとんど変わらなかった。「マスクで喉を保湿しておくと、薬よりものどの痛みを早く改善する」と久保助教授は話す。また、12月6日号のBritish Medical Journalでは、抗生物質のペニシリンを小児の咽頭痛患者に投与しても、症状の持続時間、学校の出欠状況、咽頭痛の再発抑制に改善がみられないという研究結果を紹介している抗生物質は、病気の原因菌を殺すと同時に、腸内の善玉菌にもダメージを与える。腸内細菌のバランスが崩れ、免疫力の低下を招く“両刃の刃”だ。抗生物質の副作用を最小限に抑えるには、「抗生物質と同時に、乳酸菌製剤をのむといい。1回にのむ乳酸菌製剤の量は、通常量の2倍くらいが適量だと思う」と、腸内細菌に詳しい東京大学名誉教授の光岡知足氏はアドバイスする。(平成15年12月12日MedWave)

岡山大の肺移植の一部保険適用、患者の負担軽減

厚生労働省の中央社会保険医療協議会(厚生労働相の諮問機関)は22日、岡山大病院(岡山市)が実施する生体部分肺移植について、医療費の一部を医療保険の対象とする高度先進医療として承認した。臓器移植では脳死心臓移植が高度先進医療の対象になっているが、肺移植が対象となるのは初めて。高度先進医療として認められると、手術費を除き、入院費や検査費などが医療保険の対象になる。健康な2人の提供者から肺の一部を受けて移植する生体部分肺移植は一般的に約2000万円の医療費が必要とされるが、患者の負担は約300万円に軽減される見込み。対象となるのは原発性肺高血圧症や間質性肺炎、気管支拡張症など八種類の疾患で、移植を行わなければ余命が極めて限られる患者。脳死肺移植は対象とならない。(平成15年1月22日 日本経済新聞)


たはら整形外科      最新の医療情報