結核について


BCGより1千倍効く結核新ワクチン

国立病院機構近畿中央胸部疾患センター(堺市)と自治医科大のグループが、DNAワクチンと呼ばれる新しいタイプの結核ワクチンを開発、ネズミの実験で有効性を確認した。 単独接種でBCGの1000倍、BCGとの併用で1万倍の効果を示した。 BCGの効果が見込めない高齢者向けに特に期待される。 新ワクチンは、結核菌が持つ特定のたんぱく質と免疫力を高める働きのあるインターロイキンを作る遺伝子(DNA)を注射する。細胞内に取り込まれる工夫があり、強い免疫反応が誘導されるという。 大人のマウスに新ワクチンとBCGをそれぞれ接種した後、結核菌を感染させ、5週間後の結核菌の数を調べた。 新ワクチンを接種したマウスの菌数は、BCG接種のマウスの約1千分の1で、発症を抑えられる程度だった。 一方で、あらかじめBCGを接種してから新ワクチンを打つと、菌数は約1万分の1まで抑えられた。 今後、サルで効果を確かめ、臨床試験に移る準備をする。 日本では乳児期のBCG接種を推進しているが、予防効果は10年間程度しか続かず、大人への接種は効果が期待できない、とされている。 また、結核は感染しても若くて免疫力のあるうちは発病しないが、年をとって病気などで免疫力が下がると、休眠していた結核菌が活動を再開し、発病する場合が多い。 世界では毎年900万人が結核にかかり、200万人が死亡。 日本でも年間3万人の結核患者が報告され、約6割が60歳以上だ。(平成18年6月5日 朝日新聞)

結核克服へ改正予防法

新たな感染者が毎年出ながら「過去の病気」とみられている結核。この病気の克服をめざし、生後6か月までの乳児のBCG接種や、65歳以上の高齢者への年1回の胸部エックス線検査など、感染の危険が高い層への対策を強化した改正結核予防法が今月、施行された。 結核は現在も世界で1日に5500人が死亡する成人では最も深刻な感染症。日本でも2003年に、10万人あたり25人が新たに発症しており、G7諸国では、依然として最も罹患(りかん)率が高い「中まん延国」だ。中でも70歳以上の高齢者が約4割を占め、患者の中心は以前の若年層から変化している。 一方、東アジアや南太平洋諸国では、毎年100万人の結核患者が適切な治療を受けられずにいるという。理由として結核に対する意識の低さ、検査も含めた医療の質の低さがある。 3月24日の「世界結核の日」に合わせて、記者会見した尾身茂・WHO西太平洋地域事務局長は「結核は早期に発見し、治療することで拡大を防げる。 発見に有効な戦略を推進し、2010年までに死亡率を半減させたい」と話した。(平成17年4月20日 読売新聞)

ツベルクリン反応検査の中止決まる

政府は7日の事務次官会議で、小学一年・中学一年時の定期検診で行われているツベルクリン反応検査を中止することを決めた。これにより8日の閣議で結核予防法施行令の一部を改正する政令を決定する。来年4月1日から実施される。 今回の政令改正は、厚生科学審議会感染症分科会の「結核対策の包括的見直しに関する提言」及び「意見書」を受けて、最近の児童・生徒の結核罹患率の減少や、医学的知見の集積など、結核を取り巻く環境の変化に対応するための措置。 改正内容は、「7歳(小学1年)及び13歳(中学1年)に行う定期検診(ツベルクリン反応検査)を中止する」。これに伴い、陰性者に対するBCG再接種も実質的に行われなくなる。(平成14年11月8日 薬事日報)

結核患者70歳以上が増加傾向

新たに結核にかかる患者は70歳以上である割合が増加していることが厚生労働省が19日に発表した「平成13年結核発生動向調査」で明らかとなった。結核研究所の石川信克副所長は、免疫が落ちるがんなどの高齢患者を治療する時に、結核の発症を疑う医師が多くなく、発症前の治療につながらないことも背景にあると指摘している。 平成13年の新規に登録された結核患者、人口10万人あたりの患者数(罹患率)は、2年連続の減少となった。新規患者数は12年より3895人減り、3万5489人。罹患率は3・1人減り、27・9人と20人台となった。しかし、年齢別では60歳以上の患者が57・2%、70歳以上は39・6%を占め、全体に占める高齢患者の割合は増加傾向にあり、70歳以上は11年37・8%、12年は38・7%と推移している。 この傾向について結核研究所の石川副所長は、「若いときに感染したり、発症せず保菌したままの人は高齢者のかなり割合に上る。その人たちが長生きするようになり、免疫が落ちて発症するケースが、増加傾向につながっている」と説明。X線で兆候が見られた人とともに、免疫が落ちる糖尿病や腎臓病、がんなどの高齢患者を治療する時は、結核の発病も念頭に置いた治療が必要だと指摘している。発症前の治療では、イソニコチン酸ヒドラジド(INH)による単剤療法が行われ、同省も予防治療の事業を行っている。(平成14年9月20日 薬事日報)

ツベルクリン検査を原則全廃へ

結核予防の集団接種の見直しを検討している厚生労働省の委員会は29日、学校や地域で行われていた結核菌に免疫があるかどうかを判定する集団でのツベルクリン反応検査を、原則として全廃するという報告書をまとめた。これで結核の予防接種は、生後6カ月までにツベルクリン反応検査なしでBCGを1回個別接種するのが基本となり、方針が大きく転換されることになる。厚労省は、51年に制定された結核予防法の抜本的な改正に取りかかる。結核予防法に基づく接種はこれまで、生後3カ月〜3歳の乳幼児期、小学1年生、中学1年生を対象に、ツベルクリン反応検査で陰性の場合にBCG接種をしてきた。市町村や学校で集団で行われ、それぞれ年に約120万人が受けている。しかし、世界保健機関(WHO)が95年に、BCGの複数回接種の有効性への疑問を表明したことなどから、厚労省は見直しを進めていた。その結果、結核菌に感染している可能性がまずない生後6カ月までにツベルクリン反応検査をせずにBCGを1回接種することを原則とし、小1、中1ではツベルクリン反応検査、BCGの再接種をいずれも廃止することになった。患者を発見するために学校でのツベルクリン反応検査は続けた方がよいとの意見もあったが、97〜00年に発見された患者は年間小1が21〜10人、中1が29〜19人。このうち学校での健診で見つかったのは半数前後で、効果はほとんどないと判断された。ただし、廃止にあたって、家族などに患者が見つかった場合の検査の徹底も求めている。日本の結核患者数は00年で約3万9000人(死者2650人)。51年の約59万人(同9万3300人)から大幅に減少したが、96年から再び上昇傾向にある。大都市に住む人や高齢者などに多く、厚労省は、これまでの集団的、一律的な予防対策から、個別の対応に転換することになるとしている。(平成14年5月29日 朝日新聞)

ツベルクリン反応検査、廃止か

結核対策の見直しを検討する厚生労働省の作業委員会は1日、中学1年時に実施していたツベルクリン反応検査を廃止することでほぼ合意した。乳幼児を対象とした検査についても廃止し、検査なしで直接BCG接種を実施する方向で調整を進め、月末に結論を出す考えだ。 ツベルクリン反応検査は現在、乳幼児と小学1年、中学1年の各時期に実施している。同省の厚生科学審議会結核部会は3月、小中学生の患者が激減していることなどから小学1年時の検査は廃止とする報告書をまとめたが、乳幼児と中学1年については意見が割れていた。 作業委は今後、患者と接触した可能性のある人への個別検査の徹底など、廃止に伴う対策も議論する。廃止が正式に決まれば、BCG接種を受ける前に行うツベルクリン反応検査はすべてなくなることになる。(平成14年5月2日 日本経済新聞)