環境について

ディーゼル排ガス、胎児に影響、自閉症発症の可能性

ディーゼル自動車の排ガスを妊娠中のマウスに吸わせると、生まれた子供の小脳にある神経細胞「プルキンエ細胞」が消失して少なくなることが、栃木臨床病理研究所と東京理科大のグループによる研究で分かった。自閉症では小脳にプルキンエ細胞の減少が見られるとの報告もある。ディーゼル排ガスが自閉症の発症につながる可能性を示す初めての研究として注目を集めそうだ。研究グループは、妊娠中のマウスに、大都市の重汚染地域の2倍の濃度に相当する1立方メートル当たり0.3ミリグラムの濃度のディーゼル排ガスを、1日12時間、約3週間浴びせた後に生まれた子マウスと、きれいな空気の下で生まれた子マウスの小脳をそれぞれ20匹ずつ調べた。その結果、細胞を自ら殺す「アポトーシス」と呼ばれる状態になったプルキンエ細胞の割合は、ディーゼル排ガスを浴びた親マウスから生まれた子マウスが57.5%だったのに対し、きれいな空気の下で生まれた子マウスは2.4%だった。また、雄は雌に比べ、この割合が高かった。人間の自閉症発症率は男性が女性より高い傾向がある。 さらに、プルキンエ細胞の数も、排ガスを浴びたマウスから生まれた子マウスに比べ、きれいな空気下で生まれた子マウスは約1.7倍と多かった。菅又昌雄・栃木臨床病理研究所長は「プルキンエ細胞の消失などは、精神神経疾患につながる可能性がある。 ヒトはマウスに比べ胎盤にある"フィルター"の数が少ないため、ディーゼル排ガスの影響を受けやすいと考えられる。現在、防御方法を研究中だ」と話している。橋本俊顕・鳴門教育大教授(小児神経学)の話:最近約10年間で先進国では自閉症が増えているとみられており、海外の研究報告では生まれる前の要因が強く疑われている。 その研究報告と今回の研究は一致しており、候補の一つを特定できた点で高く評価できる。 今後は、ディーゼル排ガスで動物に自閉症の行動特徴が起こるのか調べる必要がある。

母がディーゼルの排ガス吸引、胎児の脳に粒子蓄積

妊娠中のマウスにディーゼル排ガスを吸わせると、胎児の脳にディーゼル粒子が蓄積されることが、東京理科大薬学部の武田健教授らの研究で明らかになった。マウスの行動や脳内ホルモン濃度にも異常が見られることから、脳内に侵入したディーゼル粒子が影響を及ぼしている可能性があるという。東京都内で21日に開かれた内分泌かく乱物質(環境ホルモン)に関するシンポジウムで発表した。実験では、ディーゼル排ガスの濃度を環境基準値並みにした部屋で、母マウスを妊娠2日目から2週間、1日あたり12時間飼育した。誕生した子マウスの脳を調べると、脳内を清掃する働きがある「血管周囲細胞」の中に、黒い粒子が蓄積されている様子が観察された。一部の神経細胞が死んでいたり、血管内皮がはがれたりする異常もあった。ディーゼル排ガスを吸った子マウスは、普通はおとなしくなる朝によく運動するなど異常が見られたほか、一部の脳内ホルモン量が増えていることも確認された。ディーゼル粒子が脳活動に影響を及ぼしている恐れがあるとしている。脳組織の異常を調べた菅又昌雄・栃木臨床病理研究所長は「人間でもディーゼル粒子は体内に蓄積され、アレルギーなどさまざまな病気の発症につながっている可能性がある」と指摘している。(平成17年9月22日 読売新聞)

体内ダイオキシン、高脂血症薬で削減

体内のダイオキシンやポリ塩化ビフェニール(PCB)は、高脂血症を治療する医薬品の服用で濃度を下げられることが、森千里・千葉大学大学院教授(環境生命医学)らの研究で分かった。汚染度の高い人ほど効果が大きく、6カ月間で最大40%の削減効果があったという。福岡県久留米市で開かれている日本臨床環境医学会で2日、発表した。 ダイオキシンやPCBは濃度の多少はあるが、現代人の体内に蓄積され、ごく微量で中枢神経の発達やホルモン分泌にダメージを与えるとの指摘もある。体内濃度を下げる手法が示されたことで具体的な被害防止策を講じる道が開かれた。 森教授らは、ダイオキシンやPCBが油脂に極めて溶けやすいことに着目。高脂血症の治療のためコレステロール値を下げる医薬品「コレスチミド」を服用する患者9人に協力を求め、治療前と半年間の服用後で、体内のダイオキシンやPCB濃度の変化を調べた。 9人の平均で、治療前はダイオキシンが血液中の脂肪1グラムに44ピコグラム(ピコは1兆分の1)、PCBが同260ピコグラムだったのが、服用後はダイオキシンが同35ピコグラム(20%減)、PCBが同200ピコグラム(23%減)になっていた。中でもダイオキシンが同57ピコグラム、PCBが同360ピコグラムだった患者は、服用後それぞれ同35ピコグラム(39%減)、同200ピコグラム(44%減)と、大幅に減少。 9人とも、ダイオキシンとPCBの減少率はほぼ同じだった。 ダイオキシンやPCBは脂肪組織に多く蓄積される。排出速度が遅いうえ、いったん胆汁に溶けて腸内に放出されても、再び腸から体内に吸収される。コレスチミドは腸からの脂肪吸収を抑制することから、効果を示したとみられるという。研究グループはこの結果を受け、40人規模で効果を確認する試験を進めている。森教授は「食生活の改善などと組み合わせれば、さらに効果が上がる可能性が高い」としている。(平成17年7月2日 朝日新聞)

幹線道路、排ガス被害

車の排ガスによる健康影響を明らかにするため、環境省は今年度、幹線道路沿いなどに住む小学生約1万6000人を対象にした5年間の疫学調査に着手する。排ガスによる大気汚染と健康被害の因果関係を調べるこれほど大規模な科学的調査は初めて。ディーゼル排気微粒子などがぜんそくの原因になることは、動物実験で確認されているが、人間への健康影響を裏付ける調査は少なかった。調査が行われるのは、環状7号線(東京都)や国道302号(愛知県)、国道43号(大阪府)など、大都市部の昼間の交通量が4万台以上の幹線道路が通る6地域。それぞれ幹線道路沿いの小学校と、道路から離れた小学校を選び、1―3年生の児童を対象に、ぜんそく症状の有無などを5年間追跡調査する。併せてアレルギー症状を調べる血液検査にも協力してもらう。一方、幹線道路や通学路、小学校などで、排ガスに含まれる微粒子(浮遊粒子状物質=SPM)や窒素酸化物(N(Ox))などの大気汚染物質を測定するほか、協力が得られた児童の自宅などでも、汚染物質濃度を測定。児童がどの程度の汚染にさらされているかを推計し、ぜんそく発症などとの因果関係を調べる。調査対象を児童に絞ったのは、行動範囲が家庭と学校の間にほぼ限定され、成人に比べてぜんそく発症率も高いためで、約60校に協力を依頼している。自動車排ガスの健康影響は、微粒子(SPM)と、窒素酸化物(N(Ox))の2種類が指摘されている。特に微粒子については、国立環境研究所などのグループがマウスを使った実験で、気管支ぜんそくや、肺がんを発症させる仕組みを明らかにしている。調査を行う国立環境研究所の新田裕史・総合研究官は「人体への排ガスの影響を定量的に明らかにして、健康対策の手がかりにしたい」と話している。(平成17年5月2日 読売新聞)

ディーゼル排ガス、胎児にも影響

妊娠中にディーゼル排ガスを吸ったマウスから生まれた雄は、成長後の精巣に異常が現れ、精子生産能力も低くなることが、東京理科大薬学部の武田健教授と押尾茂研究員らの実験でわかった。 同様の症状は、成熟した雄マウスに排ガスを吸わせる実験で確認されていたが、胎児への影響が突き止められたのは初めて。実験では、ディーゼル排ガスの濃度を環境基準の5倍にした室内で、母マウスを妊娠2日目から2週間飼育。 清浄な空気に戻した後、妊娠約20日目で誕生した雄への影響を調べた。 その結果、1日当たりの精子生産量が生後5週で通常の52%、生後12週で68%しかなかった。精巣を顕微鏡で観察したところ、精子を作る精細管の形に異常が見られ、細胞核の数が異常に多い細胞もあった。 一方、生後12週では血中の男性ホルモン「テストステロン」の量が、通常の4・67倍にも達した。研究チームは、生殖に関連するホルモンのバランスが崩れ、精子形成の異常を引き起こしたと見ている。 トラックなどで使われる浄化装置を通した排ガスでも、精子生産量や男性ホルモン量への影響はあまり変わらなかった。 押尾研究員は「浄化装置をすり抜ける超微粒子が原因かもしれない。 人間にも同様の影響を与える可能性があり、検証が必要だ」と話している。(平成16年8月30日 読売新聞)

有機リン化合物の毒性、仕組み解明 マウスに多動障害も

殺虫剤や難燃剤などに幅広く使われている有機リン化合物(リン酸エステル類)が引き起こすとされる遅発性神経障害や行動に落ち着きがなくなる多動障害など、神経毒性の仕組みが米国の研究チームによる動物実験で次第に明らかになり、日本の関係当局の間でも注目され始めている。有機リン系殺虫剤の利用は、米欧では子どもの脳・神経の発達に与える影響も考慮して規制が強められている。

これに対し、日本ではその毒性があまり重視されず、規制面で立ち遅れており、欧米並みの規制実施に向けて議論を呼びそうだ。 相次いで研究成果を発表しているのは米国カリフォルニア大バークリー校とソーク生物学研究所の合同チーム。有機リンは、けいれんなど急性の神経障害が起きない場合でも、後になって手足のまひなどの遅発性神経障害が出ることが知られ、その仕組みを遺伝子操作したマウスを使って解明した。

その結果、遅発性神経毒性のカギを握る酵素を突き止めた。米科学アカデミー紀要6月号の論文によると、酵素は脳内などにあるリソフォスフォリパーゼといわれる酵素のひとつで、情報伝達などで重要な役割を演じる物質、リソレシチンを代謝する。有機リンがこの酵素の代謝機能を阻害し、神経に障害を与えることを証明した。 リソレシチンが代謝されずに蓄積すると、神経を覆う鞘(さや)が壊れる「脱髄」が起き、多様な神経障害のほか、手足のまひなど深刻な機能障害が出る。これは有機リンの遅発性神経障害として知られる症状と一致する。

また、米科学誌ネイチャージェネティクス3月号の論文によると、遅発性神経障害を起こす有機リンを投与したところ、その遅発性障害が現れない程度の少量でもマウスに多動障害が起こることを確認した。 現在、多動障害の原因は明確になっておらず、遺伝的要因や家庭環境のほか、最近はポリ塩化ビフェニール(PCB)などの化学物質も一因ではないかと指摘されているが、有機リンも原因物質として注目されそうだ。

バークリー校のカシーダ教授、クイスタッド博士らの合同チームは論文で「哺乳(ほにゅう)類共通のメカニズム」とし、「ほかにも有機リンで阻害される酵素がある可能性が大きく、さらなる研究が治療法の開発につながる」と指摘している。 実際、このチームを含めた米国内の研究で、脳内の重要な機能を担う酵素群が有機リンによって阻害されることが明らかになりつつある。(平成15年10月30日 朝日新聞)

まぶたのけいれん、化学物質も要因か

重症になるとまぶたの筋肉が震え、目を開けられなくなってしまう「眼瞼(がんけん)けいれん」が、室内や職場などで化学物質に長い間接触すると起きる可能性が高いことを、井上眼科病院(東京都)のグループが突き止めた。眼瞼けいれんによって歩行や車の運転にも大きな支障が出ていることも判明。グループは31日から名古屋市で開かれる日本臨床眼科学会で発表する。

眼瞼けいれんは、脳など中枢神経系の異常で起こり、加齢やストレス、抗不安薬などの副作用なども引き金になると考えられている。 同病院の若倉雅登(わかくら・まさと)院長らのチームはほかの要因を探るため、薬剤の影響以外の患者167人を対象に、発症前5年間の化学物質の接触状況を調べた。患者の4割強が新築・改築した家に住んだり、新装・改装した職場に勤務したりしていた。建材から発生する化学物質に長い間接触した疑いが濃い。この中には、職業上、塗料、シンナー、防虫剤、農薬などを扱う人もいた。さらに、患者54人への別の調査では、半数が歩行中に電柱や停車中の車などにぶつかった経験があった。また、6割ほどが車の運転中に危険を感じ、その半数がずっと運転をやめている。

若倉院長は「生活への支障はとても大きく、室内の化学物質で体の不調を訴えるシックハウス症候群と関連している疑いもある。眼瞼けいれんへの世間の理解は浅い。 予防や診断などに注意を促したい」と話す。(平成15年10月19日 朝日新聞)

マイナスイオンの抗酸化作用、人で実証

リフレッシュ効果があるとされるマイナスイオンが満ちた部屋で生活すると、人体に有害な「活性酸素」を減らす「抗酸化物質」の一種が増えることが、富山医科薬科大の田沢賢次教授と香川県坂出市にある民間病院理事長の堀口昇医師らによる同研究で明らかになった。 多量の活性酸素は体内の細胞のたんぱく質などを傷つけ、がんを引き起こすことが指摘されており、マイナスイオンにがんの予防効果が期待できるという。田沢教授らは、あす25日から名古屋市で開かれる日本癌(がん)学会総会で研究結果を報告する。 研究は、マイナスイオン発生装置を設置した部屋と、していない部屋に、激しい運動をして活性酸素が発生しやすい運動選手11人を5人と6人ずつに分け、6日間、夜間に睡眠を取ってもらい、血液と尿を調べた。 マイナスイオン濃度は、装置から3メートル離れた場所で1立方センチ・メートルあたり通常の約27倍の2万7000個に設定。 その結果、マイナスイオンを発生させた部屋の選手の方が、活性酸素を無害化する働きを持つ体内の抗酸化物質の一種「ユビキノール」の量が約5倍も増えていた。また、活性酸素で傷つけられた細胞核や細胞膜を再生させる物質の量も3分の1程度だったことから、マイナスイオンが活性酸素を無害化し、傷つく細胞核などが減少したと推定されるという。(平成15年9月24日 読売新聞2003・9・24)

幹線道50m圏内、肺がん発症1.8倍

交通量が多い幹線道路から50メートル圏内に住んでいた人は、それより離れた地域の人より肺がんになる率が約1・8倍も高いことが千葉県がんセンターの三上春夫・疫学研究部長らの調査でわかった。ディーゼル車の排ガスに含まれる微粒子が、肺がんのなりやすさに関係するとの説はあるが、実際の患者データで裏づけられたのは初めて。 25日から名古屋市で始まる日本癌(がん)学会で発表する。三上部長らは、「トラック街道」と呼ばれる幹線道路が通っている同県内の1市で、1975年以降に肺がんになった患者622人の発症当時の住所を調査。幹線道路から50メートル圏内に住んでいた人と、500メートル圏内の人に分けて、発症率を比べた。その結果、85年以降、幹線道路から50メートル圏内での発症率が、500メートル圏内より高くなってきたことが判明。特に90―94年の5年間では、1・83倍(男性1・76倍、女性2倍)も、肺がんになる確率が高かった。(平成15年9月22日 読売新聞)

ダイオキシン、母乳での含有量減には脂肪摂取減らせ

米科学アカデミーは1日、母乳に含まれるダイオキシンを減らすため、女性は早い時期から脂肪をとる量を減らすべきだとする報告書を発表した。 同アカデミーは、ダイオキシンが蓄積しやすい脂肪を多く含む食品の摂取を減らす施策を進めるよう政府に勧告。 「特に胎児や乳児への影響が懸念される」として、将来、子供を産む可能性のある若い女性や子供に焦点を当てた対策を求めた。 報告書は、ダイオキシンやジベンゾフラン、コプラナーPCBなどの有害化学物質は脂肪組織に蓄積しやすく、魚を多く食べる人や母乳を飲む乳児の摂取量が多くなる、と警告。「将来、母乳で子供を育てる可能性がある女性は、早い時期から、低脂肪乳や脂肪の少ない食品を食べるよう心掛けるべきだ」とした。 家畜に動物性の脂肪を含んだ飼料を与えることを避け、家畜の体内にダイオキシンが連鎖的に蓄積されないようにすることも勧告した。 報告書は「低レベルのダイオキシン摂取が、どのような健康影響を与えるかについては不確実性が大きい」として、食品経由の削減対策を法律で義務付けることについては慎重な姿勢を取った。(平成15年7月3日毎日新聞)

「シックハウス」に豆知識、ピーナツ殻が原因物質吸収

シックハウス症候群の主な原因であるホルムアルデヒドを吸収するのに、ピーナツの殻が役立つことが、青柳象平・千葉大教授と国立医薬品食品衛生研究所の研究でわかった。 ピーナツ殻の細かい穴が空気汚染物質を吸収、約4時間で空気中のホルムアルデヒドの80―90%が消えた。 青柳教授は「殻を捨てず、薄い紙に包んでタンス内に置くだけで、さまざまな汚染物質を吸収できる可能性がある」としている。シックハウス症候群は、壁紙用接着剤や塗料に使われるホルムアルデヒドなどの化学物質が原因といわれ、頭痛や吐き気といった症状が出る。青柳教授らは、10リットルの入れ物にホルムアルデヒドと、さまざまな大きさに砕いた殻を入れて約4時間後の濃度変化を測定した。 その結果、単に手で砕いたピーナツ殻でも約80%のホルムアルデヒドが吸収された。 細かくするほど効率が良く、ミキサーで砕いたものは約90%まで取り除けた。(平成15年6月15日読売新聞)

妊娠中に排ガス、子供は花粉症 ディーゼル車「母子関係」にも悪影響

妊娠中にディーゼル車の排ガスを吸うと、生まれてくる子供はスギ花粉症を起こしやすい体質となることが19日、ラットの親子を使った東京都の実験で分かった。 国の調査でも大気汚染と花粉症との関連を示す結果が報告されているが、排ガスに絡む、親子関係への影響が判明したのは初めて。 実験結果は、27日に開催される都の調査委員会で報告される。 調査は、都健康安全研究センターが中心となって実施。妊娠中の母ラットに排ガスを吸引させた後、生まれてきた子供ラットを花粉に触れさせた場合にアレルギー反応を示すIgE(免疫グロブリン)抗体がどのような現象を起こすか調べた。 その結果、排ガスに含まれる粒子状物質(PM)の濃度を変えながら反応を確認したところ、濃淡いずれの場合も子ラットのIgEが増加することが判明した。 都によると、ディーゼル車の排ガスが生まれた子供に花粉症の影響を与えることを立証したのは世界で初めてのケースで、「花粉症が低年齢化している根拠にもなる」(都健康安全研究センター渡辺伸枝研究員)とみている。 このほか、都の調査委員会で、花粉症患者の血液にPMを添加する実験を実施したところ、血液中に花粉症を悪化させる物質が増加することが判明したという。 排ガスが花粉症の症状を悪化させることを裏付けるもので、人間の血液を使って確認したのは全国で初めてとなる。 石原慎太郎知事は大気汚染対策に力点を置いており、平成12年12月には排ガス規制を盛り込んだ環境確保条例を制定した。 今年10月からは同条例に基づき、指定のPM除去装置の装着や低公害車への買い替えなどを義務付けることが決まっている。 今月9日には、小泉純一郎首相と鈴木俊一環境相に国のディーゼル車の排ガス規制への取り組みに関する質問状を提出したばかり。 質問状では国が平成17年から実施する新たな排ガス基準は、米国が19年から実施する規制に比べ緩やかであることを指摘。 米国以上に厳しい規制を実施することで世界の公害対策をリードするよう求めている。(平成15年5月20日産経新聞)

血中の鉛濃度が高い子供はIQが低い

子供172人を生後6カ月から5歳まで追跡した米国の調査で、生活環境や母親の知能指数(IQ)などで補正しても、血中の鉛濃度が高い子供ではIQが低いことがわかった。 米国では様々な環境規制により、子供の血中鉛濃度は20年前の10分の1近くにまで下がっているが、「低い鉛濃度でも従来考えられていた以上にIQに対する影響がある」と研究グループは危惧している。 研究結果は、New England Journal ofMedicine(NEJM)誌4月17日号に掲載された。 鉛には神経系に対する毒性があり、知能の発達などを妨げることが知られている。 子供の体内に鉛が入るルートは、1.妊娠中の母親の喫煙や生後の受動喫煙(たばこの葉に鉛が含まれている)、2.有鉛ガソリンによる大気汚染、3.水道水(水道用鉛管から溶出した鉛の摂取)、4.鉛含有塗料(塗料が塗られた玩具などを子供がなめて摂取)−−などが主なものと考えられている。 有鉛ガソリンの禁止や鉛含有塗料の制限、禁煙教育など、積極的な鉛環境改善策を取ってきた米国では、この20年で子供の血中鉛濃度が15μg/dlから2μg/dlへと“微量”と呼べるまでに大幅に下がった。 しかし、こうした“微量”の血中鉛が、IQなどにどの程度の影響を与えるかは、実は良くわかっていなかった。 米国Cornel大学人間環境学部のRichard L. Canfield氏らは、生後6カ月の子供172人を5歳まで追跡。 定期的に血中の鉛濃度を測定し、3歳と5歳時にはIQ検査も行って、血中鉛濃度の推移とIQとにどのような関係があるかを調べた。その結果、血中鉛濃度が高い子供では、3歳時、5歳時のいずれも、IQが低いことが判明。 ただし、子供のIQは母親のIQと強く相関していた。 さらに、高収入の家庭では母親のIQが高く、子供の血中鉛濃度が低いなど、子供の血中鉛濃度やIQには遺伝的素因や住環境、教育環境などが複雑にからみあっていた。 そこで研究グループは、これらの関連因子でデータを補正した上で、子供の血中鉛濃度の推移から推定した「生涯血中鉛濃度」とIQとの関連を割り出した。 すると、生涯血中鉛濃度が1μg/dlから10μg/dlへと増加することで、IQが7.4ポイント低下する計算になることが判明。 10μg/dlから20μg/dlへの増加では、IQがさらに2ポイント下がるとみなせることがわかった。米国疾病対策センター(CDC)の基準では、血中鉛濃度が10μg/dl未満なら“安全域”となっているが、「それより低い鉛濃度でも、子供のIQには大きな影響がある」と研究グループは結論。 もはや10μg/dl以下でも安全とはみなせないと強調している。 日本の場合、鉛管が水道用に使用されている比率が多いことを反映してか、子供の血中鉛濃度は3μg/dlと米国よりも高い。 喫煙者が子供の前でもたばこを吸う家庭の子供では、喫煙者がいない家庭の子供よりも血中鉛濃度が1μg/dl高いとのデータもある(日本小児科学会雑誌;101,1583,1997)。 子供の体内に取り込まれる鉛の量を減らすには、子供の前でたばこを吸わない、空気のきれいな地域に住む、朝一番の水道水は使わない、子供に玩具などの塗料をなめさせないなどの様々な方法がある。大人にとって“安全”とされる水準でも子供に悪影響があることがわかった以上、子育て中の家庭では、「鉛対策」に本格的に取り組んだ方がよさそうだ。(平成15年4月18日medwave)

骨がもろくなる可能性

内分泌かく乱物質(環境ホルモン)作用が疑われるビスフェノールAなどにより、骨がもろくなる可能性があることが、北里大の環境医学研究グループのラット実験で初めて明らかになった。女性ホルモン「エストロゲン」の骨を減らさない働きを妨げるためとみられる。環境ホルモンが、生殖機能への影響だけでなく、骨粗しょう症などを引き起こす可能性も出てきた。骨は、骨髄中の骨芽細胞によって作られる一方、破骨細胞の働きで減少し、新陳代謝が進む。破骨細胞はエストロゲンがあると死滅が促進され、その結果、骨の減少を防ぐといわれる。同大医療系研究科大学院生の川上智史さんらは、ビスフェノールAやp―ノニルフェノールなど4種類の物質を実験した。これらの物質とエストロゲンを組み合わせ、雌ラットから取り出した破骨細胞に、1リットル当たり1マイクログラムずつ投与し、2日培養した。エストロゲン単独投与に比べ、破骨細胞の死滅が14〜36%少なくなり、ビスフェノールAなどがエストロゲンの作用を妨げることが分かった。また、雌ラット6匹に、4種類の物質とエストロゲンを組み合わせたものを、1日0・8マイクログラムずつ60日間投与したところ、エストロゲンの単独投与に比べ、骨密度が17〜34%減った。ビスフェノールAは、食器や缶詰の内側のエポキシ樹脂などの原料になる。研究グループは「実験に使った量は、日常的に摂取する量の約1000倍に当たり、直ちに人に影響する量ではない。しかし、摂取量が大きくなる可能性のある労働現場もある。人への影響がどれだけ出るのか、今後本格的に調べたい」と話している。(平成15年1月30日 毎日新聞)

塩化ビニルとホルムアルデヒド、国内環境で発がんリスク

環境省は21日、国際的に発がん性があるとされる塩化ビニルとホルムアルデヒドについて、地下水や大気など国内の環境中でも発がんリスクが認められた、と発表した。人体や生態系に対する化学物質の有害性の判断材料となる環境リスク初期評価でわかった。同省は今後評価を進め、有害性が高く、人体や生態系に入り込む量が極めて多いことなどがはっきりすれば、環境基準を設けることなども検討する。 初期評価は化学物質の有害性を知るため、最初にふるいにかけるもの。動物実験の結果をもとにした毒性に関する国際的な指標に、環境省が集めた国内の化学物質の測定結果を当てはめた。 発がん性のリスクは、10万人に1人の発生確率が目安とされているが、塩化ビニルは地下水で同5.6人、ホルムアルデヒドは大気中で同18人の測定地点があった。塩化ビニルは食品包装材や玩具、ホルムアルデヒドは建築資材の接着剤や塗料に使われている。 生態系への影響では4−tオクチルフェノール、クロロホルム、ノニルフェノールの3物質が高リスクと評価された。(平成15年1月22日 朝日新聞)

割りばしに使う薬剤の監視強化

厚生労働省は21日、割りばしに使われる防かび剤や漂白剤に対する不安が高まっていることから、はしから溶け出す許容量を暫定的に決めたうえで、監視を強化するよう都道府県や検疫所などに通知した。暫定値を超えた場合は販売自粛などを求める。輸入の多くを占める中国産割りばしについて検疫所が今年度検査をしたところ、漂白剤成分の二酸化硫黄が32件中7件で検出された。防かび剤は3種類調べて74件中0件だった。 厚生省(当時)の研究班が94年度に料理店や市販の割りばしなどを調べたところ、防かび剤が43件中7件で検出されている。 今回定めたのは二酸化硫黄が1ぜんあたり12ミリグラム、防かび剤のオルトフェニルフェノールが6.7ミリグラムなど。1日3食で使って溶け出す量が、国際機関が毎日一生とり続けても健康影響がないと定めている許容1日摂取量を超えないように設定したという。(平成15年1月22日 朝日新聞)


たはら整形外科      最新の医療情報