感染症について


犬・猫の細菌で感染症、死亡例も 

犬や猫の口の中にいる細菌に、2002年から14人が感染、発症し、うち6人が死亡していることが、国立感染症研究所のまとめでわかった。「カプノサイトファーガ感染症」と呼ばれるが、実態がよくわかっていない。見逃されている患者も多いとみられる。この細菌には、ひとが犬や猫にかまれたり、ひっかかれたり、傷口をなめられたりすると、極めてまれに感染、発熱や腹痛、吐き気などの症状が出る。発症すると血圧が急に下がり、血中で菌が増え、敗血症で亡くなることがある。高齢で免疫機能が低下した人、ステロイド剤で膠原病や腎炎などの治療をしている人などは注意が必要だ。抗生剤で治療できる。ただ、感染力はかなり弱く、犬と猫をさわった後はよく手を洗い、口移しでえさを与えるなどしなければ、まず感染の心配はない。かまれるなどして、発熱した場合、医師に相談することも必要だ。(平成22年5月24日 朝日新聞)

梅毒、患者急増

梅毒患者の報告数がここ数年、急増していることが国立感染症研究所のまとめで分かった。感染を知らず出産し、子供が先天梅毒になるケースもある。。感染研によると、梅毒患者数は抗生物質など薬剤開発により戦後減少傾向だったが、03年以降、再び増え始めた。03年に509例だった報告数は06年に600例を超え、07年737例、08年は823例と毎年100例近く増え続けている。男性では35〜39歳、女性では20〜24歳の割合が高い。20〜24歳の女性は03年15例だったのが、07年には49例と3倍以上に増えた。母子感染による先天梅毒は06年に10例、08年は7月末現在で7例報告。妊娠中に夫から感染したとみられる症例もあった。先天梅毒の子供の4割は妊娠中か生後1週間までに死亡するといい、感染症情報センターの多田有希室長は「妊婦検診を必ず受け、感染が判明したらきちんと治すことが大事だ。妊娠後期に2回目の検査もしてほしい」と警告する。梅毒は細菌「梅毒トレポネーマ」が引き起こす性感染症で、国内では99年以降、感染を確認したらすべて保健所に届けるよう義務付けている。性感染症に詳しい斎田幸次・斎田マタニティークリニック院長は「不特定多数と性行為をする風潮が原因ではないか。(感染を防ぐ)コンドームの出荷数も減少しており、感染増加との関連が示されている」と話す。(平成21年2月17日 毎日新聞)

梅毒」増加傾向、30代男性と20代前半女性中心

性行為により感染する「梅毒」が、30歳代男性や20歳代前半の女性を中心に増加していることが、国立感染症研究所の調べで分かった。若い女性患者の増加に伴い、胎児に感染して死産や重い後遺症を引き起こす「先天梅毒」が年間5〜10人ほど報告されており、同研究所では、コンドームの使用による予防や妊婦健診の徹底を呼びかけている。梅毒は早期発見し、治療すれば治る。しかし、放置すると、発疹などの症状を経て、感染後3〜10年でゴムのような腫瘍や神経まひなどの症状が出て、死亡する。梅毒に感染した女性が妊娠すると、血液を通じて胎児に感染する「先天梅毒」を起こし、約4割の胎児が生まれずに亡くなる。同研究所によると、梅毒の患者は2003年から増加傾向となり、509人だった03年に比べ、07年は約1.4倍の737人に増えた。今年は9月28日現在で昨年同期より102人多い614人が報告されている。(平成20年10月24日 読売新聞)

日本脳炎、予防接種は「必要」

副作用の恐れからワクチンの接種を受ける率が激減している日本脳炎について、厚生労働省の検討会は「今後も予防接種は必要」との見解をまとめた。日本脳炎は予防接種法の対象疾病に指定され、13歳までに計4回のワクチン接種を受けるのが望ましいとされる。しかし05年に重い副作用例が報告され、接種を休止する自治体が相次いだ。一方、日本脳炎ウイルスは、西日本を中心に抗体検査陽性の豚が確認されており、このまま免疫を持つ子供が減ると、年間数人に抑えられている感染者が増える危険もある。検討会ではワクチンの供給状況を見ながら、接種対象を検討していく必要があるとの意見で一致した。(平成20年7月26日 毎日新聞)

はしか予防「夏休み中に」 中1・高3で接種率3割

若年層でのはしか流行を防ぐため、今年度から新たに予防接種対象となった中学1年、高校3年世代の接種率が3割程度と伸び悩んでいる。親が病院に連れていく幼児と異なり、クラブ活動などの合間を縫っての接種となることや、周知不足が背景にあるようで、厚生労働省は文部科学省に協力を要請、学校での個別指導も依頼。専門家は「せめて夏休み中に接種して」と呼び掛けている。厚労省結核感染症課によると、現時点での正確な接種率データはないが「ワクチンメーカーの出荷数から推計すると、中1、高3生の接種率は最大でも3割程度」にとどまっているという。(平成20年7月18日 日本経済新聞)

百日ぜき、2000年以降最多

しつこいせきが続く「百日ぜき」の患者報告が増えており、今年1―3月の累計は、比較が可能な2000年以降で最多となったことが、国立感染症研究所の16日までのまとめで分かった。特に成人患者の増加が目立ち、全体の4割近くを占めた。専門家は乳幼児期に受けたワクチンの効果が減衰したためではないかとみている。成人は典型的な発作症状がなく、見逃される例も多いとされる。感染研は「放っておくと感染を拡大させるため、激しく治りにくいせきなどの症状が出たら早く受診を」と呼び掛けている。3月30日までの約3ヵ月間に、全国約3000ヵ所の小児科から報告された患者数は計851人。この規模の調査が定着した2000年以降、最多だった同年の同じ時期までの累計(計689人)を上回った。都道府県別では千葉150人、福岡70人、大阪69人、広島58人、愛知56人など、大都市圏で多い。(平成20年4月16日 日本経済新聞)

百日ぜき患者倍増 

激しいせきが続く百日ぜきの患者が、今年は過去10年間で最も速いペースで増加していることが、国立感染症研究所感染症情報センターの調べでわかった。国内の小児科3000か所からの報告によると、今年に入って確認された患者は664人(3月16日現在)で、昨年同期(331人)の約2倍。大人も含めた全体の患者数も急増しているとみられ、同センターでは注意を呼びかけている。百日ぜきは、春から夏にかけてが流行のシーズン。風邪に似た症状で始まり、大人の場合は長引く激しいせきのほかは、比較的症状が軽いのが特徴だ。このため、発症に気づかないケースも珍しくない。しかし、大人が感染源となって、ワクチンを接種していない乳幼児に感染すると、肺炎のほか、手足のまひ、目や耳の障害などの後遺症が残る例がある。このうち0.2〜0.6%の乳幼児は死亡するとされる。国内では、生後3か月以降に計4回のワクチン定期接種の機会があるが、ワクチン効果は年月がたつにつれ減少するため、大人がかかるケースが近年増加。現在では、小児科からの報告でも20歳以上の症例が3割以上を占める。同センターでは「乳幼児は早めにワクチンを受け、大人も、せきが長引けば病院を受診してほしい」と話している。(平成20年3月30日 読売新聞)

エボラウイルスを無毒化

感染すると致死率が50−90%と高く、ワクチンも治療薬もないエボラ出血熱の原因であるエボラウイルスを遺伝子操作で無毒化し、実験用の特殊な人工細胞の中でしか増えないようにすることに、東京大医科学研究所の河岡義裕教授、海老原秀喜助教らが世界で初めて成功し、米科学アカデミー紀要に発表した。ウイルスの危険性が研究のネックだったが、この無毒化ウイルスを使えば、治療薬探しなどの研究が進むと期待される。 このウイルスをワクチンとして使う道も考えられるという。チームは、遺伝子からウイルスを合成する「リバースジェネティクス」という手法を使い、エボラウイルスが持つ8個の遺伝子のうち、増殖に欠かせない「VP30」という遺伝子だけを取り除いたウイルスを作製した。できたウイルスは、通常の細胞の中では増えず、毒性を発揮しないが、VP30遺伝子を組み込んだサルの細胞の中でだけ増殖。それ以外の見た目や性質は、本物のエボラウイルスと変わらず、治療薬探しなどの実験に使えることを確認した。(平成20年1月22日 中国新聞)

はしか、来年度からワクチン接種徹底 

大学生や高校生を中心としたはしかの流行を受け、厚生労働省は今年の反省を踏まえ、はしかの免疫を持つ比率が低い10〜20代のワクチン接種を徹底するほか、ワクチン増産なども検討。先進国で数少ない「はしか輸出国」の汚名返上も目指す。はしか予防は就学前のワクチン接種が基本。厚労省は昨年4月、予防接種法の施行令を改正し、それまで1歳〜7歳半までの1回接種だったのを「小学校就学前の2回接種」に変えた。しかし国立感染症研究所の調査では、就学前年の児童で2回目を接種していたのは昨年10月までに29%にとどまっていた。今回、感染が広がった10〜20代は、副作用が社会問題化して94年に予防接種が義務制から任意制になった世代の先駆けだ。94〜04年の接種率は90〜95%で推移しているが、1回の接種では接種者の約5%が十分な免疫を持てない。厚労省はこの約5%と、5〜10%の未接種者が中心になり、学校などで集団感染したとみている。このため検討会では、免疫が弱い世代の予防対策として、企業や大学などが入社・入学前に接種の有無の確認を徹底することなどが可能かどうかについても検討する。また今年は自治体の一斉購入などでワクチンの在庫が全国で一時5万本まで減り、抗体の有無を調べる検査試薬はゼロにもなった。こうした事態を繰り返さないよう増産計画も検討していく。今回の流行では、はしかを抑え込んだカナダ、米国などへの「輸出」も相次いで発覚。カナダでは、東京都内の高校生1人が修学旅行中にはしかにかかり、他の生徒約120人もホテルに一時足止めされた。米国では、日本を旅行した20代の男性が帰国後に発症、2次感染の疑いもあるとして立ち回り先が公開された。(平成19年6月13日 朝日新聞)

MRSAに効く新抗生物質を発見

院内感染の原因となる細菌の中でも最も恐れられているメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)やバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)などを殺す強力な抗生物質を発見したと、米製薬大手メルクの研究チームが、18日付の英科学誌ネイチャーに発表した。 研究チームは、25万種に及ぶ天然物質の抽出物の殺菌力を調べ、南アフリカの土壌から採取した放線菌が作る低分子化合物が強い殺菌力を持つことを突き止め、プラテシマイシンと名づけた。 MRSAに感染したマウスで試したところ、効果が確認でき、副作用もなかったほか、VRE、肺炎球菌などに対しても強い殺菌作用を示した。 さらに、この物質が働く仕組みを調べたところ、細胞の脂質合成にかかわる酵素を阻害することが判明。既存の抗生物質と仕組みが似ていると、耐性菌が出現しやすいが、この物質のように、脂質合成を阻害する抗生物質は例がないという。 薬剤耐性菌に詳しい国立感染症研究所細菌第2部の荒川宜親部長は「MRSAなどに有効な抗菌薬は少なく、治療は手詰まり状態で新薬が期待されていた。 この抗生物質は、全く新しい仕組みらしく画期的だ。 毒性も低く、臨床的にも期待できる」と話している。(平成18年5月18日 読売新聞)

MRSA「乳幼児の5.6%保菌」 

健康な乳幼児の5.6%が抗生物質の効かないメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を持っていることが順天堂大医学部の平松啓一教授(細菌学)らの調査で分かった。 見つかったMRSAの7割は、市中獲得型と呼ばれる新型だった。 乳幼児の間では薬の効きにくい「とびひ」(皮膚に水ぶくれができるなどしてかゆくなる病気)が増えており、その原因になっていると見られる。市中獲得型MRSAの日本での広がりの実態が明らかになったのは初めて。平松さんは「風邪などで抗生物質を服用しているうちにできたと考えられる。今後毒性の強い菌が出てくる可能性もあり、監視が必要だ」と話している。

平松さんらは宮城、京都、佐賀の3府県で1カ所ずつ保育園か幼稚園を選び、6歳未満の918人の鼻の粘液に含まれる細菌類を調べた。その結果、28%に当たる257人から黄色ブドウ球菌が見つかり、うち51人のがMRSAだった。遺伝子配列の解析をすると、7割が市中獲得型に特有な遺伝子を持っていた。 黄色ブドウ球菌は健康な人の約3割が皮膚や鼻の穴の中に持っており、傷を化膿(かのう)させたり、とびひの原因になったりする。通常、抗生物質がよく効くが、抗生物質に対する耐性遺伝子を持つとMRSAと呼ばれる。 MRSAは病院内で、肺炎や敗血症などの原因になる。多量の抗生物質が使われる入院患者や病院関係者以外から見つかることはほとんどないと考えられてきた。

しかし、米国やオーストラリアでは10年ほど前から入院歴のない人にもMRSAが見つかるようになった。病院で見つかる従来型と区別して市中獲得型と呼ばれる。抗生物質への耐性はそれほど強くないが、増殖するのが速く、強い毒性を持ちやすい。米国では99年に4人の子どもが肺炎を起こして死亡している。 国内ではここ数年、抗生物質が効きにくいとびひが相次いで報告されており、「市中獲得型が原因になっている可能性が高い」と平松さん。とびひの患者の半数からMRSAが見つかったとの報告もある。 この報告では、従来型か市中獲得型かは調べていない。(平成16年1月3日 朝日新聞)

世界初のケトライド系抗菌薬テリスロマイシンが発売

今年10月に承認された、ケトライド系に属する初めての経口抗菌薬テリスロマイシン(商品名:ケテック)が、12月15日から発売された。わが国ではアベンティス ファーマが製造、三共と藤沢薬品工業が同一商品名で販売する。抗菌スペクトルが広く、ペニシリン・マクロライド耐性肺炎球菌にも感受性を持つ点などが評価され、類似薬効比較方式で算定された経口抗菌薬として、初めて「有用性加算1」(画期的な新薬には及ばないものの、高い有効性や安全性を示す新薬に付与)を獲得した。

わが国における適応症は、テリスロマイシンに感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、モラクセラ・カタラーリス、インフルエンザ菌、ペプトストレプトコッカス属、プレボテラ属、肺炎クラミジア、肺炎マイコプラズマ、レジオネラ属による、呼吸器領域、耳鼻咽喉科領域と歯科領域の感染症。

具体的な適応疾患は、扁桃炎、咽頭炎、咽喉頭炎、急性気管支炎、慢性呼吸器疾患の二次感染、肺炎、副鼻腔炎、歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎。わが国では、市中肺炎の主要な原因菌の一つである肺炎球菌のうち、実に8割弱がマクロライド耐性、3割がペニシリン耐性とのデータがある。こうした耐性肺炎球菌に効果がある上、マイコプラズマやレジオネラへも感受性があることから、特に市中肺炎に対して広く使われることとなりそうだ

用法・用量は、1日1回2錠(600mg)の経口投与。代謝に食事がほとんど影響しないため、服用タイミングに対する指定はない。ただし、投与期間には限定があり、歯科領域感染症が3日間、呼吸器・耳鼻咽喉科領域が5日間。肺炎には症状により最大7日間まで投与できる。なお、小児や、中耳炎には適応がない。

テリスロマイシンは、2001年10月のドイツを皮切りに、欧州各国とラテンアメリカの主要国で販売されており、100万人以上に対する市販後データの集積がある。米国では今年1月に米国食品医薬品局(FDA)が、追加データの提出を条件とする認可可能通知を発出。フランスAventis社は10月20日までに、約2万4000人の感染症患者を対象とする臨床試験(試験番号3014)の追加解析データと、承認国における市販後データを提出しており、来年4月まで(追加データ提出から6カ月以内)にFDAが裁定を下す予定だ。(平成15年12月16日Med Wave)

家畜用抗生物質使用規制強化へ

農林水産省は、抗生物質が畜産業に乱用され、抗生物質が効かない耐性菌が出現、人間の細菌感染症治療の障害になっている可能性を重視し、家畜用抗生物質の使用の規制を強化することを決めた

牛や豚、鶏などの家畜に使われている抗生物質には、病気治療用の動物医薬品と、成長促進目的のためにエサに添加されている抗生物質の2種類がある。動物医薬品を購入するには、獣医師が発行する「指示書」を販売店に提出することが義務づけられているが、市民団体などから、獣医師の指示書が違法に売買され、動物医薬品の抗生物質がエサ用に転用されるなど、乱用の実態が指摘されていたことから、規制に乗り出すことになった。 都道府県と協力して、抜き打ち検査などを実施、悪質な場合には獣医師法や薬事法で処罰し、また氏名公表に踏み切る。 一方、成長促進のためにエサへの添加を認めている抗生物質は29種類あるが、同省は耐性菌の増殖を防止するため、今月中にそのリスク(危険性)評価を内閣府の食品安全委員会に諮問し、問題のある抗生物質の使用を禁じることにしている。(平成15年11月27日 読売新聞)

リステリア症、年間83人 

自然界に広く分布するリステリア菌に国内で感染し、髄膜炎や敗血症などの重い症状に陥る人が推計で年間83人に上ることが、22日までの厚生労働省研究班の実態調査で分かった。実際に把握できたリステリア症の重症例では約1割が死亡していた。欧米ではナチュラルチーズなどを介した集団食中毒が近年頻発しているが、国内の実態は不明だった。市販食品の一部が汚染されているとのデータもある。調査したのは、国立医薬品食品衛生研究所の五十君静信食品衛生管理部第1室長が主任を務める研究班。 01−02年、ベッド数百床以上の救急病院を対象に、過去の感染患者数を調査。773病院から回答があり、集まった事例のうち1995年以降の重症事例(延べ95人)を分析した。95人のうち9人が死亡。いずれも60歳以上で、糖尿病や肺の病気などで免疫力が低下していた人が多かった(平成15年11月22日 中国新聞)

市販牛臓物の4分の1からO-157検出、子どもにレバ刺しを与えるのは危険

焼肉店に家族で食事に行った時、臭みが少なく栄養豊富だからと、子どもにレバ刺しを食べさせるのはやめた方がよさそうだ。子どもの消化管は大人よりも弱く、わずかな量のO-157(オー157)などの曝露で腸管出血性大腸菌感染症にかかる可能性があるからだ。実際、市販牛臓物の買い取り調査の結果、25%でO-157が検出された。22日のポスターセッション「食品衛生・薬事衛生」で、大阪市立環境科学研究所の北瀬照代氏が報告した。

北瀬氏らの研究グループは、2002年7月から9月にかけて大阪市内で焼肉店が多い地区の数カ所の精肉店で、牛内臓肉40検体を購入し、各検体について生菌数の測定とO-157の検出を実施した。対象とした部位と検体数は次の通り。 レバー8、ミノ8、ハチノス3、センマイ3、赤セン3、大腸7、ハート2、コリコリ2、マメ2、フク1、ミックス1。 測定の結果、1g当たりの生菌数は10の5乗台、10の6乗台の検体が多かった。一般に市販されている食肉の生菌数は10の4乗台から10の5乗台であり、今回の検体ではやや多い程度だった。一方、O157が検出されたのは、レバー2検体、ハチノス1検体、センマイ2検体、赤セン2検体、ハート1検体、コリコリ1検体の計10検体で、全検体の25%で検出された。 と蓄場では消化管と消化管以外の内臓を分別して扱うことになっているが、今回、レバー(肝臓)、ハート(心臓)、コリコリ(血管)など消化管以外の部位からも検出されたことで、と蓄後の処理や販売店での取り扱いの過程で汚染された可能性が高いという。北瀬氏は継続的に調査・報告を行っているが、例年は2.5%程度であり、今回は特に多かったという。

同氏は、「子どもは消化器官が大人に比べて弱く、O-157などに感染して腸管出血性大腸菌感染症などを発症しやすいため、焼肉店などに連れていった時、内臓肉の生食をさせるのは避けてほしい。 生肉を扱ったはしや皿にも注意が必要」と強調した。(平成15年10月23日 medwave)

コンビニエンスストアのサンドイッチ、4割に黄色ブドウ球菌や大腸菌検出

きれいにパックされ、コンビニエンスストアで販売されているサンドイッチや弁当は、今ではビジネスマンなどの食生活の一部を支えるまでになっている。しかし、首都圏のコンビニ店で連続買い取り調査をした結果、サンドイッチ21検体中9検体から大腸菌が検出された。ただちに危険、あるいは不潔という汚染状況ではないが、非加熱のまま食べる食品であるだけに購入後、常温で長時間置いておくことは避けた方がよさそうだ。22日のポスターセッション「食品衛生・薬事衛生」で、関越中央病院の樋口幸子氏が報告した。

樋口氏らの研究グループは、東京都内のコンビニチェーンの特定店舗で、ツナサンドを原則として1週間に1回ずつ計21検体を購入し、検体として採用した。間隔を空けたのは特定ロットの商品になるのを避けるため。 検体から無菌的操作で培養を行ったところ、43%に当たる21検体中9検体から大腸菌が検出されたほか黄色ブドウ球菌も見つかった。ただし、生菌数は10の1〜2乗程度だった。これについて樋口氏は「製造関係者の手指の手洗い不備や製造時の取り扱い、包装までの品質管理に問題があるのではないか」などとしていた。

また共同研究者で東京家政学院大学家政学部公衆衛生学・食品衛生学教授の薩田清明氏は、この程度の菌量では問題ないのではないかという会場の指摘に答えて、「サンドイッチは非加熱のうえ、購入後、理想的な扱いをされるとは限らず、十分な品質管理が必要」と強調していた。平成15年10月23日 medwave)

蚊を徹底駆除し西ナイル熱封じ

米国で猛威をふるった西ナイル熱の侵入に備え、厚生労働省は国内での感染拡大を防ぐ対応指針を策定した。 病気の特徴とウイルスを媒介する蚊の駆除方法を詳細に説明している。 近く都道府県に指針を伝え、素早い対策を周知徹底する。 この病気は重い脳炎が特徴で、カラスなどの鳥と蚊がウイルスを広げ、米国では昨年、284人が死亡した。 人間はウイルスを持つ蚊に刺された時だけ感染し、患者や感染した鳥と接触してもうつらない。 指針は、西ナイル熱を媒介する可能性が強い蚊として下水溝や汚水槽に多いアカイエカや、公園、雑木林にいるヒトスジシマカなど11種類を列挙し、それぞれの生息域など生態の違いを説明。 患者が出た時に迅速な蚊の駆除を行うため、幼虫の発生しやすい場所などの事前調査が望ましいとした。 患者発生時やカラスなどからウイルスを検出した時は、まず10キロ四方を目安として、下水管や木の茂みなどに殺虫剤をまき成虫を駆除。 空中散布も検討する。しかし、殺虫剤の大量散布は効果が一時的なため、成虫が再び増える前に幼虫駆除も実施。 空き缶や古タイヤなどのたまり水を極力減らしたり、排水溝や汚水槽などを消毒する。 住宅敷地内の対策は、住民に積極的に協力を要請し、網戸の設置の徹底も重要とした。(平成15年6月2日 読売新聞)

野生カキから「人食い菌」 肝臓悪い人は要注意

肝臓が悪い人などが感染すると、手足が急激に壊死(えし)し、手当てが遅れると数時間から数日で死亡する「人食い菌」ビブリオ・ブルニフィカスが、国内の野生のカキから見つかった。夏は7割以上、秋は半数が陽性で、水温が低くなる冬でも2%から検出された。専門家は「肝臓が悪い人は、夏に限らず秋冬も生の魚介類は避けた方が安全だ」と話す。 麻布大環境保健学部の大仲賢二助手らは、98年10月〜00年11月の26カ月間、東京湾4カ所と徳島県5カ所で、野生カキ計2165個を採取し、ビブリオ・ブルニフィカスの有無を調べた。 その結果、全体の3割に当たる655個から菌が見つかった。季節別に見ると、夏(6〜8月)が最も多く、71%から見つかり、次いで秋(9〜11月)の48%、春(3〜5月)の5%、冬(12〜2月)の2%だった。海の泥からも同時に出ており、環境全体に菌がいることを示している。 この菌は、健康な人が食べても、まれに下痢をする程度だが、肝臓が悪い▽薬として鉄剤を飲んでいる▽糖尿病など免疫力が落ちる病気にかかっている▽毎日5合以上酒を飲む−−などの危険因子を持つ人が発病すると急激な筋肉の壊死を起こす。 米国では、メキシコ湾岸地域を中心に毎年約100人の被害者が出ており、原因のほとんどはカキの生食だ。 日本では、これまで生カキによる人食い菌被害はほとんど知られていない。専門家は、日本では市場に出るカキの衛生基準が、米国より厳しいからではないかと見る。 大仲助手は「海水中には菌がほとんどいなくなる秋、冬でも、カキの体内には菌が残る可能性があることが明らかになった」と話す。(平成14年8月29日 朝日新聞)

ポリオウイルス合成、米の教授グループが世界初

小児まひの原因になるポリオウイルスを人工的に合成することに、米ニューヨーク州立大のエカード・ウィマー教授たちのグループが世界で初めて成功した。同教授によると、ほかのウイルスについてもDNAやRNAの遺伝情報がわかれば、ウイルスそのものを入手しなくても人工的に作り出すことが原理的には可能という。 こうした技術は生物テロなどに悪用される危険性があり、同教授は「警鐘を鳴らす意味で論文を発表した」としている。詳細は12日付の米科学誌「サイエンス」に掲載される。ウィマー教授たちは、ポリオウイルスの塩基配列に刻まれた遺伝情報をもとに、化学物質をつなぎあわせて同様の配列を持つDNAを合成、そのうえでRNAに変換させた。これを実験用の細胞から抽出した液に注入したところ、RNAがたんぱく質を作り出し、殻を持ったポリオウイルスが合成された。できたウイルスは自然界に存在するポリオウイルスと同様の性質を持ち、ネズミに感染し、死亡させたり、特有のまひを起こすことが確認された。 ウィマー教授は「予防接種の普及で、世界的にポリオ感染は下火だが、予防接種を中止すれば生物テロの道具に使われる可能性もある」と話している。(平成14年7月12日 読売新聞)

カテーテル挿入部の消毒、ポビドンヨードよりクロルヘキシジンが有用

カテーテル感染症の予防策として、挿入部の消毒は欠かせないものだが、使用する消毒薬によって予防効果がかなり異なることがわかった。ポビドンヨード(商品名:イソジンなど)よりも、グルコン酸クロルヘキシジン(商品名:ヒビテンなど)を用いる方が、敗血症の発症率が半減するという。研究結果は、Annals of InternalMedicine誌6月4日号に掲載された。この研究を行ったのは、タイNaresuan大学のNathohrn Chaiyakunapruk氏ら。Chaiyakunapruk氏らは、臨床現場でよく使われる2種類の消毒薬を比較した臨床試験8報をメタ分析し、敗血症の予防効果を比較した。プールされた対象患者数は総計4143人。すべて入院中の成人で、中心静脈カテーテルの挿入を受けており、8試験中5試験は集中治療室(ICU)の入院患者を対象としていた。メタ分析の結果、カテーテル関連の血液感染の発生率は、ポビドンヨードで消毒を行った患者ではおよそ2%。一方のグルコン酸クロルヘキシジンでは約1%で、ポビドンヨードより発生率が相対的に49%低くなることが明らかになった(危険率比0.51、95%信頼区間:0.27〜0.97)。以上から研究グループは、「中心静脈カテーテルを挿入する際は、挿入部をグルコン酸クロルヘキシジンで消毒した方が、ポビドンヨードで消毒するよりも血液感染の発生率を大幅に減らせる」と結論。消毒液としてグルコン酸クロルヘキシジンを採用することは、カテーテルによる血液感染を防ぐための「シンプルで効果的な方法」だと強調している。(平成14年6月5日 medwave)

コレラ菌は人の体内で「凶暴」化

コレラ菌は人の体内を通過することによって「凶暴」化することを、米タフツ大などのグループが突き止めた。培養した菌を研究目的で人がのんでも感染しにくく、なぜ流行が起きるのか、大きな謎だった。英科学誌ネイチャー6日号に論文が掲載される。グループはマウスでの実験で、患者の便から採取したコレラ菌は、同じ菌を培養した場合に比べ感染力が700倍も強いことを確認した。両方の菌を比べると、患者からの菌は、栄養摂取に必要な遺伝子や運動性を高める遺伝子の機能が活発で、菌が生き残って繁殖しやすくなっていることが分かった。グループは「コレラ菌は人の消化管を通過するうちに、感染力が飛躍的に高まる。ほかの感染症でも同様の現象が起きているかもしれない」としており、感染症研究の新たな糸口になりそうだ。(平成14年6月6日 朝日新聞)

寄生力強いマラリア原虫 名大助教授らが発見

世界で数億人が感染しているマラリアの病原体「マラリア原虫」の中で、ほかよりも強い寄生力をもつ新しいタイプが見つかった。名古屋大の川本文彦・助教授(マラリア分子疫学)らがミャンマー(ビルマ)の患者から見つけた。新タイプの発見は約80年ぶり。遺伝子の塩基配列も解明しており、診断や治療に役立ちそうだ。マラリアは蚊が媒介する原虫の寄生で発症、4種類に大別される。日本人も海外での感染例が年に数十人報告され、温暖化による拡大も心配されている。川本さんらが見つけたのは「四日熱マラリア」を起こす原虫のうちの新しい遺伝子タイプ。死亡することは少ないが、初めに的確な治療をしないと何十年も感染が続き、再発の原因になる。川本さんはミャンマーの患者から外形が少し変わった原虫を二つ発見。国やトヨタ財団などから研究費を受け、ミャンマーから名大に留学中のティン・ティダ・ウインさんとともに分析した結果、二つとも遺伝子の塩基配列がほかの原虫と少し異なっていた。ミャンマーで計1416人の患者を調べ、46人からこれらの新タイプを見つけた。1人の患者に寄生していた新タイプの原虫は、平均して従来タイプより3倍多かった。蚊から人の血液中に移りやすいのか、移ったあとの増殖速度が速いのか、今後、解明する。川本さんは成果を米国の寄生虫学会誌に発表するとともに、新タイプの原虫の寄生を診断する方法を特許出願した。(平成14年5月7日 朝日新聞)