花粉症について


無花粉スギ

花粉を出さない「無花粉スギ」を効率よく増やす方法を、日本製紙が開発した。苗木の生産効率が従来の約100倍に向上するという。親木と同じ形質を持つ木を育てるには、枝を土に挿して根付かせ苗木に育てる「挿し木」が使われる。スギの場合、挿し木には長さ20〜30センチの枝が必要で、その枝を採取できる親木の育成に数年かかる。同社は、森林総合研究所林木育種センターが05年に開発した無花粉スギ「爽春(そうしゅん)」を使い昨年4月から高効率栽培に取り組んだ。二酸化炭素濃度を外気の3倍程度に高めた空気を満たした室内で、2センチ程度の枝を挿し木。赤と青の光を当てながら水を与えると光合成が活発になり、8割以上が3〜4週間で根が伸び始めた。これを育てて苗木とし、採った枝を挿し木に使うことで数年のサイクルが1年未満に短縮でき、効率は100倍近くに向上するという。林木育種センターによると、無花粉スギは普通のスギよりコストがかかるが、緑化事業や生け垣などに使うことで花粉発生の抑制が期待できるという。現在、東京都や富山県など各地で無花粉スギの開発・増産の取り組みが進んでいる。(平成21年3月21日 毎日新聞)

リンパ節注射による花粉症の免疫療法に期待

リンパ節へアレルゲンを直接注射することで、従来に比べて短期間で苦痛が少なく、かつ安全性も高い花粉症治療が実現できる可能性がスイスを中心とした研究によって示された。チューリッヒ大学病院のThomasKundig博士は「リンパ節に直接アレルゲンを注入すると効果が著しく高まり、注入するアレルゲン用量を1000分の1未満に減らすことができ、アレルギー性の副作用も軽減できる」と述べている。著者らによると、西洋化した国々に暮らす人の35%以上がアレルギー性喘息であり、アレルギー注射(allergyshot、アレルゲン特異的免疫療法 [減感作療法] )と呼ばれる皮下脂肪組織への注射が標準的な治療法である。しかし、この方法では一般に3〜5年にわたり30〜70回の注射を受ける必要があり、時間がかかる上に、注射部位の腫れから全身的反応まで、アレルギー反応が引き起こされることも多く、「この治療を受けるのはアレルギー患者の5%に満たない」とKundig氏はいう。スイスおよび米国の研究チームは、リンパ節注射の有望性を試験するため、18〜65歳の約100人を対象に研究を実施した。被験者を2群に分け、一方には3年間にわたり54回の注射をする標準的な治療を行い、もう一方には8週間で3回のリンパ節注射を実施した。その結果、いずれの治療にも同等の効果がみられたが、リンパ節治療群は従来治療群に比べて痛みが少なく、副作用の頻度も低かった。鼻の検査によりくしゃみ、鼻汁、咳および息切れなどのアレルギー症状を評価した結果、Kundig氏らは、リンパ節治療が従来の注射に比べて短期間かつ安全な治療法であると結論付けている。また、リンパ節自体には神経がないため、リンパ節注射は採血よりも痛みが少ないとされ、患者のコンプライアンス(医療従事者の指示・アドバイスに従って行動すること)にも向上がみられたという。(平成20年11月20日 日本経済新聞)

花粉症、3ヵ月で改善

花粉症などのアレルギー患者に原因物質を繰り返し注射する「減感作療法」を、3ヵ月で済ませることに、チューリヒ大学病院(スイス)などの研究チームが成功した。皮下でなく、そけい部のリンパ節に注射する方法で、副作用も従来の方法より少ないという。米科学アカデミー紀要電子版に発表された。減感作療法は通常、原因物質のエキスを少量ずつ、約3年かけて注射する。研究チームは、皮下注射したエキスが体内の免疫システムをつかさどるリンパ節へは一部しか達しないことに注目。58人の花粉症患者に対し、リンパ節へ直接、1ヵ月おきに計3回だけ注射する新手法を試してみた。開始から4ヵ月後に検査したところ、アレルギー症状が劇的に緩和され、治療前に比べ平均10倍の花粉量がないと鼻炎が起きなくなっていた。効果は開始から3年後も持続していた。従来の減感作療法を行った別の54人では、じんましんなどの軽い副作用が18件、入院の必要なぜんそくの副作用が2件起きた。新手法では、軽い副作用が6件起きただけだった。(平成20年11月11日 読売新聞)

ステロイド薬と抗アレルギー薬の併用で花粉症に効果

英系製薬会社のグラクソ・スミスクラインは、同社が扱うステロイド薬と抗アレルギー薬の併用治療に関する調査結果を発表した。花粉症などアレルギー性鼻炎の患者を対象に実施した。83%の患者がくしゃみや鼻水などの症状が改善し、32%の患者は症状が治まった。花粉症シーズンを迎え、医師に併用治療を提案し処方の拡大を狙う。調査は2007年1月から5月まで、約2000人の花粉症などの患者を対象に実施した。患者にステロイド薬「フルナーゼ」と抗アレルギー薬「ジルテック」の両方を投与して、症状の改善の様子を4週間観察した。(平成20年1月24日 日経産業新聞)

花粉、平年の3〜8割

環境省は25日、今春のスギ、ヒノキの花粉の飛散量が「平年の3〜8割程度にとどまる」とする花粉総飛散量予測の確定版を発表した。 昨年7月の気温や日照時間が平年を下回った影響で花芽の数が少なかったためで、観測史上最大の飛散となった昨年に比べると、飛散量は1〜4割程度。 スギの開花は平年より数日程度遅れる見通し。 地域別の飛散量では、「北海道が平年並み、東北は平年と比べて6割、関東甲信越で同3割、北陸・東海が同8割、近畿・中国・四国・九州で同4〜6割程度」と予想している。(平成18年1月26日 読売新聞)

花粉飛散、昨年の2割

日本気象協会は19日、今春の花粉飛散予報を発表した。スギ、ヒノキの花粉飛散量は、平年より少なく、大量だった昨年の2割前後のところが多い見込み。飛散の開始も平年並みか、遅くなりそう。一方、北海道のシラカバの花粉飛散量は平年並みか、やや多い。環境省も昨年12月、今春のスギ、ヒノキの花粉飛散量について、平年並みか、その半分程度になるとの予測を発表している。(平成18年1月20日 読売新聞)

「減感作療法」の効果15年以上・小児の花粉症76%改善

スギ花粉のエキスを薄めて注射し続ける「減感作療法」を受けた小児患者の約76%は、治療から15年以上たっても花粉症の症状の改善や消失がみられることが、厚生労働省研究班の調査で9日、分かった。 主任研究者の岡本美孝・千葉大教授によると、治療2―3年後の改善率は70―80%とされており、効果が長続きすることを裏付けた。小児の花粉症発症率は増加傾向にあり、小学校では約10%とされる。岡本教授は「小児は抗アレルギー薬などの対症療法で改善することは少なく、減感作療法の治療効果は高い」としている。 研究班は、千葉大病院で1970―90年に受診した患者に、現状を質問。減感作療法を2年以上受けた約120人と、対症療法などを受けた約90人が回答した。治療開始時に16歳以下だった患者では、減感作療法を受けた17人のうち「症状消失」「大きく改善」「改善」の合計が約76%を占めた。対症療法などの22人では「消失」や「大きく改善」はなく、「不変」が約64%、「改善」と「悪化」が約18%ずつだった。(平成17年3月9日 日本経済新聞)

花粉症予防にワクチン開発

花粉症予防に、現在の治療法より少量で効き、副作用も少なく抑えることが期待できる新ワクチンを理化学研究所が開発した。細菌の働きを借り、アレルギーを抑制する仕組み。5年ほど後の実用化を目指している。現在の治療法である減感作療法は、スギ花粉エキスを注射して体の免疫細胞に働きかけ、アレルギーを抑える物質を分泌させる。急なアレルギーの副作用が起きないように、注射はエキスの濃度を少しずつ高めながら、3年ほどかけて50回以上打つ必要があることなどから、あまり普及していない。 理研の免疫・アレルギー科学総合研究センターの阪口雅弘チームリーダーらはこの療法に工夫を加え、エキスに含まれるスギ花粉のたんぱくに、細菌のDNA断片を結合させたワクチンを開発した。人間の免疫細胞はこのDNAを検知すると、アレルギーを抑える物質を分泌する。米国でブタクサ花粉を使った同様のワクチンの臨床試験が進んでおり、その効果から、スギ花粉の新ワクチンは減感作療法の1割程度にあたる約6回の注射で十分な効果があることが推測されている。このDNA断片は、鼻や目の粘膜にある肥満細胞とスギ花粉たんぱくが結びつくのをじゃまし、アレルギーを起こすヒスタミンなどを分泌しにくくする効果があることもわかった。人間の血清を使った試験では副作用が減感作療法の50分の1に減る可能性があることが確認された。現在、マウスを使った実験が進められ、アレルギーを抑える物質の働きが上がることが確認された。 08年には患者を対象に臨床試験を始めたいという。花粉症が激増した背景には、細菌のいない清潔な環境の広まりがあるとされる。発症の予防や治療法の開発をめざす最近の研究では、乳酸菌など細菌の力を利用するものが多い。 理研も他に、結核のワクチンであるBCG接種で花粉症を抑える研究を進めている。平成17年2月16日 朝日新聞)

花粉ヒサンは史上最大

都福祉保健局は20日、今春(2月―4月)の都内でのスギ・ヒノキの花粉飛散量が平均で昨年の30倍を超え、1985年に始めた観測史上で最大になる可能性もあると発表した。 都によると、最初に飛散が始まるのは多摩地区で、例年並みの2月19日ごろ。都内9か所にある測定点の総飛散量の平均は最大の場合、1平方センチあたり1万2211個に達すると見られ、これは過去最大だった95年の1万1242個を上回る。 各測定点の飛散量予測では、青梅市の2万1000―3万個が最高で、昨年の約32―47倍。八王子市でも昨年の約47―65倍になる見通しという。 また、多摩地区よりは飛散量が少ない23区内の測定点でも、軒並み昨年の10倍を超える見通しだ。 (平成17年1月21日 読売新聞)

花粉症を改善する乳酸菌が登場

花粉症やアレルギー性鼻炎などアレルギー疾患が増えている。症状がひどいと仕事にも支障が生じるが、その症状を改善する乳酸菌が登場した。人の体内に花粉などのアレルゲンが侵入すると、それに対抗する抗体をつくって体を守ろうとするが、過剰に反応し過ぎて免疫のバランスが崩れるとアレルギー疾患が起きる。このため、抗体の反応を弱めて免疫のバランスを整えてやれば、症状が軽くなる。そうしたバランス作用を持つことが人の臨床試験で確認されたのが、カルピス(東京都渋谷区)が独自に開発したL−92乳酸菌だ。花粉症に悩む23人を、L−92乳酸菌を飲む群(12人)と、本人には本物だと説明して偽の飲料を飲む群(11人)に分け、花粉の飛散時に6週間、毎日200ミリリットルを取ってもらった。2つの群を比較したところ、L−92乳酸菌を飲んだ人は、目のかゆみなど症状が改善された。アレルギー性鼻炎の人でも同様の試験結果で、L−92乳酸菌は鼻水や鼻詰まりなどの症状を改善する効果が見られた。L−92乳酸菌を含んだ飲料は「インターバランスL−92」の名で3種類の飲料が今年から発売されている。発売後のモニター調査でも、約7割の人に症状の改善があった。(平成16年6月16日 毎日新聞)

ニンジン成分で花粉症やアトピー性皮膚炎の予防効果

カゴメは国立医薬品食品衛生研究所(東京・世田谷)と共同で、ニンジンジュースを飲み続けると花粉症やアトピー性皮膚炎などの予防効果があることを解明した。ニンジンに含まれるベータカロチンが抗アレルギー物質として作用し、ジュースとして飲み続けると、細胞のバランスが調節され、長期的な治療効果があるという。 研究成果は29日から3日間、大阪市で開かれる日本薬学会で発表する。実験では通常の飼料を与えたマウスと、100グラム当たりベータカロチンを2ミリグラム添加した飼料で飼育したマウスを比較。双方のマウスにアレルゲンを投与しアレルギーを発症する状態にして、症状や血中のヒスタミン濃度などを分析した。 その結果、ベータカロチンを摂取したマウスの方が、肥満細胞から放出されるヒスタミン量が少なかった。またマウスの脾臓(ひぞう)細胞を培養して調べたところ、ベータカロチンが細胞バランスを調整しアレルギーになりにくくすることが分かった。(平成16年3月11日 日経産業新聞)

花粉症に効くヨーグルト

キリンビールは15日、目のかゆみや鼻水など花粉症の症状を抑える効果が期待できるヨーグルトや健康食品を、04年にも発売すると発表した。免疫細胞のバランスを改善する乳酸菌を発見し、昭和女子大の飯野久和教授のグループとの共同研究で、効果を確認したという。23日から岐阜市で開かれる日本アレルギー学会で発表する。

アレルギーは、体内の免疫細胞のバランスが崩れて起こるとされる。食品と薬品の両部門を持つキリンは、保有する100種以上の乳酸菌からマウスを使った実験で免疫バランスを大きく改善する菌を発見。花粉症に悩む約30人の社員を対象に今春、この乳酸菌を使ったヨーグルトを毎日食べさせ、経過を観察した。

その結果、約半数に顕著な効き目があり、目のかゆみなどが和らいだ。薬での対症療法のような副作用の危険もなく、ヨーグルトなどの形で定期的に摂取すれば、体質改善やアトピー性皮膚炎などを抑える効果も期待できるという。 同社では、清涼飲料や機能性食品などとしても、商品化したい考えだ。(平成15年10月13日 朝日新聞)

ディーゼル排ガス「花粉症に悪影響」

ディーゼル車の排出ガスとスギ花粉症との関連を調べていた東京都の調査委員会27日、「排ガスに含まれる微粒子が花粉症の発現や悪化に影響を及ぼす可能性がある」との調査報告書をまとめた。 排ガスと花粉症発症メカニズムなどについて総合的にまとめた研究は初めてだという。 調査は医師や大学教授ら約30人が参加し、2001年9月から今年3月まで実施。 ディーゼル車の排ガスは健康調査などで呼吸器疾患などとのかかわりが指摘されており、調査では花粉症との関連を調べた。 報告書によると、花粉症患者の血液を実際に用いて試験管内で排ガスの微粒子を加えた実験では、症状を発現・悪化させる物質を増やすことが判明した。(平成15年5月28日日本経済新聞)

花粉の連続大量飛散は花粉症の“メモリー効果”をもたらす

花粉の大量飛散が複数シーズンにわたって続くと、花粉に対する抗体が減りにくくなり、年々、症状がひどくなる、一種の「メモリー効果」が起きる可能性があることが分かった。 同愛記念病院(東京・墨田区)耳鼻咽喉科の野原修氏らが5月14日に日本アレルギー学会春季臨床大会の一般口演で報告した。野原氏らは、減感作療法を実施しているスギ花粉症患者36人(男性22人、女性14人)に対し、スギ花粉が東京都品川区で4000個/cm2超と大量だった2000年から2002年の3年間、花粉飛散時期の前後(前年12月〜1月と5〜6月)にスギ・ヒノキ特異IgE値をCAP-RAST法で測定した。 その結果、大量飛散後は次シーズン直前になっても抗体値の下がり方が少なく、36人の平均値を年度間で比較すると統計的有意に値が増加していた。 シーズン後の値も同様に、有意に上昇しており、シーズン前後で増減を繰り返しながら右肩上がりに抗体値が増加した。 野原氏らは、大量飛散によって、免疫系への影響が翌年まで残り、翌年の大量飛散によってさらに免疫応答が亢進していく蓄積的な効果が起きている可能性を示唆した。 スギ花粉の大量飛散がなかった1994年と1995年では年度間での抗体値変動はほとんどなく、このような継続的な上昇は見られなかった。 なお、減感作療法の治療期間と抗体値や変動の間には相関が見られなかったという。(平成15年5月26日medwave)

ご飯食べるだけで花粉症治療 抗原含むイネ開発

解読されたイネゲノムを応用した遺伝子操作で、花粉症を抑える成分を含んだイネを開発することに、独立行政法人・農業生物資源研究所(茨城県つくば市)が成功した。おかゆを食べさせたマウスで効果を確認した。減感作療法の一種で、現状では2年以上、頻々と通院せねばならない同療法が、ご飯を食べることで楽にできるかもしれない。2、3年後の臨床試験を目指す。 花粉症は、花粉のたんぱく質によって体内に抗体ができ、両者が反応して発症する。これに対し、たんぱく質の構造のうち抗原となる部分を分離してあらかじめ体内に入れ、免疫の働きをまひさせて発症を防ぐ減感作療法がある。 マウスのスギ花粉症に特有な抗原をつくるDNA配列(抗原たんぱく質の遺伝子の一部)をイネに組み込むと、その米の胚乳(はいにゅう)には抗原が含まれ、90度で20分加熱しても壊れなかった。 この米を炊いたおかゆをマウスに与え続けると、アレルギー反応が抑えられた。ヒトの花粉症の抗原を含んだイネも開発済みで、特許の申請を準備している。 減感作療法の有効性は知られているが、約2年半、最も高頻度のときは毎週、通院して抗原の投与を受けねばならず、普及の大きな壁だ。 同研究所の高岩文雄・遺伝子操作研究チーム長は「イネを育てるだけでいいので、低コストで大量供給できる」と話している。(平成14年12月19日朝日新聞)

子どもの花粉症発症、親世代の2倍に

15歳までに花粉症になる子どもは、親が子どもだったころの2倍に増えている−−。日本医科大の大久保公裕・助教授(耳鼻咽喉(いんこう)科)がこんな調査をまとめた。花粉症の低年齢化が裏付けられた形だ。1日から盛岡市で開かれる日本小児アレルギー学会で発表する。 大久保さんは今年3月、東京、大阪、名古屋、福岡など都市部で働く大人958人と、その子ども1285人の協力を得てアンケートした。 親の世代(平均年齢43歳)で、花粉症などアレルギー性鼻炎の症状がある人は51.4%。子どもたち(同12歳)では23.7%だった。 このうち花粉症にかぎって、発症した年齢を尋ねたところ、「15歳まで」と答えた人は親の世代では約5%だったのに対し、子どもの場合には約10%と倍になっていた。 大久保さんは「花粉の飛ぶ量が増えたことや気密型の住居の増加などが低年齢化の原因と考えられる。こうした状況が続けば次の世代に倍々ゲームで増えていく可能性がある」と話している。(平成14年11月1日朝日新聞)