医療費について


医師人口比、日本、20年に最下位へ

人口1000人当たりの日本の医師数が、2020年には経済協力開発機構(OECD)加盟30カ国中最下位に転落する恐れがあることが、近藤克則・日本福祉大教授の試算で分かった。日本各地で深刻化する医師不足について、国は「医師の地域偏在が原因で、全体としては足りている」との姿勢だが、国際水準から懸け離れた医師数の少なさが浮かんだ。OECDによると、診療に従事する03年の日本の医師数は人口1000人あたり2人。OECD平均の2.9人に遠く及ばず、加盟国中27位の少なさ。一方、診療医師数の年平均増加率はメキシコ3.2%、トルコ3.5%、韓国は5.5%で、日本は1.26%と大幅に低く、OECD各国中でも最低レベルにとどまる。各国とも医療の高度化や高齢化に対応して医師数を伸ばしているが、日本は「医師が過剰になる」として、養成数を抑制する政策を続けているためだ。近藤教授は、現状の増加率が続くと仮定し、人口1000人あたりの診療医師数の変化を試算した。09年に韓国に抜かれ、19年にメキシコ、20年にはトルコにも抜かれるとの結果になった。30年には韓国6.79人、メキシコ3.51人、トルコ3.54人になるが、日本は2.80人で、20年以上たっても現在のOECD平均にすら届かない。近藤教授は「OECDは『医療費を低く抑えると、医療の質の低下を招き、人材確保も困難になる』と指摘している。 政府は医療費を抑えるため、医師数を抑え続けてきたが、もう限界だ。少ない医師数でやれるというなら、根拠や戦略を示すべきだ」と批判している。(平成19年5月28日 毎日新聞)

入院医療費、定額に

厚生労働省は入院医療を対象に、病気やケガの種類が同じなら検査・投薬の数量や日数にかかわらず医療費を入院1回あたりの定額とする新制度を導入する検討に入った。過剰診療を減らして医療の効率化を促し、欧米より長い入院日数を短縮する狙い。2008年4月の診療報酬改定で導入を目指す。現在の医療費は入院・外来にかかわらず投薬や検査など診療行為ごとに決めた報酬単価を積み上げて算定する「出来高払い」が原則。 診療行為をすればするほど医療機関が受け取る報酬が増えるため、必要性の低い検査をするなど過剰診療になりやすい面がある。(平成19年1月9日 日本経済新聞)

70−74歳の医療費窓口負担2倍に

政府・与党は1日の医療改革協議会で、患者負担増や75歳以上が入る独立保険の創設などを盛り込んだ医療制度改革大綱を正式に了承した。医療費の患者負担は2006年10月から段階的に引き上げ、2008年度には70―74歳の窓口負担が原則として現在の2倍になる。骨折の場合で同年代の負担額は2万4000円と今より1万2000円増える。政府は来年2月中旬をメドに関連法案を通常国会に提出する方針だ。まず来年10月に70歳以上の高所得者(夫婦で年収621万円以上)を現在の2割から3割に引き上げ、2008年度には高所得者を除く70―74歳を1割から2割に変える。また地方の個人住民税が非課税となっている低所得者を除き、高額医療費の自己負担上限を来年10月から引き上げる。最も影響が大きいのは70―74歳。低所得者の負担は変わらないものの、それ以外の所得層は軒並み負担増になる。例えば夫婦で年収620万円以下の一般所得者が風邪で1回診察を受けた場合、現在500円の窓口負担は2008年度には1000円に増える。(平成17年12月2日 日本経済新聞)

老人高額医療費償還制度、対象者の3割は未償還

高齢者医療費の抑制を目指した2002年10月の健康保険法などの改定に伴って、一定額を超える老人の高額医療費については、申請によって償還する方式が導入された。 しかし、全国保険医団体連合会(保団連)が7月1日に発表した全国の自治体に対する調査結果によると、2003年3月末時点で償還対象者の実に30%が未申請であり、本来、受け取ることができる金額を受け取っていないことが明らかになった。 保団連は全国の各保険医協会を通じ、市町村に対して高額医療費の償還状況などについてのアンケート調査を実施、1都2府28県の1572自治体から回答を得た。 2003年3月以前の時点の調査結果を除いた1182自治体分について見ると、償還対象者は39万5439人であるのに対して支給決定者数は27万5358人。 その差12万81人が未申請者であり、未償還額は有効回答分だけで7億2863万2711円にのぼる。 償還に対する対応は自治体によって大きく異なる。 個別の市町村では償還率0%から100%まであり、県単位で見ても最も低い福島県の30.1%から最も高い愛知県の90.9%までばらつきが激しい。 この格差は申請を促す体制をとっているかどうかで分かれるようだ。 保団連の調査によれば、未申請者に個別に通知をしたり、申請書を郵送して申請を促している自治体は、約65%で、他の3分の1は広報で知らせるといった対応にとどまる。 7.6%の自治体は申請を促す対応を事実上していなかった。 また、最初の1回だけ申請すれば、あとは申請不要という自治体がある一方で、毎月申請が必要なところもあり、手続きの煩雑さが申請率に影響している傾向もあったという。 こうした状況について保団連は、「全国的な制度であり、国や都道府県がばらつきを是正する指導をすべきだ」としている。 厚生労働省は既に、未申請者への個別通知、領収証添付不要、初回以降は申請不要とする措置をとるように都道府県に通知しているが、徹底していない。 保団連では、そもそも、高齢者に申請に基づく制度を適用するのは無理があり、制度自体の再考が必要と指摘している。(平成15年7月2日medwave)

高額医療費払い戻し、高齢者の4割が受けず

東京都内で、医療費の払い戻しを受けられる高齢者の4割が手続きをしていないことが、東京保険医協会の調査でわかった。通知がなくて払い戻し対象になっていることを知らなかったり、役所に出向かなければならなかったりする煩雑さが原因とみられる。同様の傾向は他県でもみられ、全国保険医団体連合会は近く全国調査をする。 昨年10月、医療費の自己負担が限度額を上回った場合に市町村の窓口で超過分の払い戻しを申請する「高額医療費制度」が、75歳以上に導入された。東京保険医協会は昨年10月分を対象に、経過措置として同制度の対象者になっている70〜74歳の年齢層も含めて都内49の自治体に手続き状況を問い合わせた。 回答があったのは29区市で、払い戻し対象5万4985人のうち、手続きをしていない人は40%にあたる2万2101人だった。29区市のうち21が額についても回答。払い戻し対象者3万3304人の払い戻し予定額は約2億3305万円で、手続きをしていない1万2173人の未払い額は7713万円にのぼった。払い戻しの通知をしない自治体もあり、対応にばらつきが目立った。また、青森県保険医協会が1月末時点で同様の調査をしたところ、手続きをしていない人が60%に達し、長崎県保険医協会の調査(2月末時点)でも43%を占めた。長崎県香焼町では償還対象者約700人全員に事前に申請書を提出してもらい、未払いをゼロにしている。同制度についての問い合わせは市町村の老人医療の担当課へ。(平成15年5月26日朝日新聞)

医療費、年2万4千円増加、世帯平均 負担引き上げで生協試算

今月からサラリーマン本人の医療費の窓口負担が2割から3割に引き上げられたことで、2003年の医療費負担が1世帯平均約2万4000円増えることが、日本生活協同組合連合会(東京)の調査で分かった。 同連合会が生協組合員を対象に毎年行っている「全国生計費調査」の中から、514世帯の家計を抽出し、医療費関連費用を調べた。 それによると、2002年に医療機関の窓口で支払われた1世帯平均の金額は13万6383円。これに健康保険などの保険料23万3598円を加え、医療費補助など2万2462円を差し引いた医療費関連費用の総負担額は34万7519円だった。 1世帯当たりの医療費の支払いが最も高いのは、内科で2万781円、次いで歯科1万9788円だった。 さらに、同連合会では、新年度から健康保険法などの制度改定を踏まえて、2003年の医療費関連費用を試算。その結果、1世帯当たりの年間平均窓口負担は、前年より約2万4000円増えて16万680円となる見込みとなった。 同連合会では、「ここ数年、年収が減少傾向にある中、社会保険料などの負担は増え続けている。医者に極力行かないで、市販薬を家族で使うといった“自衛手段”を取る家庭も増えていくのでは」と話している。(平成15年4月9日読売新聞)

医療費の自己負担割合がこれまでの2割から3割へ

新年度の4月1日から、サラリーマン本人の医療費の自己負担割合がこれまでの2割から3割へ引き上げられる。この結果、加入している健康保険制度にかかわらず、3歳から69歳までの負担割合が3割に統一されることになる。医療機関の窓口で支払う自己負担は、国民健康保険加入者やサラリーマンの家族らの外来診療では、すでに3割になっていたが、サラリーマン本人は外来・入院ともに2割だった。 今回の引き上げ後の窓口負担は、例えば、風邪で通院して医療費が5000円だった場合、これまでの1000円から1500円に増額される。サラリーマンの家族も、入院時の自己負担が、これまでの2割から3割に引き上げられる。 ただ、69歳以下の外来患者が処方される薬剤の種類の多さに応じて医療費に追加負担している薬剤の一部負担金制度は3割負担引き上げと引き換えに廃止される。 また、年金、医療、介護保険の保険料徴収では、「総報酬制」が導入される。これまでの月収ベースの基準額が、ボーナスも含めた年収ベースに変わる。このため、これまで高額のボーナスを受け取っていた人は負担が増えることになる。厚生年金はボーナスを含めた年収に13・58%(労使折半)の料率が適用される。医療保険は健保組合ごとに料率が異なるが、中小企業向けの政府管掌健保は8・2%(労使折半、改正前は年収換算7・5%)に引き上げられる。(平成15年3月31日読売新聞)

小泉内閣の構造改革に4師会が共同声明、被用者3割自己負担の凍結4項目

日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会の4師会は11日、記者会見を開き、小泉内閣が進めている構造改革に対する「4師会共同声明」を発表した。声明では、@被用者保険3割自己負担の実施凍結A高齢者の自己負担軽減B医療への株式会社参入阻止C混合診療の導入反対ーの4項目について、4師会が連携して国民運動を展開するとしている。具体的には、病院等の窓口での患者との対話のなかで現在の構造改革の流れを国民に知ってもらったり、街頭に立ち、ビラ配りすることなどで国民にアピールする考えがあることも明らかにした。会見のなかで日本医師会の糸氏英吉副会長は、「4月の診療報酬マイナス改定、10月の健康保険法の実施など、日頃から患者さんに接している我々は大きな変化に非常に憂慮している」と述べた。また、糸氏氏は被用者保険3割自己負担の問題について触れ、「経済が不況な状況のなかでサラリーマン本人の負担を2割から3割のすることは、患者さんにより厳しい状況を強い、不景気もさらに悪化するのではないかと理解している」と語った。さらに「働き盛りで社会の中心になる人たちが、よほど重症になるまで診療を受けに行かなくなる恐れもあり、これは社会にとって非常に大きな問題になると思う」と述べた。日本薬剤師会の岡本彰副会長は、「日薬としてもこの4項目について共同声明を発表したことについては全面的に賛成である」とした。また、今回の共同声明とは少し離れるとした上で「日薬では今回の規制改革のなかで、医薬品販売に関する規制緩和については全面的に反対であるとういう運動を展開している」と話した。(平成14年12月12日薬事日報)

10月から高齢者の自己負担額の上限引き上げなど、受診動向への影響は必至か

高齢者の患者自己負担の上限額引き上げ、外来での高齢者の定額負担制度の廃止、老人慢性疾患外来総合診療料(外総診)の廃止−−。健康保険法等の改正などにより、10月1日から実施された項目で、自己負担増などにつながるため、高齢者の受診動向への影響を心配する関係者は多い。さらに、入院患者に対する褥瘡対策未実施減と医療安全管理体制未整備減算が新たに導入され、1群入院基本料1・2や急性期入院加算などにおける平均在院日数の要件が短くなった。いずれも、医療機関にとって厳しいものだ。今回の変更点を、以下で簡単におさらいする。高齢者の自己負担については、診療所のみに認められていた定額制(1回850円、月4回まで)が廃止され、定率負担のみとなる。また、一部の高額所得者はこの10月から、2割負担となる。上限額については、診療所と病院の別による相違がなくなる(これまでは、診療所と200床未満の病院は3200円、200床以上の病院は5300円)。また、これまでは医療機関ごとだった上限額の設定が、今後は個人ごとに定められ、外来医療費の総額が対象となる。具体的には、1カ月当たり、一定以上所得者は4万200円、一般は1万2000円、低所得者は8000円をそれぞれ自己負担する。なお、上限額を超えた自己負担分については、患者自身が保険者である自治体に手続きしないと、返還されない。褥瘡対策未実施減算と医療安全管理体制未整備減算については、褥瘡対策や医療安全管理体制の整備を行わなければ、診療報酬が減額されるというもの。1カ月間の実績期間が必要なため、10月1日から減額されないためには、9月1日から実施していなければならない(関連トピックス参照)。平均在院日数の短縮に関しては、1群入院基本料1の場合は現行の25日以内から21日以内へ、1群入院基本料2の場合は同28日以内から26日以内へ、急性期入院加算と急性期特定入院加算の場合は同20日以内から17日以内へ、それぞれ変更となった。また、二つの加算については、退院指導計画の作成と実施、診療録管理体制加算の届け出といった要件が新たに加わった。また、9月28日からは、180日超の入院患者に対する特定療養費制度の導入が始まっている。2002年4月1日以降に入院した患者では、特定療養費の給付率が入院基本料相当額の95%となっている(2003年3月末まで)。今後、対象患者の範囲を広げ、給付率も段階的に下げていくことになっている。2004年4月から完全実施となり、給付率は85%となる。なお、2003年4月から、被用者保険(組合健康保険や政府管掌健康保険など)本人の自己負担率が現行の2割から3割にアップすることが決まっている。同時に、投与された薬剤数に応じて支払う薬剤一部負担金が廃止されるため、この分だけ患者負担は少なくなる。(平成14年10月3日medwave)

健保法等改正法と健康増進法が今国会で成立

参議院本会議は7月26日、健康保険法等の一部を改正する法案と健康増進法案を可決、両法案は成立した。健保法等改正法は、70歳以上の高齢者の患者負担を10月から原則定率1割とすることや、被用者保険(組合健康保険や政府管掌健康保険など)本人の患者負担を、2003年4月から3割とすることなどを大きな柱としている。医療保険財政が悪化している状況の中、4月の診療報酬のマイナス改定に続き、患者負担の増加が決まった。健保法等改正法による高齢者医療制度の主な改正内容として、まず患者負担が原則定率1割となり、これまでの外来の月額上限制や診療所における定額負担選択制は廃止されることが挙げられる。また、一定以上の所得(現役世代の平均的収入以上の所得)がある高齢者については、より一層の負担を求め、一般の高齢者よりも自己負担を増やす。このほか、老人医療費拠出金制度なども見直され、老人医療の対象年齢を段階的に70歳以上から75歳以上に引き上げ、老人加入率の上限を撤廃することなどが決まった。医療保険制度の主な改正内容は、被用者保険本人の自己負担と被用者保険家族の入院時の自己負担を2割から3割とするもの。ただし、外来薬剤一部負担は廃止され、3歳未満の乳幼児の自己負担は2割となる。また、保険料の算定方法も変更され、これまでは月収ベースだったのが、2003年4月からは年収ベースで算出する。つまり、ボーナスに対しても月収と同様に保険料が賦課されるようになるので、実質的には保険料アップとなるケースが多いと予想される。健康増進法は、国民の健康増進を図る措置を講じ、国民保健を向上させるのが目的の法律。いわば既に示されている「健康日本21」を法制化するもの。なお、同法の成立に伴い、栄養改善法は廃止される。(平成14年7月29日medwave)

健保法改正案、来年4月から3割

サラリーマンらの医療費自己負担率を来年4月から3割(現行2割)に引き上げることを柱にした健康保険法改正案など医療制度改革関連法案が25日午後、参院厚生労働委員会で強行採決、与党の賛成多数で可決された。 与党は26日の参院本会議で同法案を可決、成立させる方針だが、野党の出方によっては本会議での可決が29日までずれ込む可能性がある。 同法案には(1)組合健康保険など被用者保険の保険料算定方式を月収からボーナスも含めた年収ベースの「総報酬制」に移行(2)政府管掌健康保険の保険料率を年収ベースで現行の7.5%から8.2%に引き上げ(いずれも来年4月実施)(3)70歳以上の高齢者の医療費負担は今年10月から定率1割(高所得者は2割)―も盛り込まれている。 一方、患者側の負担軽減策としては、外来診療時の薬剤費一部負担金の廃止や乳幼児(3歳未満)の医療費負担の3割から2割への引き下げを実施する。(
平成14年7月25日 日本経済新聞)

新高齢者医療制度、07年度1人の保険料は月8400円

75歳以上の後期高齢者を対象とした「独立保険方式」で、公費負担50%、若年世代の財政支援30%、患者一部負担を定率1割(上位所得者2割)とした場合の高齢者保険料は、2007年度で「1人当たり平均月約8400円」となることが厚生労働省の試算から明らかになった。同試算は75歳以上の高齢者すべてが保険料を負担する前提で行ったもの。(平成14年5月31日 日刊薬業)

1カ月の医療費、1000万超が106件で過去最多

健康保険組合連合会が01年度の高額医療費の申請件数を調べたところ、患者1人の1カ月の医療費が1000万円を超えたケースが前年度を8件上回り、過去最多の106件になった。保険対象となる高度医療技術を使った手術が増えたことが主因とみられる。106件のうち、半数を超える59件が心臓・循環器系の病気を患った人たちのものだった。1カ月の医療費の最高額は、急性すい壊死(えし)で入院した22歳の患者の約2256万円。この患者は2カ月間の診療を受けたが亡くなった。同じく2000万円を超えた血友病の11歳の患者は、5年7カ月におよぶ治療で計1億8896万円余かかっている。これらのケースは、健保連が行う高額医療交付金交付事業の対象。高額医療は年々増加傾向にあり、500万円以上の件数は前年度と比べ55件増え、2394件。1000万円以上の件数は92年度以降、ほぼ右肩上がりに増え続けている。各健保組合の財政悪化を懸念する健保連は「高額な費用がかかる医療を、どこまで保険でまかなうのか。今後の医療制度改革の論点となる」としている。(平成14年4月28日 朝日新聞)