認知症、ALSなどの原因抑える物質を発見 筋肉が動かなくなる難病である筋萎縮性側索硬化症(ALS)や、若年性認知症の治療につながる物質を、東京都精神医学総合研究所の野中隆主席研究員らの研究グループが見つけた。これまでの研究で、ALSや若年性認知症を発症した患者の脳や脊髄には、TDP43と呼ばれるたんぱく質が異常を起こして蓄積していることがわかっており、これが細胞の死滅や病気発症の原因になると見られている。研究チームは、人の神経細胞に異常なTDP43を作り出す遺伝子を組み込み、患者の細胞を再現。この細胞を使って、様々な薬の効果を確かめたところ、ロシアでアレルギーなどの治療に使われていた医薬品と、国内でも市販されている薬剤とを併用することで、細胞内に蓄積した異常たんぱく質を80%以上減らせることを突き止めた。ALSは往年のメジャーリーガー、ルー・ゲーリッグ選手が発症したことで知られる難病で、治療法はまだ開発されていない。40〜65歳で発症する若年性認知症も治療法がない。野中主席研究員は「すでにある薬を使って、ALSなどの進行を大幅に抑えることができる可能性がある。早急に治療薬開発につなげたい」と話している。(平成21年7月12日 読売新聞) マウスのアルツハイマー病、カフェインで改善 コーヒーなどに含まれるカフェインがアルツハイマー病の認知症状を改善するとともに、患者の脳に沈着する異常なたんぱく質が作られにくくすることを埼玉医大の森隆准教授ら日米のチームがマウスの実験で確認した。米医学誌「ジャーナル・オブ・アルツハイマーズ・ディジーズ」(電子版)で発表した。研究チームは、アルツハイマー病を発症した生後約18ヵ月の高齢モデルマウスに、人間で換算すると1日当たりコーヒー5杯に相当するカフェインを水に混ぜて1ヵ月飲ませ、認知や運動機能テストなど8項目について調べた。目的地まで迷子にならないかを調べる実験では、カフェインを飲ませたマウスはミスが減って毎回場所が変わる目的地までの到達時間も早くなり、健康なマウスと同程度の成績だった。水だけを飲んだマウスでは症状は改善しなかった。カフェインを飲ませたマウスは、記憶をつかさどる脳の海馬や大脳皮質で異常なたんぱくの沈着が減少。カフェインの投与で異常なたんぱく質を作り出す酵素の働きが抑えられることも分かった。森准教授は「人間の疫学調査などで予想されていた症状改善の仕組みが解明できた。マウスではあるが、症状の進行を抑える方法を考えるうえで有効なデータだと思う」と話している。(平成21年6月22日 朝日新聞) アルツハイマー病関連のたんぱく質 アルツハイマー病に関係するとみられるたんぱく質を、大阪大の研究グループが新たに見つけた。このたんぱく質の量の変化を調べることで、早期診断に利用できる可能性があるという。欧州分子生物学機構の学術誌(電子版)で10日発表する。脳神経細胞が死んでいくアルツハイマー病は、体内で「アミロイドβ(ベータ)」というたんぱく質が増えて、脳に老人斑と呼ばれる特徴的な染みをつくる。脳を守る脳脊髄(せきずい)液などからこのたんぱく質の量の変化を調べ、診断につなげる研究が進んでいる。だが、多くが脳に蓄積されてしまうアミロイドβは、特に初期段階では量の変化がわかりにくく、病気の早期発見が難しいことが課題だった。阪大の大河内正康講師(精神医学)らは、脳に蓄積しない性質を持つ「APL1β」というたんぱく質が、患者の脳脊髄液にあるのを発見した。このたんぱく質の増加と病気の進行度が一致していることもわかった。さらに追跡調査で、このたんぱく質は発症の少なくとも2〜3年前から増え始めることも突き止めた。これを目印にすれば、アルツハイマー病の早期診断に使える可能性があるという。大河内さんは「脳脊髄液は腰に針を刺して採取する必要があるが、診断自体はすでに実用化できるレベルにある。早期診断が実現すれば、将来アルツハイマー病になるのを防いだり、遅らせたりする治療法の開発にもつながるはずだ」と話している。(平成21年6月10日 朝日新聞) 若年性認知症、推計3万7800人 65歳未満の現役世代が発症する若年性認知症の人が全国で推計3万7800人に上ることが厚生労働省研究班の調査でわかった。若年性は働き盛りなどに発症するため、失業や経済的困難に結びつくことが多い。同省は新年度から、各地に支援担当者を配置するほか、就労支援や相談窓口の開設などに力をいれていく方針。調査は2006〜08年度に、茨城、群馬、富山、愛媛、熊本県で実施した。認知症の人が利用する可能性がある医療機関など約1万2000ヵ所に、患者の有無や病名などを尋ねたほか、介護者の家族会に生活実態などを聞いた。5県で把握された人数は、約2000人。これをもとに全国では約3万7800人と推計した。 1996年度の前回調査では、約2万5600人〜約3万7400人と推計されていた。18〜64歳の人口10万人あたりで見ると、男性が57.8人、女性が36.7人。推定発症年齢は、男性が平均51.1歳、女性が同51.6歳だった。原因は、脳血管性認知症が39.8%と最も多く、アルツハイマー病(25.4%)、頭部外傷の後遺症(7.7%)がそれに続いた。若年性認知症の人を介護する87家族に生活実態を聞いたところ、介護者の約6割が抑うつ状態と判断されたほか、約7割の家族で収入が減っていた。(平成21年3月20日 読売新聞) アルツハイマー、さい帯血で予防 へその緒の血液(さい帯血)を静脈に注射する手法で、アルツハイマー病の原因物質を脳内で蓄積しにくくすることに、埼玉医科大総合医療センターの森隆准教授と米国・南フロリダ大のチームが成功した。さい帯血移植は白血病などの治療に広く使われているが、高齢社会で増加しているアルツハイマー病の治療にも有効である可能性がでてきた。成果は、米医学誌「ステム・セルズ・デベロップメント」に掲載された。アルツハイマー病は、脳にアミロイドベータ(Aβ)と呼ばれるたんぱく質が異常に蓄積することで神経細胞が死に、認知障害が出る病気。そのため、Aβの蓄積を抑える薬の開発が世界中で進められている。研究チームは、生まれつきAβが蓄積しやすいマウス10匹の静脈に2〜4週間おきに人のさい帯血細胞を10万個ずつ計8回注射した。すると、さい帯血細胞を注射しなかったマウスに比べ、脳内のAβ量は約7割減少した。(平成20年4月29日 読売新聞) アルツハイマー病 高学歴ほど進行速く 高学歴の人ほど、アルツハイマー病による記憶能力低下は遅い時期に始まるが、いったん低下が始まると、病状の進行度は学歴の低い人に比べ速いことが、米アルバート・アインシュタイン大の研究で明らかになった。 研究チームは「高学歴の人は"認知力の蓄え"があるために、ある一定レベルまで病状が進むまで症状が見えないのでは」と指摘している。研究チームは、1980年代からニューヨーク市の高齢者488人に対し、記憶力のテストを定期的に実施。結果的にアルツハイマー病などの認知症と診断された117人について詳しく検討した。その結果、教育を受けた期間が1年長いと、記憶能力の低下が始まる時期が約2か月半遅れたが、いったん記憶障害が始まると、記憶低下の速度が教育期間1年あたり4%速まっていた。研究チームは「今回の結果は、患者の症状が速く進むかゆっくり進むかを、アドバイスするのに重要になる」としている。(平成19年10月24日 読売新聞) クロレラに含有「ルテイン」、認知症予防に期待 緑藻類のクロレラなどに多く含まれる成分「ルテイン」に、赤血球の老化を防ぐ効果があることが、東北大大学院農学研究科の研究で明らかになった。老化した赤血球は、アルツハイマー病患者の血中に多く存在し、脳組織に慢性的な酸素不足をもたらして症状を悪化させると考えられていることから、認知症の予防や進行防止への効果が期待される。ルテインは天然化合物カロテノイドの一種。実験で、健康な男女計6人が、ルテインが約10ミリ・グラム含まれた錠剤を1日1粒ずつ、4週間飲んだところ、赤血球に含まれるルテイン量は平均2・8倍に増加した。逆に、赤血球の老化を示す過酸化リン脂質の量は3分の1以下に減っていた。宮沢教授らはこれまでに、アルツハイマー病患者の赤血球には、健康な人の5〜6倍の過酸化リン脂質が蓄積されていることを研究で明らかにしている。過酸化リン脂質が蓄積された状態では、赤血球から酸素が離れにくくなり、脳細胞に酸素を供給する能力が低下する。その結果、認知症の進行を早めている可能性もあるという。宮沢教授は「認知症の発症や進行を予防できる可能性があり、今年中に認知症患者にルテインを投与する臨床試験を始めたい」と話している。(平成19年5月2日 読売新聞) 認知症、予防に頭と体の「運動」が効果 有酸素運動と知的活動を続けるとお年寄りの脳機能がアップすることが、老人総合研究所の共同研究で確認された。認知症予防のため、国内で初めて長期的な追跡研究をしたという。調査は05〜07年度の3年間、世田谷区内の高齢者134人(平均年齢72歳)を対象に実施した。研究所が用意した予防プログラムを続けてもらった後、脳の認知機能を調べる検査をし、プログラムに参加しなかった高齢者254人と比較した。プログラムは、認知症の原因とされるたんぱく質を脳内にためないようにすることなどを目的に1日30分程度有酸素運動のウオーキングを続ける。同時に、パソコンを使ってミニコミ誌を作ったり、自ら料理メニューを考案して調理するなどの知的活動を週1回、続けてもらい、認知症で低下しがちな脳の機能を刺激した。その結果を3年前と比べたところ、記憶機能はプログラムに参加しなかった高齢者が13%の改善だったのに対し、参加者は22%も良くなった。集中力などの注意機能は、非参加者で3%低下したが、参加者は7%良くなった。言語機能は非参加者の9%に対し参加者は16%、思考機能は同じく0.2%に対して、4%良くなっていた。非参加でも改善するのは、同じ問題を複数回解くからで、参加者の向上が大きかった。同研究所の矢冨直美主任研究員は「認知症予防には、知的活動と運動を習慣化し、長期間続けることが必要」と分析しており、区は今回のプログラムの内容を冊子にまとめ、地域での認知症予防に役立てる方針だ。(平成20年11月29日 毎日新聞) 老化、新知識得ないと物忘れが進行 新しい知識や経験を得ない単調な生活を続けると、老化による物忘れが進む可能性があることを、理化学研究所のチームがマウスを使った実験で明らかにした。好奇心旺盛な高齢者は認知症になりにくいとされるが、それが裏付けられた形だ。老化に伴って記憶が失われる物忘れは、「タウたんぱく質」と呼ばれる物質が脳の神経細胞に蓄積することが原因だ。理研脳科学総合研究センターの木村哲也・専門職研究員(神経生物学)らは、タウたんぱく質の蓄積を促す酵素に着目。これを持たないマウスを迷路などに挑戦させ、行動を観察した。 このマウスは、酵素を持たなくても道順を覚えたが、何度も試すうちに忘れてしまった。これらのことから、この酵素は新しいことを覚えるプロセスでは働かないものの、いったん固定した記憶を繰り返し使いながら再固定するのに欠かせないことが分かった。この酵素が働きすぎるとタウたんぱく質の蓄積が進んでしまうが、新しい記憶を獲得することで酵素の働きを適度に抑えれば、記憶を保ったまま脳の老化を防ぐことができるとチームは見ている。木村さんは「老化がきっかけになるアルツハイマー病の発症も遅らせられるのでは」と話す。 米オンライン科学誌「プロス・ワン」に発表した。(平成20年11月30日 毎日新聞) 認知症、2035年には2倍の445万人に 全国の認知症高齢者の人数は05年の約205万人から、2035年には2.2倍にあたる約445万人になる、と厚生労働省研究班が推計を出した。増加は、埼玉県の3.1倍を筆頭に首都圏で大きく、愛知県や大阪府などでも2.5倍を超える見通しだ。在宅や病院、特別養護老人ホームなどを対象に80年代、認知症をもつ高齢者の割合を調べた実態調査を使い、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口から算定した。推計では、団塊の世代がすべて65歳以上となる2015年時点ですでに、05年の1.5倍の約302万人に上る。主な増加要因は高齢化という。ただ、算定に使った80年代調査は当時の知見から、認知症とされた人はアルツハイマー型や脳卒中後の重症患者に限られていた。その後、診断技術が向上したほか、認知症の原因となる別の病気がみつかり診断基準が明確になっている。これらを考慮すると、今回の推計より患者数は増える可能性がある。また、現在は認知症に進む前段階の「軽度認知機能障害」も診断・治療できるため、対応が必要な高齢者はさらに増えそうだ。(平成20年7月6日 朝日新聞) 受動喫煙、認知症の発症 他人が吸ったたばこの煙を吸わされる「受動喫煙」が長期間に及ぶと、認知症の恐れが高まるとの分析を、米カリフォルニア大が公表した。たばこを吸う人は認知症リスクが高まるとの研究はあるが、受動喫煙と認知症の関係に注目した本格調査は初めてという。同大は「受動喫煙が血管に影響を与え、発症のリスクを高めているのではないか」と推測している。認知症の主な原因には、脳こうそくなどの血管障害とアルツハイマー病がある。たばこが中枢神経系に与える影響を探る目的で調査を実施。研究に協力する65歳以上の市民3602人のうち、過去に喫煙歴や心血管疾患がない985人(66〜92歳)を6年間、追跡した。このうち、受動喫煙があった人は495人で、その期間が30年以上だと、認知症の発症率が約1.3倍になることが分かった。30年未満の人では、受動喫煙の影響を受けなかった人と発症率の差はほとんどなかった。また、30年以上の受動喫煙者のうち、脳に血液を供給する頸(けい)動脈の狭さくが見つかった人では、認知症を発症する率が約2.4倍とさらに高かった。30年未満の受動喫煙者でも約1.3倍だった。喫煙は動脈硬化の危険因子とされ、狭さくもその一種。(平成19年6月26日 毎日新聞) 認知症の原因のひとつ? 異常たんぱく質の正体解明 人格が変わったり、異常行動をとったりすることが多い認知症の一種、「前頭側頭型認知症」(FTD)の原因とみられる異常たんぱく質の正体を、東京都精神医学総合研究所のグループが突き止めた。病気のメカニズムの解明や治療法開発につながる可能性がある。FTDは、65歳以下の認知症としてはアルツハイマー病に次いで多い。FTDは、脳に、タウというたんぱく質がたまるタイプと、タウ以外のたんぱく質がたまるタイプに分けられるが、タウ以外のたんぱく質の正体は分かっていなかった。長谷川成人チームリーダーと新井哲明主任研究員らは、患者の脳に異常にたまっている物質を詳しく調べ、TDP43とよばれるたんぱく質であることを突き止めた。このたんぱく質は、筋肉が次第に動かなくなる筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者の脊髄にもたまっていることを見つけた。アルツハイマー病では、アミロイドベータという異常たんぱく質がたまることが突き止められてから、これを標的とする治療法の開発が進んでいる。今回の成果も治療法の開発につながる可能性がある。貫名信行・理化学研究所脳科学総合研究センター病因遺伝子研究グループディレクターの話 ALSと認知症の仕組みがどのように関係するのか、新たな研究が発展しそうだ。(平成19年5月27日 朝日新聞) クロレラに含有「ルテイン」、認知症予防に期待 緑藻類のクロレラなどに多く含まれる成分「ルテイン」に、赤血球の老化を防ぐ効果があることが、東北大大学院農学研究科の研究で明らかになった。老化した赤血球は、アルツハイマー病患者の血中に多く存在し、脳組織に慢性的な酸素不足をもたらして症状を悪化させると考えられていることから、認知症の予防や進行防止への効果が期待される。ルテインは天然化合物カロテノイドの一種。実験で、健康な男女計6人が、ルテインが約10ミリ・グラム含まれた錠剤を1日1粒ずつ、4週間飲んだところ、赤血球に含まれるルテイン量は平均2・8倍に増加した。逆に、赤血球の老化を示す過酸化リン脂質の量は3分の1以下に減っていた。宮沢教授らはこれまでに、アルツハイマー病患者の赤血球には、健康な人の5〜6倍の過酸化リン脂質が蓄積されていることを研究で明らかにしている。過酸化リン脂質が蓄積された状態では、赤血球から酸素が離れにくくなり、脳細胞に酸素を供給する能力が低下する。その結果、認知症の進行を早めている可能性もあるという。宮沢教授は「認知症の発症や進行を予防できる可能性があり、今年中に認知症患者にルテインを投与する臨床試験を始めたい」と話している。(平成19年5月2日 読売新聞) 「在宅」床ずれ12万人、介護背景に重症化 在宅介護を受けている人の6%が床ずれを患い、全国で少なくとも12万人にのぼると推計されることが、日本褥瘡学会の調査で明らかになった。床ずれを持つ人のうち6割は、寝たきりで全面介助が必要な患者だった。 床ずれは、寝たきりで腰骨やかかと、ひじ、肩の骨周辺の皮膚や筋肉に、体圧がかかるなどして血流が妨げられ、皮膚がただれて組織が壊死する。重症化すると、皮膚に直径十数センチの穴があくこともあり、感染を招いて敗血症など生命に危険が及ぶ恐れもある。看護師を派遣する全国約1400の訪問看護ステーションにアンケートし、4分の1の施設が回答した。それによると、訪問看護を利用していた7万3000人余のうち、6%の約4200人に床ずれがあった。そのうち43%は、皮膚に穴があくなど専門的治療が必要な重症の状態だった。床ずれ患者を5段階の要介護度別にみると、要介護5の人が59%を占め、要介護4では22%と、寝たきりかそれに近い人ほど多かった。全国では約200万人が「要介護認定」を受けて在宅で過ごしており、12万人が床ずれを持っている計算になる。(平成19年3月5日 読売新聞) 認知症予防に「運動・栄養・昼寝」 よく運動し、栄養に気をつけて、昼寝した方が認知症の発症率が下がることが、厚生労働省の研究班(主任研究者=朝田隆・筑波大教授)の研究でわかった。 生活習慣の改善による認知症予防の成果が確認されたのは初めてで、注目される。 研究は、茨城県利根町の65歳以上を対象に2001年から2005年にかけて行われた。 希望者約400人に運動や栄養、睡眠の改善を指導し、指導しなかった 1500人と比較した。 具体的には、週3〜5回、1回20〜60分、音楽に合わせてステップを踏む簡単な有酸素運動を行った。 また魚の脂質に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などを含む栄養補助剤を毎日取るとともに、30分以内の昼寝をした。 その結果、生活習慣を指導したグループでは認知症の発症率が3・1%だったのに対し、しなかったグループは4・3%にのぼった。また、記憶能力のテストでも、指導したグループの成績が約16%向上した。 今後さらに統計的分析を進める。 認知症予防については、海外でさまざまな研究がなされており、魚を食べたり運動をしたりすることなどが望ましいとされてきた。 しかし、生活習慣改善を行う「介入研究」ではなく、生活習慣を観察し、数年にわたって認知症の発症率などを見る「観察研究」が主だった。(平成18年5月27日 読売新聞) 認知症予防の効果立証 写経で脳イキイキ 認知症の改善や防止策として、脳を活性化するのに最も効果が高いのは「写経」であることが、川島隆太・東北大学教授と学研の共同研究で分かった。川島教授らのグループが、平成15年から翌年にかけ、仙台市内の高齢者延べ1000人を対象に、オセロゲームなど脳を活性化させるのに役立つとされる160種類を実験し、大脳の血流量の変化を計測。作業中に、前頭葉の左右と、頭頂葉の左右の変化を調査した。作業前の平穏時を基準とし、脳が最高に活性化しているプラス3から、脳がリラックスしたマイナス3までの11段階で判断した。その結果、写経の作業中に、前頭葉、頭頂葉の左右で、いずれも最高値のプラス3を記録。オセロゲームは、頭頂葉に変化がなく、前頭葉にマイナス3の値が出て、リラックスグッズであることが判明した。学研は、実験結果を冊子にして、特別養護老人ホームなどに配布。今年からは東京都府中市の高齢を対象に、研究成果を活用しながら予防効果の調査に乗り出す。(平成18年1月4日 産経新聞) 脳血管性認知症、演奏や運動で症状改善 脳卒中で脳の血流が悪くなって起こる脳血管性認知症(痴呆(ちほう))は、楽器演奏やゲームなどのレクリエーション活動により、症状が改善することを、国立長寿医療センターの研究グループが突き止め、米老年医学会誌に発表した。 認知症は、脳梗塞(こうそく)などの後に発症する脳血管性認知症と脳細胞が委縮するアルツハイマー病に大別される。 研究グループは、同センターに入院する脳血管性認知症45人、アルツハイマー病37人の計82人に、楽器演奏や、風船を使ったバレーボール、体操、踊りなどのレクリエーション活動を、週に5回(1回90分)ずつ続けてもらった。 その結果、脳血管性認知症患者の場合、活動を30回以上行った15人の記憶・認知テストの試験結果が、活動前より10%向上し、改善が見られた。 活動が30回より少ない人や、アルツハイマー病患者では試験結果に変化はなかった。同センターの長屋政博・骨関節機能訓練科医長は「レクリエーション活動で症状に改善が見られる人は、血流の悪い部分が、脳の特定部分(前頭葉)に限定している場合が多いようだ」と話している。(平成17年7月11日 読売新聞) 「痴呆」に代わる用語は「認知症」 「痴呆(ちほう)」に代わる用語を議論してきた厚生労働省の検討会は24日、「認知症」が最も適当とする報告書をまとめた。これを受けて厚労省は同日付で省内で使う用語を認知症に改め、都道府県や関係学会などにも使用を求める通知を出した。来年4月からは「認知症を知る1年」と題して集中的に広報し、一般にも定着させたいとしている。報告書は「痴呆」が侮蔑(ぶべつ)的な表現で、早期発見・診断などの支障となっていると指摘。覚える、見る、話す、考えるといった知的機能を総称する概念である「認知」の障害という痴呆の本質に着目した「認知症」が、代替語に最もふさわしいとした。 これを受けて、厚労省は直ちに用語を変更。例えば「痴呆性高齢者」は「認知症(の)高齢者」に言い換える。介護保険法や老人福祉法など「痴呆」を使っている法律は次期通常国会で規定を改正する。(平成16年12月25日 日本経済新聞) ぼけ予防、歯が減ると脳も萎縮 残っている歯が少ない高齢者ほど、記憶をつかさどる大脳の海馬付近の容積が減少していることを、東北大大学院の渡辺誠・歯学研究科長らのグループが突き止めた。アルツハイマー病になると海馬が萎縮(いしゅく)することが知られており、渡辺さんは「ぼけ予防のためには、自分の歯の数を保つことが大切だ」と指摘する。24日東京で開幕したアジア・オセアニア国際老年学会議で26日に発表する。 研究は、財団法人・ぼけ予防協会が厚生労働省の助成を受けて設置した調査研究検討委員会(委員長、石川達也・東京歯科大学長)のプロジェクトとして実施された。東北大グループは、仙台市内の70歳以上の高齢者1167人を対象に調査した。健康な652人は平均14.9本の歯があったが、痴呆の疑いのある55人は同9・4本と少なく、歯の数と痴呆との関連が示唆された。さらに、高齢者195人(69〜75歳)の脳をMRI(磁気共鳴画像化装置)で撮影し、残っている歯や、かみあわせの数と、脳組織の容積との関係を調べた。その結果、歯が少ない人ほど、海馬付近の容積が減少していた。 意志や思考など高次の脳機能に関連する前頭葉などの容積も減っていた。また、かみあわせ数が少ないと、こうした部分の減少が大きかった。渡辺さんは「かむことで脳は刺激されるが、歯がなくなり、歯の周辺の痛みなどの神経が失われると、脳が刺激されなくなる。それが脳の働きに影響を与えるのでは」と話す。 海馬: 大脳の側頭葉の内側にあり、記憶や学習のメカニズムを担っている。タツノオトシゴのような形をしていることから命名された。入ってきた情報は海馬に一時的に保存され、「長期増強」という定着機能によって簡単に忘れない記憶に変わると考えられている。(平成15年11月25日 毎日新聞) 痴ほう・パーキンソン病予防にカルシウムと運動が有効 海藻や牛乳などカルシウムが豊富な食事や日々の運動が、パーキンソン病や痴ほう症の治療や予防に役立つことを筑波大医学系の須藤伝悦(でんえつ)博士らが動物実験で初めて明らかにした。 生活習慣の大切さが改めて注目されそうだ。 手足のふるえや筋肉硬直などが特徴のパーキンソン病や、痴ほう症のうちでパーキンソン病に似たDLB型、高血圧症、てんかん症などは、脳内の情報伝達に使われる物質の一種ドーパミンが減ってしまうことがその一因になっている。 須藤博士らはネズミを使った実験で、餌として摂取したカルシウムが、脳内のドーパミン合成を実際に促進する仕組みを突き止めた。また、毎日の運動で、体内のカルシウム代謝が活発化し、骨の中のカルシウムが血流を通じて脳に供給され、ドーパミンが増えることも分かった。 海外では近年、山歩きや散歩、ストレッチなどの運動を1か月程度続けると、パーキンソン病や痴ほう症が改善したとする報告が増えている。 また約4300人を追跡調査した海外の研究では、運動習慣がある人は、ない人に比べて痴ほう症になる割合が半分程度だった。(平成15年6月24日読売新聞) 長期の記憶、筋肉収縮担うたんぱく質が関与 痴呆薬に応用も 覚えたことを長期間記憶する大脳の働きに、筋肉の収縮を担うアクチンというたんぱく質が欠かせないことを、三菱化学生命科学研究所の井ノ口馨主任研究員らのチームがラットを使った実験で確認した。痴呆症の改善薬などに応用が可能だという。 8日発行の米科学誌「ニューロン」に発表する。 脳の神経細胞同士を結ぶシナプスに繰り返し信号が流れることで、長期的な記憶が形成される。アクチンが信号の受け手側のシナプスの突起部分に多く分布していることは知られていたが、働きは分かっていなかった。 研究チームは、ラットの脳神経細胞に繰り返し電気信号を与え、変化を調べた。 その結果、記憶の情報処理を担う「海馬」という部分の神経細胞の突起では、数珠つなぎ状態になったアクチンが増加した。 1分おきに10回刺激を与えた場合、数珠つなぎのアクチンは2〜3割増えた。 突起そのものも通常の倍の大きさになった。 井ノ口研究員は「運動で筋肉が発達するように、脳を使うことでアクチンの働きが増強され、記憶力が良くなるはずだ」と話す。 アクチンの働きを調節する薬が開発できれば、痴呆症や物忘れの改善薬にも応用できる可能性があるという。(平成15年5月8日 毎日新聞) 「音楽療法」効用立証へ、学会が本格取り組み 音楽療法の有効性を科学的に証明し、医療の分野で確立させようという取り組みが、日本音楽療法学会で本格化してきた。 音楽が心身に及ぼす作用を活用して、障害の回復、機能の維持改善などを図るのが音楽療法。医療や介護の現場で広まりつつあるが、国内では、どのような症状にどう用いるかという標準的な手法が確立しておらず、「癒やし」や「レクリエーション」と混同される場合も多いのが現状だ。 このため、同学会では昨年から、音楽療法の効果を科学的に証明するためのプロジェクト研究に取り組んでおり、このほど兵庫県西宮市で開かれた同学会第2回学術大会で、その中間報告が行われた。パーキンソン病の歩行障害については、足が前に出にくい人にはテンポの速い曲、つんのめるように歩く人には遅い曲を聴きながら歩いてもらい、コンピューターによる画像解析を行った。その結果、足の上がり方や腕の振りが良くなり、歩行が安定する効果が見られたという。 また、痴ほう性高齢者に関する研究では、歌ったり太鼓をたたいたりすることで、免疫系に作用するホルモン「コルチゾール」のだ液中の数値が上昇した、という報告もあった。 大会長を務めた森忠三・島根医科大名誉教授は、「これまでは数値的裏付けのない実践報告に偏り、ただ『効いた』と言っているだけだったが、それでは医学の世界で理解されない。 生理学的な指標などを用いた科学的研究と、感情や気持ちに及ぼす影響という質的研究の両面から、音楽療法の効果を証明することが重要だ」と話す。 学会では、これらの研究を通じて患者の症状に応じた療法を確立し、音楽療法を医療保険や介護保険の報酬の対象に組み入れたいとしている。(平成15年3月25日 読売新聞) 適度な飲酒は高齢者の痴呆症を防ぐ 適度な飲酒をしている高齢者は痴呆症になりにくいようだ。約6000人の高齢者を追跡した米国のコホート研究から、こんな調査結果が明らかになった。同種の研究は幾つか行われているが、大規模コホート研究に基づく研究はほとんどないという。調査結果は、Journal of American Medical Association(JAMA)誌3月19日号に掲載された。 米国マサチューセッツ州ボストンのBeth Israel Deaconess医学センターのKenneth J. Mukamal氏らは、米国4地域の65歳以上の男女5888人を対象としたコホート研究「The Cardiovascular Health Study」(1989年6月開始)の参加者の中から痴呆症患者群と対照群を選び、飲酒と痴呆症発症の相関をコホート内症例対照研究と呼ばれる手法で調査した。 Mukamal氏らは、1992年から1994年にかけて、MRI検査と簡易型知能試験(3MSE)を受診した3608人について、1999年まで追跡し、毎年、知能検査と飲酒に関する聞き取りを実施した。そのうえで、本調査開始時点には痴呆症がなく、追跡期間中に痴呆症を発症した373人と、痴呆症がなく年齢や期間内の死亡数などを一致させた同人数の対照群を比較した。 その結果、非飲酒群に対する偶発的な痴呆症の相対発症率は、週に1杯以下の飲酒者では0.65、週に1〜6杯飲む人では0.46、7〜13杯では0.69となり、週に1〜6杯飲む人が最も低くなることが分かった。また、男女別では、女性の方が飲酒量が増えても相対発症率の増加が少ない傾向があることが判明した。酒の種類(ワイン、ビール、リキュール類)では有意差が見られなかったという。 同一コホートに対する筆者らの先行研究(注1)で、少量から適度な飲酒が大脳白質の障害や微小な梗塞の有病率低下と関連があることが明らかになっており、「アルコール摂取が脳血管系を保護する作用によって、痴呆症の発症を抑える方向で関与している可能性がある」と筆者らは見ている。さらに、「身体への飲酒の影響は多岐にわたるうえ、我々の研究は観察的なものなので、臨床応用には十分な注意が必要」としている。(平成15年3月24日medwave) 痴呆予防に「70の手習い」、毎日20分で脳活性化 脳の働きを活性化させ、痴呆(ちほう)を予防するため、仙台市と東北大は新年度から、70歳以上の健康な200人を対象に読み書き、計算の通信添削を行うモデル業を始める。市は、こうした痴呆予防が、お年寄りの生活の質を高めるとともに、介護・医療費の抑制につながると期待。成果を随時、市の福祉施策に取り入れたい考えだ。 事業は、仙台市宮城野区のモデル地域で、3年間実施する。教材は、小学生から高校生レベルの算数・数学と語学(国語と英語)を用意、毎日20分程度、勉強してもらう。やる気や能力に合わせて内容を選択できるようにするほか、お年寄り向けに、独自の教材開発も行って、楽しく学習できるよう工夫する。 教材を添削して送り返すだけでなく、週1回程度、学習指導員が公民館で集まったお年寄りに助言をしたり、家庭訪問したりすることも検討している。 東北大未来科学技術共同研究センターの川島隆太教授(脳科学)の研究で、簡単な読み書きや計算が、脳の活性化に効果があることが判明。軽い痴呆症のお年寄りが毎日20分、簡単な音読や計算を続けると、症状の進行を抑え、物事を認知する機能を改善できることが分かっている。仙台市は、東北大医、歯学部と今年度、宮城野区の住宅地で、健康診断と運動訓練を組み合わせたお年寄りの寝たきり予防に取り組んでおり、同じ地域で痴呆予防にも乗り出すことにした。教材開発などには、「小学館」と大手学習塾「公文教育研究会」も参加し、産学官が連携して新しい福祉モデル作りを目指す。 川島教授は「脳科学に基づく、新しい痴呆予防のモデルを提案していきたい。お年寄りが子供と一緒に地域で学べる場を作れば、子供の情操教育にも効果があるはずだ」と話している。 (平成15年3月15日 読売新聞) ボケ予防にはワイン、ビールは逆効果か ワイン好きにはうれしい、そしてビール好きにはちょっとショックな調査結果が発表された。デンマークのお年寄り約1700人を対象とした調査で、ワインを飲む習慣がある人には痴呆が少なく、逆にビールでは多いことがわかったという。ワインとビールの飲酒パターンの違いや、ワインに含まれる特定の成分などが影響していると研究グループはみている。調査結果は、米国神経学会の学術誌であるNeurology誌11月12日号に掲載された。調査ではまず、デンマークのCopenhagenに住む65歳以上のお年寄り1711人に「ミニメンタル検査」(MMSE)と呼ばれる認知機能試験を受けてもらい、痴呆かどうかを診断。さらに、過去15年間の飲酒習慣や、飲むアルコールの種類などを調べて、痴呆とアルコール摂取との関係を分析した。試験の結果、痴呆と診断された人は83人で1626人は正常だったが、1週間で飲むアルコールの量そのものは痴呆かどうかで変わらないことが判明。ところが、痴呆の人の6割に全くワインを飲む習慣が無いのに対し、痴呆ではない人では4割しかワインを飲まない人がいなかった。喫煙習慣や血圧、脳卒中になったことがあるかなど、痴呆の発症に影響し得る様々な因子で補正すると、ワインを飲む人は飲まない人よりおよそ2倍痴呆になりにくいことがわかった。逆にビールについては、こうした因子で補正して計算すると、「月に何度か飲む」人ではおよそ2倍、全く飲まない人よりも痴呆を発症しやすいことが明らかになった。「週に何度か飲む」人でも、痴呆の発症率が高い傾向が認められた。ウィスキーなどの蒸留酒でも、飲む人の方が飲まない人より痴呆発症率が高い傾向があった。なぜビールを飲む人で痴呆が増える計算になるのかは不明だが、「ワインは食事と共にたしなむことが多いのに対し、ビールは(飲み会など)特別な機会でそれだけを大量に飲むことが多く、そうした“飲酒パターンの違い”が影響しているのでは」と研究グループはみる。一方のワイン、特に赤ワインには、老化を防ぐとされる抗酸化成分のフラボノイドが含まれており、こうした成分が「痴呆の発症を防ぐ方向に働いた可能性がある」と研究グループは考察している。(平成14年11月14日medwave) アルツハイマー病ワクチン アルツハイマー病の原因物質アミロイドを脳から取り除くワクチンの開発を進めていた国立長寿医療センター研究所と名古屋大などのチームが、マウスを使った実験で発症後に飲むと認知能力が戻ることを確かめた。 脳炎や出血などの危険な副作用もなかった。研究チームは次の段階として、少人数の患者を対象にした臨床試験の準備を進めている。このワクチンは、病原性がないウイルスの殻にアミロイドというたんぱく質を作る遺伝子を入れてある。口から飲むと、腸の細胞がこの「偽ウイルス」に反応してリンパ球がアミロイドを攻撃する抗体を作る。この抗体が脳にたまったアミロイドにくっつき、ばらばらにして取り除く。研究チームは、月齢を重ねると必ずアルツハイマー病を発症するよう遺伝子を変化させたマウス28匹を使って、効果を試した。 アルツハイマー病を発症した生後10カ月の時点で、半数の14匹にはワクチンを飲ませ、残りには飲ませなかった。その結果、ワクチンを飲んだマウスはほぼすべて3カ月後、記憶力や学習能力など認知力を試す4種類のテストすべてで成績が発症前のレベルまで戻った。一方、ワクチンを飲まなかったマウスは全テストで成績が落ち、認知力の大半を失っていた。今回開発したワクチンは直接たんぱく質などを注射する方法ではないため安全性が高く、大量生産が可能なうえ、薬液を飲むだけで簡単という利点がある。(平成19年3月29日 朝日新聞) アルツハイマー病発症原因 佐賀女子短大、長谷川亨教授はアルツハイマー病が高齢者に多く発症するメカニズムの一つを解明した。老化によって神経細胞の働きが抑制されると、同病を引き起こす物質「ホモシステイン酸」が脳の神経細胞死を招く働きをすることを実験で示した。教授は2005年にホモシステイン酸の有害な働きを初めて特定。今回の実験では老化との関係を分析した。老化が進み、神経細胞の働きが弱くなると、ホモシステイン酸が細胞内に有害物質を蓄積させ、別の原因物質と組み合わされることで細胞死することが分かった。若い世代では、ホモシステイン酸があっても、有害物質が蓄積されていないので、神経細胞死までは起きないという。教授によると、喪失体験やPTSD(心的外傷後ストレス障害)などの強いストレスがアルツハイマー病の危険因子とされており、ホモシステイン酸はそのようなストレスが持続的に続いた際に増える。(平成19年3月5日 毎日新聞) DHA、脳内の神経細胞再生促進の働き 青魚に多く含まれる物質「ドコサヘキサエン酸」(DHA)に、脳内の神経細胞の再生を促進する働きがあることを、島根大医学部の研究グループが、ラット実験で確認した。認知症やアルツハイマー病などの治療に応用が期待される。生後20週の壮齢ラットに7週間、DHAを経口投与した。短期の記憶をつかさどる「海馬」の神経細胞を調べたところ、情報伝達網の広がりを示す突起状の軸索が、DHAを与えていないラットは増えなかったのに対し、与えたラットは約60%増えた。また、神経細胞へ分化する材料となる神経幹細胞をラットの脳から直接抽出してDHAを加えると、DHAを加えなかったものより、神経細胞へ分化する度合いが約1.5倍に促進されることも分かった。(平成絵19年1月12日 毎日新聞) アルツハイマー病DNAワクチン 東京都神経科学総合研究所は、アルツハイマー病の治療にDNAワクチンが効果がある仕組みを解明した。 ワクチンの作用でできた抗体に、原因とされるたんぱく質がくっつき、それを脳内の細胞が除去していたという。効果の高いワクチン開発に生かせるとみている。脳にたまってアルツハイマー病を起こすとされるたんぱく質、アミロイドベータのDNAに改良を加え、DNAワクチンにした。このワクチンを注射すると生体内でアミロイドベータができ、同時に免疫システムによってアミロイドベータにくっつく抗体も作られる。(平成19年1月9日 日経産業新聞) アルツハイマーMRI診断 アルツハイマー病の原因タンパク質である「ベータアミロイド」に結合し、磁気共鳴画像装置(MRI)による診断をしやすくなる試薬を滋賀医大と滋賀県工業技術総合センターが開発した。コンピューター断層撮影(CT)や陽電子放射断層撮影(PET)と違い、放射線被ばくがなく、治療効果の判定や症状の観察にも使えるという。同様に開発された試薬の5倍以上の感度があるといい、「Shiga−X」と名付けた。アルツハイマー病は脳にベータアミロイドが蓄積し老人斑と呼ばれるシミができ、細胞死が起きる。MRIで撮影しやすくするようフッ素を加え、アルツハイマー病のモデルマウスの静脈に注射すると、2、3時間でアミロイドに結合、MRIで観察すると白く光る様子が確認できた。(平成18年12月5日 中国新聞) 食べるワクチン動物で効果 アルツハイマー病 アルツハイマー病の原因物質とされるタンパク質「ベータアミロイド」の遺伝子をピーマンに組み込み、その葉を食べさせることで脳に蓄積したベータアミロイドを約半分に減らすことに、東京大の石浦章一教授らがマウスで成功した。 葉の中にできたベータアミロイドが腸から吸収されることで、体内の抗体が増える仕組み。 ベータアミロイドを直接注射する人間の臨床試験では髄膜炎が出た例があるが、今回のものは経口ワクチンで、副作用は出なかったという。人間で安全性と効果が確かめられれば「食べるワクチン」開発につながる可能性がある。アルツハイマー病は、脳にたまったベータアミロイドが神経細胞を死滅させ、記憶や認知障害などの症状が出ると考えられている。石浦教授によると、ベータアミロイドの精製は難しいため、ピーマンに遺伝子を導入して作らせるようにした。育った葉を細断し、家族性アルツハイマー病のマウス6匹に週1回、3カ月間食べさせたところ、脳のベータアミロイドは、食べさせなかったマウスに比べて平均で約半分に減少。血液中の抗体の量は、食べる前より増えていた。石浦教授は「自然に老化したマウスにも効けば、アルツハイマー病では患者が最も多い原因不明の孤発性にも効果が望める」と話している。(平成18年9月23日 中国新聞) ホヤにアルツハイマー予防効果 海に生息するホヤなどに含まれる脂質の「プラズマローゲン」がアルツハイマー病を防ぐ効果を持つ可能性が高いことが、東北大大学院農学研究科の宮沢陽夫教授(食品学)らの研究でわかった。 動物実験で証明できたことから、来年にも錠剤の健康食品として発売する。 ひどい物忘れなどを引き起こすアルツハイマー病は、脳の神経細胞が死ぬことが原因と考えられている。これまで、患者の脳内ではプラズマローゲンが通常より3割程度減少していることがわかっていたが、その働きは明らかにされていなかった。 宮沢教授らは、細胞の培養実験の結果、プラズマローゲンに神経細胞死を防ぐ効果があることを突き止めた。 さらにアルツハイマー病を発症させたラットにプラズマローゲンを食べさせ、迷路を経て餌にたどり着かせる実験をしたところ、記憶・学習能力の低下を防ぐことができた。 プラズマローゲンは牛の脳にも含まれるが、BSE(牛海綿状脳症)感染の恐れがある。そこで手に入りやすい海産物を調べ、ホヤやカキ、ウニなどに含まれていることを発見。 とりわけ、ホヤの場合は廃棄する内臓への含有率が約0・1%と高く、有効活用できるという。 宮沢教授らは昨年8月、ベンチャー企業を設立。ホヤからプラズマローゲンを抽出する方法も開発している。 また、4〜5年をかけて患者への効果を確かめ、医薬品などの開発に結びつけたいとしている。 宮沢教授は「ホヤは宮城、岩手両県の三陸沿岸が産地。 先進各国では高齢化が進んでおり、日本だけでなく世界で需要が高まれば、東北の新しい産業に結びつく可能性がある」と話している。(平成18年6月1日 読売新聞) アルツハイマー抑止に光、原因物質防ぐ化合物開発 アルツハイマー病の発症にかかわる体内物質「β(ベータ)アミロイド」の生成を防ぐ化合物を、木曽良明・京都薬科大教授と東京大、理化学研究所のグループが開発し、マウスの実験で効果を確認した。28日から大阪市で始まる日本薬学会の「メディシナルケミストリーシンポジウム」で発表する。アルツハイマー病は、大脳皮質にβアミロイドが蓄積し、神経細胞の維持に必要なたんぱく質の働きを妨げるのが直接原因と見られている。木曽教授によると、βアミロイドは、前段階のたんぱく質が2種類の酵素で切断されて生成する。このうち「γ(ガンマ)セクレターゼ」という酵素は動物の発生・分化に欠かせないが、「βセクレターゼ」は作れなくてもマウスに異常が見られないため、その作用を阻害する化合物を設計した。これを、脳内で記憶に関係する海馬という部位に注射した結果、遺伝的にアルツハイマーになりやすいマウス、野生のマウスの両方で、βアミロイドの生成が約半分に抑えられたという。木曽教授は「根本的な治療薬の開発につながる可能性がある。実用化に向けて動物実験で検証を重ね、経口投与できるよう改良したい」としている。(平成17年11月28日 読売新聞) アルツハイマー病の原因物質の解明に成功 アルツハイマー病の原因とされるたんぱく質「ベータ・アミロイド」の主要構造をとらえることに、大阪大工学研究科のグループが世界で初めて成功した。高野助教授は「この主要構造が変化すると、ベータ・アミロイドが次々と線維状に固まっていき、病気を引き起こす」と推測。この変化を防ぐ化合物を見つければ、治療薬につながると期待している。ベータ・アミロイドは、線維状に固まりやすい性質が災いし、構造解析に適した結晶状態にするのが難しかった。高野助教授らは、線維化に関係すると見られている部分を、構造分析に適した別のたんぱく質に組み込む手法で、エックス線による解析に成功。この部分が折り畳まれて平面状になった形をしており、非常に分解されにくい構造であることが分かったという。ベータ・アミロイドは、正常な脳では酵素によって分解されるが、分解できなくなると、蓄積して「老人斑」という線維状物質を形成、アルツハイマー病を引き起こすと考えられている。(平成17年11月16日 読売新聞) 脳血管性認知症、演奏や運動で症状改善 脳卒中で脳の血流が悪くなって起こる脳血管性認知症(痴呆(ちほう))は、楽器演奏やゲームなどのレクリエーション活動により、症状が改善することを、国立長寿医療センターの研究グループが突き止め、米老年医学会誌に発表した。 認知症は、脳梗塞(こうそく)などの後に発症する脳血管性認知症と脳細胞が委縮するアルツハイマー病に大別される。 研究グループは、同センターに入院する脳血管性認知症45人、アルツハイマー病37人の計82人に、楽器演奏や、風船を使ったバレーボール、体操、踊りなどのレクリエーション活動を、週に5回(1回90分)ずつ続けてもらった。 その結果、脳血管性認知症患者の場合、活動を30回以上行った15人の記憶・認知テストの試験結果が、活動前より10%向上し、改善が見られた。 活動が30回より少ない人や、アルツハイマー病患者では試験結果に変化はなかった。同センターの長屋政博・骨関節機能訓練科医長は「レクリエーション活動で症状に改善が見られる人は、血流の悪い部分が、脳の特定部分(前頭葉)に限定している場合が多いようだ」と話している。(平成17年7月11日 読売新聞) アルツハイマー予防に野菜ジュース 米・ワシントンで開催中のアルツハイマー病をめぐる国際会議で19日、発症の何年も前に85%の確率で危険性を予測する画像診断法を開発したとする報告や、野菜や果物のジュースを愛飲すると発症リスクが4分の1に抑えられるという報告があり、注目を集めた。 画像診断法を開発したのは、米ニューヨーク大の研究チーム。記憶の中枢とされる脳の海馬という部分の活動低下を、陽電子放射断層撮影(PET)で診断するもので、発症の15年前に予測することも可能だという。 脳が活発に活動している場所では、エネルギー源のぶどう糖が盛んに消費されることが知られている。研究チームは50〜80代の健康な53人を対象に、海馬でのぶどう糖の消費状況を時折PETで測りながら、9〜24年間経過を追った。 最終的には、25人がアルツハイマー病や軽度認識障害を発症した。発症者のPET診断の結果を未発症者と比べると、研究開始の段階ですでにぶどう糖の消費が15〜40%低かったという。この調査結果を基に海馬の画像診断システムをつくった結果、アルツハイマ病は85%、軽度認識障害は71%の確率で事前予測できた。研究チームは「発症の9年前には予測できることが分かった。15年前でも予測できるだろう」という。 野菜ジュースや果物ジュースの効果は、南フロリダ大の研究チームが、米ワシントン州に住む65歳以上の日系人男女1836人を7〜9年間にわたり追跡した健康調査のデータから示された。 そうしたジュースを週に最低3回は飲む人は、週1回未満の人に比べて、アルツハイマー病の発症リスクが75%も低かったという。 ビタミン剤や栄養補助食品は発症リスクに影響していなかった。研究チームは「野菜や果物のジュースに含まれるポリフェノールが、アルツハイマー病の発症を遅らせているのだろう」という。野菜や果物の摂取が予防になるという結果は海外のほかの研究でも出ており、ポリフェノールや葉酸などの抗酸化物質が効いていると考えられている。バランスよく食品でとると、これらの物質が活用されるようだ。 画像診断による予測も信頼できそうだ。認知症は青年期、中年期から始まっており、人生全体を見渡した研究が必要だ。(平成17年6月20日 朝日新聞) アルツハイマー、病因のメカニズム解明 佐賀女子短大(佐賀市)の長谷川亨教授らの研究グループがアルツハイマー病の発生メカニズムの一つを解明し、16日発表した。健常者の脳にも微量ながら存在するホモシステイン酸が働きかけて、アルツハイマー病の原因たんぱく質(アミロイド)を脳神経細胞内に蓄積させ、細胞死を引き起こすというもの。ホモシステイン酸をアミロイドに働きかける原因物質として特定したのは初めて。アルツハイマー病は認知(痴呆)症の代表的な疾患。アミロイドが脳内に沈着、神経細胞が死滅し、最終的に脳が委縮することで発病する。その際、アミロイドの生成、蓄積が発病の中心的役割を担っているという。長谷川教授らは8年前から、このアミロイドの蓄積と細胞死の関係を研究。その中で、アルツハイマー病の危険因子として知られるアミノ酸(ホモシステイン)の酸化代謝物であるホモシステイン酸の毒性に着目。生きた神経細胞で実験した結果、ホモシステイン酸がベータアミロイド42を細胞内に蓄積させ、それが細胞死を引き起こす作用があることを確認した。現在、研究グループのうち米国立衛生研究所(NIH)のチームが、動物実験を続けている。長谷川教授は「ホモシステイン酸が作用しなければ、アミロイドは蓄積されず、細胞死は生じない。アミロイドの生成をいかに抑えるかが中心だったアルツハイマー病治療の研究にブレーキを駆けることになると思う」と指摘。「今後はホモシステイン酸の毒性を弱めるような研究と薬剤の開発が必要だ」と話している。(平成17年5月16日 毎日新聞) アルツハイマー病の原因物質のMRI観察に成功 アルツハイマー病の引き金になる物質が脳にたまっているかどうかを、磁気共鳴断層撮影装置(MRI)で観察する手法を、理化学研究所・脳科学総合研究センターの西道隆臣(さいどう・たかおみ)チームリーダーらが開発した。マウスの実験で有用性が確かめられ、ヒトに応用ができればアルツハイマー病の発症前診断や早期治療につなぐこともできそうだ。13日付の米科学誌ネイチャー・ニューロサイエンス電子版で発表した。年齢を重ねると、脳にはベータアミロイドという物質が蓄積する。これが過剰にたまると、アルツハイマー病を発症すると考えられている。そこでベータアミロイドとよく結合し、MRIでの観察が可能なフッ素を含む化合物を新たに合成した。これをマウスに注射して観察すると、ベータアミロイドがどの程度、脳にたまっているかがわかった。これまでは死後に解剖して調べるしか、蓄積状況を知ることができなかった。 この手法を使えれば、ヒトでもアルツハイマー病を発症していないうちからベータアミロイドの蓄積状況を調べ、将来発症する可能性を診断することもできる。蓄積を抑える新薬の効率的な選抜にも役立ちそうだ。西道さんは「マウスやサルの実験で効果的な診断法を絞り込み、4〜5年先をめどに、ヒトでの応用の可能性を見極めたい」と話している。(平成17年3月14日 朝日新聞) アルツハイマーに新ワクチン アルツハイマー病の原因とされる脳にたまったたんぱく質をDNAワクチンによって減らす新しい治療法が開発された。東京都神経科学総合研究所の松本陽部門長と大倉良夫研究員が、29日から始まる日本痴呆(ちほう)学会で発表する。マウスの実験段階だが、アルツハイマー病のワクチン療法で問題となる免疫反応による副作用が少ない手法として期待されている。 アルツハイマー病は脳にベータアミロイドというたんぱく質が蓄積する。新しい治療法は、このベータアミロイドをつくるDNAを筋肉に注射。筋肉細胞でベータアミロイドがつくられ、体の免疫反応によって、その抗体ができる。抗体が脳内でベータアミロイドを攻撃し、減らす、というしくみだ。 ベータアミロイドを直接注射する従来のワクチン療法に比べ、抗体ができるのが長期間、ゆるやかに続くという。 実験では、発病させたマウスにこの治療を3〜8カ月続け、脳のベータアミロイドの量を測った。すると、治療しないマウスに比べて10〜50%減少していた。50%減少したマウスでは、行動の異常も回復したという。副作用のもとになる血中のリンパ球の活性も抑えられていた。(平成16年9月28日 朝日新聞) カレーでアルツハイマー予防 カレーの黄色成分でウコンに含まれる「クルクミン」が、アルツハイマー病の原因となる物質の生成を防ぐ効果のあることが、金沢大大学院の山田正仁教授(神経内科)と小野賢二郎医師らの研究でわかった。 新たな治療薬の開発につながるほか、痴呆(ちほう)予防に役立つ食生活改善法に生かされそうだ。成果は都内で開かれる日本痴呆学会で30日発表される。 アルツハイマー病は、脳内で「アミロイドベータ(Aβ)」という物質が線維状に結合して毒性を持ち、付近の神経細胞が死んでいくのが原因とされる。 現在、病気の進行をくい止める決定的な治療法はない。研究チームはAβを含む溶液にクルクミンを加え、線維化が大幅に抑えられることを確認した。すでに線維化したAβにクルクミンを加えると線維が分解した。赤ワインに含まれるポリフェノールや、ハーブの一種のローズマリーでも同様の効果が得られたという。 カレーをよく食べるインド人は米国人に比べアルツハイマー病の発症率が4分の1しかないことが知られ、クルクミンを混ぜた餌で育てたマウスは発症しにくいことが示されている。 研究チームは「クルクミンにアルツハイマー病を防ぐ直接の効果があることがわかった。食生活の改善で発症を遅らせられるかもしれない」と話している。(平成16年9月8日 読売新聞) 脳の神経細胞が「窒息状態」 アルツハイマー仕組み解明 老人性痴呆(ちほう)の一つ、アルツハイマー病にかかった人の脳では、神経細胞が「窒息状態」に追い込まれて次々に死んでいくことが、田熊一敞(かずひろ)・金沢大助教授らの研究で分かった。新しい治療法の開発につながる可能性もあるという。16日付の米科学誌サイエンスに掲載される。 この病気になった人の脳にはベータアミロイドというたんぱく質がたまりやすく、記憶などにかかわる神経細胞が死ぬことが知られているが、どのように死ぬかはよく分かっていない。田熊さんと米コロンビア大などのグループは、神経細胞の中にあるミトコンドリアという器官に注目。ここに、ベータアミロイドとABADという酵素が一緒に存在することを見つけた。試薬を使ってこの二つがくっつかないようにすると、神経細胞の死ぬ割合が大幅に減ることがわかった。 ミトコンドリアは酸素を使って細胞が働くエネルギーをつくる。二つがくっついて、ミトコンドリアの呼吸活動を邪魔しているらしい。田熊さんは「二つがくっつかなくするような薬ができれば、病気の進行を防げるのではないか」と話す。(平成16年4月16日 朝日新聞) 脳内にアルツハイマーの原因物質除去する仕組み アルツハイマー病の原因とされるたんぱく質「ベータアミロイド」の沈着を除去する仕組みが、人間の脳の中にも存在することを、東京都精神医学総合研究所の秋山治彦研究部門長らが初めて確認した。この仕組みを利用すれば、アルツハイマー病の新しい治療法につながると期待される。米科学誌「ネイチャー・メディシン」2月号に発表する。研究グループは、病気などで亡くなったアルツハイマー病患者らの脳を分析。70歳代の男性患者の脳の一部で、沈着しているはずのベータアミロイドが消えているのを見つけた。この場所では、血管の一部が詰まった影響で、死んだ細胞などを片付ける脳の免疫細胞「ミクログリア」の働きが活発化しており、ミクログリアによって沈着が取り除かれたらしい。ワクチンなどでこの免疫細胞の活性を高められれば、アルツハイマー病の治療に使える可能性がある。(平成16年2月2日 読売新聞) アルツハイマー病を抑える遺伝子治療に初成功 アルツハイマー病を引き起こす原因と考えられているたんぱく質「ベータアミロイド」の発生を遺伝子治療で抑えることに、理化学研究所と自治医科大の研究グループが初めて成功した。遺伝子治療は薬剤に比べて、長期間効果がある。安全性が確認できれば新しい治療法になると期待される。28日発行の北米神経科学誌に掲載された。 アルツハイマー病は、ベータアミロイドが長い年月をかけ、脳に蓄積して神経細胞が死滅して起こるとされる。研究グループは01年、ベータアミロイドを分解する酵素「ネプリライシン」を発見。ネプリライシンを作り出す遺伝子を、ベクター(遺伝子の運び屋)を使い、アルツハイマー病を起こしているマウスの脳に注入した。その結果、脳内のベータアミロイドの量は投与前に比べてほぼ半減させることに成功した。遺伝子の働きは6カ月間維持されていた。(平成16年1月29日 毎日新聞) ビタミンEとCの併用者はアルツハイマー病の罹患率低い 米国Utah州Cache郡の住民を対象に行われた横断研究で、ビタミンEとCの両方を服用している人に、アルツハイマー病患者が少ないことがわかった。さらに、横断研究が行われた時点でアルツハイマー病に罹患していない人を追跡したところ、ビタミンEとCの服用者では、アルツハイマー病の発症リスクも低いことがわかったという。この「Cache County研究」は、米国の代表的な地域コホート研究の一つ。65歳以上の住民を対象としたもので、住民の多くがモルモン教徒であるため、飲酒率や喫煙率が極めて低いとの特徴がある。 今回は、各種ビタミン剤の服用率と、アルツハイマー病の罹患率、発症率との関連を調査。まず、1995〜1997年にビタミン剤服用状況と認知機能検査を行い、アルツハイマー病の「罹患」とビタミン剤との関連を評価した。さらに、その時点でアルツハイマー病にかかっていなかった人について1998〜2000年に再調査を行い、アルツハイマー病の「発症」とビタミン剤との関連を評価した。調査対象は、65歳以上の住民4740人。最初の調査で、200人がアルツハイマー病に罹患していることがわかった。罹患していなかった人のうち3227人について二度目の調査を行ったところ、104人が新たにアルツハイマー病を発症した。住民のうち、ビタミンEを1日400国際単位(IU)以上、あるいはビタミンCを1日500mg以上服用していたのは、全体の17%。いわゆるマルチビタミンの服用者(ビタミンE、Cが含まれているが用量が少ない)は全体の20%だった。ただし、ビタミン剤の服用者には女性が多く、より若年で、最終学歴が高く、全般的な健康状態も良好。そこで、こうした要素で補正を加えた上で、ビタミン剤の服用とアルツハイマー病との関連を評価した。 その結果、アルツハイマー病の「罹患率」は、高用量のビタミンEとCの両方を服用している人で8割低い計算になることが判明。同様に「発症率」は6割低い計算になった。一方、ビタミンEとCのどちらか一方のみを服用している人やマルチビタミンの服用者、総合ビタミンB剤の服用者では、アルツハイマー病の罹患率や発症率は非服用者と変わらなかった。ビタミンEやビタミンCは抗酸化ビタミンとして知られ、疫学研究などで神経変性に対し予防的に作用することが示唆されているが、大規模な調査でアルツハイマー病の「罹患率」と「発症率」の両方に影響することが示唆されたのは初めて。なぜ高用量を併用した人でのみ予防的な作用が期待できるのかは不明だが、研究グループは、十分量の抗酸化ビタミンを用いた介入試験で、アルツハイマー病の一次予防効果を評価すべきと論じている。 アルツハイマー病、重度の患者向けの薬を認可 米食品医薬品局(FDA)は17日、中度から重度のアルツハイマー病の進行を遅らせることを期待できる治療薬「メマンチン」の使用を認可した。これまで軽度から中度の症状に対する薬はあったが、重度の患者向けの薬の認可は初めて。欧州では昨年承認され、日本でも臨床試験が行われている。 痴呆症状を引き起こすアルツハイマー病は、脳内神経伝達物質のグルタミン酸の過剰が原因のひとつと考えられる。FDAなどによると、メマンチンはグルタミン酸の働きを阻害し、神経細胞を保護するという。米国で実施された重度のアルツハイマー病患者650人を対象にした臨床試験では、記憶の減退や判断能力の低下を遅らせる効果が確認された。患者の6〜7%に、めまいや頭痛などの副作用が報告されている。メマンチンはドイツのメルツ社が開発。日本でもサントリーと第一製薬が共同で臨床試験を行っている。米国では来年1月にも発売される見通し。(平成15年10月18日 毎日新聞) アルツハイマー予防にポリフェノール、赤ワイン効果確認 赤ワインに含まれるポリフェノールが、アルツハイマー病の原因とされるたんぱく質を分解することを山田正仁・金沢大教授(神経内科)らが実験で確認し、国際神経化学学会誌オンライン版で発表した。効果が示されたポリフェノールの量は赤ワイン約500CC分とかなり多め。アルコール分は、厚生労働省が掲げる1日の適量の倍以上になる。フランスなどの疫学調査で、定期的に赤ワインを飲んでいる人はアルツハイマー病を含む痴呆(ちほう)症の危険性が減る可能性があるという報告が出されていた。アルツハイマー病の患者の脳には、βアミロイドというたんぱく質が線維状になって沈着して老人斑と呼ばれるものができる。これが発病や病状の進行に影響するとみられている。 山田さんらは、赤ワインに多く含まれるミレセチンなどのポリフェノールをβアミロイドの溶液に加え、線維化現象への影響を調べた。 その結果、低濃度のミレセチンが線維化を抑えたほか、一度線維化したβアミロイドもミレセチンを加えると元のβアミロイドに分解された。また、線維化したβアミロイドは細胞への毒性があるが、ミレセチンを加えるとその毒性も減ることがわかった。 山田さんは「ポリフェノールをサプリメントにするなどしてアルツハイマー病の予防治療用に応用できる可能性がある」と話している。(平成15年9月29日 朝日新聞) アルツハイマーの発病…「魚食べると6割減」 週に1回以上魚を食べる人は、アルツハイマー病にかかる危険性が約60%も少ない。米シカゴのラッシュ加齢研究所などの疫学調査でそんな結果が出た。米専門誌「アーカイブズ・オブ・ニューロロジー」電子版に発表された。不飽和脂肪酸を豊富に含む魚の摂取が、アルツハイマー病の予防に効果がありそうなことは日本の研究ですでに指摘されている。 米国での調査結果は、これを裏付ける形となった。研究チームは、シカゴ地域に住む65―94歳の815人を対象に、食生活とアルツハイマー病の発病との関係を追跡調査。 魚をめったに食べない人の発病率に比べ、魚を週1回以上食べる人の発病率が大幅に低いことを突き止め、年齢などを考慮して補正した発病危険度の差を約60%と推計した。 米国では魚の摂取が健康維持に及ぼす効果について広く知られておらず、主要メディアは、今回の成果を「全米で約400万人が悩む病気の有望な予防策が見つかった」と取り上げた。(平成15年8月5日読売新聞) アルツハイマー病発症後 鎮痛薬効果なし 鎮痛薬にアルツハイマー病の予防効果がある」と一部で報告されているが、発症後では症状の改善効果は期待できないとする研究結果を、米カリフォルニア大学などのチームがまとめた。 研究では、改善効果がないばかりか、副作用も多いとしている。米国医学会誌に発表した。 アルツハイマー病の患者351人の協力を得て研究を実施。 ナプロキセンなどの代表的な非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)を1日1―2回飲むグループと、有効な成分が入っていない偽薬を飲むグループで、1年後に効果の有無を比較した。 その結果、両グループで記憶力など、脳の認知能力の衰え具合には差がなく、鎮痛薬を飲んだグループでは、めまいや高血圧などの副作用も多いとわかった。(平成15年7月22日読売新聞) アルツハイマー病、予防に効果、新ワクチン開発 アルツハイマー病の治療や予防に劇的な効果が期待できる新しいワクチンを、国立療養所中部病院・長寿医療研究センター(愛知県大府市)の原英夫研究員(45)=神経内科=らが開発した。 現在はまだマウスを使った実験段階だが、副作用は確認されていないという。名古屋市で18日に開幕する日本老年学会総会で発表される。 アルツハイマー病は、脳の中に無数の老人斑ができる。 老人斑には「ベータアミロイド」というたんぱく質が蓄積し、病気を引き起こす原因とされている。 今回開発したワクチンでは、このたんぱく質の主成分(ペプチド)を生産する遺伝子組み換えウイルスを投与。 すると体内で抗体が生まれ、このたんぱく質が分解されて老人斑が消えるという。 アルツハイマー病のマウスに1回投与すると、脳の2.5%に及ぶ老人斑が10週間後、0.5%に減った。また、若いマウスに投与すると、老人斑が現れず発病が予防できた。 同じ原理で注射するタイプのワクチンは既に欧米で臨床試験が行われ、患者の4%が副作用で脳炎になる問題が生じ試験が中止されている。 原研究員らは小腸から吸収される飲み薬タイプに改良、副作用を抑えられたという。 ウイルスは体内に通常いる種類で害はなく、小腸で吸収されると、腸管の中で半年以上生き続けるため、薬効が長く持続する仕組み。年内にはサルで実験をし、安全性を確認した上で人への応用を目指す。 田平武・同センター長は「半年に1回飲むだけでぼけが予防できる新薬も夢ではない」と話している。(平成15年6月16日毎日新聞) レミニールがアルツハイマー病の進行遅らせる ヤンセン ファーマは2日、アルツハイマー病治療薬「レミニール」(一般名=臭化水素酸ガランタミン)を4年間連続的に投与したところ、軽度・中等度のアルツハイマー病の進行を50〜60%遅らせる可能性があることがわかったと発表した。(平成15年6月3日日刊薬業) アルツハイマー、原因たんぱく質は球状の集合体 脳の神経細胞に蓄積してアルツハイマー病を引き起こすとされるたんぱく質ベータアミロイド(Aβ)が、球状の集合体となって初めて強い毒性を持つことを、三菱化学生命科学研究所の星美奈子主任研究員(神経科学)らの研究グループが突き止めた。「発症の原因の解明や、新たな治療法に役立てられる」と研究グループは話している。13日発行の米科学アカデミー紀要(電子版)に発表した。 アルツハイマー病は神経細胞が死亡して起こる病気と考えられている。 患者の脳を解剖すると、線維状のAβの蓄積が認められるため、発症に関係すると考えられていた。 ところが、蓄積があっても発症しない人がいたり、蓄積していない部分の神経細胞が死んでいることもあり、謎だった。 研究グループは、Aβのうち、特定の形状のものに毒性があると仮定。 人工的に合成したAβをゆっくり回転させると、線維状のもののほかに、直径10〜15ナノメートル(ナノは10億分の1)の球状の集合体ができることを発見した。 この集合体をラットの神経細胞に加えると、線維状のAβより400倍強い毒性があることが分かり、「アミロスフェロイド」と名付けた。 さらに、Aβにはアミノ酸42個か、40個からなる2種類があるが、42個から成るAβの方が低濃度で短期間で球状の集合体になることも分かった。 研究グループは、蓄積の過程でできる球状のAβの毒で、脳の神経細胞が死に、アルツハイマー病になると見ている。 岩坪威東大教授(神経病理学)の話 毒性物質の構造を突き止めたのは興味深い。ただ、生体内で実際に毒性を持つかどうかさらなる研究が必要だ。(平成15年5月13日毎日新聞) アルツハイマー病、脳せき髄液中の物質で診断・米研究所 米国立衛生研究所(NIH)の一部門である国立精神健康研究所は、体内にある2種類の物質を手がかりにアルツハイマー病を高い精度で診断できることを確かめた。 およそ9割の確率で患者を見つけ出せるという。 患者の体内で2つの物質がどのように増減するかを追跡調査し、診断精度を高める。 アルツハイマー病患者は、健康な人に比べ脳せき髄液に含まれるβ(ベータ)アミロイドと呼ぶ物質が減り、タウたんぱくと呼ぶ物質が増えることが経験的に知られている。 研究グループはこれらの物質に注目。200人以上の患者を実際に調べたほか、3000人以上の患者の文献データなどを検討して、この経験則を裏付けた。(平成15年4月24日日経産業新聞) アルツハイマー進行抑制に効果、ワクチン療法で原因物質を除去 アルツハイマー病患者の脳から、この病気の原因とみられる物質を除去する手法が初めてみつかった。 原因物質を患者の腕などに接種するワクチン療法で、発症の初期に実施すれば、症状の進行を抑えられる可能性があるという。ただ、この療法により脳炎が起きる副作用も指摘されており、実際の治療に使うにはその克服が課題になる。 17日付のネイチャー・メディシン(インターネット版)に発表される研究成果で、この療法は、アイルランドの製薬企業エラン社が開発し、2000年に臨床試験を始めた。試験に参加した女性患者の脳を英サウサンプトン大などの研究者が死後に解剖、ワクチンの実際の効果を調べた。 この病気の患者の脳には「ベータ・アミロイド」という物質が蓄積するため、原因物質として有力視されている。試験では、この女性に8か月間で計5回、この物質を接種し免疫力を高めた。記憶障害などは改善しなかったが、解剖したところ、この物質が全体的に減り、場所によってはほぼ完全になくなっていた。ただ神経細胞内にできるアルツハイマー病特有の線維状の構造物はなくなっていなかった。症状が改善しなかったのはこれが原因とみられるが、線維化が広がり重症になる前なら、有効な可能性があるという。(平成15年3月17日読売新聞) アルコール分解の遺伝子がアルツハイマー発症抑える? アルコールを分解する過程で働く遺伝子にアルツハイマー病の発症を抑える可能性があることを、日本医科大老人病研究所の太田成男所長らが突き止めた。酒に弱い人はこの遺伝子に変異があるためだが、研究チームはこれまでに、酒に弱い人は強い人よりアルツハイマー病に1・6倍なりやすいとの研究結果を発表しており、今回はその仕組みの一端を明らかにした。来月5日にソウルで開かれる国際学会で発表する。この遺伝子は「アルデヒド脱水素酵素」という酵素を作り出す。アルコールが分解されてできるアセトアルデヒドをさらに分解し、無害の酢酸に変える。酒に弱い人は、この遺伝子に変異があるためアセトアルデヒドをうまく分解できず、気分が悪くなったりする。 チームは、この酵素が、細胞内でエネルギーを作り出す過程でできてしまう有害物質「ヒドロキシノネナール」をも分解することを発見。この有害物質はアルツハイマー病との関連が指摘されており、遺伝子に変異のある人では分解が進まないため発症の危険が高まるとみている。 遺伝子の働きが不十分な培養細胞に、ヒドロキシノネナールを加えるとすぐ死んでしまったが、ビタミンEなどの抗酸化物質を併せて与えると細胞死が抑えられたという。 太田所長は「酒に弱い人は、ビタミンEを含む食品をとるなどしてアルツハイマー病の予防に心がけた方がいい。酒に強いからといって、飲み過ぎは痴ほうにつながることもある」と話している。(平成15年1月29日読売新聞) 日米グループがアルツハイマー病の抑止たんぱく質解明 米ロックフェラー大学と理化学研究所などのグループは、アルツハイマー病の脳で起きる変化を抑えるたんぱく質を突き止めた。患者ではこのたんぱく質が減っているという。新たな治療法を開発する手がかりになると期待している。 理研脳科学総合研究センターの高島明彦チームリーダーらが着目したのは、様々なたんぱく質が正常な形になるように導く「分子シャペロン」と呼ぶたんぱく質。タウというたんぱく質が脳に異常な形で蓄積するアルツハイマー病患者と同じ状態のマウスを調べたところ、このたんぱく質の仲間が減少していた。同じマウスでも分子シャペロンが比較的多い神経細胞では、逆にタウの蓄積が抑えられていた。患者でも同じような現象が見られたという。(平成15年1月7日日経産業新聞) NSAIDのアルツハイマー病予防効果にタイムラグ 米国Utah州Cache郡の住民を対象に行われたコホート研究「Cache」(Cache Study)で、非ステロイド性消炎薬(NSAID)の服用者では、非服用者よりもアルツハイマー病の発症率が低いことが確認された。ただし、予防効果がみられたのは発症の2年以上前から服用している人だけで、研究グループは「記憶力の低下が現れてから飲み始めても遅すぎるかもしれない」と指摘している。研究結果は、Neurology誌9月24日号に掲載された。Cache研究の対象は、Cache郡に住む65歳以上の男女約5000人。1995〜1996年に服薬歴や脳機能を調べ、1998〜2000年の再調査時点で存命中の3227人を解析対象とした。2回の調査期間中にアルツハイマー病を発症したのは104人。研究グループは、1.アスピリン(服用率:37.8%、複数回答)、2.アスピリン以外のNSAID(29.3%)、3.NSAID以外の鎮痛薬(19.0%)、4.ヒスタミン2受容体(H2)ブロッカー(61.1%)、5.H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害薬(PPI)以外の制酸薬(17.6%)、6.その他の胃腸薬(PPIを含む)(9.1%)−−の6種類の薬剤について、アルツハイマー病発症率との関連を調べた。その結果、アスピリンを含むNSAIDを最初の調査時点で2年以上服用していた人では、アルツハイマー病の発症率がおよそ半分であることが判明。しかし、最初の調査時点での服用歴が2年に満たなかった人では、その後継続的に服用した人でも、アルツハイマー病の発症率は非服用者と変わらなかった。さらに、調査時点ではNSAIDを服用していないが、以前に服用したことがあった人では発症率が6割低く、服用年数が伸びるほど発症率がさらに下がる傾向があった。なお、NSAID以外の薬剤では、アルツハイマー病の発症率との間に特に相関は認められなかった。この調査結果が示唆するのは、「アスピリンを含むNSAIDの服用者ではアルツハイマー病発症率が低くなるが、効果が現れるにはタイムラグがある」ということ。ただし、アスピリン以外のNSAIDでは複数の観察研究で同様の現象が示唆されているが、アスピリンについてはアルツハイマー病の予防効果に関して否定的な結果を示した研究もあり、今回の研究だけで「アルツハイマー病予防効果あり」とは言いがたい。ともあれ、NSAIDにアルツハイマー病の発症予防効果を期待するためには、発症より少なくとも2年前から飲み続けなければならない可能性が出てきたことは確か。米国では米国国立衛生研究所(NIH)の補助研究として、NSAID、非NSAID鎮痛薬のシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害薬とプラセボとを用いたアルツハイマー病予防の介入研究「ADAPT」(Alzheimer's DiseaseAnti-Inflammatory Prevention Trial)が進行しているが、研究グループは「かなり長期間観察しないと意味のある結果は得られないのでは」と危惧を呈している。(平成14年10月1日medwave) 膀胱炎薬からヤコブ病新薬 文部科学省が、難病のクロイツフェルト・ヤコブ病の治療薬開発に本格的に乗り出す。本来は膀胱(ぼうこう)炎の治療薬だが、動物実験でヤコブ病への効果を発揮した薬剤「ペントサン」をもとに、新薬の開発を目指す。 今年度から3年計画で約2億6000万円を投じ、長崎大付属病院の研究を支援する。 ヤコブ病は、BSE(牛海綿状脳症=狂牛病)と同じように、「異常プリオン」というたんぱく質が蓄積されることで起きる。脳神経が破壊され、早ければ発症から数か月で死亡する。このヤコブ病に対し、動物実験では、ペントサンを脳に直接投与すると、異常プリオンの蓄積を強力に抑えることがわかっていた。 しかし、ペントサンは分子サイズが大きいため、実際の人体では血管から脳に入りにくく、効果をほとんど発揮できないことが大きな壁となっていた。 そこで、長崎大の片峰茂教授らは福岡大薬学部と共同で、ペントサンの分子を小さく改良した新薬の開発を目指す。血管から脳に入りやすくなれば、飲用や注射で使用することが可能になる。(平成14年8月29日読売新聞) 魚を食べないとアルツハイマー病の危険高い 魚をあまり食べないとアルツハイマー病になる危険率が高い−−。日本神経学会は、痴呆(ちほう)をはじめ神経にかかわる5種類の病気の治療ガイドラインを初めてつくった。29日から札幌市で開かれる日本神経学会で発表する。内外の研究を調査し、科学的な根拠に基づく治療を目指した。痴呆では、薬による治療、作業療法、介護、精神的なケアについて効果を検討し、勧められる治療法をまとめている。痴呆を根本的に治す方法はまだない。しかし、魚を食べる量が多いグループと少ないグループを比べ、少ない方がアルツハイマー病になる危険率が高いと報告されるなど、生活習慣が発病率に影響するという研究が多いことに注目。その改善が予防につながる可能性を指摘した。また、高脂血症や高血圧の治療薬が痴呆の発病率を抑える、といった研究を紹介した。ほかの病気は、頭痛、パーキンソン病、てんかん、筋委縮性側索硬化症(ALS)。(平成14年5月26日 朝日新聞) アルツハイマー病治療薬の有望物質開発 変形たんぱく質が異常蓄積して起きるアルツハイマー病などの治療薬に有望とみられる物質を、英ロンドン大、スイスのホフマン・ラ・ロシュ社、山村研一・熊本大教授らの共同研究チームが開発した。16日発行の英科学誌ネイチャーに発表する。研究チームは、変形たんぱく質が塊をつくる際に、血液中の血清アミロイドP(SAP)というたんぱく質と結合することに注目。このSAPと結合し、たんぱく質とSAPとの結合を妨げる試薬をみつけた。線維状のたんぱく質の塊が体に蓄積する全身性アミロイドーシスという病気の患者19人に、この薬を試したところ、目だった毒性はなく、SAPと試薬との結合効果も確認できた。アルツハイマー病患者にも効く可能性があるという。変形たんぱく質は、正常なら水に溶けるたんぱく質が構造を変え、水に溶けない線維状になって塊をつくる。異常蓄積すると、臓器に障害を与え、さまざまな病気を起こす。全身にたまるタイプや、アルツハイマー病のように脳だけに蓄積するものがある。(平成14年5月16日 朝日新聞) アルツハイマー病が発症するメカニズムが解明 記憶障害などの症状が出るアルツハイマー病が発症するメカニズムを東京大学大学院薬学系研究科の松木則夫教授らのチームが突き止めた。アルツハイマー病の患者では、脳内にβ(ベータ)アミロイドが蓄積することが知られているが、これが神経細胞間の情報伝達を妨げていることがわかったもので、今回の成果は、本格的な治療法のないアルツハイマー病の薬開発につながると期待される。 研究チームはマウスの脳の細胞を培養。これに微量のβアミロイドを加え、神経細胞同士の情報の伝わり方を調べた。その結果、神経細胞の働きを助ける「グリア細胞」と呼ばれる細胞が、神経細胞が情報の伝達に使う物質(グルタミン酸)を過剰に“横取り”していることがわかった。 このため情報伝達で働くグルタミン酸が不足となり、神経細胞が別の細胞に情報を伝える効率が約6割も減少。これが記憶障害などに結びつくと考えられるという。また、こうして働きの落ちた神経細胞は死滅し、症状をさらに悪化させることになる。アルツハイマー病の患者は国内に約60万人いるとされるが、同研究科の池谷裕二助手は「βアミロイドがグリア細胞に作用する仕組みをさらに詳しく調べ、新薬開発につなげたい」と話している。 この病気の発症の仕組みでは従来、βアミロイドが神経細胞を死滅させると考えられていた。だが、最近の研究で神経細胞が死滅していなくても記憶障害などが出る例が見つかり、原因解明が注目されていた。(平成14年5月2日 読売新聞) アルツハイマー病とヤコブ病、類似の仕組みで発症か 代表的痴呆(ちほう)症のアルツハイマー病と、牛海綿状脳症(BSE)との関係が指摘される変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)が、類似の仕組みで発症している可能性が出てきた。どちらも脳内のたんぱく質が変形し、神経細胞を傷つけているらしい。英米などのグループが英科学誌ネイチャー4日号に論文を発表した。難航する治療法開発の手がかりになりそうだ。米ハーバード大などのグループは、アルツハイマー病患者の脳内にたまるβアミロイドに着目。このたんぱく質の変形した小さな塊が脳の神経細胞で信号を伝える場所(シナプス)を壊すことをネズミの実験で確かめた。一方、英ケンブリッジ大などのグループは、大腸菌と牛の細胞でたんぱく質を変形させると、変形たんぱく質が塊になり、細胞を傷つけることを確認した。CJDの病原体プリオンも変形したたんぱく質で、専門家は「ふだん、細胞がたんぱく質の変形をどのようにして防いでいるか、変形たんぱく質がその監視の網をどうかいくぐっているかの解明が重要だ」とコメントしている。(平成14年4月4日 朝日新聞) 2疾患を難病対策に追加−厚労省特定疾患対策懇談会 難病対策のあり方を審議する厚生労働省の「特定疾患対策懇談会」は3月25日、脳がスポンジ状となって痴呆状態を呈するクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の類 縁疾患である「ゲルストマン・ストロイラー・シャインカー」(GSS)と「致死性家族性不眠症」(FFI)を、医療費の自己負担分を補助する難病に追加指定することを決めた。これら二疾患はCJDとともに、「プリオン病」として括られる。また以前から対象になっていたファブリー病については、既に対象疾患の指定を受けているライソゾーム病の一種であるとの見解が示され、ライソゾーム病に統合される。これにより46あった対象疾患は45になる。 (平成14年4月1日 薬事日報) |
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