アトピー性皮膚炎


北海道稚内産のけい藻土を使った壁がアトピーに効果

北海道稚内産のけい藻土を使った壁がアトピー性皮膚炎に効果があることが、浜松医科大と大手住宅メーカー、パナホームの研究グループの調査で分かった。浜松医科大病院で稚内けい藻土を使用した病室を作ったところ、患者の症状が改善したという。けい藻土は海中の藻類(植物プランクトン)の死がいが、海底に長年にわたって堆積した粘土状の泥土。同社によると、稚内産のけい藻土は、地層が地圧と熱による圧力を受けたため変質し、細かい気孔が多数できている。このため、他に比べて、調湿性やガス吸着性が優れ、吸湿性は一般の3倍にも上る。同社は03年からリフォーム用建材として、稚内けい藻土をしっくいなどに混ぜて壁に塗布したところ、顧客から「アトピーが治った」との声が寄せられた。このため、同大と協力し、昨年10月から半年間研究した。稚内けい藻土を壁に塗布した病室で、患者6人に2週間入院してもらい、臨床データを測定し、病室外の患者6人と比較した。その結果、ストレスの指標には変化がなかったが、かゆみ、皮膚の発しんなど3項目で改善がみられたという。稚内けい藻土が室内の湿度を抑えたことで、アトピーの原因の一つであるダニ、カビなどを発生しにくくする効果があったとみられる。同大医学部皮膚科の滝川雅浩教授は「アトピー性皮膚炎に悩む人への朗報と考える。改善効果のメカニズム解明を進めていきたい」としている。同社は稚内けい藻土を塗った壁をリフォーム住宅だけでなく、新築にも広げていく方針。(平成17年12月14日 毎日新聞)

小学生のアトピー、昼休みシャワーで改善

アトピー性皮膚炎の小学生に学校の昼休みに数分のシャワーを続けてもらったところ、症状が大幅に改善したことが厚生労働省研究班の調査でわかった。アトピー性皮膚炎は10数%の小学生が悩んでおり、近年治りにくくなっているともいわれる。体育などで汗やほこりが皮膚に付いて、刺激でかゆみが増し、繰り返しひっかくことも悪化の原因の一つと考えられている。そこで、昨年と今年、症状が悪化しがちな6〜7月の6週間に、群馬県内の小学校7校の協力を得て、アトピー性皮膚炎の児童延べ53人(平均8.8歳)を対象に、平日の昼休みに3〜5分ほど温水のシャワーを学校で浴びてもらい、効果を調べた。いずれも症状が安定している児童で、期間中は治療内容を変更しなかった。全身を25の部分に分け、場所ごとに強い症状は2点、弱い症状は1点、症状なしは0点と、計50点満点で評価したところ、全員が改善し、シャワー実施前は平均11.2点だったのが6週間後には4.0点と、7.2点も症状が軽くなった。(平成17年11月20日 朝日新聞)

ファーストフードとアトピー性皮膚炎

妊娠後期と授乳期に揚げ物やスナック菓子、ファーストフードを多く摂取した母親から生まれた子供は、摂取しなかった母親から生まれた子供に比べアトピー性皮膚炎になる頻度が低い可能性が明らかとなった。10月22日に盛岡市で開催された日本アレルギー学会の一般口演「疫学」のセッションで、国立成育医療センター研究所免疫アレルギー研究部アレルギー研究室室長の松本健治氏らのグループが発表したものだ。松本氏らは広島市の全公立小学校2年生の保護者を対象としてアンケート調査を行った。アンケートの配布数は1万1163、有効回答率は89.3%で、うち女児が4776人、男児が4878人であった。その結果、妊娠後期と授乳期に揚げ物やスナック菓子、ファーストフードを多く摂取した母親から生まれた子供は、アトピー性皮膚炎の発症頻度が有意に低く、特に4歳以降の発症が少なかった。ただし、食物アレルギーや喘息など他のアレルギー疾患には相関は見られなかった。また食べる頻度とアトピー性皮膚炎の間には、妊娠後期での摂取では相関関係はなかったが、授乳期の摂取では食べる頻度が高いとアトピー性皮膚炎を発症しにくい傾向があった。松本氏は、「ファーストフードに含まれる脂質が、それほど悪い過酸化脂質ではないのでは」と分析するとともに、「脂質を摂取したことで子供の皮膚に保護効果を与えているのでは」と推測している。(平成17年10月24日 medwave)

アトピー性皮膚炎、温泉療法の効能調査

原因不明のアトピー性皮膚炎に温泉はどれだけ効くのか、北海道立衛生研究所(札幌市)が科学的な調査を進めている。アトピーの症状が温泉で改善する例は多いが、現状は民間療法どまり、治療が難しい病気では温泉療法が最後のよりどころともなるだけに、研究の成果に期待が集まる。研究の舞台は慢性皮膚病の湯治場、北海道豊富町の豊富温泉。表面に重油が浮く塩類泉がわく。衛生研は温泉水を難治性アトピー患者2人の自宅に運び、約1カ月間入浴してもらった。皮膚のかゆみや赤みなどは目に見えて改善、冷えや倦怠(けんたい)感などの自覚症状もなくなった。また温泉で宿泊療養したアトピー患者4人は、異常値を示していた血液成分が正常値か、それに近い値に変化した。 これまでに、酸性泉やホウ酸濃度の高い中性泉には、アトピー患者の皮膚に定着、症状を悪化させる黄色ブドウ球菌を、殺菌する力があることも分かった。今後、臨床例を増やす一方、アトピーに特徴的な遺伝子の働きが、温泉療法でどう変化するか確認、メカニズムの解明を目指す。(平成16年5月1日 日本経済新聞)

ニンジン成分で花粉症やアトピー性皮膚炎の予防効果

カゴメは国立医薬品食品衛生研究所(東京・世田谷)と共同で、ニンジンジュースを飲み続けると花粉症やアトピー性皮膚炎などの予防効果があることを解明した。ニンジンに含まれるベータカロチンが抗アレルギー物質として作用し、ジュースとして飲み続けると、細胞のバランスが調節され、長期的な治療効果があるという。 研究成果は29日から3日間、大阪市で開かれる日本薬学会で発表する。実験では通常の飼料を与えたマウスと、100グラム当たりベータカロチンを2ミリグラム添加した飼料で飼育したマウスを比較。双方のマウスにアレルゲンを投与しアレルギーを発症する状態にして、症状や血中のヒスタミン濃度などを分析した。 その結果、ベータカロチンを摂取したマウスの方が、肥満細胞から放出されるヒスタミン量が少なかった。またマウスの脾臓(ひぞう)細胞を培養して調べたところ、ベータカロチンが細胞バランスを調整しアレルギーになりにくくすることが分かった。(平成16年3月11日 日経産業新聞)

小児用のアトピー性皮膚炎治療薬「プロトピック」を発売

藤沢薬品工業はアトピー性皮膚炎治療薬「プロトピック軟膏0.03%小児用」(一般名:タクロリムス水和物)を12月12日付で即日発売すると発表した。タクロリムス水和物は、わが国では1993年から免疫抑制薬「プログラフ」として経口薬と注射薬が販売されており、1999年からは16歳以上向けの「プロトピック軟膏0.1%」が、アトピー性皮膚炎治療薬として上市された。今回発売される小児用軟膏は、成人用よりも濃度が低い(0.03%)、2〜15歳向けの製剤。承認された効能はアトピー性皮膚炎で、使用上の注意として、ステロイド外用薬などによる既存療法では治療効果が不十分だったり、副作用のため使えない場合にのみ使用するとの限定が付けられている。(平成15年12月12日MedWave)

子供の1割、アトピーに 乳幼児発症率10年で2倍

乳幼児や学童の約1割にアトピー性皮膚炎の症状があることが、厚生労働省の研究班(主任研究者=山本昇壯(しょうそう)・広島大名誉教授)の全国調査でわかった。乳幼児では10年前の2倍近い発症率だ。14日、東京で開かれた研究報告会で発表された。 調査対象は、全国8地区の保健所や学校などで昨年検診を受けた約3万3000人。厚労省の診断基準で、専門医がアトピー性皮膚炎の症状の有無と重症度を診断した。 その結果、アトピー性皮膚炎と診断されたのは、生後4カ月では12.8%、1歳半9.8%、3歳12.9%、小学1年11.6%、小学6年10.4%だった。10年前の乳幼児調査に比べて倍に近い割合だが、原因はわかっていない。幼児は軽症が8割以上。学童は約7割と、症状がやや重い傾向にある。 調査から、かゆみを増すなど悪化因子の1つとして汗が浮上。ある小学校で、症状の出ている児童10人に8週間、学校の昼休みに必ず5分ほどシャワーを浴びさせ、シャワーを浴びない6人と比べた。シャワーを浴びた9人に症状の改善が認められた。(平成15年2月15日朝日新聞)

原因物質なくても発症する仕組み発見

かびやダニなどアレルギーの原因物質(アレルゲン)がなくても、アトピー性皮膚炎が発症する仕組みを、兵庫医大の中西憲司教授(免疫学)と三重大の水谷仁教授(皮膚科学)が動物実験で発見し、米国科学アカデミー紀要で発表した。皮膚の細胞にインターロイキン18(IL18)というたんぱく質が増えると発症するという。治療法開発や、アレルギー疾患が起きるメカニズムの解明につながりそうだ。アトピー性皮膚炎は、アレルゲンと結合した免疫グロブリンE(IgE)というたんぱく質が、肥満細胞にヒスタミンなどのかゆみを起こす物質を作らせて起こるとされてきた。アレルゲンとなる物質は患者ごとに異なるが、中にはアレルゲンが不明な患者や、血液中のIgEの濃度が非常に低く、理論的にはアトピーにならないはずの患者がいて、原因究明が課題だった。中西教授らはIL18が、アレルゲンやIgEとは無関係に肥満細胞を刺激することを発見。皮膚の細胞の中でIL18が正常の50倍も出来るマウスを遺伝子操作で作って実験したところ、アレルゲンのない無菌室で育てても、生後4カ月程度で必ず重症のアトピーを発症した。遺伝子操作で体内にIgEが作られない状態にしても同様で、逆にIL18を作る遺伝子を壊したマウスは発症しなかった。IL18は免疫について細胞の間で情報伝達を担うたんぱく質で、正常なマウスの皮膚にもあるが、普通はあまり働いていない。それが皮膚をかく、強い日光を浴びるなどの刺激で活性化し、アレルゲンなしでアトピーを起こすと見られる。国内のアトピー患者は約40万人、うちアレルゲン不明の患者は推定2〜3割。中西教授は「特定のアレルゲンがない『自然発生型』のアトピーの存在が初めて分かった。IL18の働きをコントロールできればより効果的な治療法が開発できる可能性がある」と話している。(平成14年8月7日毎日新聞)

アトピー性皮膚炎患者の大腸に慢性炎症、若年者にはまれなメラノーシスも

重症のアトピー性皮膚炎患者では、大半で大腸粘膜に慢性的な炎症が起こっていることが明らかになった。藤田保健衛生大学消化器内科の有沢富康氏らの検討によるもので、潰瘍などの明らかな病変はないものの、S字結腸が強く屈曲している人が多く、若年者にはまれな色素の沈着(メラノーシス)もみられたという。アトピーの病態解明につながる所見として注目されそうだ。研究結果は、4月25日の一般口演で発表した。有沢氏らは、アトピー性皮膚炎患者の消化吸収機能が、通常よりも低下しているとの複数の報告がある点に着目。入院するほどではないが、全身に皮疹がある重症のアトピー性皮膚炎患者15人(うち男性13人、平均年齢26.1歳)に協力してもらい、大腸内視鏡検査を行って、アトピー性皮膚炎患者に特徴的な所見があるかどうかを調べた。すると、大腸には肉眼的な病変は認められなかったが、15人中14人で、S状結腸が「骨盤にはまりこむような曲がり方」(有沢氏)をしていることが判明。うち4人では、若年者ではめったにみられないメラノーシスが生じていた。メラノーシスは下剤の使いすぎでも生じることがあるが、今回協力した患者の中に下剤の長期連用者は含まれていない。そこで、下行結腸の脾彎曲部から組織を一部取り、免疫染色で調べると、大半の人で炎症性の所見があることがわかった。15人中12人で好酸球が大腸粘膜に強く浸潤しており、炎症細胞の核の破壊も13人でみられた。メラノーシスがある人では、過酸化脂質の産物であるリボフスチン(老化色素)の沈着も認められた。なお、アトピー性皮膚炎患者の便には多量のカンジダ菌が排出されることがあり、抗真菌薬の服用で皮膚症状が改善するケースもある。しかし、有沢氏らが免疫染色法やポリメラーゼ連鎖反応法(PCR法)で調べたところ、大腸粘膜にカンジダ菌はまったく見出せなかった。患者の中には抗真菌薬の服用で症状が良くなった人も含まれていたが、服用の後でも大腸粘膜への好酸球浸潤は続いていた。有沢氏はこの所見を、「アトピー性皮膚炎患者の大腸に、潜在的な慢性炎症がある可能性を示すもの」と考察。ただし、カンジダ菌の慢性感染が原因とは考えにくく、どのような機序で慢性炎症が起こっているのかはわからないという。大腸の慢性炎症がアトピー性皮膚炎の病態に与える影響も不明で、皮膚症状と共通の病因を持つ可能性も残る。この点について、有沢氏は「アトピー性皮膚炎の患者さんでは、入院して中心静脈栄養を行うと症状が改善するケースが多く、消化管の機能が病態に何らかの影響を与えていることは確か」だと述べ、「普通は吸収されない大きさの分子が、消化管を通して体内に入っている可能性もあり、小腸の吸収異常についても検討を進めたい」と話した。(平成14年4月26日medwave)