膝離断性骨軟骨炎
膝離断性骨軟骨炎は、スポーツ傷害(繰り返される慢性的な膝のストレスで起こるスポーツ障害や、ケガで起こるスポーツ外傷)で、関節の骨軟骨に血行障害が生じ、軟骨下骨が壊死(死んでしまう状態)する疾患です。進行すると骨軟骨が離断(関節内に剥がれ落ち遊離する)し、疼痛など多彩な症状をきたします。10歳代の男性に多く認められます。膝の内顆部(80〜90%程度)によく発生します。時に、外顆部や膝蓋‐大腿関節面にも認められます。

症状:痛みや脹れです。歩行や運動で悪化し、安静で軽快します。時に、夜間痛を認めます。進行期になれば骨軟骨が遊離して、膝のひっかかり感や雑音(ゴリッと音がする)、不安定感、ロッキング現象、嵌屯症状(遊離した骨軟骨が大腿骨と脛骨の間に挟まれて、膝の曲げ伸ばしが出来なくなる状態)を認めます。しかし、発生部位が非荷重面(体重がかからない所)であれば症状を訴えないこともあります。なお、外顆部に発生した症例は、半月板損傷(特に、円板状半月損傷)をよく合併することがよくあります。

診断:レントゲン検査で困難で、MRIやCT、関節鏡になります。レントゲン検査で5つに分類されます。第1期は異常がない時期です。第2期は骨透亮像(骨が破壊され吸収された状態)を認める時期です。第3期は骨透亮像に加え硬化像(異常に硬くなる状態)を認める時期です。第4期は病巣部に動きを認める時期です。第5期は、遊離体(骨片が完全に遊離した状態)を認める時期です。

MRIでは4つに分類されます。第1期は病変部の軟骨が軟化する時期です。第2期は一部の軟骨に亀裂を認めるも安定している時期です。第3期は軟骨に亀裂があり一部骨片が剥離(剥がれかけている状態)している時期です。第4期は骨片が完全に剥がれて関節内に遊離した時期です。

関節鏡では4つに分類されます。Stage1は特に所見のないものです。Stage2は軟骨に亀裂があるものです。Stage3は骨片が部分的に剥がれたものです。Stage4は骨片が完全に遊離したものです。このMRIの分類や関節鏡の分類は、今後の治療の指針になります。

治療:MRIや関節鏡による病期分類で決定されます。関節鏡分類のStage1とStage2は、保存的治療(手術をしない方法)が原則です。スポーツを3〜6ヶ月間中止していただきます。その間、免荷歩行(体重をかけないで杖で部分歩行)を行います。時に、ギプス包帯膝可動域制限サポーターを使用することもあります。なお、疼痛緩和に短期間のアセトアミノフェン、炎症緩和に非ステロイド性抗炎症剤外皮用薬などを処方します。

手術的治療は、骨髄ドリリング法(病巣部に穴を開け、血液と骨髄液の反応を利用して修復を促す方法)が行われます。Stage3とStage4は、手術的治療となります。術式は、整復固定術(自分の骨をネジの代わりにして固定する方法)、自家骨軟骨移植術(膝の後部は非荷重部なので、骨、軟骨片を採取し病巣部に植える方法)、自家培養軟骨移植術(患者さんの軟骨を培養して貼り付ける方法)などが検討されます。

 たはら整形外科